「ツール導入だけでなくカルチャー支援も」高生産性を実現するGoogle社内でのウェブアプリケーション活用方法とワークスタイルに迫る
コンシューマ向けWebサービスとしてはすっかりおなじみの、「Googleドライブ」「Googleドキュメント」などをはじめとしたGoogleのウェブアプリケーション。近年ではコンシューマ向けサービスだけでなく、これら各種アプリケーションを企業用途向けに統合した「G Suite」も、実に多くの企業によって採用されています。
特に「Googleハングアウト」を中心としたコラボレーション機能には定評があり、多くの企業がこれを活用することで社内外のコラボレーション活性化を実現しています。しかしその一方で、Googleハングアウト及びその周辺サービスは極めて機能が多く、かつ技術進化も早いため、どのように使いこなせばいいのか分からずにいる企業も少なくないようです。
そこで本記事では、G Suiteの開発・運用元であるGoogle Cloudの社内で、これらのアプリケーションをどのように使いこなしてどんな働き方を実現しているのか、同社でカスタマーエンジニアとして活躍する寳野さんにうかがいました。
目次
・Googleハングアウトを通じたコラボレーションが当たり前に
・AIの応用でさらに高度なコラボレーション機能を実現
・Googleドライブは「あえてフォルダ分けをしない」のがお勧め
・働き方を変えるにはツール導入だけでなく「カルチャー」の変革が必要
プロフィール
目次
Googleハングアウトを通じたコラボレーションが当たり前に
──Google社内では、やはり日々G Suiteを使って社員同士のコミュニケーションやコラボレーションを行っているのでしょうか。
寳野:はい。普段の業務では、G Suiteをフル活用しています。ブラウザだけで動作するクラウド上のアプリケーションだけでほぼすべての業務が完結するので、逆にPCにインストールするアプリケーションはほとんど使っていませんね。ただ、デベロッパーが利用する開発環境に関しては、例外的にインストールをするような IDE などのアプリケーションも使われていますが。
──コラボレーションツールとしては、やはりGoogleハングアウトが中心になるのでしょうか。
寳野:そうですね。例えば、今私たちがいる会議室に設置されているビデオ会議システムは「Hangouts Meet ハードウェア」というものなのですが、これはChrome OSをベースにGoogleハングアウト MeetやGoogle カレンダーなどと連携し、快適に利用できるよう作られています。単に高画質・高音質のビデオ会議が可能なだけではなく、ハングアウトが他のG Suiteアプリケーションと密接に連携することで、極めて優れた使い勝手を実現しています。
例えば、Googleカレンダーに会議の予定を入れると、会議に参加する人数や招待された人のいるオフィスに合わせた、最も最適な会議室が自動で予約されます。また、それだけではなく、カレンダーには会議に参加するためのURLが自動的に発行されて参加者に渡されます。参加者は、一般的なビデオ会議システムのように会議室を設定したり、ログイン・接続といった煩雑な手順を踏む必要はなく、ただURLをクリックするだけで会議に参加できます。
── 一般的なビデオ会議システムと比べると、かなりハードルが低いですね。
寳野:ハングアウトはビデオ会議システムというよりは、普段の仕事の中でごく当たり前に使われるコラボレーションツールという位置付けですね。例えば、Google社内の会議室では、ディスプレイとPCをつなぐケーブルはほぼ利用されていません。PCの画面を大型ディスプレイに映し出しても、リモートから会議に参加している人には見えませんから、その代わりにハングアウト上で参加者全員で資料を共有するようにしています。
──自宅や外出先など、リモートから会議やミーティングに参加する方は多いのですか?
寳野:生産性を向上させるという意味では、場所を問わず働けるリモートワーク環境は絶対にあった方がいいですから、そういう意味ではハングアウト Meetやハングアウト Chatは社内のコミュニケーション・コラボレーションにおいて欠かせないツールになっています。私もよく在宅勤務をしたり、お客様先からちょっと早めに直帰した際に、自宅からハングアウトを使って社内とつないで仕事をしています。
ただしGoogleは、リモートワークだけを推奨しているわけではありません。「社員にいかにオフィスに来てもらうか」という点にも力を入れています。例えば、オフィスの中にはお菓子が置いてあるスペースがあって、そこへお菓子を取りに来た社員同士が自然と顔を合わせてコミュニケーションが発生するようにオフィスデザインを心掛けています。ツールを使ったコラボレーションも大事ですが、それ以上に対面のコミュニケーションやコラボレーションを常に重視しています。
AIの応用でさらに高度なコラボレーション機能を実現
──ハングアウトは、ビデオ会議機能で互いに顔を見ながらコミュニケーションが取れる点が大きな特徴ですが、それに加えてGoogleドキュメントなどを通じてドキュメントを共同編集できる点も大変ユニークですね。
寳野:まさにこの点が、G Suiteのコラボレーションツールとしての最大の強みの1つだと思っています。例えばGoogle社内では、ミーティングの議事録をわざわざ作ることはありません。ミーティングでディスカッションしながら、そこで決まった事柄をその場でGoogleドキュメントに参加者が共同編集しながら書き込んでいくことで、ミーティング中に議事録を書き上げてしまうのです。これにより、会議が終わった後にあらためて議事録を作成する手間が不要になります。
また会議で決まったタスクは、その場でGoogleドキュメントのコメントに「アクションアイテム」として記述することで、しかるべき担当者にメールでタスクを自動的に割り振ることができます。単に会議そのものの効率を上げるだけでなく、そこで決まった事柄を素早く実行に移すことで、さらに生産性を上げることができるわけです。
──意思決定だけでなく、意思伝達の効率も上げるということですね。
寳野:その通りです。さらに言えば、近年のG SuiteにはAIの機能が多く組み込まれており、例えば先ほどのアクションアイテムもユーザーがコメントで明示的に指定するまでもなく、AIが自動的に「これはアクションアイテムだな」と判断して自動的に担当者に割り振ってくれる機能があります。アクションアイテムを割り振られた側も、複数あるタスクの中から、AIが「あなたが現在最も優先すべきタスクはこれではないですか?」とレコメンドしてくれます。(2019年5月現在、US English版のみ対応)
またGoogleスプレッドシートにも、データを入力すると、ユーザーがデータからどのようなグラフを作成したいのかを推測し、グラフの候補を提示してくれる機能が備わっています。右下に配置されている「データ探索」というボタンを押せば、こうしたグラフの候補が幾つか表示され、その中から自身で作成したいグラフを選択すれば自動的にグラフが作成・表示されるようになっています。
──AIを活用することで、G Suiteを通じたコラボレーションをさらに効率化しようとしているのですね。
寳野:はい。現在Googleでは「AI for Everyone」というビジョンを掲げていますが、今ご紹介したような機能はそれらのほんの一部に過ぎません。今やGoogleのあらゆるサービスにAI技術を活用しており、Googleの社員はそうした機能をフル活用することで日々の仕事のさらなる生産性アップを実現しています。
Googleドライブは「あえてフォルダ分けをしない」のがお勧め
──今までご紹介いただいたもの以外にも、G Suiteを使ってコラボレーションを効率化する方法やコツは何かありますか。
寳野:最近では、Googleドライブの機能がかなり進化しているので、ちょっと使い方を工夫するだけでかなり業務を効率化できると思います。個人的にお勧めなのが、あえて「ファイルを整理しない」という使い方です。クラウドストレージにファイルを保管する場合、一般的にはファイルサーバのように細かくフォルダを分けてファイルを整理した方がいいと思われがちですが、Googleドライブに限ってはその必要はないと思います。
──といいますと?
寳野:Googleドライブはファイルの検索機能が非常に優れているので、わざわざファイルをフォルダに整理しなくとも、検索すれば簡単にお目当てのファイルを探し出すことができます。ファイルの数が多いときは、多数のフォルダを辿るよりも、検索一発の方がはるかにお目当てのファイルに早くたどり着けます。
また、そもそも検索せずとも、目的のファイルに素早くアクセスできる方法もあります。例えばGoogleドライブには「クイックアクセス」という機能が備わっていて、ユーザーが直近アクセスしたファイルの傾向や、カレンダーに設定された予定などから、ユーザーが開こうとしているファイルを自動的に推測して、画面の上部に候補を幾つか提示してくれます。ファイルをフォルダに整理する時間があったら、こうした機能をどんどん活用して、本来の業務により多くの時間を使って生産性を高めた働き方をしてほしいと考えています。
──GoogleドライブとGoogleカレンダーが連携して、さらにAIの技術が加わることでこうしたインテリジェントな機能が実現しているのですね。
寳野:やはりアプリケーション間のシームレスな連携が、G Suiteの最大の特徴だと思います。さらには、G Suiteのアプリケーション間だけでなく、例えばGoogle Cloud Platformのデータ分析サービス「BigQuery」とGoogleスプレッドシートが連携して、BigQueryから抽出したデータをそのままスプレッドシート上に表示させるようなこともできます。もちろん、「Google Data Portal (旧Data Studio)」のようなBIツールを使って本格的な分析を行うことも可能ですが、やはりスプレッドシートは多くの方々にとって身近なツールですから、そこにBigQueryのデータを簡単に表示できるのはとても便利だと思います。
働き方を変えるにはツール導入だけでなく「カルチャー」の変革が必要
──一般の企業がGoogleのような働き方やコラボレーションを実現するには、ツール以外にはどんなことが必要になりますか。
寳野:ツールを入れるだけでは、Googleのような働き方を実現するのは難しいと思います。ツールと一緒に、組織の「カルチャー」も変革することが重要だと考えます。私が所属するGoogle Cloudでは、企業のお客様がGoogleのツールやサービスを導入・活用するお手伝いをするとともに、企業カルチャーの変革を支援するサービスも提供しています。
──具体的には、どのようなサービスを提供しているのですか。
寳野:例えば「チェンジマネジメント」という手法を使って、G Suiteを新たに導入するお客様の企業カルチャー変革を支援して、G Suiteのよりスムーズな導入や定着を支援するサービスを提供しています。また、Google発祥の、Webサービスの信頼性や安定性の維持を専門に扱う「SRE(Site Reliability Engineering)」というエンジニア職があるのですが、最近「うちでもSREの部隊を立ち上げたい」という相談をいただくことが増えてきました。そうしたお客様に対して、SREを立ち上げるにあたってどういったカルチャーやビジョンを持つべきなのかアドバイスしたり、実際にそうしたカルチャー変革を支援するためのサービスなども提供しています。
──やはりツールを導入するだけでは、企業の働き方を根本から変えるのは難しいのですね。
寳野:やはりツールを実際に使うのは人ですから、まずは人や組織が変わらない限り、せっかく導入したツールもなかなか生きてきません。Google Cloudでは、ツールやサービスだけでなく、人や組織といったソフト面での支援もさまざま提供していますので、興味をお持ちの方はぜひお問合せいただければと思います。
──ありがとうございました。
コラボレーションツールG Suiteを提供するGoogle。
AI・機械学習によってツールをバージョンアップし続けることで、それをGoogle社員が使いこなして生産性の高い働き方を実現していることが伺い知れました。
さらに、ツールを導入するだけでなく、使い手である人や組織のマインドも必要不可欠であること。ツール導入にあたっての組織のカルチャー支援活動にも取り組んでおり、自社の社員だけでなく多くの企業に生産性を高めた働き方を実現してほしいという想いを実感しました。
「Googleドライブ」「Googleドキュメント」などの各種ツール・サービスの最新情報や、それらを企業に導入するにあたっての企業カルチャー支援サービス、それに用いられている手法「チェンジマネジメント」についてもっと知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
G Suiteなどの最新情報が投稿される「Google Cloud Japan公式ブログ」はこちら
G Suiteについて
https://gsuite.google.co.jp/
https://gsuite.google.jp/setup/resources/change/
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https://www.cloudconnect.goog/docs/DOC-20688
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