株式会社LIFULLが語る、Qiitaで実現する「発信したい人が発信できる、気軽で自由なアウトプット」
日本最大級の不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」を始め、人々の生活に寄り添う様々な事業を展開する株式会社LIFULL(以下、LIFULL)では、自社ブログと併用して、より気軽で自由に発信したい人が発信できるツールとしてQiita Organizationを導入しています。
もともと社内での情報共有に課題を感じており、Google経由で検索結果として知識の情報共有できればいいなと考えたことが利用のきっかけだったとのこと。現在は会社の公式ブログと使い分けながら活用いただいているそうです。そこで今回は、テクノロジー本部 事業基盤ユニット プラットフォームグループ システムエンジニアの秀野 亮氏に同社でのアウトプットの取り組みと、Qiita Organization導入時のエピソードや効果、今後についてお伺いしました。
社内の情報共有に課題を感じていたところが始まり
ーーまず初めに、これまでのご経歴をお伺いさせてください。
秀野:もともとはかなり大きめのウェブサイトの開発とかをしていました。オンラインカジノの決済システムのバックエンドの開発とか、あとはECサイトの開発とかを最初の会社でやっていました。
その後、2006年にLIFULLに転職してからはずっと「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」の事業に関わっています。最初は賃貸事業のウェブサイトを開発していて、今はバックエンドの検索エンジンとかその辺りの開発をしています。
ーーありがとうございます。では株式会社LIFULLの事業についてをお伺いします。
秀野:はい。LIFULLとしては小さいものも含め様々なことをやっていますが、メインの事業は最初に始まった不動産ポータル「LIFULL HOME’S」です。
昔は、住まい探しをしている方は不動産会社に相談するというのがほとんどの流れでしたが、不動産会社は不動産情報をたくさん持っているけれどお客さんにはそれほど公開されていないという状況でした。
そこで「情報の非対称性をなくす」というのをミッションとして始めたのが「LIFULL HOME’S」で、私もそこに携わっています。
ーーありがとうございます。社員数は大体1,700名ぐらいの方がいらっしゃる中で、エンジニア組織には何名ほど所属していらっしゃいますか?
秀野:おおよそ200名です。
ーーそのエンジニア組織内でのチームの分かれ方はどのようになっていますか?
秀野:20程度の組織に分かれています。
ーーありがとうございます。では社外へのアウトプットの取り組みについてお伺いしたいのですが、これは会社全体として力を入れてらっしゃるような感じでしょうか?
秀野:はい、会社として力を入れてますね。
ーーそれはいつ頃から注力しはじめたなどありますか?
秀野:特に注力し始めたのは5、6年前くらいからです。Qiita Organizationは2014年に作成しているのですが、これはボトムアップで私の方ではじめました。自分でブログを開設して運用するのは敷居が高かったので、仮登録するだけでブログを書きはじめられる手軽さと、当時は技術情報が集まってくるのってQiitaぐらいしかなかったという点から、Qiita Organizationを選びました。
その後、5年くらい前にLIFULLにCTOの制度ができて、この辺りから会社の公式ブログであるLIFULL Creators Blogに力を入れていく方針となりました。これはどちらかというとアウトプットというか採用目的に近くて、エンジニアリング部門のブランディングの一環として外部に発信していました。
ーーなるほど。アウトプット活動はボトムアップで始まるものが多いのでしょうか?社員の方たちが割とアウトプットしていこうっていう気持ちがある方が多いなど。
秀野:いや、なかったですね。アウトプットの文化がそもそもなかったと思います。世の中的にツールもそんなになくて、当時ははてなブログくらいだったかと思います。あとはX(Twitter)くらい。ブログをわざわざ自分で開設してるっていう人はいなかったんじゃないかと思いますし、やっている場合も個人でやってることなので、会社としては把握してないんで、会社としてのアウトプットっていう文化自体はなかったですね。
ーーありがとうございます。そんな中、Qiita Organizationを使い始めた理由や、開設時の目的などをお伺いできますか?
秀野:もともとの目的としては社外に対してアウトプットするというよりは、社内での情報共有に課題を感じていたところが始まりました。個人個人としては当然スキルや技術の知識は持っているのですが、それぞれで知見を持っているだけで、組織として共有し合って底上げするみたいなことはあまりやってなかったので、もったいないなと思ったのが最初です。
そういう知識を社内で共有するのは結構難しくて、勉強会とかも定期的に始まっては終わり、あまり長続きしなかったので。でもエンジニアって開発する時って大体Googleで情報を調べるんですね。だったらQiitaにアウトプットしてもらって、Google経由で検索結果として知識の情報共有できればいいなと考えたんですよ。それがQiita Organization利用の最初のきっかけですね。
ーー今の時代は、割と社会的にも社内で情報共有しようとか、社外に対しても発信しようという考えが広まっていると思うのですが、当時はそういった共有などされづらかったような時代ですか?
秀野:そうですね。正確な時期は分からないんですけど、ある有名な会社が、すごい技術を持っているのにそれを一切公開していなくて、誰が働いてるんだろうっていう感じで「ツチノコ」とか言われていました。なので、それぐらいあんまり社外に対する技術の発信は一般的ではないイメージでしたね。当時はITに限らず、会社の情報をそんなに公開するっていう文化は社会的にほとんどなかったと思います。
ーーなるほど。先ほどおっしゃっていたLIFULLで実施されていた勉強会は、どんな形で実施されていましたか?
秀野:そんなに多くの人数を集めて実施するというイメージではなく、40人以内ぐらいで同じ部署内とか近くに座っている人とかで、スライドみたいなものを作って発表するというのを毎週やっていました。ただ業務が忙しいとなかなか実施しづらいこともあり、やってやめてを繰り返していました。
ーー今ではQiita Advent Calendarでも例年LIFULLのOrganizationカレンダーも作成いただき活発に使われている印象がありますが、秀野さんがOrganizationを登録し、おひとりで運用を始めた当時は周りのエンジニアは協力的でしたか?
秀野:当時、同じ部署の人が結構実力の高い人が集まっていたので、そのベテラングループに声をかけて一緒にやってもらって記事を書き始めました。
公式ブログとQiitaの使い分け
ーー現在のお話に移っていければと思います。毎年アドベントカレンダーにOrganizationカレンダーを作成いただき、30名程度の方が参加してたいただいていますが、普段含め、社内でQiita Organizationの使い方や記事投稿に対する雰囲気はいかがでしょうか?
秀野:先ほどお話しした、会社のブログに注力する方針になってからはQiitaの方はそんなに重要視されてない感じで、個人個人でQiitaを使ってアウトプットしたい人はしているという状態です。記事投稿の際のOrganizationへの紐付けも自由です。なので最近はちょっと停滞気味ですね。Qiita Advent Calendarに関しては、私じゃないですがやってくれているエンジニアが1人いて、その人が作成すれば参加するような感じですね。
カレンダーが埋まらないんじゃないかなって心配するのですが、人数増えたのもあるかもしれないですけど、結局なんだかんだ埋まってますね。あとはカレンダーに登録しても書かない人とかもいるんで、そこは誰かが埋めてくれたり代打とかしていますね。
ーー会社の公式ブログとQiitaの使い分けはどうされていますか?
秀野:使い分けはどうするかみたいな話上がってきた時に、本当にただの技術的な情報はQiitaに書いて、例えばサービスが改善された話や組織論など、何かストーリーがあるものはブログに書くみたいな方針を最初は取っていました。
ーー今もそのような方針で運用されていますか?
秀野:そうですね。ブログにただただ技術的なことを書くのはあんまり書きにくいかなと思います。方針的にも採用や会社としてのブランディング目的が強くなってきているので。技術ブログっていうのは今は当たり前にどの会社にもあって、その流れかなと思います。
Qiitaは本当にちょっとした技術メモみたいなのを書いておくと、最初の導入の目的で言ったGoogleで検索したらヒットしましたみたいな状況になってます。なので当初の目的は達成できたのかなっていう感じですね。今日もメンバーからSlackで言われましたね、「調べたら記事が出てきたよ(笑)」と。
ーー記事出す時のチェック体制はどのようにされていますか?
秀野:ブログの方は2人ぐらいに見てもらう仕組みになっていて、ワークフローでチェックが通ったら管理者が公開してくれるフローなんですけど、Qiitaの方は特になく、個人が自由に書いてる感じです。かなり気楽に書いていると思います。
ーー例えばイベント登壇など、Qiita以外でも行っているアウトプットの取り組みなどはありますか?
秀野:会社の全部を把握してるわけじゃないので分からないのですが、個人としてはコロナ禍までは結構登壇していて、よく勉強会のLT枠などで発表していました。ブロックチェーンやAWS、Slackなどのイベントで。あと、LtechっていうLIFULLが主催する社外向けの勉強会みたいなものをやっていたのですが、テーマを決めてLIFULLのエンジニアに声かけて登壇してもらうものなんですけど、そこでも発表をしたことがあります。
発信したい人が発信できる、気軽で自由なアウトプット
ーーQiita Organizationの取り組みを始めて、社内で何か変化はありましたか?
秀野:当初の目的だった「社内の技術情報共有」は、多少ですがGoogle経由でできるようになりました。アナリティクスでPVとかも見ることもあるんですけれど、やっぱりQiita全体として人が集まりやすいので、自分の記事も含めその記事がかなり数読まれていて、ついでではあるんですけれども社会に対しても役に立っているのかなと思っています。
あと変化というところだと、Qiitaがなかったら発信しなかっただろうなって人は結構多いんじゃないかと思うので、一つの良いきっかけになっているのかなと思います。アカウント作ってOrganizationに参加したいですって言えばすぐに発信できる点が良いですね。ブログは会社の顔としてみたいな面もあり、例えば10行だけの記事はやめたほうが良いだろうとか考えるとちょっと敷居が高いので、Qiitaのように気軽に発信できるプラットフォームみたいなツールは便利だと思います。ちょっとメモっておきたいコマンドとかも記事にできたり、自由なので気軽に発信できやすくはなっていると思います。
ーーありがとうございます。組織としてのアウトプットを進めていく上で、現時点で課題に感じていることや、これをしたいなどありますか?
秀野::会社としてアウトプットの気軽さが減っているという点は少し課題に感じています。以前、「アウトプットしないのは知的な便秘」をテーマにしている勉強会があって、話す内容はなんでも良いよという会でした。そこでは自分が持っている車についてただひたすら話すだけのエンジニアのLTもあって、「ああそういう話でも良いんだ」と、アウトプットの敷居を下がる感じでしたね。「ssmjp」という勉強会でした。
個人的にはそういった、発信したい人が発信できる気軽で自由なのが好きなので、Qiita Organizationを始めた当時はずっとそんな運用をしてきました。レビューもなしで、退職したらその記事を持って次の会社のOrganizationに入ればいいという方針で。
ただ組織としてブログの推していることもあり、あまり気軽じゃなくなっているなとも感じています。「書かなきゃいけない」みたいな作業感が少し生まれてしまっているかもと。なのでQiitaはもっと気軽に書ける場所であってほしいなとも思っています。
ーーなるほど。その気軽さを促進するためにQiitaに実装して欲しい機能などありますか?
秀野:最初記事を作って、あとは自分の好きなタイミングで情報を足していけるような機能があるとより気軽に書きやすくなりそうだと思います。
あとは最近は生成AIとかも発展しているので、適当にメモをぽろぽろ書いておいて、あとで自動で文章を生成してくれると助かるなとか。自分で構成は考えたくないというか、知識だけ追加していけると気楽かなと思いますね(笑)
ーー貴重なご意見ありがとうございます!アウトプット活動に関して今後の展望を教えてください。
秀野:展望でいうとあまり明確にはないですが、エンジニアの視点から言うと、アウトプットすること自体、自分にとって何かメリットがあると思うんですよね。例えばアウトプットをすることによって今の自分の状態が分かりやすいというのもあると思います。昔から言われていることですけど、書いてみることで「自分はちゃんと人に説明できるのか」と確かめられるような。
あとは記事を書いて「とにかく見てほしい」とか「バズりたい」とか、そういう気持ちを満たすものがあるとメリットになるかなと思っていて、Qiitaというプラットフォームの場合、やはりみんな見てくれるところが利点ですね。「ここに書けば見られるだろう」という気持ちがあると、それがメリットになるかなと。なので敷居を低く、気軽にどんどん記事を書いてほしいなと思います。
ーーありがとうございます。それでは最後に、アウトプットしたいけど、まだ一歩を踏み出せない方に向けて、アウトプットするとこういう良いことあるよなど、何かあればお伺いしたいです。
秀野:私の実体験の話ですが、世の中には顔が広くていろんな会社に人を紹介していたりするハブになるエンジニアみたいな方がいて、先ほどもお話ししたようにコロナ前によく登壇などもしていたときにそういう人から声をかけられることもありました。
そこでつながりができて、例えば「この会社がクラウドエンジニアを必要としてるみたいなのでやってみませんか?」というお話しをいただいたこともあります。最近副業してるとかしたい人も多いですし、社外との繋がりができるのはメリットとして一つ大きいんじゃないかと思いますね。なので、まずは気軽にメモからでもいいのでアウトプットの行動をしてみると良いんじゃないでしょうか。
編集後記
株式会社LIFULLは、当初、社内の情報共有を目的にQiita Organizationの利用を開始され、現在は検索で記事がヒットしたことをSlackで報告し合う場面が日常にあるなど、導入時の目的を達成をされています。
現在は会社の方針としては公式ブログの方に力を入れられているとのことですが、同じ社外に対するアウトプットでも、より気軽で自由に発信したい人が発信できるツールとして、ブログとの使い分けをされているとのこと。今後は気軽なアウトプット文化もより醸成していこうとしています。今後の記事展開にも注目だと思いました。