はじめに
Salesforce 周りの情報を追っていると、次のような話を聞くことがあります。
Chatter が消え、Slack Bot へ移行する
Salesforce は Slack を買収して以降、Slack との連携をかなり強く打ち出しています。
さらに 2026 年には、Slackbot が仕事のためのパーソナル AI エージェントとして国内提供開始されました。
そのため、「Chatter はもう終わるのでは?」と受け取っても不思議ではありません。
ただし、実務で判断するには、次の 2 つを分けて考える必要があります。
Chatter という Salesforce の機能が終了するのか
Salesforce の新しいコラボレーション導線が Slack / Slackbot 側に寄っているのか
この記事では、2026 年 6 月 22 日時点で確認できる公式情報をもとに、この点を整理します。
まず結論
現時点では、Chatter 本体が終了するという公式情報は確認できません。
一方で、Salesforce の新しいコラボレーション体験や AI 活用の中心が、Slack / Slackbot / Salesforce Channels 側へ寄っていることは確かです。
つまり、次のように整理するのが安全です。
誤解を招きやすい表現:
Chatter が終了する
より正確な表現:
Chatter 本体の終了は確認できない。
ただし、Salesforce の新しい協業・AI 導線は Slack 側に移りつつある。
Chatter は公式ドキュメント上では現行機能として残っている
Salesforce の公式 PDF Collaborate With Everyone では、Chatter がコラボレーション機能として掲載されています。
同ドキュメントでは、Chatter について次のような内容が扱われています。
- Chatter の有効化
- Chatter 設定
- Chatter 投稿とコメント
- Chatter グループ
- Chatter の権限管理
- Chatter の暗号化
- Chatter フィード
- Chatter の通知設定
また、同ドキュメント内では、Chatter が Salesforce 組織のセキュリティ設定や権限設定に従って動作することも説明されています。
このため、少なくとも公式ドキュメント上は、Chatter は現在も Salesforce のコラボレーション機能として扱われています。
Chatter REST API も現行ドキュメントに掲載されている
Salesforce の Connect REST API Developer Guide にも、Chatter 関連の REST API リソースが掲載されています。
具体的には、Chatter Resources や Experience Cloud Sites Chatter Moderation Resources などが確認できます。
これは「Chatter の画面 UI が残っているか」だけでなく、API レベルでも Chatter 関連機能が現行ドキュメントに含まれていることを示しています。
終了しているのは Chatter 本体ではなく一部の関連機能
混同しやすいポイントとして、Chatter Desktop は 2018 年 6 月に退役済みです。
Salesforce の公式ドキュメントにも、Chatter Desktop が retired である旨が掲載されています。
また、古い Chatter.com や Chatter Messenger など、現在の Salesforce 利用者が普段使う Chatter 本体とは別の関連機能もあります。
そのため、「Chatter が終了」と聞いた場合は、まず対象を確認する必要があります。
確認すべきこと:
Chatter 本体なのか
Chatter Desktop なのか
Chatter Messenger なのか
Chatter.com なのか
Salesforce と Slack の連携導線の話なのか
自社運用として Chatter を使わない方針にする話なのか
ここを分けないと、「一部機能の退役」が「Chatter 全体の終了」として伝わってしまいます。
Slackbot 側への流れは強まっている
一方で、Slackbot への流れは明確にあります。
Salesforce は 2026 年 1 月 20 日に、Slackbot の国内提供開始を発表しました。
公式発表では、Slackbot は Slack に組み込まれた仕事のためのパーソナルエージェントとして説明されています。
できることとしては、次のようなものが挙げられています。
- 業務コンテキストの理解
- Slack 上の会話やファイルの検索
- 連携された業務システムを横断した情報検索
- 業務の整理
- コンテンツ作成
- 会議のスケジュール調整
- リマインド設定
- 各種アクションの実行
つまり、Slackbot は単なる通知 Bot ではありません。
Slack 上で業務データ、会話、AI エージェント、業務アクションをつなぐ入口として位置付けられています。
Salesforce Channels も Slack 中心の導線
Salesforce は Salesforce Channels も打ち出しています。
これは、Salesforce の顧客データと Slack 上の会話を 1 つの共有スペースにつなげる考え方です。
Slack 側の Slack での Salesforce ページでも、Salesforce データを Slack 内で扱い、Slackbot が会話を CRM レコードに変えるような体験が紹介されています。
ここで重要なのは、Salesforce が「コラボレーションの場所」として Slack を強く推していることです。
従来の Salesforce 内の Chatter フィードだけで完結するのではなく、次のような形に寄っていると考えられます。
従来:
Salesforce レコード
↓
Chatter フィードで会話
今後強まりそうな導線:
Slack チャンネル / Slackbot
↓
Salesforce レコードや CRM データと連携
↓
会話、検索、要約、アクション実行を Slack 内で行う
「Chatterが消える」と言われた場合の見立て
「Chatter が消え、Slack Bot へ」という表現は、公式の製品終了情報としては強すぎます。
ただし、次の意味で使われているなら妥当です。
Salesforce の新しいコラボレーション体験は Slack 側に寄っている
通知、検索、要約、CRM 更新、業務アクションは Slackbot / Agentforce in Slack 側が主戦場になりつつある
将来的な推奨導線として、Chatter より Slack を中心に設計する場面が増える
一方で、次のように断定するには公式根拠が必要です。
Chatter 本体が廃止される
Chatter フィードが Salesforce から削除される
Chatter グループが使えなくなる
Chatter REST API が終了する
少なくとも、この記事を書いている時点では、これらを裏付ける公式情報は確認できませんでした。
実務で確認すべきポイント
自社で影響を確認する場合は、まず Chatter をどの範囲で使っているかを棚卸しするのがよいです。
確認観点は次の通りです。
| 観点 | 確認内容 |
|---|---|
| 投稿 | レコードフィードやグループ投稿を使っているか |
| 通知 | Chatter 通知を業務通知として使っているか |
| グループ | 公開グループ、非公開グループ、顧客向けグループを使っているか |
| ファイル | Chatter Files を使っているか |
| API | Chatter REST API や FeedItem 連携を使っているか |
| Experience Cloud | サイト上の Chatter フィードやモデレーションを使っているか |
| 権限 | Chatter の有効化、プロファイル、権限セットで制御しているか |
| 監査 | 投稿履歴、コメント履歴、データ保持要件があるか |
Slackbot や Salesforce Channels へ寄せる場合は、単なる画面置き換えではなく、業務設計の見直しになります。
特に、次の点は先に確認しておくべきです。
- Slack の契約プラン
- Slackbot の利用可否
- Salesforce と Slack の接続設定
- Salesforce レコードと Slack チャンネルの対応関係
- 権限とアクセス制御
- データ保持ポリシー
- 監査ログ
- 通知設計
- 既存 Chatter 履歴の扱い
ベンダーや Salesforce 担当者に確認したい質問
「Chatter が終了する」と説明された場合は、次の質問をすると論点が明確になります。
終了対象の正式な機能名は何ですか?
公式 URL はありますか?
終了日はいつですか?
影響範囲は Chatter 本体ですか?
それとも Chatter Desktop などの関連機能ですか?
既存の Chatter 投稿、コメント、ファイル、グループはどうなりますか?
Chatter REST API や FeedItem 連携は影響を受けますか?
Slackbot への移行は必須ですか?
それとも推奨ですか?
Slackbot を使う場合、必要な Slack プランや Salesforce ライセンスは何ですか?
この質問に対して、公式 URL と対象機能名が出てこない場合は、「終了」という表現をそのまま受け取らない方がよいです。
まとめ
現時点では、Chatter 本体が終了するという公式情報は確認できません。
公式ドキュメント上では、Chatter は現在も Salesforce のコラボレーション機能として掲載されています。
一方で、Salesforce の新しい投資領域が Slack / Slackbot / Agentforce in Slack / Salesforce Channels 側へ寄っていることも明確です。
そのため、実務上は次の表現が一番安全だと思います。
Chatter 本体の終了は確認できない。
ただし、Salesforce の新しい協業・AI 活用の中心は Slack / Slackbot 側へ移りつつある。
「Chatter が消える」という話を聞いた場合は、まず対象機能名、終了日、公式 URL、影響範囲を確認しましょう。