僕たちは「黒子のサービス」。CPaaSのリーディングカンパニーを目指すネクスウェイメンバーの野望


SMSや電話、メール、FAXなど、人々の情報の受け取り方が多様化する時代において、様々なチャネル群をAPI連携などによって一つのプラットフォーム上で管理する「CPaaS」(Communications Platform as a Service、読み方:シーパース)という領域が、米国を中心に注目され始めています。

その流れは日本にも波及し始めており、中でも早い段階から、株式会社ネクスウェイでは「CPaaS NOW」というサービスを展開しています。

「CPaaSという概念がやって来たからサービスを始めた、というよりは、もともと会社としてコミュニケーションチャネルを扱ううちに、自然と現在のCPaaSと同じ考えに繋がっていったんですよね」

そのように話すのは、SaaSエンジニアリング部 部長であり、「CPaaS NOW」につながるサービスを過去に立ち上げてきた小田切氏。

具体的にどのような流れで「CPaaS NOW」が立ち上がり、今後どのような展開を予定しているのか。今回は「CPaaS NOW」の開発陣および企画・運用担当による、ざっくばらんなトークの様子をお伝えします。

※「CPaaS NOW」については以下の記事も併せてご覧ください。
▶︎複数のコミュニケーションチャネルを一元管理、国産のCPaaSで開発現場の変革を狙うネクスウェイの想い

プロフィール

小田切 一成(おだぎり いっせい)
株式会社ネクスウェイ
サービス本部 SaaSエンジニアリング部 部長
2007年、ネクスウェイに入社。FAX・メール一斉送信サービス「NEXLINK」やSMS送信サービス「SMSLINK」などのコミュニケーションサービスの立ち上げを主導した後、各サービスを取りまとめる形で「CPaaS NOW」の開発を担当。現在はSaaSエンジニアリング部 部長としてマネジメントに従事しつつ、「CPaaS NOW」の成長に向けて事業部サイドと連携しながら機能面でのサービスの成長を支えている。
藤田 知也(ふじた ともや)
株式会社ネクスウェイ
サービス本部 SaaSエンジニアリング部 プロダクト推進グループ グループマネジャー
独立系システム開発会社にてゴルフ場向けパッケージソフトウェア開発に従事した後、2018年にネクスウェイに入社。SMS送信サービス「SMSLINK」の立ち上げを経験した後、FAX・メール一斉送信サービス「NEXLINK」の開発PMを経験し、現在は「CPaaS NOW」の開発責任者として、同サービスの成長を支えている。
加藤 崇史(かとう たかし)
株式会社ネクスウェイ
コミュニケーションプラットフォーム事業部 企画・運用グループ
2012年、新卒でネクスウェイに入社。リードナーチャリングサービスや帳票/FAX関連サービスの営業・運用など多様な領域・職種を経験した後に、SMS送信サービス 「SMSLINK」など、新規サービスの立ち上げとマーケティング担当として複数のプロダクト開発などに従事。その後、「CPaaS NOW」の構想を元にプロジェクトチームを立ち上げ、現在は同プロダクトの企画・運用担当としてグロースに向けた取り組みを進めている。
清野 隼史(きよの としふみ)
Qiita株式会社
プロダクト開発部 Qiita開発G マネージャー
アルバイトを経て、2019年4月にIncrements(現 Qiita株式会社)へ新卒入社。
入社後はQiita、QiitaJobsのプロダクト開発や機能改善などを担当。
2020年1月から「Qiita」のプロダクトマネジメントとメンバーのマネジメントを行う。

マルチチャネルプラットフォームへのニーズは間違いなく高まっていく

清野:製品の話に入る前に、まずはCPaaSがどういう概念なのかについて教えてください。

加藤:ユーザーとの様々なコミュニケーションチャネルをAPIとして複数束ねて、マルチAPI化したプラットフォームサービスのことを指します。CPaaSは日本ではまだあまり知られていない概念なのですが、アメリカではTwilio社とVonage社を中心に浸透し始めていると感じています。

日本ではSMSや音声など単体のチャネルサービスがまだ多い印象ですが、これからCPaaSの波がやってくると感じており、弊社でも国内の業界に先んじて「CPaaS NOW」を提供しています。

小田切:ここ最近「〇aaS」的なものが増えてきたので、今回もそのうちの一つでしょ、くらいに思われることも多いですね。私も最初にCPaaSという単語を聞いた時は、社内の企画メンバーが作ったオリジナルワードだと思ったくらいです。

清野:まだまだこれからの領域ということで、今は「CPaaSを盛り上げていきたい」というフェーズなのですね。

小田切:盛り上げていきたいというのももちろんありますが、コミュニケーションチャネルに関するサービスをずっと提供してきた会社という立場から見ると、提供の仕方が変わってきた結果だと感じています。

清野:と言いますと?

小田切:昔はハードウェアを直接ご提供してハードウェアtoハードウェアでやっていただいていたのですが、「クライアントサーバシステム型は古いんじゃないか」ということで、SaaSサービスとして提供するフェーズに突入しました。その頃から私もこの領域に携わらせてもらうようになりました。2011年ごろだったと思います。

SaaSと言っても、当時はまだブラウザ上でやりとりしてもらうような時代でした。しかし2〜3年も経つと、エンドユーザーが少し触ればすぐに使えるようなAPIサービスがたくさん出てきました。その流れの中で、ネクスウェイでもAPIを出すようになったという経緯があります。

例えばFAXやメールを一斉送信できる「NEXLINK」や、SMS送信サービスの「SMSLINK」などもAPIでそれぞれ提供していたのですが、ある時から「たくさんあるならまとめましょう」という話が出てきました。実は2016年に一度、当時の事業部長に向けて今のCPaaSと同じ考え方の提案書を提出しています。その時はうまく話が進まなかったのですが、今回CPaaSという言葉も借りながら、加藤が新たに企画・サービスとしてしっかりと形にしてくれています。

清野:もともとコミュニケーションチャネルサービスを提供してきたからこそ、CPaaSの流れにかかわらず、会社としてやるべきフェーズだったというわけですね。

小田切:もちろん今お話しした流れは、あくまで弊社目線の話なので、お客さまのニーズにマッチするかどうかは、これからのお客さまとのコミュニケーション次第だなと感じてもいます。

加藤:もともと「SMSLINK」を担当していた時に、「FAXも一緒にやりたい」というご要望をいただくことも多かったんです。お客さまとしても、例えば既存のシステムやアプリにSMS機能を追加したい場合、複数の会社から資料や見積もりをもらい、一社一社から提案を受け、セキュリティチェックシートの対応をしてもらい…など、テストや本番導入までの煩雑さが課題で、実際にやりたいことができるのかを試すまでにかなりの時間を必要とします。チャネル自体は今後もますます変化・多様化していくと思うので、マルチチャネルの選択ができるプラットフォームへのニーズは、間違いなく高まっていくだろうと考えています。

ツールの提供だけでなく、しっかりと運用提案もしていきたい

清野:ここで改めて、「CPaaS NOW」の概要と導入におけるメリット・強みを教えてください。

藤田:メリットとして事業部サイドと常に意識合わせをしているのは、「CPaaS NOW」はエンジニア向けのサービスということです。エンジニアにとって使いやすく、開発や運用工数の削減にもつながって、コア業務により集中しやすくするためのプロダクトを目指しています。あとから配信チャネルを追加したい場合でも、「CPaaS NOW」に繋いでおけばすぐに追加できます。

清野:配信チャネルってたくさんとあると思うのですが、実際にサービスを作る時は一気に実装せず、まずは1つか2つのチャネルから始めるケースが多いと思います。エンジニアとして「CPaaS NOW」を入れた方が良いタイミングは、どのような想定でしょうか?

藤田:新規の場合は、最初から「CPaaS NOW」を入れていただくと、拡張性の観点で良いと思います。一方、既にSMS配信機能があり、メールを追加したい場合、SMS側のシステムも変えないといけないので、大掛かりなリプレイスになるかと思います。そのようなケースでは、まずは「CPaaS NOW」のメール機能を試しに使っていただいて良さを知ってもらい、音声など他チャネルを追加するとなったら簡単に追加できる、といった使い方をおすすめしています。「CPaaS NOW」で完結する、と感じてもらえるように提案をしています。

小田切:単にツールを提供するだけではなく、例えば「最初からメールだけで良いのか?」「SMSも一緒にセットで使わないか?」というように、積極的に運用を提案していくのが大切だと考えています。もともと弊社のスタイルは、営業担当がじっくりと提案することが強みですからね。このスタイルを活かして、ユーザーにとっての使いやすさを一緒に考えていきたいですし、これまでのコミュニケーションチャネルの運用に関する豊富な経験・ノウハウを持っていることが、私たちの強みだと考えています。

加藤:強みという観点ではもうひとつ、マルチ配信のサービスを一般的にはCPaaSと言っていますが、我々はさらにもう一歩踏み込んで、オムニチャネル化したいと考えています。例えば機能の一つとして、送信失敗になったリクエストを、別の送信チャネル・宛先で自動再送信するFallback機能を標準で用意しています。これにより、クリニックや店舗などの来店予約のリマインドをまずはメールで送り、メールが届かなかったお客さまには自動でSMSを配信できます。このようなオムニチャネルコミュニケーションを「CPaaS NOW」で完結すれば、エンジニアは不達結果やエラーによるハンドリングをせずに済むわけです。

他にも4桁の認証コードをSMSで送信するオペレーションがありますが、実装する場合、認証コードの生成と入力されたコードをチェックするシステムを開発しなければいけません。「CPaaS NOW」であれば、認証コードの生成からSMS送信、チェックまでを全て提供しています。ただ配信するだけでなく、その配信の前後をもっとソリューション化してご提供することで、開発や運用の負担を減らすことができます。

清野:日本でCPaaS製品を作ることならではの強み、という観点だといかがでしょうか?

加藤:CPaaSに限った話ではないのですが、海外系のサービスは仕様書が英語ベースですし、問い合わせをしてもコアタイムが違うなどで対応が遅れることが多い印象です。あるお客さまとお話ししていた時に、「海外サービスのメンテナンス時間が日本のコアタイムにぶつかってしまい、SMSが届かないなどお客さまからクレームが入ってしまった」と教えてもらいました。我々は日本の会社なので、当然ですが日本の時刻で対応しますし、対応言語も日本語です。日本の商習慣に合っている点もポイントだと思っています。

小田切:サポートについてはよく話に上がりますよね。問題が発生した時にできるだけ早く対応してほしいのにレスが遅いとか。安全面で使いにくくなってしまうので「国内ベンダーの方が良いよね」となるんです。緊急対応でなくても、例えば要望受付もなかなか通らなかったりしますよね。その点、我々の要望受付のスピード感は早いと思います。

清野:海外サービスあるあるですね。

藤田:あとは、各チャネルの到達率です。特にSMSは一番の強みだと考えています。少し専門的な話になりますが、SMS配信には大きく2つ、国内4大キャリアと直接接続をしている事業者と、国際回線網を経由して日本に配信している海外配信事業者がいます。我々は前者なのですが、後者の場合はSMSが届かない事象が多々発生します。あるサービスでは到達率が60%近いといったデータもあり、必要な情報が必要な人に届かないという問題が発生してしまいます。一方で我々は、携帯キャリアに直接接続する形でSMSや国内市場にも準拠したメール機能を持っているので、海外製品と比べて常に高い到達率でメッセージが届くと言えます。

自治体の督促や配送トラックへの通知など、様々なユースケースが出てきている

清野:実際のユースケースについても教えてください。

加藤:特に「本人確認」はよくご利用いただくシーンです。Webサービスやアプリでは通常、会員登録時にメール通知を行います。また、ここ近年は不正利用やなりすましに関するセキュリティ強化の観点で、SMSによる2段階認証も増えています。「CPaaS NOW」はメールとSMSの両方のチャネルが利用できるため、採用が増えています。

清野:マルチ配信の強みですね。他にも活用例はありますか?

加藤:いくつかあるのですが、例えば自治体さまによる行政手続きなどの確認や、督促などで使いたいというお問い合わせが増えています。電話、メール、SMSを統合的に使えるので業務改善につながりますし、システム導入されているSIerのエンジニアの効率化にもつながります。また法律事務所の債権回収のシーンでのご利用も引き合いが多いです。あとユニークな使い方だと、倉庫におけるトラック入場のオペレーションで使われていたりもします。

清野:どういうことでしょうか?

加藤:配送トラックは別会社の場合や個人事業主の方も多いので、倉庫側は運転手の連絡先を知らないケースも多いんです。ですから、例えば倉庫の敷地内にトラックを入れる際には、まずは受付をして、運転手の方は倉庫側からの連絡を待つ、というオペレーションがあります。そこを「CPaaS NOW」を使ってデジタル化するという活用方法ですね。運転手が連絡を受け取りたい手段をSMSかメールかを選んで、自分が見やすい方法で通知を受けられるようにしています。

清野:プロダクトとしていろんな可能性がありますね!実際に開発をされているエンジニアの立場で、「CPaaS NOW」の推しポイントを教えていただきたいです。

藤田:細かいところは何個もありますが、例えばレスポンスのエラーコードを分かりやすくすることにこだわっています。海外サービスなどでよくある「エラーが出てもどうすれば良いか分からない」といったことがないように、エラーへの対処法をパッと見て分かるようにしています

清野:細かいですが重要ですね!

藤田:あとは、パラメーター名をチャネル横断で統一するのも苦労しながら進めました。メールだと「ADRESS」、SMSだと「TO」みたいな感じでバラバラだと、プラットフォームとして統一感や使い勝手が悪くなってしまいます。テーブル名も統一運用を前提につけるようにしていますし、例えばキャリア各社から来る微妙に異なるエラーメッセージも、文言を統一して表示するようにしています。

小田切:どうすればエンジニアにとって使いやすくなるかというのを突き詰めて考えて実装しているので、例えばAPIリファレンスに関しても、実は内部では 「てにをは」を 含めて書き換えています。すでにチーム全体でそういう思考になっていまして、私が書いた全く関係のないドキュメントについても、都度指摘をしてくるんですよ(笑)「ここは全角じゃないとダメです」とか。

それはすごく良いことだなと思っていまして、マインドが変わってきているのを、身をもって実感しています。

藤田:「てにをは」や全角半角は、気になって仕方ないですね(笑)

「CPaaS NOW」についての口コミが広がってほしい

清野:これからの「CPaaS NOW」の展開についてのお考えを教えてください。

加藤:私たちの主なお客さまはSIerやSaaSベンダーですが、その先に複数の会社さまがいらっしゃいます。それぞれ求めることが微妙に違いますので、それらを取りまとめる方々のためのエンジニアサービスとして、運用コストを下げてより多くのお客さまを獲得できる部分で貢献したいと思っています。そのためにも、プラットフォームとしての「拡張性」を担保していきたいと考えています。

小田切:「CPaaS NOW」を作った開発チームとしては、ぜひ「CPaaS NOW」についての口コミが広がってほしいなと思っています。例えばQiitaに記事が上がったり、ほかのブログサイトで話題になったり。「CPaaS NOW」は法人向けサービスなので、それほど多く出るようなものでもないことは理解していますが、エンジニアの皆様に評価・レビューされるのが楽しみではありますね。

藤田:「何かコミュニケーションを取りたくなったら『CPaaS NOW』」と思ってもらいたいです。これからますます広がっていくことを期待しています。

加藤:そのためにも、まずはCPaaSの認知向上が大事です。冒頭でお伝えしました通り、国内市場的にCPaaSそのものがまだまだ知られていないので、自分たちで市場を作っていこうという気概で進めています。「日本におけるCPaaSといえばネクスウェイ」という状態を作りたいですね。

小田切:自分のところで全てを内包するというよりかは、向こうから「ぜひ『CPaaS NOW』を繋げさせてくれ」という感じで、CPaaSのエコシステムが広がっていってほしいなと思っています。

藤田:「CPaaS NOW」って、黒子のサービスですからね。「CPaaS NOW」と意識しなくても、結果として「CPaaS NOW」を使っている状態、というのが理想的な形なのかもしれません。今後の拡張性を踏まえたら、「やっぱ『CPaaS NOW』だよね」と。

小田切:そこまでサービスが広がっていった時にシステム側で耐えられるかな、とは考えてしまいます。今まで別々でやっていたトラフィックが集約される形になるので、システムアーキテクチャ的にどう分散させるかとか、今までのやり方を超えていく必要があると考えています。もちろん、嬉しい悲鳴なんですけれど。

清野:ありがとうございます。それでは最後に、Qiitaユーザーへのメッセージをお願いします。

小田切:我々としては今後も継続的に進化をしていこうと考えており、使ってみて良かったという内容だけではなく、改善が必要な部分を含めてざっくばらんにフィードバックをいただきたいです。ぜひ、今回の記事を読んで「『CPaaS NOW』について書いても良いな」と思われた方、Qiitaへの投稿をお待ちしております。エゴサをしながら、ユーザーの皆さまからのアウトプットを本当に心待ちにしています!

編集後記

まだ市場として立ち上がっていない段階のプロダクト展開は非常に大変だと思いますが、今後のチャネルの多様化は間違いのない流れですから、サービスとしての拡大は必至だなと思いました。これまでSMSをはじめ様々なコミュニケーションチャネルソリューションを展開してきたネクスウェイだからこそ、CPaaSのリーディングカンパニーとして、これから形成されていくであろう業界を牽引していくだろうと感じます。ユーザーとのコミュニケーション運用に課題を感じている方は、まずは問い合わせてみてはいかがでしょう。

取材/文:長岡 武司
撮影:平舘 平

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