社内で作ったAIの調査ツールが、全部署に広がった話です。調査ツールは、データを調べて答えるAIの道具です。作ったのは、ある奨学金サービス会社のエンジニア。会社は米国の Bold.org、書いた人は Orestis Ioannou さんです。2026年1月に、小さく始めました。うれしいのは、この広め方が自分の職場にも使える点です。同じ道を通った大企業 Salesforce とも比べます。
目次
- 何のAIか(中身)
- どこが新しいのか
- しくみを図で見る
- Salesforce と比べる
- 作者の反省
- 自分にどう関係するか
- 今日覚えること
何のAIか(中身)
元は、たまった記録を SQL で調べるだけの道具でした。SQL は、データに問い合わせる言葉です。記録は ClickHouse というデータベースに入っています。今はふつうの言葉で質問でき、AI が SQL を組み立てて答えます。この道具を AIエージェント(自分で調べて動くAI)と呼びます。やり取りは、チャットの Slack と、課題管理の Linear の中で行います。外に見せる部品は、既存の機能をうすく包んだ小さな道具だけ。すべて「読み取り専用」なので、見るだけで書き換えません。いまは月に数十億トークン(AIが処理する文字のかたまり)を使うほど回っています(元記事)。
どこが新しいのか
ふつうの言葉でデータを聞く仕組み自体は、新しくありません。新しいのは、土台を作り込まずに始めた割り切りです。ふつうは MCP という共通規格を先に整えてから配ります。MCP は、AI と社内ツールをつなぐ約束事です。でも当時は未成熟で、必要なサーバーが足りませんでした(元記事)。だから待たずに、小さな部品だけを今ある Slack の中に置きました。完璧より、まず現場で使える形。この順番が、これまでとの差です。
しくみを図で見る
人:ふつうの言葉で質問(Slack / Linear の中)
↓
AIエージェント
↓ 小さな部品で見に行く(読み取り専用)
記録 ClickHouse / 分析 PostHog / グラフ Grafana
↓
答えがその場に出る = まわりの人にも見える
上から下へ読みます。人はふつうの言葉で聞くだけ。AI が小さな部品を使い、記録や分析を見に行きます。どれも「見るだけ」なので、データは壊れません。答えは Slack にそのまま出るので、まわりも気づきます。
Salesforce と比べる
大企業の Salesforce も、よく似た道具を作っています(出典)。似ているのは、失敗と正解の形です。最初に単体アプリを用意しましたが、使われませんでした。Slack に載せ替えたら、答えが完璧でなくても使われ始めた、と書いています。人が普段いる場所に置くと広がる。ここは Bold.org と同じでした。
違うのは、規模と作り込みです。Salesforce は専用のAI基盤を持っています。同じ質問を何度も走らせて、答えを確かめます。一方の Bold.org は、小さな部品と読み取り専用で軽くしました。土台の重さは正反対でも、結論は一致しています。2社で答えが重なるので、偶然ではないと私は見ています。
作者の反省
作者がいちばん効いたと振り返るのは、相手のAI知識を当てにしない、という点です。すごい機能をそのまま見せても、伝わりません。困りごとを一つ解いて見せると、みんなはすぐ試します。
ほかにもあります。手元のAIから社内ツールを安全に呼ぶ仕組みは、先に用意すべきだった。構成に凝りすぎず、単純なまま始めればよかった。他の人が機能を足す道を示せず、作者頼みになった。検証の基盤も作り込みすぎで、簡単な記録と権限確認で十分だった。どれも「先に土台、あとで中身」を戒める話です。
自分にどう関係するか
新しい道具を職場に入れたい人へのヒントです。立派なアプリや基盤を先に作らなくてよい、が持ち帰りです。今ある道具(チャットなど)の中で、小さく見える形にします。私の見方ですが、これは AI 以外の新しいやり方にも当てはまります。
今日覚えること
- 人が普段いる場所(チャット)に置くと、道具は広がる
- 土台の完成を待たず、小さく読み取り専用で始める
- 機能自慢より、困りごとを一つ解いて見せる
出典
- 原文: Orestis Ioannou(Bold.org、2026年)https://oioannou.com/blog/internal-company-agent-lessons/
- 突き合わせ: Salesforce(Horizon Agent の text-to-SQL 事例)https://www.salesforce.com/blog/text-to-sql-agent/
- MCPとは: Anthropic 公式 https://www.anthropic.com/news/model-context-protocol