「SESの仕組みを活用したキャリア論」Qiita Conference 2024 Autumnイベントレポート
2024年11月14日・15日の2日間にわたり、日本最大級(※)のエンジニアコミュニティ「Qiita」では、オンライン技術カンファレンス「Qiita Conference 2024 Autumn」を開催しました。
※「最大級」は、エンジニアが集うオンラインコミュニティを市場として、IT人材白書(2020年版)と当社登録会員数・UU数の比較をもとに表現しています
当日は、ゲストスピーカーによる基調講演や参加各社のスポンサーセッションを通じて、技術的な挑戦や積み重ねてきた知見などが共有されました。
本レポートでは、株式会社テクニケーション 第一システム開発部の部長を務める斎藤 昌和氏によるセッション「SESの仕組みを活用したキャリア論」の様子をお伝えします。
IT未経験でSES企業に入社し、その後複数の開発言語を用いて要件定義からリリース、運用まで一貫して経験した斎藤氏。現在はPLとPMを兼務し、プレイングマネジャーとして活躍しているとのことです。ご本人の体験をもとに、SESの仕組みを活かしたキャリア戦略についてお話しいただきました。
目次
登壇者プロフィール
第一システム開発部/部長
事務職からSES企業への未経験転職(26〜28歳)
斎藤:まずは簡単な自己紹介です。現在、株式会社テクニケーション 第一システム開発部で部長をしています。PM、PL、SEのレイヤーとして働いており、Java + Spring Boot、Python、C#、VB.NETなど、様々な言語を経験しております。今回は「SESの仕組みを活用したキャリア論」ということで、私自身10年近くSES業界に身を置いてきた経験を踏まえて、当時の考え方やマインド、行動について発表させていただきます。
斎藤:まずは私のキャリアについてです。話は前職のプログラマ時代へ遡り、26歳から28歳ごろの「SES転職期」です。それまでは製造業の会社で事務職や社内SEに近いことをやっていたのですが、製造業に少し限界を感じ「SEになってみよう」と転職をしました。
当時の主な参画案件は、6名体制での証券会社の業務ツール開発プロジェクトと、4名体制での勤怠パッケージ導入支援プロジェクトです。プログラマとして、Excel VBAやAccess VBAなど、詳細設計からテスト、保守まで担当していました。
当時は未経験で入社し、完全な下積み時代でしたので、案件の選択をする権利はないと思っていました。なので通勤時間や待遇に一切こだわりを持たず、「技術を身につける」ことだけに注力して案件を探してほしいと、営業担当にお願いしていました。その結果、参画案件は片道2時間半、往復5時間の通勤時間が必要なところでした。
この5時間を有意義に過ごすために、自己学習を始めました。帰宅後に学習内容を試し、翌日の業務で学習結果を試す。具体的には、現場で分からないことが出てきたら帰りの電車の中で調べ、家で開発環境を整えてコードを試したり、翌朝の始発に近い電車の中でもまた調べ、現場でその結果を試したり。うまくいくこともあれば、別の障害が出ることもあるので、また帰路で調べていました。そのようなループを続けていく中で、現場で「本当にすごいな」と思っていた有識者の方たちとも日々の雑談をさせていただくようになり、会社の枠を超えて学びの機会を得ることができました。
Python案件参画による学び(28〜32歳)
斎藤:次に前職のSE時代、28歳から32歳です。こちらは「修行期」になっています。当時の主な参画案件としては、6名体制での航空会社の自動テストツールの開発と、同じく6名体制での業務量自動算出ツール開発プロジェクトがあり、担当業務としてはSE、使用言語としてはJavaやPythonでした。
当時、実はJavaの案件でPMの方からのハラスメントを受けておりました。早朝出勤、終電退勤、さらにここには書いていませんが休日出勤までして、精神的にだいぶ落ち込んでいました。しかし、同じ現場にいた凄腕の女性エンジニアの方から「斎藤さんは考え方がしっかりしてるから、もうちょっと踏ん張ればいいエンジニアになれるよ」とメールをいただき、そこで奮起して踏ん張った結果、JavaではなくPythonの案件に参画することになります。
Pythonの案件では、参画している他社のエンジニアさんと雑談から仲良くなり、その方から設計やプログラミングだけでなく、仕事に対する姿勢や納期/品質に対する考え方や、その他の物ごと全てに対するマインドを学ぶことができました。この現場の経験を踏まえて、当時所属してた会社で勉強会を率先して開催していました。後進の育成プラス私自身の知識をより固める目的を持って講師役兼進行役を担っていました。
そのような中、当時の会社の評価制度自体に限界を感じていたことから、
単価と給与が連動するSES企業への転職を決意し、結果として現在に至るまでテクニケーションに所属しています。
テクニケーションでのPM/PL時代(32歳〜現在)
斎藤:テクニケーションに転職した結果、32歳から35歳はPL時代ということで、「リーダー期」になります。当時の主な参画案件としては、23名体制でのプラットフォームとCRM連携システムのカスタマイズ開発プロジェクトです。担当業務としてはPLとSEで、技術はJavaとSpring Bootです。基本設計から詳細設計、製造、テスト・保守、レビューも含めて担当しています。
それまでPythonの案件を担当していましたが、再度Javaの案件に移動したことで思い出さないといけないことが多く、参画までの期間で自己学習を進めました。参画直後には炎上案件が降ってきたのですが、それを鎮火するために当時のPMや他メンバーなどと適宜連携して、リリースまで持っていくことができました。
その際の評価もあって有難いことに案件を継続させていただいているのですが、
自社メンバーだけでなく、元請けのプロパーや他社のエンジニアに対しても業務のフォローやメンタルケアなど、現場全体の品質向上のために日々行動しております。
斎藤:それらの行動の結果、なんと部長になりました。去年から今年にかけてのPM時代の話になります。
参画案件はPL時代と同じプロジェクトではありますが、人数が増えて45名体制となりました。担当業務としては、PLとSEに加えPMもやっています。PMとして要件定義を進めるにあたって要件定義書を作ったり、業務フローを整理したり、タスク調整したり、見積金額を算出したり、運用設計をしたりと、様々なことをやらせていただいております。またSEとして開発の方も引き続き行っています。
なぜPMのキャリアを積むことができたんだろうと考えた時、まずはプロジェクトへの長期参画が大きかったと感じています。お客さまから評価をいただいていた中で、「やってみたいことはないか?」と聞かれた時に「フロントエンドかPMをやってみたいです」とお伝えしたところ、「じゃあちょうど良い案件あるからやってみる?」みたいな、実は軽めのノリの流れから始まっていました。
PMになってからは、お客さまが本当に欲しいシステムや、運用に適した仕組み/システムを意識しながら、必要十分な情報と期限や責任を明示的に管理するプロジェクト進行を徹底しています。また現場の業務とは別に、自社メンバーに対する技術的なフォローやメンタルケアを行っていたことも評価され、部長に昇進いたしました。ここまでが私のキャリアです。
テクニケーションの待遇基準から考えるエンジニアのキャリアプラン
斎藤:続いてのセクションはキャリアプランについてです。こちらの表は弊社テクニケーションの担当業務による待遇例です。
SESのレイヤーで考えられるのは、SE、PL、PMの層だと思っております。弊社基準でご説明しますと、SEでは65万〜75万の単価、年収は507万〜585万ほどとなっており、主な業務工程としては基本設計、詳細設計、開発などが挙げられます。次にPLでは75万〜85万の単価、年収は585万〜663万ほどとなっており、主な業務工程としてはSEの内容に加えて要件定義と工程管理が含まれます。そしてPMになると、単価は85万から、年収は663万円からとなっており、主な業務工程としては要件定義、プロジェクト管理、工程管理が挙げられます。PMになると開発部分はほぼやらなくなってくるかなと思います。
この表にプログラマやテスターは入れていないのですが、それには理由があります。プログラマは、経験年数が増加すると単価もだんだんと上がってきます。しかし設計ができずコードしか書けない、けれど単価が高いというエンジニアは、正直なところ、若くて単価が安い要員に負けてしまいますから、だんだん仕事が得られなくなってきてしまいます。また直近の話ではないかもしれませんが、生成AIが発達していくにつれて代替されていき、案件が減るリスクもあると考えています。
次にテスターについては、そもそもスキルが身につくケースがとても少ないです。したがってキャリアアップがどうしても難しくなってしまい、結果として単価の増加も見込めず、自分の求める給与に届かなくなってきてしまうかなと思います。
SES業界で成長するためには
斎藤:最後に、SES業界で成長するためのポイントを3つのセクションに分けて紹介しています。
1つ目の「技術力」は、当たり前ではありますが、ただコードを書く技術だけではなく、日々の業務の中でのタスク管理や品質保証、報連相など、社会人として当たり前の行動ができるか否かで、だいぶ変わってきます。また自己学習としての資格の取得や業務時間外での技術の習得については、「一生勉強」と言われるこの業界のよくある話に通ずる内容になるかなと思っています。ほかにはチーム参画や、勉強会があったときに率先して参加することで、他の方の知識を得ることができると思っています。有識者からのフォローですね。
2つ目は「コミュニケーション」です。例えばイベントの参加や現場での飲み会などは、他の方の仕事以外の情報を知ることができるので、業務を円滑に進めるための味方作りの場として大事なものだと捉えています。またSNSやコミュニティから知見を得ることも重要です。今回登壇させていただいているQiitaさんやYouTube、Xなど、様々な媒体で得られる知識もあると思います。ただし注意事項として、一方的に情報を得た場合、それが現場で必ず使えるとは限りません。現場のルールに沿って、得た情報や知識が使えるかどうかをしっかり見極め、その上で提案することが大事だと思っています。
3つ目は「機会損失を避ける」です。SES特有ではあると思いますが、目先の単価よりも先に繋がる案件を選択することが大切です。私の場合は先ほど説明した通り、自分に戻ってくるリターンは一切度外視して、開発に繋がる案件を選択した結果、だんだんキャリアアップできたかなと思っています。またスキルアップやスキルチェンジをできる機会を見極めることも重要です。例えばお客さまから「こういうことやってみないか?」などと言われた時に「やります」と言えるかどうか。そのような、発生した機会を自分自身で掴み取ることも大事だと思っています。そして市場価値に見合った報酬のある企業に転職することもポイントです。より良い報酬、もしくは体制を作れる方法は様々だと思うので、固執しないことが大事だと思っています。
文:長岡武司