「SIer出身者を採用したい」LINE Growth Technologyが語るGrowth開発の面白み
あのLINEがSIer出身者を採用したがっている。
少し意外な組み合わせに感じるかもしれないが、東京と福岡、2つの地に拠点を構えるLINE Growth Technologyを牽引する中心人物はそろって「SIerでの経験が、この会社ではフィットする部分が多いはず」と太鼓判を押す。
今回お話をうかがったのは、2009年にLINEの前身となるライブドアに入社して以来、数々のITサービス運営に携わってきた取締役の片野秀人さん。そして、2018年11月に LINE Growth Technologyに入社し、福岡開発室 室長を務める松本竜彦さんだ。
膨大な数の事業とサービスを展開するLINE。その中での開発専門子会社、LINE Growth Technologyが担う役割は何なのか。
それぞれがSIerでの勤務経験を持つ2人のキーパーソンに、0→1にも勝るとも劣らない、1から10、そして10→100の成長を担うGrowth開発ならではの醍醐味、そして今や日本有数のスタートアップ集積都市へと成長を遂げた、福岡という街で働く魅力を聞いた。
目次
・LINEグループで国内初、開発専門子会社が誕生した理由
・エンドユーザーの「真近」で働ける福岡オフィス
・LINEがSIer経験者を探している理由
・「0→1」があなたを待つ
プロフィール
LINEグループで国内初、開発専門子会社が誕生した理由
——まずは、LINE Growth Technologyという会社がどんな会社なのか。LINEグループの中における立ち位置などをお伺いさせていただけますか。
片野秀人さん(以下、片野):当社は2018年6月に設立された会社です。LINEグループの中では唯一、Growth領域を専門とする開発子会社として誕生しました。東京と福岡にそれぞれ拠点を構えており、現在は2拠点あわせて40名近い社員が在籍しています。開発専門子会社ですので、もちろん社員の多くはエンジニアです。
開発専門の子会社をつくったのは、いろいろな背景がありますが、元々LINEに集まっていたエンジニアとは違う層を採用するため、という点が大きいです。あえて子会社として分離することで、メッセージを明確にしたかった、という背景ですね。
——LINEグループが課題として感じていた「LINEに足りないエンジニア」とはどういった人達を指すのでしょうか?
片野:元々LINEにいるエンジニアの多くは新しい技術が好きで、まだ世の中にない何かを生み出すことに対するモチベーションが高い人材が多いです。もちろん、こうしたエンジニアも必要なのですが、いわゆる「0→1」でサービスを立ち上げただけではビジネスは成長しません。
リリースしたサービスをきちんと成長させる、適切な運営を通してその成長スピードを加速させていく。サービス成長の根幹を支えるような裏側の領域のGrowth開発に興味を持って、継続的に改善を積み上げられるようなエンジニアは圧倒的に少ないと感じていました。それなら「Growth開発に特化した組織を作り、明確なメッセージを発信しよう」ということで設立したのがこの LINE Growth Technologyです。
——実際に別組織を立ち上げたことによって、採用戦略はうまく機能しているのでしょうか?
片野:はい、おかげさまで東京と福岡の2拠点でそれぞれ着実に人数も増えてきています。一方でまだ少人数の会社だからこそ、組織運営における意思決定も小回りがききます。何か制度を考える際にも数名集まって議論するだけで済みますしね。
——松本さんは福岡開発室の室長を務められていますが、そもそも東京と福岡にそれぞれ拠点を設けることになったのは、なぜなのでしょうか?
松本竜彦さん(以下、松本):もともとLINEは東京の本社に加え、子会社としてLINE Fukuokaという拠点を設けており、エンジニアだけでなくカスタマーサポートやQA、ディレクターなども在籍しています。そうした拠点がせっかくあるのなら、採用戦略的にもメリットがある、ということで2拠点同時に立ち上げることにしたと聞いています(笑)。
片野:物理的な距離は離れていますが、担当している開発案件や裁量についてはほぼ違いはありません。福岡という都市で積み重ねてきた経験こそ、2拠点をほぼ同時に立ち上げることができた要因かなと思っています。
松本:今では福岡オフィスにも毎月1名ずつ新しくエンジニアが入ってきており、ようやくチームらしくなってきたかな、という感じです。
エンドユーザーの「真近」で働ける福岡オフィス
——「案件や裁量に違いはほぼない」とのことですが、福岡オフィスではどのようなプロジェクトがあるのか。東京オフィスとの違いなどもあれば教えていただけますか?
片野:先にもお伝えした通り、福岡オフィスにはLINEグループのサービスを支えてくれるカスタマーセンターをはじめ、サービス運営の集積地という顔があります。ですので、サービス運営に活用される管理ツールの開発や改善の比率は大きいかと思います。
松本:他にも、福岡という土地ならではのプロジェクトはあります。日本有数のSmartCityとなりつつある福岡市と、LINEのサービスはさまざまな形でコラボレーションしています。例えば、引越し手続きに関する問い合わせを役所の窓口に行かず、LINE上だけで完結できるようなサービスを、福岡市と連携して運営しています。
——福岡というロケーションを活かした案件を手がけられるということですね。
片野:フロントエンドだったりサーバーサイドだったり、そういう技術要素に関しては東京も福岡も、本当に差はありません。ただ、どちらがより気軽にエンドユーザーの声が聞けるか?といった点で差が出てくるのかな、と。
松本:福岡ではすぐ下の階にサービス運営のための様々なチームがあるので、サービス運営で活用するツールを開発しているエンジニアからすれば、運営チームの皆さんは紛れもないエンドユーザーですからね。
なにより福岡ゆかりのプロジェクトをやるなら、やっぱり福岡に住んでいる人のほうがモチベーションは高くなりますし。
具体的にはG20にあわせて来日した来賓やメディアの方に、LINE Payを活用したキャッシュレス決済を可能にしたり、屋台や観光スポットの情報をLINEで配信したりといった施策も当社が担当しました。入社して3ヶ月の若手エンジニア2名が、シニアエンジニアとチームを組んでやりきったものですが、非常に好評でしたよ。
——東京と福岡の働き方を比較して、明確に違う点は何かあるのでしょうか?
片野:これは福岡に限らない話ですが、地方都市で仕事をされているエンジニアは裁量が少ない下請け開発を担当されている方が多い印象です。決められた設計書や予算の中で開発業務を行っていて、自由度が少ない環境が多いなと。
松本:一方、LINE Growth Technologyは場所にかかわらず裁量が大きく、自分で何を作るか考えて動く必要があるので、要件・設計書ありきの仕事の進め方に慣れていると、若干のギャップはあるかもしれませんね。
片野:当社なら設計やプロジェクトマネジメント経験があれば、東京だけでなく福岡でも十分に経験が活かせます。実際に東京から福岡へのUIターンを希望して入社してきた社員もいます。
——その場合、まずは東京で働いて、慣れてきたら福岡で…といったことは可能なのでしょうか?
片野:はい、相談してくだされば検討可能です。先日異動した社員はまさにそのパターンで「今は東京なので東京で入社したい、少し落ち着いたら実家の近い福岡に引っ越したい」と。東京でも福岡でもお願いしたい仕事はいっぱいありましたし、「タイミングが良くなったら言って」と伝えてました(笑)。
LINEがSIer経験者を探している理由
——「設計やプロジェクトマネジメント経験があれば」とのことですが、やはりWEB業界での経験やスキルは必要でしょうか?
片野:必ずしもWEB業界の経験は必要ないと思っています。むしろ、LINEのサービスは多彩な事業が関わり、複雑な仕様になっているものもあります。これらの業務フローを紐解いていけるような方……例えばSIerで業務システムの上流設計経験などはそのまま生かせると思います。
松本:会社が立ち上がってから1年、ようやくLINEの業務に慣れてきたところで、今後は当社ミッションである「For Growth of Services and You」に本格的に取り組む時期に差し掛かってきたと思っています。
現在の福岡開発室には若手のエンジニアが多いので、彼らを引っ張っていけるチームリーダーがいると、対応できる業務の幅もぐっと広がるのではと考えています。
——LINE Growth TechnologyとSIerでは大きく仕事のスタイルも違うように思います。
松本:もちろん、違う点はいくつもあります。SIerのように決められた要件や予算、リリース日があるわけではなく、むしろ「今これが困ってるんだけど」と漠然としたところから始めて、要件やアウトプットのイメージを作りにいく必要があります。
片野:ただ、最初はギャップの少ないプロジェクトにアサインするようにはしてますね。
私も松本もSIerでの経験がありますが、SIerでの仕事は予算やリソースの問題以上に、システムが自分たちのものではなく、お客様のものであるという点で「もやっ」とすることが多いんですね。
「絶対にこうした方が良い」と開発の現場では思っていても、最終の意思決定はお客様が持っているので、なかなかカタチにできない。そうした「もやっ」とした経験があり、かつ純粋により良いモノを作りたいという方であれば、当社はできることがぐっと増えるんじゃないかと思います。
——SIerにお勤めで、そうした思いを抱いている方は確かに少なくなさそうです。
片野:SIer経験者で「BtoC業界に行きたい」「ユーザーに近い場所でフィードバックが得られる職場で働きたい」という転職意向をお持ちの方は、Growth開発こそぴったりだと思います。
松本:BtoCは一見ユーザーからのフィードバックが多くあるように見えますが、実はそのフィードバックはインターネットを通して寄せられるものがほとんどで、ユーザーの顔が見えない、間接的なものであることがほとんどです。
一方で、サービス運営に関わるGrowth開発であれば同じ会社の社員がユーザーなので、顔も見えるし、名前も当然知っているし、文字通り生の声でダイレクトにフィードバックが返ってきますし。
——なるほど!
松本:ふらっと現場に足を運んで、顔も名前も分かる相手とああでもないこうでもないと議論しながら進められる自社向けのサービス開発って、色んな種類のサービス開発がある中で、一番ユーザーとの距離が近いと思っています。
片野:BtoCだと、休憩室で偶然出会った相手からサービスについて意見をもらうことなんてないですからね(笑)。
松本:うちはいつでもそんな感じですよね(笑)。
「0→1」があなたを待つ
——ありがとうございます。最後に、この記事を見ている人たちにGrowth開発の魅力、LINE Growth Technologyで働く醍醐味を改めてお伝えいただけますか。
松本:数年前に「Growth Hack」というキーワードが注目を集めたように、「0→1」のサービス立ち上げ後に、どれだけサービスを伸ばせるかという需要はこれからも無くなることはなく、その経験を積んだ人材は今後ますます重要度を増してくると思います。
片野:私たちはサービスそのものを「0→1」で作り始めることはありませんが、サービス内で使われるツールは「0→1」で開発することが多いですね。Growth開発だから、新規開発に関われない、ということは全くないですね。
——確かに!そういう意味では色々な「0→1」も経験できるわけですね。
片野:また、当社は設立から1年ほどのベンチャーという組織のスモール感と、LINEグループ所属という国内有数のメガベンチャーのスケール感を併せ持った、いいとこ取りの会社だと思います。
LINEグループ全体で見るとコミュニケーション領域を中心にLINE NEWSやLINEマンガといったエンタメ領域もあれば、LINE証券などのFintech領域もあり・・・という具合に色々なプロジェクトがあります。
片野:エンジニアも興味関心が向く領域はバラバラだと思いますが、当社なら幅広い分野のプロジェクトがあり、その中から自分がやりたいことを見つけ出せるチャンスも単純に多いことも、LINEグループで働く魅力だと言えるのではないでしょうか。
——松本さんも入社して以来、会社が成長していく様を見てきたと思いますが、今後はどのような成長を遂げていくだろうとお考えですか?
松本:当社は設立からまだ1年ほどですが、サービスの成長を開発主導で進めるという考えのもと、既にLINEグループ内にもインパクトを与えた成果も生まれつつあります。
サービス立ち上げが好きな方はそこに全力を注いでもらい、リリースしたサービスの成長は私たちが担う、という会社のエンジンとしての役割を担えるまでになりたいですね。いずれは「サービスを出すならLINE Growth Technologyに相談すべき」と言われるような組織にしていきたいですね。
——ありがとうございます。それでは最後に松本さんから、改めて福岡で働くという選択肢についてアピールしていただけますか。
松本:福岡という場所は働くにも住むにも非常に素晴らしいロケーションです。スタートアップ企業も増えてきて、LINE Growth Technologyであれば、東京オフィスと比較しても仕事の質は一切変わりません。
そうした福岡で働く魅力をお伝えするイベントを都内でも開催します。「福岡で働いてみてもいいかな?」という方はもちろん、Growth開発に興味がある方、そしてLINEグループで働くことに興味がある方も、まずは一度イベントに足を運んでいただければと思います!
——ありがとうございました!
編集後記
「東京でなくても裁量を持って働ける環境がある」
「BtoC以上にユーザーからのフィードバックに触れられる仕事がある」
「サービス立ち上げに参画せずとも、『0→1』に携われる働き方がある」
限られた時間の中ではあったものの、様々な思い込みが払拭されたインタビューだった。
今後ますます重要性を増すだろうGrowth開発。
エンジニアとしての働き方、人としての生き方の選択肢を広げてくれる福岡という土地。
そして、そこに注力にすると決めたLINE Growth Technologyに大きな可能性を感じる時間となった。
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取材/文:川野優希
撮影:赤松洋太
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