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はじめに

前回は、量子コンピュータを理解する入口として、物理のどこを見るかを整理しました。

今回は第2回として、機械としての量子コンピュータを見ていきます。

前回は、重ね合わせ・もつれ・干渉が大事、という話でした。ただ、それだけではまだ「コンピュータ」にはなりません。

量子力学の性質を使って、どうやって計算できる機械にするのか。

この記事では、実装方式を深掘りするというより、「物理をどう計算機として扱うのか」の見取り図をつかむことを目指します。

machine.png

qubit は「物理の一部を2状態として使う」

古典コンピュータでは、ビットは 01 です。

量子コンピュータでは、qubit を使います。

ここで大事なのは、qubit は抽象的な情報単位であると同時に、実際には何らかの物理系で実装されているということです。

方式によって、使っている物理は違います。

方式 ざっくり何を使うか
超伝導 回路のエネルギー準位
イオントラップ イオンの内部状態
光量子 光子の偏光や経路
中性原子 原子の内部状態や配置
スピン 電子や核のスピン

物理系は本当はもっと複雑です。でも、その中から計算に使う2つの状態を切り出して、|0⟩|1⟩ として扱います。

半導体のアナログな物理から電圧を閾値で切って on/off を取り出しデジタル回路にする感覚と同じかと思います。

方式が違っても、上からは qubit として見る

超伝導、イオン、光、中性原子、スピンなど、それぞれ得意不得意があります。

ただ、最初から方式ごとの細かい違いに入りすぎると、また迷子になります。

下の物理方式は違っても、上のレイヤーでは qubit とゲートとして扱い同じ「量子コンピュータ」と言ってます。

物理方式  →  qubit  +  量子ゲート (量子回路)

方式の違いは、「どの物理で qubit を作っているか」「どのくらい正確に制御できるか」「どのくらい拡張できるか」の違いとして見ると整理しやすいです。

ゲートは「物理を制御して状態を変える」もの

量子回路では、X ゲート、H ゲート、CNOT ゲートのようなゲートが出てきます。

ソフトウェア上では、これらは行列や命令として見えます。

ただ、機械として見ると、ゲートは物理的な制御です。

  • 超伝導ならマイクロ波パルス
  • イオンならレーザー
  • 光ならビームスプリッタや位相シフタ

のように、方式ごとに制御方法は違います。

下では泥臭い物理をやっているのに、上から見ると HCNOT のような抽象的な操作として見える。ここが面白いところです。

測定は量子状態を古典ビットにする

量子コンピュータでは、最後に測定します。

測定すると、量子状態から 01 という古典ビットが得られます。

前回も書いたように、重ね合わせ状態を測定しても、全部の情報が取り出せるわけではありません。確率に従って1つの結果が出ます。

量子状態を作る → ゲートで変える → 測定して古典ビットにする

最大の敵はデコヒーレンス

機械としての量子コンピュータで一番やっかいなのは、量子状態が壊れやすいことです。

環境と相互作用すると、せっかく作った重ね合わせやもつれが崩れてしまいます。これがデコヒーレンスです。

だから量子コンピュータでは、極低温、外部ノイズからの隔離、高精度な制御、測定誤差の低減、誤り訂正が重要になります。

ここで、量子コンピュータは「不思議な物理で一気に計算する機械」というより、壊れやすい物理をどう安定した計算機にするかという工学の話になります。

誤り訂正が本丸っぽい

量子コンピュータの記事では、qubit 数がよく話題になります。

もちろん数は大事です。ただ、物理 qubit がたくさんあっても、エラーが大きければ長い計算はできません。

実用的な量子計算では、多数の物理 qubit を使って、より安定した論理 qubit を作る必要があります。

ざっくり言うと、こういう方向です。

たくさんの物理 qubit  →  1つの論理 qubit

このあたりから、量子コンピュータは一気に「物理の珍しさ」ではなく「大規模な工学システム」に見えてきます。

おわりに

今回は、機械としての量子コンピュータをざっくり整理しました。
正直、物理部分よりかなり解像度低いです(物理学科卒なので許してください)。
あっさりすぎて、怒られそうですが、一旦これくらい理解しておけばいいかなとおもってます。

かるくまとめると、自分の中では、以下のように整理すると迷子になりにくいです。

  • qubit は物理系の一部を2状態として切り出したもの
  • 方式は違っても、上からは qubit とゲートとして扱う
  • ゲートは物理を制御して状態を変える操作
  • 測定で量子状態を古典ビットとして読む
  • デコヒーレンスと誤り訂正が本丸

次は、量子回路編として、状態、ゲート、測定を数学的にどう扱っているかを整理する予定です。

まだ自分も整理中なので、間違いや違和感があれば教えてもらえるとうれしいです。

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