TL;DR
- リセラー中の人の個人の感想です
- どんな需要があったのか?
- メインはVMware製品乗り換え需要。
- VMware製品乗り換え以外も結構あった。
- 他競合製品と関係は?
- Proxmoxは代替ではなく選択肢。使い分けが大切。
- パブリッククラウドと親和性は高そう。
- 来年以降はどうなりそうか?
- 既存契約が残っている数年間は需要はありそう。
- 健全な競争を期待
初めに
データ等に基づくものではなく、あくまでリセラー中の人の個人の感想です。
業界やProxmox全体を俯瞰しているものではなく、所属企業のProxmoxリセール事業が観測点です。
観測出来ていない場所でも様々な活用がされていると思います。
最近どんなことがあったのか?
2023年
BroadcomによるVMwareの買収が噂レベルだった頃、ギャンブルスタート的にProxmoxリセール事業を始めました。
この段階ではアーリーアダプターや元々Proxmoxユーザーだった方々(≒ファン層)からのコンタクトのみで、年内に契約はありませんでした。
そして11月、買収が成立します。
画像はLPのGoogle Analyticsですが、買収成立のちょっと後に爆発的にアクセスがありました。これが当時の状況を物語っていると思います。
2024年
年明けから断続的に問い合わせがありました。
徐々に販売実績は増えて7月にシルバー、12月にゴールドになったりとイベントはあったのですが、
買収が成立すると多くの企業・メディアなどがProxmoxを取り上げたため、先ほどのGoogle Analyticsには表現されません。
そういう意味では2024年にProxmoxが一般的になったのではないかと思います。
どんな需要があったのか?
リセール事業を通じてざっくり以下のような人達・場面で利用されたような認識です。
VMwareからの移行層
もちろん、8割近くはVMware製品からの移行層。
ちょっと細分化してみます。
購入出来ない層(小口顧客など)
小口顧客は見積依頼等しても回答をもらえない、というケースがほとんどです。つまり、買いたくても買うことが出来ません。
「Proxmoxなんて実績のない製品使う企業なんているの?」みたいなのを目にすることがありますが、そもそも購入したくても購入することすら出来ない人達がいることを知ってほしいです。
たまに「なんか見積依頼したけど回答が来ないんですよね~」なんてのほほんとしている人がいますが、それはもう来ないと思います…
小口故に評価環境もなかったり、フットワークも軽かったりで、既に本番環境で動いていたりします。
値上げ層
見積は貰えるがコストが5倍とか10倍とかになってしまいそうな層。
主な理由はもちろんコスト増だけど、今後のサポート体制、B社に対する過去のトラウマ等への不安もあったと思います。
見積を貰える程度にいっぱい利用しているので、いきなり全部をProxmoxに移行等ではなく、取り敢えず検証環境や影響の少ない環境で使ってみるというケースが多いです。
そういった環境なので、サブスクリプションは購入せずにNo-subscriptionリポジトリで利用してみる、というケースも多かったです。
購入しなくてもほぼ同じものを利用出来るのはProxmoxの良さが出ているかなと思います。
もちろん、問い合わせしたけどVMware続投というケースもあります。
その場合は、Proxmoxの見積を見せたら5倍・10倍見積もりが3倍ぐらいになったので…というパターンも。
ディストリビューター層(SIer・代理店等)
Proxmoxリセラーからサブスクリプションを調達し、ディストリビューターとして再々販ができないか?という層。
Proxmoxサブスクリプションは再々販が出来ないため、エンドユーザーとリセラー直接の契約が必須です。
そのため、代理店等は再々販が出来ないことを知ると諦めるか、自身がリセラーになるか、になります。
SIer等はエンドユーザーがProxmoxをリクエストされるケースも多く、
サブスクリプションはリセラー-エンドユーザー、SIはSIer-エンドユーザー、のように契約して導入するというケースが多いです。
無償版ESXi利用層
Proxmoxのサブスクリプションが安いとはいえ、今まで無償だったものが有償になった場合、組織内で承認を得るにはかなりハードルがあると思います。
なので、押し売りはせずに「No-subscriptionリポジトリでもいいので使ってみてください!」という感じになります。
個人的にはこの層に使ってもらえるようにコミュニティ活動等やっている部分はあります。
Nutanixからの移行層
値段を比較するとProxmoxの方が割安感あるので、移行したい人達もいます。
Nutanixからの移行となるとProxmoxはCephで構成することになると思いますが、HWコストが高くなり以外と割安感がなくなってしまう、という場合はあると思います。
この辺りはHWベンダーと連携して、いい感じの価格・構成を提示するように頑張っています。
ファン層
2023年からコンタクトを取ってくれている元々Proxmoxを活用していた人達、OSS関連やJPmoxs等のコミュニティ活動を通じてつながりが出来た層もいました。
サブスクリプションのリセールはほぼ関係なく、Proxmoxや関連する技術について語り合ったり、何か協業しようね!みたいな感じで盛り上がる感じの皆さん。
ビジネスは抜きにしてとても楽しいですし、励みになります。
たまにNo-subscriptionリポジトリを使い倒しているので、寄付だと思ってサブスクリプション買おうかな!というパターンもあります。
PMG層
Proxmox4兄弟(最近 PDMが増えた )の長男、Proxmox Mail Gateway。影が薄いですが需要はあります。
コスト面はもちろんありますが、Trend MicroのIMSVAのEOLSも影響していると思います。
他競合製品と関係は?
VMware製品の代替とばかり言われている気がしますが、Proxmoxという選択肢が増え、既存製品でフィットしなかった部分を補完する形になりそうという印象です。
VMware
コストは高くなってしまいましたが、Proxmoxにない機能も多く、VMFXのパフォーマンスや実績・ナレッジの多さ等、採用のメリットは多いと思います。
この辺りはProxmoxのテクニカルサポートやこの記事で書いた公式トレーニングのトレーナーも、それはVMwareの企業努力の賜物なんだから!と言っていることが多いです。
Nutanix
同じKVMベースなので比較しやすいと思いますが、現状のNutanixユーザー的には即座に乗り換え検討する程でもないのかな?と思っています。
ですが、Proxmoxが流行り、実績が増えると乗り換え検討も増えるかなと思います。
Hyper-v
接点がないです。
当初はもっとVMwareからの移行先として名前が上がると思っていましたが、全然話題を聞きません。
これは、Hyper-vを採用するシステムにおいてはWindowsで完結しているのではないかなと思います。
パブリッククラウド
他のオンプレミス仮想化製品よりも衝突が少なく、実は一番コラボレーション出来ている・相乗効果があると感じています。
Proxmox環境の用意が出来るまでの間、既存完環境からパブリッククラウドに移行して利用するというケースもあります。
Proxmox環境の目途が立つのが未知の状況で、使いたい時に使いたい分だけ使えるというのはまさにパブリッククラウドの良さが出ていると思いました。
Proxmoxとしても、PBSのRoadmapにもS3統合があったりします。
たまにオンプレvsクラウド!みたいな言葉も目にすることありますが、ハイブリットクラウドとして両方のメリットを享受するのがいいと感じます。
来年以降はどうなりそうか?
まだ乗り換え需要は数年続くと思います。
今年が契約の切れ目だった組織は乗り換えに動きましたが、来年以降が契約の切れ目のところも多いと思います。
また、現時点で検証などを行っているところが本格的に利用を始めることも考えられます。
界隈の今後はこうなってほしい。
健全な競争がされるといいな、と思います。
前述の通りに、10倍見積されているお客さんにProxmoxの見積もりを見せたら3倍見積ぐらいになった!という話もあるので、いろんな製品がしのぎを削る方がリセラーとしてはともかく、消費者としていいのかなと。
Proxmoxの今後はこうなってほしい
Proxmoxの明確な優位点はやはりオープンテクノロジーであることだと思います。
誰でも無料で利用でき、プロジェクトに参加することができ、ソースコードを読むことができ、技術的な理解を深めることが出来ます。
それにより、特定のベンダや製品に依存することを避けて、前述の健全な競争にも繋がると考えています。
なので、実際に商用利用するとかはともかく、Proxmoxに触れることで、関係するみんながいい感じ技術的な理解を深めてもらえることを願っています。
それでは皆さんメリークリスマス&よいお年を。