デンソーのソフトウエアエンジニア事情についてQiita創設者の海野が聞いてみた

ソフトウエアの進化がありとあらゆる産業に大きな影響を及ぼす時代に差し掛かりました。

従来のルールをソフトウエアが壊す。技術者としてどの業界に身を置き、どの領域の担い手となるか。エンジニアリングの細分化も進んだだけに、キャリアの選択にも幅が広くなってきたと言えるでしょう。

人工知能、フィンテック、小売、次世代モビリティ。

「Dear Great Hackers」を提唱する『Qiita Zine』としては、これからテクノロジーの躍進が始まる領域で躍動するエンジニアに、現場の話を聞いてみたいと考えていました。

そんな中、先進的な自動車技術やシステムなどを、世界中の自動車メーカーに提供している、グローバルサプライヤーである株式会社デンソーの取材が決定しました。

なぜ、多くの企業がソフトウエアエンジニアの積極採用を行う中で、ハードウエアが主軸にあるデンソーを職場に選んだのか。2017年に新設されたMaaS領域を担うデジタルイノベーション室とはどんな位置づけにあるのか。そして、クルマ業界のソフトウエアエンジニアはどんな環境で働いているのか。

※MaaSとは:Mobility as a Serviceの略。クルマはもちろん、状況に応じた最適な移動手段の組み合わせを提供し、予約や決済など必要な手続きも一括して行う仕組みやサービスを指す。

MaaS開発部 デジタルイノベーション室に所属する石田晋哉さん、仲井雄大さん、根芝亮子さんに、Increments代表取締役社長の海野弘成が迫ります。

クルマから工場、EV充電スポット。多種多様なプロジェクト
デンソーにはMaaS領域でチャレンジするための近道がある
サプライヤーならではの膨大なデータ量
「健全な背水の陣」デジタルイノベーション室とはなんだ!?
次世代モビリティ領域への挑戦
海野の総括

プロフィール

石田晋哉(いしだしんや)
MaaS開発部 デジタルイノベーション室 インフラ&アーキテクチャー課
通信機器メーカーにて光・パケット通信ネットワークの制御・設計の研究に従事。2012年〜2014年Raytheon BBN Technologies客員研究員。2018年1月にデンソーに入社。デジタルイノベーション室で商用車向け車両管理サービスのスクラム開発に参加。秋葉原の同室第2拠点に移り、Kubernetesでインフラ開発中。

 

仲井雄大(なかいゆうだい)
MaaS開発部 デジタルイノベーション室 アジャイル開発課
2009年に新卒でデンソーに入社し、ディーゼルエンジンの制御システム構築に従事。2017年12月に社内公募でデジタルイノベーション室に異動。車両管理サービスの構築、次世代車内サービス開発に参加し、現在は社内工場向けサービス開発チームのスクラムマスターとして活動中。

 

根芝亮子(ねしばあきこ)
MaaS開発部 デジタルイノベーション室 アジャイル開発課
2011年にデンソーに事務系総合職として入社し、情報システム部(当時は情報企画部)に配属。基幹系のWEBシステムの企画・設計・開発に携わる。2018年11月に社内公募でデジタルイノベーション室に異動。EV(電気自動車)の充電スポット検索アプリの開発に参加中。

 

海野弘成(うみのひろしげ)
Increments 代表取締役社長/Qiita Zine編集長
1988年兵庫県生まれ。京都大学工学部情報学科卒業。プログラマとしてGoogleやはてなのインターンを経験し、在学中の2011年にプログラマのための技術情報共有サービス「Qiita」をリリース。大学卒業後の12年2月、Increments株式会社を設立し代表取締役に就任。プログラマ出身の経営者として、プログラマが成果を出しやすい環境や自立した組織づくりを推進。

クルマから工場、EV充電スポット。多種多様なプロジェクト

海野:皆さんはソフトウエアエンジニアということでお聞きしたいのですが、『Qiita』ってお使いいただいていますか?

石田:記事は少ししか書いてないですけど、ほぼ毎日見ています。

海野:ありがとうございます。直接ユーザーさんの顔を見れるのはやっぱり嬉しいですね。石田さんはデンソーに転職でご入社されたんですよね。

石田:はい。2018年1月にデンソーに入社しました。転職の動機としては、「エスノグラフィー」ですね。

海野:文化人類学などで使われる研究手法の「エスノグラフィー」ですか?

石田:そうですね。前職でSI事業に近いビジネスを担当している際に、エスノグラフィーについて学ぶ機会があり、詳しく調べていくうちに、自らユーザーの中に入り、自分の中の経験値を増やしていきたいと思うようになりました。そんな時に、デンソーの記事を読んで、これは面白そうだな、と。

実際に面接を受けてみると、私が持っている技術アセットに興味を持ってもらえましたし、これから新しいサービスをつくろうとしている。それなら、デンソーという会社で「エスノグラフィー」をしてみようという考えで入社しました。

※エスノグラフィーとは:ユーザーを「観察」して背景や価値観も含めて理解し、ニーズや問題を発見するために有効なマーケティング手法。そこから得られた発想をソフトウェア開発に活かし、サービス改善につなげる。もともと、民俗学、文化人類学などで使われる研究手法の1つで、近年はマーケティング分野に応用されている。

海野:入社してそろそろ1年が経ちますがいかがですか?

石田:私が配属になったデジタルイノベーション室は、“リーンスタートアップ”や“アジャイル開発”を取り入れる等、社内では異色な部署だと思います。

業務については、クルマのサービスは生活に馴染んでいるものなので、イメージしやすいです。スマホのアプリをつくるときって自分で触ってみて、使い勝手をテストしますよね。そういう感覚でクルマに関するサービスは想像しやすいということが分かりました。

デンソーは、自動車部品メーカーとして60年以上の歴史と培ってきた技術や経験があるので、クルマの中のノウハウは豊富にあります。クルマに関連するサービスをつくるのであれば、いい環境だと思いますね。

海野:ありがとうございます。デジタルイノベーション室って今、どんなチーム体制で動いているんですか?

仲井:チームとして稼働しているのは5チームですね。構成としてはプロダクトオーナーとスクラムマスターとデベロッパー。大体7〜9名くらいが1つのユニットとして、動いています。それぞれのチーム毎にプロジェクトを抱えていて、リリースから運用までを行っていますね。また、技術基盤チームとしてスクラムとは別に動いているチームもあります。

海野:ジェフ・ベゾスが提唱している「2枚のピザ理論」の人数がベースになっていそうですね。では、具体的にどのようなプロジェクトが動いているのでしょう?

仲井:私が担当しているのはデンソーの工場向けサービスです。いわゆるIoTの領域ですね。工場では頻繁に製造ラインに新しい人が加わることがありますが、できる限り早く正確に作業し、生産効率を上げたいという要望があります。そこで、熟練した方の作業と新しい方の作業相違点を画像認識で分析する教育システムを開発しています。

石田:私は仲井が話したようなシステムに必要なデータを集めて分析するための基盤を開発しています。

海野:人工知能に取り込むデータは、工場のラインや人が装着するセンサから収集しますよね。そうしたデータを収集するネットワークや蓄積するデータベース、さらにデータベースから抜き出して処理するための仕組みまでを用意していると。これはインフラがかなり大掛かりになりそうですね。
根芝さんはいかがですか?

根芝:私はEVの充電スポットを検索するアプリを開発しています。これは実際に世に出すというよりもユーザーインタビュー用として実用されるものになります。目的としては、快適なEVライフを送るためにユーザーがどのような機能を必要としているのかを検証するためですね。

BtoBの会社でありながら、EVの充電スポットを検索するアプリの開発を担当するなどBtoBtoCの領域に携わっている

EVに乗っているユーザーは何に困っているのかという課題やアプリへの要望をヒアリングし、スピード重視で実装して、実際に使っていただいた感想を聞いたりしています。

海野:EVの充電スポットでアンケートをする際にも、アプリがないとほしい情報が収集できなかったりしますものね。同じデジタルイノベーション室でも本当に全然違うプロジェクトが動いているんですね。

石田:他にも例えば社有車に後付で車載用の加速度センサやカメラなどを取り付けて、現在の走行位置やドライバーの運転技量の判定、車両の予約システムなども開発していますよ。

海野:僕も最近引っ越してクルマに乗る機会がすごく増えたんですけど、使えるデータがたくさんあるんだろうなって、考えながら乗っているケースが多くて。どこに誰が居るのか?だったり何キロ位出しているのか?

デンソーにはMaaS領域でチャレンジするための近道がある

海野:お話を聞いていて、一般的なWebサービスやアプリに閉じた開発というよりも、ハードウエアや画像データを駆使して工場での生産性を上げるなどソフトウエアの枠を超えたチャレンジが特徴的ですよね。こうした仕事に携わっている中で魅力に感じていることはありますか?

仲井:デンソーはモノづくりの会社なので、ECU(Electronic Control Unit)のハードから搭載されている制御ソフトまで開発しています。

※ECUとは:おもに自動車に搭載される電子制御ユニットのこと。コンピューターとその周辺機器(通信モジュールなど)から構成される。

海野:クルマに関する情報が大量に詰まっている制御ソフトと考えると、とてつもない価値がありますね。

仲井:その価値を活かしながらソフトウエアサービスをつくることができるのは、デンソーにとっての強みであり、私が部署を異動してまで、挑戦してみたいと感じた点でもあります。

また、自動車部品という人の命を預かる製品をつくる会社ですので、品質へのこだわりはとてつもなく強いです。アジャイル開発では根本的な改善活動が必要不可欠です。もともと根底にある、このマインドを持って新たな開発に挑むわけですから、こうした改善に対する考え方は、いいシステムづくりにつながっていると思いますね。

モノづくりの強みを活かして、ソフトウエアサービスの開発に挑戦できる

海野:確かにハードウエア開発をしていると、品質が最も優先されるべきところですよね。ちなみにクルマの中に蓄積されているデータを活かして、こういったサービスをつくりたいというアイデアは実際にチャレンジできたりするんですか?

仲井:はい。MaaSという大きな領域の話にもなるのですが、正直、日本国内ではまだ草創期という段階なので、アイデアが必要なフェーズだと思っています。

海野:自動運転はさておき、車載のデータを活かしたサービスという意味だとそう多くはない印象があります。デンソーが保有するデータやノウハウを活用して、新しいものを立ち上げられる環境だということですね。

石田:そうですね。デンソーの部品は多くの自動車メーカーに採用されているので、色々なデータを収集できる可能性があります。私はデータ・サイエンティストではないので、分析は担っていないのですが、掘るポイントは大量にあると思いますね。

また、案件の一つひとつが大きいですね。実際に集まるデータも膨大ですし。基盤も大規模に組まなくてはいけない。インフラエンジニアとして大きなチャレンジができると感じていますね。

海野:毎日動いている何万台、何十万台のクルマからデータが集まってくるとなると、捌くだけで大変なイメージがありますね。

石田:はい。他には工場ですね。デンソーは国内だけで12の製造拠点があり、約3万人の従業員が働いています。先程お話しましたが、生産ラインに設置している装置からデータをはき出して、IoTゲートウェイを介して集まってきます。特に高速で生産している工場はデータ生成頻度が高いわけです。

また、リアルタイムで何か分析がしたいと思ったときには、そういった仕組みを構築する必要もあります。MaaS領域ではクラウド前提になります。そもそもデータをクラウドに上げきれないケースもありますので、エッジコンピューティングの話も出ていますね。オンプレからパブリッククラウドまで色々な選択肢の中で、頭を使うのでいい経験が積めています。

海野:それは面白そうですね。最近だとクラウドに移していくのが一般的な中で、選択肢が広いのはチャレンジしがいがあるというか。実際、使われている技術についても聞いてもいいですか?

石田:OSはLinuxでミドルウエアはOSSがベースになっているので、割と汎用的だとも思いますよ。

海野:大企業で歴史のある会社さんだと、長年受け継がれてきた独自のやり方などがあるのかなと思っていたのですが、意外とそうでもないんですね。開発のフローややり方についてはいかがですか?

根芝:スクラムやアジャイルのフレームワークに沿ったベースは一緒ですが、チーム毎に独自ルールがあります。

仲井:スクラム開発はあくまでもフレームワークです。最低限のルールがある中で、どうすればチームが成長できるのか?という視点は持っています。ここにチームそれぞれの個性が出るのだと思います。

海野:なるほど。共通化をしている利点として、学びの共有や経験が蓄積されていくのは素晴らしいですよね。新人が入ったときにも溶け込みやすいですし。ちなみに、チーム間での情報共有などはどうされているんですか?

仲井:コラボレーションツールを活用したり、Wikiをつくったり情報共有は盛んに行っています。また、勉強会を適宜開催しています。

海野:なんだか予想していたデンソーさんのイメージと違いますね(笑)。MaaSやIoTのスタートアップにいる方とお話している感じになってきました。

サプライヤーならではの膨大なデータ量

海野:少し話題は変わりますけど、デンソーは「Embedded Technology 2018/IoT Technology 2018(ET2018)」で2025年を目標に開発を進めているCaaS/MaaSの基盤技術を展示しましたよね。

こうした動きって、これまで自動車メーカーや海外のスタートアップが中心になって牽引してきたイメージがあったんです。サプライヤーであるデンソーがこういった動きを見せることって、中の人としてはどんな強みがあると感じていますか?

仲井:世界中の自動車メーカーに部品や制御ロジックを提供させていただいているおかげで収集できるデータ※が強みになると思いますね。
※サービスステーション等で、所有者の同意を得たうえで車両データを収集

海野:確かに膨大なデータをベースに、アイデアを組み合わせてサービスをつくるのはエンジニアの醍醐味ですよね。自動車から集まったデータを駆使してリリースされたサービスにはどんなものがありますか?

石田:運転力の診断システムなどでしょうか。既存の車両に後付で実装できるような車載システムの調整が最終段階に入ってきました。

これは、急発進していないか?とか発進に所定の動作をしているのか?などが判定基準に盛り込まれてきます。危険な運転を繰り返す運転者への気づきを促せるような仕組みになっています。

ドライブレコーダはドライバーが何をしたのか?というデータが蓄積されますが、このシステムではほぼリアルタイムに状況が把握できるようになりますね。

海野:リアルタイムでデータが集まってくるのは大きいですね。

スーツではなく、カジュアルな服装で開発に取り組める

石田:そうですね。集まってきたデータを分析して、車両や人に対してどうアクチュエートすればよいか考えるわけです。例えば、ドライバーの運転状況を把握することで、未然に防げる事故やトラブルもたくさんあるでしょう。社会的意義のあることができると思っています。

海野:社会性ありますね。僕、実は最近までクルマの運転をできるだけしたくないと思っていたんですよ。やっぱり他の乗り物と比較すると、リスクが高い乗り物じゃないですか。もちろん、昔に比べると安全装置などの技術も進化しましたし、軽減されている印象はあるんですが。まだ、発展途上感があるものだというイメージが僕の中にはあって。

ただ、自動運転も含めてですが、そういった進化の過程にある領域で技術を活かすことって、非常に意味のあることなのではないかと思うんです。

仲井:自動運転の世界はいつか到来すると私も思っているのですが、一方で人による管理も重要だと考えています。

石田:まだこれはデモレベルですけど、コンテナを用意して、クラウドからデータやアプリケーションをクルマ側にインストールするという仕組みにもチャレンジしています。

海野:『Tesla』みたいな。

石田:ええ。購入後のアップデートですね。クルマのコンピューティング基盤を活かして、インフォテインメントもそうですが、適宜必要なサービスを車内に対して提供する仕組みつくったりもしています。

「健全な背水の陣」デジタルイノベーション室とはなんだ!?

海野:ちなみにデジタルイノベーション室って社内から見たらどんな位置づけなんですか?

根芝:2017年4月に立ち上がった新しい組織で、他部署にいた私からすると不思議な感じがする部署に見えました。ちょっとこれまでのデンソーと違った取り組みが始まるのかなって。

仲井:私も公募で異動してきましたが、デジタルイノベーション室を紹介する資料を見たときは正直なところよく分からなかった。

一方で、ハードウエアの領域で実績を出してきたデンソーが新しいことを始めることは理解できました。
海野:何かが起きる。その予感だけでディーゼルエンジンの制御システム開発から異動したってすごいですね。
実際、デジタルイノベーション室で働いてみていかがですか?

石田:専門外のところまで自分で学ぶ必要がないというところがいいですね。例えば、あるデータが取りたいとなったときって、車載器が必要ですよね。じゃあ、車載器ってどうつくればいいのか?相当ハードルが高いわけですよ。つくるだけじゃなくて、取り付けるところまで行わなければいけません。

スマホアプリの場合は手元のスマホで試せますけど、こういったケースの場合は自分でクルマを買ってきて、バラして車載器をつけるところから始めるのかと思うと、気の遠くなる作業ですよね(笑)。

デンソーには車載器領域のエキスパートが大勢いますので、依頼をすれば実行まで伴走してくれます。だからこそ私たちはクラウドを使ったソフトウエア開発に集中できている。

海野:プロフェッショナルの力を借りることができると。

石田:「クルマを運転しているときに思いついた、いいアイデア」さえあれば、デジタルイノベーション室と事業部がコラボレーションしたチームが結成されます。いわゆる古き良き会社みたいなイメージがデンソーにはあるかもしれませんが、もともと「変化を先取りし、先進的な新しい価値を世に生み出していく」という考え方はとても強いです。

根芝:デジタルイノベーション室が誕生してからそういった動きが活発になったような気がしています。

石田:楽しいことをやりたいという方向で話がまとまり、チャレンジする。そんな組織だと思っていますよ。

石田:デンソーは会社が大きいので、安心感があります。もし、これがスタートアップであれば一つの失敗が企業としての致命傷になりえることもあります。だからといって安易に失敗してもいいという意味ではないのですが、スタートアップのような環境の中で、圧倒的なリソースを駆使して新しいサービスがつくれることに感謝しています。デジタルイノベーション室としては、自分たちでサービスをリリースして運用し続ける責務を感じています。

健全な背水の陣で働ける職場は楽しいです。

海野:デジタルイノベーション室のオフィスを見てみてもスタートアップ感がありますが、もともとそういった意図で創設したチームなのでしょうか?

海野の後ろの壁一面にユーザーストーリーやタスクの付箋やメモが貼られており、業務の情報や課題共有のツールとして使われている

石田:室長の成迫(デジタルイノベーション室 成迫剛志さん)が開発・実装、改善サイクルを高速で回す社内スタートアップのようなチームを想定してつくったと聞きました。

海野:中国やシリコンバレーの企業がスタートアップを買収するという事例はよく見ますが、デンソーは社内からもそういった流れをつくったということですね。

次世代モビリティ領域への挑戦

海野:では、最後にQiita Zineの読者にメッセージをお願いします。

仲井:クルマ関連の開発ってウォーターフォールできっちりつくっていくイメージがあると思うんです。特にデンソーのようなサプライヤーの場合、メーカーさんに言われたものをつくるのが仕事であるみたいな。

ただ、デジタルイノベーション室はそういったイメージとは真逆に考えていただいた方がいいかもしれません。スマホアプリやWebサービスのスタートアップと同じようにまず、リリースしてみてユーザーの反応を見てスピーディに改善・改修していく。

クルマの運転中や電車での移動中に「何か面白いことができるのではないか」、「不便な状況を変えることができるのではないか」と考えている方には、それを実現できる環境だと思います。

根芝:デンソーってBtoBの会社ってイメージですよねその中で、BtoBtoCの領域を担っているのがデジタルイノベーション室なんです。私はまだ配属されて日が浅いのですが、色々な発見があって日々楽しいです。

例えば、EVに乗っている方は長距離走行するときに、計画的に充電しないと途中でクルマが止まってしまうんですよね。私もEVが充電後何キロ走行できるという知識はあっても、その裏側にある課題までは全然考えたことはありませんでした。

そういったユーザーの課題を解決するような仕事がデジタルイノベーション室にはあると実感しています。

石田:デジタルイノベーション室は、なんでもできる部署だと思っています。実は、私自身クルマ業界に絞って転職活動をしていたわけでもなくて。骨を埋める覚悟で会社を選ばなくちゃいけないとなると、及び腰にもなると思うのですが、そんなのに悩んでいる時間がもったいない。だからこそ、楽しそうなことができる会社で働くって大切なことだと思いますよ。

クルマのおもちゃなど、部屋のそこかしこにほっこりするアイテムが

海野の総括

顧客とのつながりや重要なデータを持っている段階からスタートできる。つまり、実現したいことの土壌が整った状態から物事をはじめられるのは、大きなアドバンテージがあると感じました。ベンチャーはゼロからの積み上げで事業を起こすわけですが、各企業との関係づくりなど、付属する業務も少なくありません。
本来エンジニアがやりたいことってデータを駆使して、世の中を変えることだと僕は思っています。スタートダッシュも切りやすく、ショートカットもできる。ベンチャー的な身軽さと大企業の強みを持っているデンソーのデジタルイノベーション室は非常に面白い環境だと思いました。僕もクルマに乗っているとアイデアが浮かんだりすることは多々あるので、そういったものをお持ちの方は一度話を聞いてみるのもありだと思います。

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デンソーのデジタルイノベーション室についてもっと詳しく知りたい方はこちら

デンソーのMaaS特設サイト
https://www.denso.com/jp/ja/innovation/technology/maas/

〈ライター:川野優希 撮影:赤松洋太〉

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