「モノ」がつながる時代こそセキュリティは面白い! パナソニックグループの若手AI・ブロックチェーンエンジニアが語り合う
IoT技術の普及により、さまざまなモノがインターネットにつながるようになりました。それに伴いサイバー攻撃の対象も増えています。昨今、ソフトウェアの世界に限らず、幅広い分野でサイバーセキュリティの重要性が叫ばれています。
今回は、パナソニックグループにてAIやブロックチェーンを応用したセキュリティの研究開発をするお二人にお話を伺いました。
プロフィール
2018年新卒入社
セキュリティ部門にてブロックチェーンの試作開発やPoCにてIoT開発・研究を担当。
2017年新卒入社
セキュリティ部門にてスマートホーム・IoT家電に関わる
サイバー攻撃検知や分析技術の開発・研究を担当
モノを通じて先端技術を浸透させたい
流行を追わず「関心度」で研究テーマを決めた
田崎:パナソニックグループのセキュリティ部門に所属している田崎です。
今日は三谷さんとお話しできると聞いて、楽しみにしていました。
三谷:同じく、パナソニックグループのセキュリティ部門の三谷です。
田崎さん、今日はよろしくお願いします。
田崎:私同様、三谷さんも修士課程修了後、新卒でパナソニックに入社したと聞きました。
三谷さんはどのような研究に取り組んできたんですか?
三谷:私の専攻は林学でした。対象に直接触れることなく形や性質を測定する「リモートセンシング」という技術を、木材の量や質の調査に応用できないかと考えていました。
リモートセンシング技術は航空レーザーデータでの計測として研究が進んでいましたが、林業で用いるには高価な手法でした。
そこで、より省コストな手法を確立しようと、ステレオカメラを3Dセンサーとして用いた3次元データから、森林内の地図を自動作成することを目指しました。この研究に必要だったPythonや画像・処理解析ライブラリ「OpenCV」を利用したのが、ITエンジニアリングとの出会いです。
田崎さんは、どのような研究をされていたのですか?
田崎:私の学生時代は主に「多様体学習」の研究に取り組みました。
多様体学習は、機械学習やパターン認識の分野で、高次元のデータから特徴を抽出し、低次元のデータに圧縮する手法です。当時は深層学習が流行し始めたころで、高次元データのままでは計算量が増大したり、うまく学習できない課題が指摘されていました。
そういった課題に対するアプローチとして、在学時には、位相幾何学など数学的な概念に基づきデータの特徴を抽出する新しいフレームワークの研究を行ってきました。
深層学習の流行にのった研究ではありませんでしたが、非常に興味深い分野でしたね。
三谷:流行にのった研究は、あえて避けたんですか?深層学習、非常に面白い分野だと思いますが。
田崎:本当は深層学習の分野にとても興味がありました。
しかし、深層学習は計算を行うコンピュータの性能やデータの量によって性能に差がつくため、ブラックボックス的に扱われることが多い分野です。
そのため、企業の研究所がしのぎを削って研究を進める中、ひとりの学生が理論や過程の深堀りしたり、性能勝負をしたりするのは難しいと考えました。
そこで研究室の先生と相談して、数学的な理論にのっとって改善を期待できるテーマとして多様体学習を選びました。現在では、深層学習が抱える問題を解決するアプローチの1つとして、多様体学習が注目されていますよ。
研究結果をダイレクトに消費者に届けられる
三谷:田崎さんは、なぜ就職先にパナソニックを選んだのですか?
在学中の研究と何か関連があったのですか?
田崎:修士課程の時点で研究開発に関わりたいと考えていました。在学中に取り組んでいた研究は理論的な基礎研究だったので、机上の数値計算ばかりで、現実問題に応用するような技術の具体化にまでは踏み込めずにいました。家電やエレクトロニクスの分野に進むことで、技術をモノやサービスとしてお客さまに届けたいと思うようになったんです。
三谷:私も、モノを通してすべての世代に価値を提供できるような仕事がしたいと思い、IT系ではない会社を選んで就活していました。
田崎:三谷さんは、その中でもなぜパナソニックを選ばれたのですか?
三谷:私の場合は、画像解析などの先端技術を活用して幅広い方に技術を届けたいと思い、光学デバイスを持つ企業への就職を考えていました。
しかし、光学デバイスは利用者がかなり限定されていたり、確立されてから10年以上経過している技術を後追いで導入している場面を研究の中で多く見てきました。
そんな中でパナソニックを選んだのは、多くのお客さまに毎日使われる家電を通じて、先端技術を世に比較的早く浸透させられると思ったからです。
田崎:なるほど。確かに家電を使わない日はありませんよね。
最先端技術の第一線で仕事ができる
“燃えに燃えた”試作開発とPoC
田崎:三谷さんは入社してから現在まで、どんな仕事を経験してきましたか?
三谷:ブロックチェーンに関する研究を重ねて試作開発やPoC(概念実証)を実施してきました。入社後最初に参画したプロジェクトは、スマートロックを用いたバイクシェアリングサービスです。IoT開発の担当者としてPoCの実施に加わりましたが、実フィールドでのアクシデントを想定しきれず、燃えに燃えた経験が印象深いです。
田崎:燃えに燃えた(笑)?
三谷:炎上、ですね。入社1年目で違う研究分野から入ってきたという理由もありますが、実力不足が大きな要因です。
そんな中でも最後まで任せてサポートしてくれた先輩社員の方々には大変感謝しています。お客さまから信頼してもらえる商品を届けるために、あらゆる可能性を念頭に置き、それでいてバランスよく機能を実装することの難しさを痛感しました。
Pythonでモーターを制御したり、実フィールドで予想外のアクシデントに対応したりするなど、このとき培われた経験が今の糧になっています。
三谷:その時は学校をフィールドにしていたので利用者層は限られていましたが、どんなことが起こり得るか想定するのは非常に難しかったですね。
田崎:炎上の経験を活かして(笑)、現在はどんなお仕事をされているんでしょうか?
三谷:パナソニックグループの事業領域を見渡して「この事業にこの企画でブロックチェーン技術を導入したらどんな付加価値が出るか」「具体的にどう導入するか」「どうシステムに落とし込むか」、といったことを関係者と議論を重ね、試作開発・検証を繰り返す仕事です。
車がどう攻撃されて、どう守るのかを実証実験で体験
三谷:田崎さんの経験についてもお話を聞かせてください。
田崎:入社後は、主にサイバーセキュリティ技術の開発に取り組んできました。
2021年度まではコネクテッドカーへのサイバー攻撃を検知・防御する技術開発に携わり、サイバー攻撃の防御アルゴリズムを搭載した実験車両への安全性評価、攻撃検知アルゴリズムの開発業務を経験しました。
特に心に残っているのは、初めて実験車両を使った実験のことで、実際に乗り込んで調査・解析をしたり、急ブレーキの実験などをしたりしました。自動車がどのように攻撃されて、攻撃からどう守るのかを自分の身をもってリアルに体験して、私たちの開発する技術がどう活躍するのかを実感するいい機会でした。
三谷:研究から離れてみて、初めて分かることってありますよね。現在はどういった仕事内容なんでしょうか。
田崎:現在はスマートホームやIoT家電、機器と通信するサーバへの攻撃検知・分析技術を開発しています。家電そのものが攻撃を受けることもありますが、サーバへの攻撃などが行われる可能性もあります。お客さまが製品を利用するシーンや使い方を模倣し、起こり得るサイバー攻撃の手段を分析・抽出することで、セキュリティ監視の自動化や効率化の実現を目指しています。
専門家として「ゼロイチ」に立ち会える瞬間が魅力
田崎:幅広くさまざまな仕事に関わっているとお聞きしましたが、三谷さんは今の仕事のどんな点に魅力や楽しさを感じていますか?
三谷:お客さまの課題解決に携われるところですね。車載装置や家電以外にも、住まいやヘルスケア系など、幅広い分野への技術提供をできるのはパナソニックグループならではの魅力だと感じています。
田崎:幅広い方へ技術を届けたい、という入社当初からの目標を実現できているんですね。他にはありますか?
三谷:製品の立ち上げ期、ゼロイチの瞬間に立ち会えるのは魅力だと感じていいます。
私が主に研究開発をしているブロックチェーンの技術は、さまざまな製品・サービスにセキュリティ基盤を提供しようとしています。
そういうこともあって、製品のゼロイチの瞬間に立ち会うことが多いです。セキュリティ分野に興味がある学生さんにもぜひゼロイチで製品が立ち上がった時の達成感を感じてほしいです。
田崎さんはどんな点に魅力や楽しさを感じていますか?
田崎:パナソニックグループが扱う自動車やスマートホーム、ビル、工場などのドメインに対するセキュリティ対策は、それぞれに特有の課題があって、まだまだ改善の余地があります。自分で開発した手法・技術がPoCなどに採用され、形になって動くところを見ることができる点に、やりがいや魅力があります。
さらに言えば、三谷さんも含めて、そのようなドメインで研究開発に携わる私たちは、普段から最先端技術の第一線で仕事をしていて、業務を通じて、その分野の専門家になっていけるんです。
例えば、私の中では三谷さんは「ブロックチェーンの専門家」という印象があって、個々の分野で社内の専門家として認識される点も魅力ですね。
成長の機会はいたるところにある
必須の技術だからこそ得られるモチベーション
三谷:私をブロックチェーンの専門家と認識していただけていたとは!
セキュリティは「他者からの攻撃を防御する」というネガティブな発想を持たれがちですが、言い方を変えれば、マイナスを限りなくゼロに近づけるプロセスに注力できるという側面もあります。
また、全ての人から必要とされる技術なので、モチベーションを高く維持したまま仕事に取り組めます。「感動」というよりも「安心」を届ける仕事に没頭できるところは良かったと思えるポイントですね。
三谷:田崎さんがパナソニックグループで働いてきて良かったと思えることは何ですか?
田崎:パナソニックグループは取り扱っている商材が非常に幅広いから、仕事を通して多くの知見やノウハウを蓄積できますよね。
一方で、セキュリティも適用対象が非常に広い技術なので、得られた経験をもとに、さまざまな領域へ展開し貢献できることは、パナソニックグループのセキュリティ分野に携わってきてよかったと思えることの1つです。
セキュリティ部門では、学ぶ機会を社員に多く与えてくれます。
例えば、世界的なセキュリティカンファレンス(Black Hat, DEFCON)やラスベガスで行われる世界最大級のテクノロジーの展示会「CES」にも参加させてもらえました。
三谷:セキュリティ部門は、「若手はぜひ海外へ」という考え方を持っていますよね。コロナがもう少し落ち着けば、また海外で良い刺激を受けられる機会をもらえるのではないかと期待しています。
田崎:そうですね。2019年に開催されたCESではパナソニックグループも自動車セキュリティの展示を行い、私も説明員として参加したので、自動車メーカーなど、お客さまになる人たちから生の声が聞ける非常に有意義な経験でした。
パナソニックグループは他社からどのように認識されているのか、他社はどのような方針を打ち立てているのかなど、普段の仕事では得られない視点を学べたことも印象に残っています。
三谷:たしかに海外イベントへの参加は、貴重な成長の機会ですね。他に田崎さんが日頃行っているインプットの手段はありますか?
田崎:「Udemy Business」というオンラインの学習サービスをインプットによく活用しています。個人であれば何千円とかかる動画講座を自由に受講できるのはありがたいですよね。
三谷:私もUdemy Businessはよく活用していますね。あと、私の場合は都内にある共創活動のためのオフィスも利用して、スタートアップ企業の方や学生さんと一緒に実証実験を行ったり、プロトタイプの展示を通じて生の声に触れたりしています。
田崎:社内外問わず連携をとって研究を進められることは、貴重な成長の機会ですよね。
三谷:働き方という観点では、コロナ禍によって在宅勤務が定着化してきたので、時間を有効活用できるなど、働きやすい体制を整えてもらえた点もうれしいですね。
田崎:私も満員電車での通勤が苦手だったので、在宅勤務制度にはとても助けられています。
社員の夢や野望の実現を積極的にサポート
全ての工程に関わる人から愛される製品を目指して
田崎:日々学びながら仕事に励んでいるわけですが、仕事を通じて実現していきたいこと、大切にしていきたいことは何かありますか?
三谷:派手でとがっていなくても、多くの人のくらしに溶け込み、ほんの少しの不安、お困りごとを取り除けるような事業に携わりたいと考えています。
多くの方にアプローチできるパナソニックグループの特徴を生かして、必要だと思ってもらえる技術を開発したいですね。
上流工程では企画など事業の根幹部分の策定に立ち会うことができますが、そこに満足せず、後工程を請け負う方や利用するお客さまなど、全ての工程の人から愛されるサービスを立ち上げたいと思います。
「ゼロイチ」の瞬間だけ追いかけても、結局はその後の開発、運用、保守などが必然的についていきます。ですから、関係者の方をいかに巻き込みながらビジネスを立ち上げられるかが重要だと思っています。
田崎:おっしゃる通りです。私たちも設計段階においてセキュリティのプロとしてのプロジェクトに参加する意識は大事ですよね。
三谷:田崎さんもパナソニックグループで実現したいことはありますか?
田崎:私は、AIなどの技術を活用してセキュリティ課題を解決できる技術を確立したいと考えています。
一方で、AIは、あくまでツールに過ぎないので、どのようなAIを使うべきか、あるいはAIは使わないほうがよいのか見極めて、きちんとお客さまに説明して課題解決へ導けるエンジニアになりたいですね。
三谷:セキュリティ分野で深層学習やAIを使うアプローチ、非常に注目されていますよね。
田崎:はい、ただし使い分けることが大切です。
深層学習の技術を使いたくても、例えば車載の制御機器や家電に含まれる小さなチップではAIの計算するためのリソースが足りないことが多く、AI技術の搭載は現実的ではありません。
セキュリティ課題の解決には、深層学習型*だけでなくルールベース型*など複数の手法があります。専門家として、最適な手段を判断・説明できることが重要です。
今後は、メンテナンスのコストやデータ量にも気を配りながら、最適なアプローチを判断できる人が重宝されると思います。
三谷:たしかにブロックチェーンの技術についても、同様のことが言えます。セキュリティ対策を高める上で、必ずしもブロックチェーンが求められるわけではありません。もちろんセキュリティを担保する技術の1つとしてブロックチェーンは有効です。
ですが、ブロックチェーンはあくまで手段の1つに過ぎず、使う必要がない場面で無理に適用する必要はありません。必要な技術を選定できるスキルも、今後は求められていくと思います。
田崎:あとは、セキュリティは目に見えない技術なので、お客さまからはなかなか認知されませんが、自分の中で「この製品やサービスには、自分が作った技術が使われている」と誇りを持てるようになるとうれしいですね。
*深層学習型:AIが自ら学習を行い、データからルールやパターンを見つけ出す手法
*ルールベース型:AIが人間が登録したルールに基づいて状況を診断する手法
「人と違う見方のできる人」が活躍できる
三谷:その技術を研究開発するには、セキュリティ部門全体で協力していく心構えが必要ですよね。
田崎:三谷さんがパナソニックグループで一緒に働きたいと思う人とは、どんな人ですか?
三谷:私はパナソニックに入社して5年経ちますが、これまで「一緒に働きたくない」と感じる人に出会ったことがありません。それは、一人ひとりがいろいろな技術的バックグラウンドを持っていることを前提にした風土が醸成されているからだと思います。
私が携わるブロックチェーンの研究開発では、新規テーマを立ち上げるごとに、一緒に働く方もその都度変わります。
しかし、技術的なバックグラウンドが異なることを前提に会話できるので、スムーズに意思疎通できて働きやすい環境だと感じています。
また、ブロックチェーンに限らず、移り変わりの早い技術・企画に携わっていると、現在地を見失いそうになることがあります。常に変化し続ける環境の中で、柔軟な考えを持って対応できるチーム作りのために、意見・知見を発信し合えることをとても心強く感じています。
ですので、こうした風土や環境を尊重できる方と一緒に働きたいですね。
田崎:そうですね。パナソニックグループではさまざまなバックグラウンドを持つ方々と交流できるので、風土や環境に共感できる方が同じ志を持ちやすいですよね。
三谷:たしかにMicrosoft Teamsのグループチャットでさまざまな領域の専門家とカジュアルに交流できたり、ピッチイベントを聴講できるのはありがたいですね。こうした仕組み作りが、ここ数年で特に強化されているように感じますね。
田崎さんはパナソニックグループで活躍できる人は、どんな方だと思いますか?
田崎:いろいろな経験をしてきた人、視野が広い人は、研究開発の分野でもかなり活躍できると思います。
ゼロイチを生み出し事業や技術を確立していく中では、人とは違った見方ができるかどうかが重要で、経験が豊富にあり視野が幅広ければ、いろいろな方向からアプローチできます。だからそういった方は研究開発でも、関係者と活発に意見を交換できるのではないでしょうか。
パナソニックグループは活躍の場がたくさん用意されていて、社員がチャレンジしてみたいことをサポートしてくれる風土がある会社です。だから、自身の思いを言葉にできることも大事だと思いますね。
三谷:パナソニックグループにはビジョンや夢、野望を持っている方が多いですよね。ぜひチャレンジしたいことを積極的に語って、私たちと一緒にパナソニックグループで夢を実現してほしいです。
編集後記
最近AIやブロックチェーンといった先端技術の話をよく耳にするようになりましたが、それらの先端技術を実際にセキュリティ分野に応用して、すでに試作開発やPoCを開始しているというお話を伺って驚きました。大学や大学院などの教育機関では、先端技術に関する研究こそできるものの、それらを活用して、消費者まで届け、フィードバックをもらえる機会は限られています。パナソニックグループは研究から仮説検証までのサイクルを様々な分野で行える環境が整っている数少ない会社だと思います。パナソニックグループで先端技術を極める選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
取材/文:ノーバジェット
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