Google Cloudをはじめる1歩!無料枠で試してみる活用術【2025年版】
対象読者
・クラウドの基礎知識があるエンジニアの方
・個人開発や技術検証の環境を、コストをかけずに構築したい方
・AWSの無料枠は知っているが、Google Cloudの無料枠について詳しく知りたい方TL;DR
Google Cloudには「90日間/300ドル」の無料トライアルとは別に、期間無制限の**「Always Free(永年無料枠)」がある。VM、サーバーレス、DBはもちろん、BigQueryの巨大データ分析やVertex AIの機械学習モデル**までが対象。この記事を読んで、請求アラートを正しく設定し、リスクゼロでGoogle Cloudを使い倒そう!
1. はじめに:ただの「お試し」じゃないGoogle Cloudの無料枠
「新しいWebアプリのアイデアを試したいけど、サーバー代がネック…」
「話題のAIサービスを触ってみたいけど、個人で契約するのはちょっと…」
エンジニアなら誰しも一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか。そんな悩みを解決してくれるのが、Google Cloudの「Always Free (永年無料枠)」です。
よくある「90日間お試し」とは一線を画すこのプログラムは、期間の定めなく、毎月一定量まで主要なサービスを"ずっと無料"で利用できる、まさにエンジニアのためのプレイグラウンドです。
この記事では、ちょっと試してみたいけど費用が気になるような方に向けて、「Always Free」で何ができるのか、そして意図しない課金を防ぐための必須設定までを紹介します。
2. 「無料トライアル」と「Always Free」の違い
まず、現在提供されている2つの無料プログラムの違いをハッキリさせておきましょう。
| 特徴 | 無料トライアル | Always Free (永年無料枠) |
|---|---|---|
| イメージ | 期間限定のお試しビュッフェ | ずっと無料の定食メニュー |
| 対象 | 新規ユーザーのみ | 全ユーザー |
| 期間 | 90日間 | 無期限(毎月リセット) |
| 提供内容 | 300ドル分のクレジット | 対象サービスごとの利用量上限 |
| 使えるサービス | ほぼ全てのGoogle Cloudサービス | Always Free対象のサービスのみ |
重要なのは、無料トライアル期間が終了しても、Always Freeの枠内であれば対象サービスを無料で使い続けられるという点です。 まずはトライアルで色々試し、その後はAlways Freeで運用を続ける、という使い方が賢い選択です。
3.【本題】Always Free主要サービス徹底解説
ここからが本題です。Always Freeの対象となっている主要サービスを、無料枠の「単位」と「上限」と共に見ていきましょう。
Always Free の使用量上限 | Google Cloud の無料プログラム
コンピューティング編
Compute Engine (VM)
一般的なな仮想サーバーです。
-
無料枠:
e2-microVMインスタンス 1台/月 (744時間相当) - 単位: 時間
-
注意点: 無料枠の対象は、米国の一部リージョン(
us-west1,us-central1,us-east1)に限られます。東京リージョンは対象外なので注意してください。
Cloud Run (サーバーレスコンテナ)
コンテナイメージをデプロイするだけで、自動でスケールしてくれるサーバーレス環境です。
- 無料枠: 毎月最初の200万リクエスト、360,000 vCPU秒、216,000 GiB秒
- 単位: リクエスト数、コンピューティング時間
- アクセスがない時はゼロスケール(=料金もゼロ)になるため、個人開発のAPIサーバーなどに最適です。
Cloud Functions (サーバーレス関数)
イベント駆動でコードを実行するFaaS (Function as a Service) です。
- 無料枠: 毎月最初の200万回の呼び出し、400,000 vCPU秒
- 単位: 呼び出し回数
- 「Cloud Storageにファイルがアップロードされたら、自動で画像処理を実行する」といった使い方ができます。
ストレージ・DB編
Cloud Storage
スケーラブルなオブジェクトストレージ。ウェブサイトの画像置き場からバックアップ先まで、用途は無限大です。
- 無料枠: 5GB/月のStandard Storage
- 単位: 容量 (GB)
- こちらもCompute Engine同様、無料枠は米国リージョンに限られます。
Firestore (NoSQL DB)
モバイル・Webアプリ開発に最適なサーバーレスのNoSQLデータベースです。
- 無料枠: 1GBのストレージ、50,000回/日の読み取り、20,000回/日の書き込み
- 単位: 容量、オペレーション回数
- リアルタイム同期機能が強力で、チャットアプリなどの開発にも向いています。
データ分析編
BigQuery
Google Cloudが誇る、超高速なサーバーレスデータウェアハウスです。Always Freeの枠が非常に強力で、これを使うためだけにGoogle Cloudを始める価値があるほどです。
BigQuery の一般公開データセット | Google Cloud
- 無料枠: 1TB/月のクエリ処理、10GB/月のストレージ
- 単位: クエリがスキャンしたデータ量 (TB)、保管データ量 (GB)
- 「1TBのクエリ」がどれくらい凄いかというと、個人ではまず使い切れないレベルです。GitHubのアクティビティや気象情報など、一般に公開されている数テラバイト級の巨大データセットを、料金を気にせず自由に分析できます。SQLの練習やデータ分析の学習にこれ以上ない環境です。
AI・機械学習編
Vertex AI
モデル開発からデプロイまでをカバーする、統合AIプラットフォームです。これまで専門家でなければ難しかったAI開発が、手軽に試せます。
予算と予算アラートの作成、編集、削除 | Cloud Billing
- 無料枠: AutoMLでのモデルトレーニング時間、Vertex AI Visionの画像数、Gemini Proの特定APIの呼び出し回数など、プロダクトごとに細かく月間無料枠が設定されています。
- 単位: 用途に応じて様々 (時間、回数、画像数など)
- 自分の持つ画像データをアップロードして独自の画像分類モデルを学習させたり、最新の生成AIであるGeminiをAPI経由で試したりと、AIの最先端を無料で体験できます。
4.【実践】無料枠だけで作る!おすすめ構成パターン3選
これらのサービスを組み合わせることで、無料でこんなシステムが構築できます。
パターンA:定番!WordPressブログサーバー構成
-
Compute Engine (
e2-micro): WordPress本体を稼働 - Cloud Storage: 画像などのメディアファイルを保存
パターンB:今風!モダンなサーバーレスAPI構成
- Cloud Run: GoやPythonなどで書いたAPIサーバーをコンテナでデプロイ
- Firestore: APIのデータを保存するDBとして利用
- Cloud Build: GitHubにPushすると自動でCloud Runにデプロイ (無料枠あり)
パターンC:知的好奇心を満たす!無料データ分析基盤
-
BigQuery: 公開データセット(例:
bigquery-public-data.github_repos.commits)に対してSQLを実行し、世界中の開発者のコミット傾向を分析する。
5. 請求事故を防ぐ!絶対に設定すべき3つのこと
「無料だと思ったら、数万円の請求が来た…」というクラウドあるあるは、絶対に避けたいですよね。安心してAlways Freeを活用するために、以下の3つは必ず設定・確認してください。
① 予算アラートを設定する
- 指定した金額(例: 100円)に利用料金が達すると、メールで通知してくれる機能です。
-
「0円を超えたら通知」のように設定しておけば、意図せず無料枠を超えた瞬間に気づくことができます。これは最重要設定です。
予算と予算アラートの作成、編集、削除 | Cloud Billing
② 無料枠の対象リージョンを確認する
- 前述の通り、Compute EngineやCloud Storageの無料枠は米国リージョン限定です。
- リソースを作成する際は、必ずリージョンが
us-west1などになっているか確認しましょう。
③ 利用していないリソースは削除する
- 検証で作成したVMやディスクは、使い終わったら必ず停止・削除する癖をつけましょう。
6. まとめ
- Google Cloudの「Always Free」は、単なるお試しではなく、永続的に使える強力な開発・学習基盤です。
- VMからサーバーレス、そしてBigQueryやVertex AIといった最先端のサービスまで、無料で利用できる範囲は非常に広いです。
- ただし、恩恵を最大限に受けるには**「予算アラートの設定」と「リージョンの確認」**が不可欠です。
この記事が、皆さんの新しいプロジェクトやスキルアップの一助となれば幸いです。さあ、あなたもAlways FreeでGoogle Cloudの世界に飛び込んでみましょう!