はじめに
個人開発でアプリをリリースしようと思っている方、「法人なんて大げさじゃない?」と思っていませんか?
私もそう思っていました。でも実際に合同会社を設立してアプリをリリースしてみると、個人のままでは味わえなかったメリットがたくさんありました。
一方で、法人口座の開設では想像以上に苦労しました。ネット銀行4行に立て続けに断られ、信用金庫にも門前払い。原因は意外なところにありました。
この記事では、個人開発者が法人を持つメリットと、法人口座開設のリアルな体験談をお伝えします。これから法人設立を考えている方の参考になれば幸いです。
自己紹介
合同会社大阪ワークスの代表をしています。Python3エンジニア認定基礎試験の対策アプリ「Python基礎」をFlutterで開発し、iOS/Android両方でリリースしました。
完全オフラインで動作する無料の学習アプリで、練習問題や模擬試験を通じて試験対策ができます。
なぜ法人を作ったのか
きっかけは、一人法人の方が社会保険料を抑えられるということを知ったからです。
個人事業主として国民健康保険・国民年金を払うよりも、法人を設立して役員報酬を低く設定し、社会保険に加入した方がトータルの負担が軽くなるケースがあります。アプリ開発を本格的に事業としてやっていくなら、法人化した方が経済的にもメリットがあると判断しました。
合同会社を選んだのは、設立コストの安さが決め手です。株式会社だと登録免許税だけで15万円かかりますが、合同会社なら6万円。定款認証も不要なので、トータルで10万円以上の差が出ます。
設立手続きには freee会社設立 を使い、案内に沿って進めるだけでスムーズに完了しました。
個人開発者が法人を持つメリット
1. Google Playのテスター要件を回避できる
これは個人開発者にとって非常に大きなメリットです。
2023年11月以降、Google Playでは新規の個人デベロッパーアカウントでアプリを公開する際、12〜20人以上のテスターを集めて14日以上のクローズドテストを実施することが必須になりました。
正直、個人開発者がテスターを12〜20人も集めるのはかなり大変です。友人や家族に頼むにしても、14日間もアプリを入れっぱなしにしてもらうのは気が引けますし、ココナラなどで代行を依頼すれば数万円のコストがかかります。
一方、法人(組織)アカウントで登録すればこのテスター要件は不要です。法人を持っているだけでこのハードルがなくなるのは、個人開発者にとって圧倒的なアドバンテージです。
2. ストア上の表示が法人名になる(ただし完全な匿名化ではない)
Apple Developer Programに個人で登録すると、App Storeの販売元に個人の本名がそのまま表示されます。Google Playも同様に、個人アカウントでは開発者の氏名・住所・電話番号がストア上に公開されます。
法人として登録すれば、ストア上の販売元・開発者名には法人名が表示されるので、アプリのページから直接個人名が見えることはなくなります。
ただし注意点として、特定商取引法などの法律により、アプリの販売やサービス提供を行う場合は、会社のホームページやプライバシーポリシーに法人の所在地や代表者名を記載する義務があります。つまり、法人化したからといって完全に個人情報を隠せるわけではありません。
それでも、ストアのアプリページに個人名や自宅住所がダイレクトに載るのと、法人のWebサイトに法人住所と代表者名が載るのでは、心理的なハードルがかなり違います。法人登記の住所があることで、自宅住所を直接公開する必要がなくなるのは大きなメリットです。そういう意味でも、適切な場所で法人登記をしておくことが重要になってきます。
3. 経費計上の幅が広がる
法人であれば、アプリ開発に関連する費用を経費として計上しやすくなります。
- Mac・iPhone・iPadなどの開発機器
- Apple Developer Program(年間$99)やGoogle Play Console($25)の登録費
- サーバー費用、ドメイン費用
- 技術書、オンライン学習サービス
- 広告宣伝費(Apple Search Ads、SNS広告など)
- 作業スペースの家賃(按分)
個人事業主でも経費計上はできますが、法人の方が認められる範囲が広く、税務上の自由度が高いです。
4. 社会的信用が得られる
法人格を持っていると、取引先やパートナーとのやり取りがスムーズになります。将来的にアプリが成長して外注や業務委託を行う場合、法人であることが信頼の土台になります。
また、銀行口座の開設(後述しますが苦労はあります)、クレジットカードの発行、各種サービスの法人契約など、ビジネスインフラを整えやすくなります。
5. 節税の選択肢が増える
法人化すると、以下のような節税手段が使えるようになります。
- 役員報酬の設定による所得コントロール
- 社会保険料の負担軽減(一人法人の場合)
- 小規模企業共済への加入
- 法人向け保険の活用
特に一人法人の場合、役員報酬を低めに設定することで社会保険料の負担を最適化できます。これが私が法人を作った一番の動機でした。
法人口座開設で詰みかけた話
法人設立は順調だったのですが、法人口座の開設で大きな壁にぶつかりました。
ネット銀行4行に全滅
まず申し込んだのは以下の4行です。
| 銀行 | 結果 |
|---|---|
| PayPay銀行 | ❌ 審査落ち |
| 楽天銀行 | ❌ 審査落ち |
| GMOあおぞらネット銀行 | ❌ 審査落ち |
| 住信SBIネット銀行 | ❌ 審査落ち |
4行とも理由は教えてもらえませんでした。資本金は50万円で、設立直後のため事業実績がなかったことも影響しているとは思います。
本当の原因は「住所の距離」だった
しかし、おそらく最大の原因は別にありました。
私の会社は別件で大阪にレンタルスペースを借りていたため、その住所に法人登記をしていました。しかし、代表者の居住地は大阪から離れた場所だったのです。
この点について、大阪信用金庫と地元の信用金庫にも相談しましたが、どちらからも「代表者の住所と本店所在地が離れすぎている」という指摘を受けました。
住所移転で解決
そこで、本店所在地を大阪から東京(代表者の居住地近く)に移転し、改めて申し込みを行いました。
重要なのは、資本金は50万円のまま増資していないということです。つまり、資本金の少なさが主因ではなかったわけです。
もう一つのポイントとして、アプリを1本リリースしてから再申し込みしたということがあります。「何の事業をしているのか」が具体的に示せる状態だったことが、審査にプラスに働いた可能性があります。アプリ開発会社として法人口座を開設するなら、まず1本アプリをリリースしてから申し込むのがおすすめです。
法人口座開設のポイントまとめ
⚠️ 注意: 以下はあくまでも私個人の体験に基づく推測です。審査基準は各金融機関によって異なり、公開されていません。同じ条件でも結果が異なる場合がありますので、参考程度にお読みください。
今回の経験から学んだポイントをまとめます。
- 代表者の住所と本店所在地は近い方がよい → これが最大の審査ポイントだった
- 資本金50万円でも口座開設は可能 → 資本金の額よりも他の要素が重要
- 事業実績があると有利 → アプリを1本でもリリースしてから申し込む
- ネット銀行は審査が厳しい → 断られても諦めず、条件を整えて再挑戦する
- 信用金庫に相談すると理由を教えてもらえることがある → 改善のヒントが得られる
合同会社の設立費用まとめ
参考までに、法人設立にかかった費用をまとめます。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 登録免許税 | 60,000円 |
| 印鑑作成 | 約3,000〜5,000円 |
| freee会社設立 | 無料 |
| 資本金 | 500,000円(費用ではなく出資) |
| 合計(資本金除く) | 約65,000円 |
株式会社と比べて大幅に安く、手続きも簡単です。アプリ開発を主な事業とするなら、合同会社で十分だと思います。
まとめ
個人開発者が法人を持つメリットをまとめると:
- Google Playのテスター要件(12〜20人×14日間)を回避できる
- App Store / Google Playで個人名の直接表示を避けられる(完全な匿名化ではないが、法人名がワンクッションになる)
- 経費計上の幅が広がり、節税の選択肢が増える
- 社会保険料の最適化が可能(一人法人のメリット)
- 社会的信用が得られる
一方で、法人口座の開設は想像以上にハードルが高いです。特に本店所在地と代表者の住所の距離は盲点になりやすいので注意してください。
「個人開発に法人は大げさ」と思っている方も多いかもしれませんが、特にGoogle Playの新しいテスター要件を考えると、法人を持っているかどうかで開発体験が大きく変わります。設立費用も合同会社なら約6〜7万円で済むので、アプリ開発を本気でやるなら検討する価値は十分あると思います。
最後に宣伝ですが、私が開発した「Python基礎」は、Python3エンジニア認定基礎試験の対策ができる無料アプリです。完全オフラインで動作し、練習問題や模擬試験で効率的に試験対策ができます。これから受験を考えている方はぜひ使ってみてください。
この記事が、個人開発者の法人設立を検討している方の参考になれば嬉しいです。質問があればコメントでお気軽にどうぞ!