これまでのお話
- LoRaでIoTプラットフォーム(ThingSpeak)にデータを上げる方法
- LoRaWANでIoTプラットフォーム(The Things Network)にデータを上げる方法
- LoRaにGPSを付けて、会社の周りを歩いてみた(Google Earthで位置情報をプロットする)
- 複数のLoRaノードをゲートウェイにアクセスさせるときに気を付けること
- LoRa機器の受信強度(RSSI)の取得方法
イントロダクション
LoRaは無線の規格ですが、日本には無線に関わる法律があります。
電波法ですね。
また、電波を使った事業をするには、それに関わる法律もあります。
電気通信事業法です。
とても参考になる情報があったので、今回は電波法・電気通信事業法を意識した使い方を、忘れないうちにまとめておこうかと思います。
電波法について
LPWAで電波法に関連する単語として覚えておく必要のあるものは、特定小電力無線局と簡易無線局です。
どちらも920MHz帯の電波を規定する種類ですが、大まかには次のような仕様になっています。(正確なところは参考の資料をご参考ください)
簡易無線局 | 特定小電力無線局(簡易無線局と重なる範囲) | 特定小電力無線局 | |
---|---|---|---|
電波出力 | 250mW以下 | 20mW以下 | 20mW以下 |
周波数帯 | 920.5~923.5MHz | 920.5~923.5MHz | 923.5MHz~928.1MHz |
キャリアセンス時間 | 5ms以上 | ①5ms以上②128μs以上 | 128μs以上 |
最大送信時間 | 4秒 | ①4秒②400ms(総和360s/h以下) | 400ms(総和360s/h以下) |
送信後の停止時間 | 50ms以上 | ①50ms以上②2ms以上 | 2ms以上 |
無線局登録 | 必要 | 不要 | 不要 |
他者への貸出 | 不可 | (記述なし) | (記述なし) |
※特定小電力無線は1mW以下の規定書いてありますが、端折っています。 | |||
参考: | |||
総務省資料 920MHz帯を利用した無線システム | |||
IoT黎明期のLPWA事業と法 |
どちらもLPWAでは使われる規格ではあると思いますが、特定小電力無線局の方がルールが少ないので使いやすいですね。
無線局登録:無線局登録状の取得で、5年毎の更新が必要です。(有料)
他者への貸出:2017/8現在、簡易無線局の利用は自営のみとなっているそうです。
Dragino社製LoRa製品での電波法に合わせた設定
弊社で取り扱っているDragino社製LoRa製品は、特定小電力無線に合わせて使うことができます。
基本的に、LoRaを操作するライブラリにRadioHeadのRH_RF95.hを使用することを想定して記載します。
http://www.airspayce.com/mikem/arduino/RadioHead/RadioHead-1.63.zip
電波出力
下記メソッドで出力の強さを設定します。
// Setup Power,dBm
rf95.setTxPower(13);
単位はdBmで指定するのですが、
13dBm = 19.95mW
となります。
チャネル周波数
チャネル1は920.6MHzです。
一つのチャネルは、中心周波数±100kHzを割り当てるため、周波数帯は920.5MHz~となっています。
// Setup ISM frequency
rf95.setFrequency(920.6);
チャネルは200kHz刻みで存在するので、使いたいチャネルを設定します。
(前出のPDFの資料が参考になります)
キャリアセンス時間
キャリアセンスを簡単に言うと、送信前に指定時間受信モードにすることを言います。
他の通信があるかどうかを確認する処理です。
下記は5msを指定しているところです。(μsは指定できない様です)
rf95.setCADTimeout((unsigned long)5);
最大送信時間
実機での計測ができればベストですが、理論上の送信にかかる時間が計算できます。
LoRa Calculator について記載のある資料
チャネル920.6MHzで、下記の設定としてLoRa Calculator にかけると、400ms以内に送信できるペイロード(実質送信データ)は、55バイトという結果が得られます。
RH_RF95::ModemConfig config;
config.reg_1d = 0b01110000 | 0b0100; // Bw125 | Cr4/6
config.reg_1e = 0b10010000 | 0b0100; // Sf512(SF9) | CRCon
config.reg_26 = 0b00000000; // default.
rf95.setModemRegisters(&config);
あくまで理論値なので、計測器で実際の値を確認することをお勧めします。
※2017/12/27修正
送信後の停止時間
送信直後にdelayをセットして対応します。
下記は50msの待機。
rf95.send(data, strlen((char*)data));//resend data
rf95.waitPacketSent();
delay(50);
電気通信事業法について
こちらで規定しているのは、無線を使った事業をする時に関わる法律なので、LoRaに対して何か設定するという必要はありません。
こちらのサイトに分かりやすく説明されていました。
IoT黎明期のLPWA事業と法
SORACOM Air for LoRaWAN は違法?
詳細は上記サイトにお譲りするとして、私の解釈では、現在のところ次のようなことを行うには届け出電気通信事業者、もしくは登録電気通信事業者とならなけれならないようです。
- 自分のLoRaネットワークを利用料を取って使ってもらう
- 基地局(ゲートウェイ)をサービスとして提供する(月額で使ってもらうという解釈をしています)
- LoRaネットワークを使ったサービスで利益を上げる
- 市町村を超えた範囲でゲートウェイを設置する
特に登録電気通信事業者となる場合、有資格者(電気通信主任技術者)を、サービスを提供する各都道府県に配置するという義務があるそうです。
最後に
LoRaを自分の趣味で使う分には何の気兼ねもなく使えるようですが、ビジネスとして成立させるには超えなければならないハードルがあるようです。
大きい企業がLoRaWANを掲げているのはこういう理由があるのだなと思いました。
特に、各都道府県での電気通信主任技術者の配置について。
黎明期のLPWAの世界は、まだまだ法整理が必要だと叫ばれているようなので、ルールの緩和/強化があるかもしれません。
今後の業界の動静が気になるところです。