企業のデータ戦略実行と基盤構築をスピーディーに実現。Hitachi Intelligent Platformのエンジニアがめざす世界観とは

世の中でDXの必要性が唱えられるようになってから相応の時間が経過してきた印象ですが、なかなか思うように進んでいない会社が多いという話をよく耳にします。中でも、自社が保有するデータの利活用についての課題が根深く、それゆえにDXプロジェクトの「はじめの一歩」がそもそも上手く踏めていない、という悩みを口にする事業担当者の声が多い印象です。

今回はそんなデータの利活用において、株式会社 日立製作所(以下、日立)がこれまで培ってきた事例やノウハウを結集したソリューションプラットフォーム「Hitachi Intelligent Platform」について伺いました。
Qiita Zineではこれまでも、Lumada Solution Hubのような同社の事例/ノウハウを集結させた取り組みについて取材してきましたが、今回のHitachi Intelligent Platformは具体的に顧客のどのような課題を解決し、どのようなアプローチでDXを実現させるものなのか。

同プラットフォームの設計からデリバリまで広く携わる日立のSE3名に、じっくりと聞いてきました。

* 記事の内容は取材当時(2024年2月)のものです。

プロフィール

細矢 つかさ(ほそや つかさ)
株式会社日立製作所
クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット マネージドサービス事業部
デジタルサービス本部 デリバリ&データプラットフォーム部 技師
2012年、日立製作所に新卒入社。大学でインタラクションデザイン及びハプティックデバイスの研究に従事した後、日立にてビッグデータのリアルタイム分析基盤などの開発に携わる。その後、同製品を活用したIoTデータ分析サービスの提供開始に合わせてデータエンジニアとしての立場からDXプロジェクトを複数担当。またAI領域の製品開発に携わりながら、2023年に現在の部署に異動してからはDXに伴う「Hitachi Intelligent Platform」ユースケースの開拓やアプリの開発提案なども担当している。

 

真島 俊亮(ましま しゅんすけ)
株式会社日立製作所
クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット マネージドサービス事業部
デジタルサービス本部 デリバリ&データプラットフォーム部 技師
2014年、日立製作所に入社。オフィスや農業関連のセンサーなどからのデータを収集・活用するM2M事業の立ち上げを経験した後、2018年より産業セクター関連の事業を担当、主に製造業に対するDX/IoTプロジェクトの推進に従事。2022年11月には、製造業/社会インフラ分野を中心とする企業向け「Hitachi IoT Platform for industryクラウドサービス」を立ち上げ、また2023年9月には業種業態を問わない形にリブランドした「Hitachi Intelligent Platform」の提案やSIを推進、現在に至るまでPMもこなすSEとして活躍する。

 

橋本 弾(はしもと だん)
株式会社日立製作所
クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット マネージドサービス事業部
デジタルサービス本部 デリバリ&データプラットフォーム部
2019年、日立製作所に新卒入社。入社時よりデータの利活用プラットフォームの設計・開発に携わっており、大手クライアントのDXプロジェクトにおけるインフラ担当として、クラウド技術及びマネージドサービスを活用した運用負荷低減のプラットフォームの開発を進めている。

速度重視で、各社が抱えている課題に適切なプラットフォームを構築していく

――まずは皆さまの普段のお仕事内容について教えてください。

真島 : 私たちが所属しているデリバリ&データプラットフォーム部は、基本的にはお客さま向けにシステムを設計開発し、インテグレーションしていくところになります。その中でも私たち3人は実行部隊として、対顧客折衝から開発に近いところまでを担当しています。私と橋本さんは同じチームに所属していて、私は主にマネジメントを中心にプロジェクトを支援する立場として携わっており、実際の現場のハンドリングに関しては基本的に全部橋本さんにお任せしているという役割分担になります。

細矢 : 私たちのチームは、お客さまに提案するための戦略や、DXの構想策定からアプリケーション開発、基盤提供、運用までをワンストップで提供する「Hitachi Intelligent Platform」の機能面について考えるような役割を担っています。

チームが分かれているとは言え、お客さまとのプロジェクトに応じて必要な人を都度アサインしていくような形で運用されている組織になります。ですからチームごとの傾向はあるものの、基本的にはみんな、データを利活用してのDXプロジェクトの推進/支援を生業としています。

――今おっしゃったHitachi Intelligent Platformとは、具体的にどのようなサービスですか?

細矢 : これまで日立が多様なお客さまとの協創を通じて培ってきたDXのノウハウや事例、強化した技術・製品などの資産を集約し、1つのブランドとして統合したものになります。サービス提供のフェーズとしては大きく3つに分かれていて、Plan(戦略策定・計画)、Build(設計・構築)、Manage(運用)のいずれかからご支援をスタートさせます。

――例えば一番左の「Plan」から入るお客さまは、どのようなお悩みを持っているものでしょうか?

細矢 : DXをやりたい、もしくはやらないといけないけれど、そのノウハウや進め方が分からないというケースが多いです。そのようなお客さまに対しては、どのようなステップでDXを進めていくのかという構想策定の部分から、これまでの日立の事例を参考にしながら、コンサルティングサービスをご提供しています。

ある程度構想が描けてきたら、今度はそれを実現するためのデータ基盤である「プラットフォーム」の構築を進めていきます。この際に活用するのがHitachi Intelligent Platformです。お客さまへの提供を想定した様々な部品や、データをつなげるための基盤があらかじめ用意されているので、それらを活用しながら速度重視で、各社が抱えている課題ごとに適切なプラットフォームを構築していきます。それに付随して、必要なデータマネジメントシステムやアプリケーションなどをご用意し、サービスイン後はお客さまが本業に集中できるよう、マネージドサービスとして運用を引き続きお受けするという流れになります。

――DXの必要性が唱えられるようになってから相応の時間が経過していると思うのですが、それでも企業がDXの進め方に苦慮しているのは何故なんでしょうね?

真島 : 技術の観点以外にも様々な要因があるとは思いますが、人財の観点でお伝えすると、DXの現場に入った経験のあるエンジニアやPMが単純に少ないという問題は、大きくあると思います。

当然ですが、ご相談いただくお客さまは基本的に何かしらの経営課題があって、そこに対して複数の対応すべきキーワードが仮説としてありながらも、それらが数珠繋ぎにはなっていない状況であることが多いものです。だからこそ、私たちの知見を活かして「そもそもどうしたいのか」をクリアにしていくことへのニーズが高いんだと感じます。場合によっては、最初に複数日にわたるワークショップを開いて課題を深掘りしていく、というようなことも行っています。

製造DXからスタートし、最近では環境DXや保守DXの引き合いも増えている

――これまで日立さんを何度も取材してきた中で、Lumada Solution Hub(以下、LSH)というDXのためのプラットフォームも展開されているかと存じます。このLSHとHitachi Intelligent Platformの違いを教えてください。

真島 : LSHは、基本的に対象とするシステムレイヤーやお客さまの業種業態を絞っておらず、日立のあらゆる事例とノウハウを集約させたプラットフォームという認識です。

* Lumada Solution Hubについては以下の記事もご参照ください。
▶︎ソリューションやノウハウを再利用してDXを加速させる!日立のLumada Solution Hubがめざす世界観とは

真島 : 一方で私たちが展開しているHitachi Intelligent Platformは、基本的にはデータ基盤を軸にDXを進めるためのソリューションになります。
もともとは、2022年11月に製造業/社会インフラ分野を中心とする企業向けに「Hitachi IoT Platform for industryクラウドサービス」という名称からスタートしたもので、そこから業種業態を問わない形にしたいという思いから、2023年9月に「Hitachi Intelligent Platform」へとリブランドさせたという経緯があります。

――なるほど。最近では製造業/社会インフラ分野といった産業領域向け以外の引き合いも増えてきたと。

真島 : そうなんです。例えば最近では、カーボンニュートラルを推進するためのIoTプラットフォームの構築(環境DX)や、データ駆動型の研究開発の効率化(研究DX)、さらにはシステムの保守業務の効率化・合理化(保守DX)といった領域でのお声がけが増えている状況です。

――保守業務のDX。これから担い手が少なくなっていく中で、需要が高まっていく気がします。

真島 : おっしゃる通り、中長期的なスパンで危機感をもって導入される企業さまが多い印象ですね。ある種、属人的に熟練の担当者が保守運用業務を一手に担っていたことで、知見やノウハウが企業内で十分に溜まらないまま、引退されたり入れ替わったりするリスクを見越しての保守DXに着手されるケースが多いと思います。

細矢 : ここは特に注力していきたい領域の1つなのですが、私の印象として、まだまだ経営層へ導入のメリットを伝えきれていないなと感じています。現場課題の解決はもちろんですが、それに加えて、経営課題を解決する価値を経営層に届けることも、私たちの仕事だと捉えています。

――細矢さんはこの辺りのアプリケーションサービス全般の構築にも携わっているんですよね。

細矢 : はい、大きくは2つの軸で活動しています。1つは、前身のサービスから積み上げてきた製造業DXの知見/ノウハウを強化して他業種に展開していくという活動です。そしてもう1つが、今お伝えしたような「〜DX」のカテゴリ/メニューを増やしていくというものです。特に後者については、今はニーズ調査を中心に進めていまして、お客さまのニーズを特定できた段階で、IoTコンパス(現場をデジタルツイン化するIoTソリューション)といった他の日立製品を組み合わせながら他チームメンバーとも協力してサービス構築を進めています。

* IoTコンパスについては以下の記事もご参照ください。
▶︎業務プロセスに着目したデジタルツインで製造業DXを加速!日立のデータハンドリング技術がもたらす未来とは

――製造業DXの知見/ノウハウ強化と、DXカテゴリの拡充。どちらのウエイトがより大きいのでしょうか?

細矢 : 2024年度については前者の取り組みに重点がありますが、中長期的には後者に力を入れていくという感じですね。どのレイヤーにどのような機能をつけるのかの交通整理をしながら進めていくので、結構時間がかかることもあって、中長期スパンで成長させていくという想定です。

アプリケーションレイヤーは、ユースケース含めて益々拡充していきたい

――具体的な事例も教えていただきたいです。実際に現場のハンドリングをされている橋本さん、いかがでしょうか?

橋本 : サントリー食品インターナショナル株式会社(以下、サントリー食品)さまとの協創プロジェクトは特に面白い現場でした。2021年5月に稼働開始した「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」でのスマートファクトリー構築プロジェクトだったのですが、「データ科学の活用」「人間中心のモノづくり」「進化し続ける工場」という3つのコンセプトを軸に、私の方ではIoT基盤の部分を担当しました。(* プロジェクトの詳細はこちら

IoT基盤を活用した次世代ファクトリーモデルの概念図

――まさにOT(Operational Technology)とITの融合という、日立さんが得意とする領域だと思うのですが、どのようなところがプロジェクトを進めるにあたって難しかったですか?

橋本 : クラウド上でIoT基盤を構築するというところが特に大変でした。当時はまだ、日立内にクラウドの知見やノウハウがそこまで溜まっていないという段階だったので、従来型のオンプレミスからクラウドへと切り替える部分は手探りなところも多く、社内外の様々な人を巻き込みながら進めていきました。
扱うデータ量が非常に多く、流通するデータのリアルタイム性を確保するためにも、連携のインターフェース部分を作り込むところが大変でした。

――時期的に、まだHitachi Intelligent Platformや、その前身のHitachi IoT Platform for industryクラウドサービスが構築されていない時期ということですね。

橋本 : そうです。当時は、とにかく社内外の事例をかき集めて来る必要があったわけですが、その頃に比べると、今はプラットフォーム上で検索することで適切な情報にアクセスできるので、だいぶ楽になったなと感じています。

――皆さまとしては、今後どのようにプラットフォームを進化させていきたいとお考えですか?

橋本 : 〜DXのようなアプリケーションレイヤーは、ユースケース含めて益々拡充していきたいですね。あと、プラットフォームの価値をもっと伝えていきたいと思っています。データマネジメントやセキュリティ周りは、マネージできて当然と思われることが多いのですが、コスト削減などのメッセージ含めてもっと定量的に分かりやすく発信して展開していくことが目下のミッションと捉えています。

真島 : 月並みではありますが、お客さまに喜んでもらえるようなプラットフォームにすることですね。そこは立ち上げたときから一貫して変わらない思いとして持っていて、生みの親という立場から愛着もあるので、しっかりと育てていきたいと考えています。

提供サービスに関しては、それこそ話題になっている生成AIや、ラボオートメーション、マテリアルインフォマティクスなど、新しい技術やトレンドを取り込んでいくことが大事だと思っています。その活動の一環として、プラットフォームの機能として新しく立ち上げようとしているものもあるので、益々新しいことにチャレンジしていきたいところです。

細矢 : 私は、Hitachi Intelligent Platformのサービス提供フェーズの中でも特に「Manage」に注力したいと思っています。Hitachi Intelligent Platformの大きな軸がマネージドサービスということもあり、お客さまが本業としてやりたいことに注力するためのSaaS型サービスを強化することで、結果としてお客さまのビジネスも伸びていくだろうと感じています。

常に情熱をもって仕事に取り組んでいたい。そうすることで仕事にもロマンが持てる

――働く環境として、日立さんならではの魅力についても、皆さまの考えを教えてください。

橋本 : これだけの規模の会社ですから、社内に様々な分野の専門家がいて、その方々に教えてもらいながら自分なりのやり方を身につけていける点がすごく良いなと感じています。特にコロナ禍を経てチャットでのやり取りが増えたので、より気軽に聞けるようになったと思います。

真島 : たしかに、人数が多いのは強いですよね。詳しい人がいないか探したら、だいたいは社内のどこかにいますからね。この人がプロジェクトに必要だと思ったら、すぐにアサインできる文化も良いなと思います。

あとは、日立というブランドも強みですね。日立入社前に、学生アルバイトで、ある会社の製品の営業をしていたことがあるのですが、よほどモノがよくない限り、なかなか話すら聞いてもらえませんでした。ですが、「日立の者です」と言ってアプローチすると、それだけでお客さま側が耳を傾けてくれるわけです。プロダクトの新規立ち上げをしているものとして、すぐに入り口に立てるのは大きな強みだなと思います。

細矢 : 私は、やりたいといったことをやらせてくれる組織であるとも思っています。異動前の開発部署時代は海外製品や新規サービスの立ち上げに携わらせてもらいましたし、今もHitachi Intelligent Platformに関連した業務の他に、全くの別件で日立全体を横断した生成AIの取り組みにも携わらせてもらっています。やりたいと思ったところに自然と向かわせてくれるような土壌があると思っていて、それも、大きな会社で様々な仕事があるからこその選択肢の広さだと感じています。

――今後の皆さまのキャリアイメージとしてはいかがでしょうか?

橋本 : 引き続き、新しい技術に携わりながらやっていきたいと思っています。運が良いことに、現在は最先端のクラウド領域に携わることができているので、中長期的にマネジメントの側面が増えていったとしても、しっかりと技術を深めたいと思います。

真島 : ポリシーとしては、とにかく楽しいことをやっていきたい。これに尽きます。正直、つまらなかったらいつでも辞めようと思っていたのですが、結果として10年続けています。日立での取り組みが飽きないということもありますし、ここまで一緒にやってきた社内外の方々の期待に応えたいという思いもあるので、引き続き立ち上げに携わったHitachi Intelligent Platformを成長させていきたいと考えています。

細矢 : 具体的なキャリアパスではないのですが、常に情熱をもって仕事に取り組んでいたいなといつも思っています。以前、開発部門の部長とお客さまのニーズや機能に関する話をしていたときに「それやりたい!」「それができるとこういう世界が来るよね!」「今度現場に呼んでよ!」などと、非常にポジティブなお言葉をいただいて、それにすごく感動したんです。そのように、めざすべきビジョンに熱意を持っていると、仕事にもロマンを持てるなと。私も、そのように熱意を持って働きたいと思っています。

――ありがとうございます。それでは最後に、皆さまが今後一緒に働きたいと思う人物像について教えてください。

細矢 : 今の話に続きますが、熱意を持った人と働きたいですね。技術に対する熱意はもちろん、将来像やビジョンに熱意を持っている方と、その実現に向けて一緒に働きたいと思います。

橋本 : やりたいことに向かって、自主的に取り組める/動ける人が良いです。お互い勉強になるし、切磋琢磨して成長しながら、お客さまに価値提供ができますからね。実際、今のチームでも後輩からの刺激が非常に大きく、日々楽しいなと感じているので、そのようなメンバーが増えてくれたら良いなと思います。

真島 : 面白い人たちとご一緒したいです。仕事ができる/できないは当然判断軸になる部分はあるとは思いますが、それ以上に「長くやっていける人」が良いです。長くやっていくには、その人自体に興味を持てないといけないので、思わず深掘りしたくなるような面白い人であってほしいです。
好きの逆は無関心という話があるように、人間関係を重視するタイプなので、関心を持ちたい。幸い、今のチームメンバーにはとても特殊な人が多いので、楽しくやらせてもらっています。さらに面白い人がジョインしてくれたらもっと楽しくなるので、我こそはという方はぜひご連絡ください。

編集後記

結局のところ、プロダクトが面白くなるか否かは「人」だなということを改めて感じたインタビューでした。会社として優秀で面白い人財が働きやすい環境を提供することで、メンバーがイキイキと働き、結果としてアウトプットも良い感じのものになる。そんなポジティブなサイクルを体現するチームの皆さまはとても楽しそうでした。大きなビジョンに対して情熱/熱意を持ってDXを牽引するエンジニアとして事業開発をしていきたいという方は、ぜひ応募してみてはいかがでしょうか。

取材/文:長岡 武司
撮影:平舘 平


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