データ駆動型の新しい社会を乗り切る。予測不能な時代に挑戦を続ける日立製作所の「Social Tech Talk #01」イベントレポート
新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界はニューノーマルの時代に入ったといわれています。そしてコロナ禍は強制的に、デジタルトランスフォーメーション(DX)も加速させました。今、大きないくつもの流れが重なる予測不能な変革期に入っていることを自覚せずにはいられません。
2021年2月25日。デジタルイノベーションを加速する「Lumada(ルマーダ)」で、様々な分野の社会課題解決に挑戦し続けている日立製作所が主催する「Social Tech Talk #01」が開催されました。新たな社会イノベーションに向けて、私たちはいま何をするべきか?日本のデジタル分野をリードするゲストスピーカーと日立製作所の社員が講演を繰り広げました。
目次
プロフィール
早稲田大学人間科学学術院助手、東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座助教を経て、2009年4月より東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座准教授。
2014年4月より同教授(2015年5月より非常勤)、2015年5月より慶応義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授。
専門はデータサイエンス、科学方法論、Value Co-Creation。データを活用した社会変革を様々な分野で実践。
論文被引用2,500件、特許出願350件。人工知能からナノテクまで専門性の広さと深さで知られる。
現在、研究開発グループ技師長。著書『データの見えざる手』は2014年のビジネス書ベスト10(Bookvinegar)に選ばれる。 工学博士。IEEE フェロー。
同社メディア開発部長、開発部部長、サービス本部長執行役員を務めた後、2015年退社。
株式会社レクターを創業。技術経営アドバイザリー。
著書『エンジニアリング組織論への招待』がブクログ・ビジネス書大賞、翔泳社技術書大賞受賞。
一般社団法人日本CTO協会理事。
入社(2016年)から現在までの約5年間、データサイエンティストとして、データ分析業務に従事。
データを利活用した顧客課題の解決に貢献。主な分析ツールはPython。
2019年海外研修・インターンシップを経験、2019年海外プロジェクト参画。
専門領域はヘルスケアとエネルギー。Qiitaでは社内実習生とデータ分析を議論する記事を投稿。
Qiitaコミュニティ(LDSL):https://qiita.com/organizations/hitachi-ldsl
最近ではOSSを活用した機械学習システムの導入を推進している。
また、イベントでの登壇や記事投稿を通じて、OSSの検証結果や技術情報を発信している。
Qiitaコミュニティ(OSS):https://qiita.com/organizations/hitachi-oss
宮田裕章氏 基調講演「DXの先にある未来社会のビジョン」
2021年は、我々が見ていた未来の延長線上に、現在、そして「未来」はない
「Social Tech Talk #01」は、慶応義塾大学 医学部教授の宮田裕章氏(以下、宮田氏)による基調講演で幕を開けました。COVID-19の拡大などで、社会が歴史的な転換期を迎え、その姿が見え始めているデータ駆動型の新しい社会ビジョンがテーマです。
2021年は、これまでとは全く違ったフェーズに入っていると宮田氏は語ります。COVID-19が世界にインパクトを与え、社会そのものが大きく変わろうとしています。現時点で、死者数の割合だけを見るとペストやスペイン風邪の方が多いという向きもあるといいますが、宮田氏は社会のインパクトとしてはCOVID-19の方が大きいと指摘しました。
例として示されたのは、アメリカの失業者数。リーマンショックよりも、現在の方が圧倒的に高いことがわかります。世界中に波紋が広がった「Black Lives Matter(BLM)」も、COVID-19がトリガーとなりました。「アメリカンドリーム」を突き進んできた米国社会の停止は、国民の中に「本当にアメリカは未来に向かってに進んでいたのか」という疑問を産みました。その疑問は大統領選挙にも大きな影響を与え、結果的に未来をも変えてしまった。宮田氏はそう指摘しました。アメリカだけではありません。フランス、ドイツなど、これまで経済合理性で動いてきた国々も、人権や命、環境、教育、格差といった様々な軸の中で、それぞれの社会が「あるべき姿」に向き合うようになったといいます。
「Society 5.0」が示している文明の転換点
社会が新たなフェーズに入っている、もうひとつの理由とは「文明の転換点」ともいえる大波の重なりだと宮田氏は語りました。
歴史を遡れば、農業革命、産業革命そして情報革命という人類の文明の転換点がありました。情報革命はインターネット、そしてスマートフォン、SNSと数十年の間に変化を遂げてきました。しかし、これからの10年で決定的な変化は訪れると宮田氏は指摘します。これこそが、基調講演のテーマである「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。
「データ」が経済を駆動する新しい資源となる
DXの序章として、世界を駆動する資源が変わったと宮田氏は語ります。これまでは石油であり、石油メジャーが100年ほど世界の経済を牽引してきました。しかし、2012〜13年頃、データメジャー4社であるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の時価総額が石油メジャーを超え、その差は開く一方です。2020年4月には、GAFAにM(Microsoft)を加えたGAFAM5社の時価総額は、日本の東証1部約2170社の時価総額の合計を上回りました。世界では、これほど富の集中が進んでいると宮田氏は指摘します。その一方、日本においてはDXの遅れが露わになっていると指摘しました。日本のデジタル競争力は世界27位。最下位クラスの位置にいることも併せて指摘されました。
コロナ禍においても、DXの遅れが実感できたと話しました。デジタルを有効活用できていればマスクやトイレットペーパー不足などの事態を避けられたはずで、人々の生活不安も提言できたはずだと、宮田氏は語りました。
また、宮田氏は昨年、LINE社と神奈川県、厚生労働省と調査を実施。8300万人から集めたデータによって、ダイヤモンドプリンセス号の集団感染から得た「3密(密閉・密集・密接)」という仮説を実証することができ、感染への対策を進めた事例も示しました。
デジタルトランスフォーメーションの本質は体験価値
今までは、1人ひとりに「モノ」を届ける、最大多数、最大幸福の社会でした。しかし、これからの社会はテクノロジー、データ、AIによって根本的に変わっていきます。データを使うことによって、1人ひとりに合わせた、そして誰も取り残さないサービスが提供できる社会へと変わりつつあると宮田氏は語りました。
事例として示されたのは、中国のアントフィナンシャルによる社会信用スコアの運用、平安保険、Netflixです。経済は消費するモノづくりから、共有する価値作りへ動き、人々を軸にした姿に変わりつつある。日本が誇ってきたモノづくり、職人文化もアップグレードの必要があり、医療、教育も同様だと宮田氏は指摘しました。
対面か遠隔か、デジタルかアナログかの二元論ではなく、デジタルという選択肢を手にしたことによって、何が変わるのかを考え、社会全体を書き換えていく行動が必要になっていくと宮田氏は指摘されました。今まさに我々は、最大“多数”の最大幸福から、最大“多様”の最大幸福への、大転換点に立っているのです。
「Data Free Flow with Trust」の必要性
これまで、データ駆動型社会ではデータを独占した者が富を独占していました。企業だけがデータを独占すると経済合理性のみが優先されてしまう問題があります。また、国だけがデータを持つと、多様な豊かさを皆が追求することに限界が生じる可能性があると宮田氏は話します。
新しいこれからの社会では、データを1人ひとりの権利として、アクセスできるようにしていこうというのがEUのGDPR(General Data Protection Regulation:EU 一般データ保護規則)です。宮田氏は、データの一番の性質は共有できることと指摘した上で、奪い合うスタンスではなく、共有しながら新しい豊かさをともに作っていくコンセプトが重要だと語りました。
すでに変わり始めているGAFAM、電気自動車等を例に、DXは単なる産業の構造の書き換えではなく、未来をハックすることだと宮田氏はいいます。これまで豊かさの指標はGDPでしたが、もはや時代遅れになっています。社会の豊かさがこれから変わる中で、生きることの豊かさは「Well-Being」で示されるようになる。しかし、独りよがりの豊かさでは世界は回らないことを、ドイツのメルケル首相の言葉を例に宮田氏は指摘しました。
Society5.0で、Human BeingからHuman Co-Beingの時代へ
宮田氏は、これから大事になっていくのは個別のWell-Beingだけではなく、繋がりながら、ともに豊かになる「Better Co-Being」の考え方が必要になってくると指摘しました。産業社会の中で我々はいつの間にか経済合理性の奴隷になり、歯車のようになり、パターン化されてきていました。しかし未来は変わりつつあります。
1人ひとりの「生きる」が先にあり、それらを響き合わせながら新しい社会を作っていく。これから、1人ひとりが社会のコードに影響を及ぼしながら生きていく時代に入っていくかもしれない。そんな言葉で、人間と社会の未来についての示唆に富んだ、宮田氏の基調講演は締め括られました。
矢野和男氏基調講演「予測不能な時代:DXからハピネス・トランスフォーメーション(HX)へ」
ともに変化に向かうことが「幸せ」となる、ハピネス・トランスフォーメーションの時代へ
続いて、ハピネスプラネットのCEOで日立製作所フェローでもある矢野和男氏(以下、矢野氏)による基調講演へとウェビナーは続きます。
矢野氏は17年前から、データを活用する機械学習やAI、さらに人間のデータに着目した研究開発に取り組まれてきました。今回のテーマはDXや「ハピネス」。
はじめに、矢野氏は指摘したのは「変化」の重要性です。COVID-19のパンデミックによって「変化」が重要だと再認識されるより50年近く前に、P.F.ドラッカーによって「未来は知りえない」と言及されていたといいます。コロナ禍がなくとも、これまでも毎年、全く予測できないようなことが数多く発生していました。しかし、残念なことに、企業も社会も、未来が予測不能であることを真正面から見ていなかったと矢野氏は話します。
予測不能な変化に「立ち向かう」ためのポジティブサイコロジー
矢野氏が強調したのは、変化が常に起き、予測不能であることが前提であるときは、「やってみないとわからない」ということ。
かつて成功した会社は、創業時には、上の図の右にある「予測不能な変化に立ち向かう4原則」のような状態で、活力をもって前に進んでいました。前が見えず予測できないからです。ところが成功によって社会的責任が大きくなり人数も増えると、管理統制をしたり、業務の標準化を進めたりして、さらに規模を拡大することが大事になってきます。「マニュアル通りにやっていればいい」仕事が増え、企業は利益のみを追求するようになっていたといいます。上の図の左を強調するほどに、それ以上に右側を強調する必要があると矢野氏は語ります。
そのため、ポジティブで前向きな右側に、どういう人たちがいるのか、矢野氏は17年ほど前から本格的に研究に取り組んできました。それが「ポジティブサイコロジー」です。1998年にはじまり、経営学や組織学など様々な学問分野を巻き込んで発展を続けてきたそうです。
重要なのは「幸せだから生産性が高い」ということ
これまでは、一般的に仕事がうまくいけば幸せになれる、病気にならず健康だったら幸せになれると考えられてきました。しかし、20年以上の世界中でのデータに基づく学術研究により、因果関係が全て逆だったことがわかったと矢野氏は指摘しました。
つまり、幸せな人は仕事がうまくいき、生産性やクリエイティビティが高くなり、病気になりにくく健康だったのです。幸せな人が多い会社とそうでない会社とでは、一株あたりの利益が18%違うことなども実証的に判明したそうです。
そして、幸せとは一種のスキルであり、努力によって身につけることができること、テクノロジーが貢献できることがわかったと矢野氏はいいます。
「幸せ」はどこから来るか? 幸せのスキルとは?
心理学の著名な研究者ソニア・リュボミアスキー(Sonja Lyubomirsky)教授によると、幸せは時間軸から見ていくと三つの要素があるのだそうです。矢野氏は、これは「変わりにくい幸せ」「一時的で持続しない幸せ」「持続的な幸せ」と紹介しています。先ほどのスキルとしての幸せは「持続的な幸せ」にあたります。
この幸せの要素を学問的に明らかにしたのが、フレッド・ルーサンズ(Fred Luthans)教授だと矢野氏は話します。複雑なこの世界の中で、前向きなストーリーを自分で組み立てるには、Hope、Efficacy、Resilience、Optimism(HERO)という「心の資本」が大切だといいます。
これらをよく見ると、多くの人が「幸せ(ハピネス)」という言葉からイメージするものと実際の「しあわせ」は違うと矢野氏は話されます。予測不能なことに立ち向かい、困難に負けないスキルが幸せの根幹にあると矢野氏は語ります。
かつて、業務の効率化を求める「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が進められてきました。効率化が進むほど、一方で、本来人間が持つ信じる力や行動する力、立ち向かう力を引き出すために、デジタルを活用していく「ハピネス・トランスフォーメーション(HX)」が必要なのだと矢野氏は指摘します。
アントレプレナーシップの本質について
幸せのスキルは、とくに事業を起こすときに大事だと研究したのが、サラス・サラスバシー(Saras Sarasvathy)教授です。教授は、新規事業を起こすとき、グローバルなビジネスパーソンと起業で成功した人の双方に、どんな判断、行動をするかを聞き、確かめる実験をしたと矢野氏は紹介しました。
その結果、グローバルなビジネスパーソンは、現状から見てゴールを決め、目標との間のギャップ、必要な資源を明確にして計画を立て、成功する合理的説明ができてから前に進むという、因果関係に基づく考え方をしていました。
ところが、新しい事業を起こして成功した人は全くそういう思考や行動をとっていなかったのだそうです。今ある資源で前に進み、ゴールではなく、どのくらい損失を許容できるのかということを考えていたのです。これは何故かといえば、先が予測不能だからだと矢野氏は指摘します。同時に矢野氏は、「うまくいかないこと」や「損すること」は絶対ゼロにはできない。もしそれをゼロにしようとしたら、「前に進まない」結論になるだけだとも指摘しました。
「幸せ」を測定するために。15年のデータの蓄積。
幸せになる手段は人それぞれ多様で、文化や時代によっても異なります。しかし、幸せでより良い状態になったとき、人間の体内では、血圧やホルモン、免疫物質、筋肉の動きなど様々な自律的な変化が生まれます。これらのうちポジティブなフィードバックが「幸せ」であり、ネガティブなフィードバックが「不幸せ」だと矢野氏は話します。
これらのバイオケミカルな反応のほとんどが身体の外から見ることはできませんが、筋肉の動きは外からも見える可能性があることに矢野氏たちは着目しました。そこで、人間の身体の動きをX、Y、Zの3軸で連続的にサンプリングして、波形データで測れるデバイスを作成したそうです。
そして、矢野氏がこのデバイスの最初の実験台として、2006年の3月16日に左腕にセンサーを付けました。それから約15年間、矢野氏の左腕の動きが全てコンピュータに記録されてきました。下に示す記録は、赤い部分が活発に動いていることを示し、青は停止、緑はその中間です。夜中は青く、寝ていることがわかります。
2020年と2018年のデータを比較すると、犬との散歩(赤)や在宅勤務で身体の動きが小さくなるなど、コロナ禍で変化した生活パターンがはっきりとわかります。ひとつひとつ取っているデータは腕の動きという小さなものですが、このように集めてパターンを見ていくと、元のデータとは全く違う「意味」が出てくることに気付いたと矢野氏は語ります。これ以来、どんな業務・業種、学校、病院、様々なところでX、Y、Zの3軸のデータをとり、合わせて世界的に知られている幸せに関係する質問、アンケートを数値化してきたといいます。
その結果、生産的で幸せな人たちには普遍的な特徴があることがわかりました。それは、人と人との繋がりに偏りがなく、5分ほどの会話の頻度が高く、会話中に身体の動きがあり、発言の機会が均等であるといったことでした。
さらに矢野氏は、10組織、468人、5,000人日、50億点の身体の動きを1と0にコード化した身体運動のシークエンスの特徴と、幸せに関するアンケート結果との比較から極めて高い相関を見出しました。つまり、アンケートを採らなくても、身体の動きを示すデータを見れば幸せかどうかがわかるようになったのだといいます。
このように幸せに関する客観的な知見を、テクノロジーとデータを使って得る取り組みをいち早くパイオニアとして始めていたことから、この17年の活動がハーバードビジネススクールでビジネスの教材として使われ、さらに2020年、世界最大の学会であるIEEE(アイ・トリプル・イー:Institute of Electrical and Electronics Engineers)から矢野氏に最高位の賞の1つ「IIEEE Frederik Philips Award 2020」が贈られました。
幸せに関するデータを、実際に組織で活用していくために。
これまでの研究で得た知見を、実際の組織にテクノロジーを使って活用していくことが重要だと矢野氏は話します。つまり、科学的に検証された幸せに関する指標を使って、組織や個人が健全な状態かをレントゲン写真のように診断・計測し、デジタルを使った改善手段で予防改善していくことが大切になってきます。
現在では、スマートフォンにアプリを導入するだけで、動きを数値化することができます。これをマッピングすることで、組織や個人の幸せの度合いを見る「ハピネス関係度」がわかります。そして、どんな施策をすべきか、どこを変えるべきかを客観的に見える化することができると矢野氏はいいます。
改善には「習慣」が重要だと矢野氏はいいます。83社4300人に実証研究をした結果、毎朝1分ほど、その日に前向きに取り組むことをメニューから選んで発信するだけで、先ほどの前向きな心の資本を表すHEROの値が33%向上。営業利益10%向上に相当する結果が得られたと矢野氏は話します。
孤立した人を作らないことも重要で、リモートワークでは上下関係のコミュニケーションが増え孤立しアンハッピーな状況になりやすいことが分かっています。だからこそ、あえて意識的に横、ナナメの人間関係を作らなければならないのです。日立製作所では、雑談ネタをリモートワーク環境下で共有するなどの取り組みをして組織を活性化しているそうです。
日立という組織の中で、「HX」を推進するスタートアップ企業を立ち上げ。
幸せを定量化し、システム的に改善するプラットフォームを作り、法人向けのアプリケーションを開発したり、様々な既存の産業分野と掛け合わせハピネスな協創をオープンに作る組織として、矢野氏は2020年7月「Happiness Planet」という会社を立ち上げました。日立という大企業から生まれた、新たな形態のスタートアップとして内外から注目を集めています。
ともすれば、宗教や哲学の話題になりがちだった「幸せ」というテーマをテクノロジーとデータで計測できる時代になりました。私たちはスマホにアプリを入れるだけで、この動きに参加し、「幸せを生んでいるか」をあらゆる事象の物差しにすることができます。
これから大切なのは、人間中心であること。人々が求める幸せをデータやテクノロジーを使って、前向きに捉えていく「ハピネス・トランスフォーメーション(HX)」がますます必要になっていく。矢野氏は基調講演を、そう締めくくりました。
社会イノベーションを支える日立製作所のデジタルテクノロジー
ビジネスとしての、データサイエンス活用
続いて、日立製作所の社員の方々3名による技術講演が行われました。はじめに、Lumada Data Science Labの末吉史弥氏(以下、末吉氏)が登壇。タイトルは「ビジネスとしての、データサイエンス活用」です。
この講演は、データを使って新しい価値を生み出すデータサイエンティストの楽しさ、ビジネス力の活用シーンや失敗からの学びがテーマ。Lumadaとは、日立のデジタル技術を用いたソリューション、テクノロジー、サービスの総称です。末吉氏は日立製作所が顧客のデータを活用して、ビジネス課題の解決に貢献していると末吉氏は語りました。
AIを活用した、ニューノーマルな働き方
2人目として登壇されたLumada Data Science Labの中川弘充氏(以下、中川氏)は「AIを活用した、ニューノーマルな働き方」と題して講演。
この講演で中川氏は、AIをビジネスで活用するには、ユースケースから要件を定めて方式に反映していくことが重要であると指摘。目的に合った適切な「粒度」、それを受けて学習と推論を行ってコストを適正にすること、プライバシーに配慮した取り組みが必要になると中川氏は話しました。今後、スマートフォンの位置情報などを元に従業員の安全性を重視したオフィス空間の管理を支援する「勤務場所・濃厚接触管理サービス」を提供予定だといいます。
OSSを用いた、これからの社会課題解決
最後に登壇されたのは、Software CoE OSSソリューションセンタの伊藤雅博氏(以下、伊藤氏)です。タイトル「OSSを用いた、これからの社会課題解決」として、AI分野におけるOSSの活用について講演。
伊藤氏は、機械学習システムを継続的に運用するための取り組みであるMLOps(Machine Learning Operations)等を活用し、事業の現場でAIの運用・改善サイクルを実現することが大切だと話します。MLOpsの各ステップではビッグデータやAI、DevOpsが活用されています。しかし、発展途上の分野であり、今後の実現にはOSSの活用が不可欠だと伊藤氏は語りました。
ゲストスピーカーによるパネルトークと技術質問会
つぎに、パネルトーク「AIの社会実装/企業・エンジニアに求められる役割」が基調講演をされた宮田氏と矢野氏、株式会社レクターの広木大地氏により行われました。AI・機械学習領域や、日本がデジタルトランスフォーメーションで世界と戦っていくための方策、今後生き残っていくエンジニアの資質などをテーマに三氏によるトークが繰り広げられました。
最後に、矢野氏と技術講演をされた末吉氏、中川氏、伊藤氏に視聴者が質問をする技術質問会が催され、参加者によるコメントや、SNSでのコメントが盛り上がる中、ウェビナーは終了しました。
編集後記
VUCAと呼ばれる不確実な時代に重なるように、世界を変えてしまったCOVID-19。ニューノーマルと呼ばれる新しい世界では、データ活用の重要性がますます増していくことは間違いありません。しかし基調講演でも指摘された通り、今までの経済合理性優先ではなく「人間は本来どうあるべきか?」を問うていく重要性も痛感しました。
人間を中心に考え「幸せ」を可視化する。そして、皆が幸せを実感できる社会作りを進めていく。そのためのテクノロジー。そのためのデータであることを再認識するきっかけとなりました。
あらゆるデータから価値を創出して、社会イノベーションと「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を推進する日立製作所の「Lumada」。そして、人や社会の新しい価値を示していく「ハピネストランスフォーメーション(HX)」。世界が大きく変わっていく中で、変化を恐れず前進を続ける。そんな、日立製作所の展開から目が離せません。
文:神田 富士晴
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