「くらしに寄り添う」思いが原動力に!「空気質」と「空調」を支えるソフトウェア開発の魅力に迫る
パナソニック株式会社 空質空調社(以下、空質空調事業)は、家庭用エアコン、業務用空調機器、換気システムなどを手がけている社内カンパニーの1つです。
空質空調事業はパナソニックが創業時より大切にしてきた「くらしに寄り添う」という理念を受け継ぎ、ユーザー起点でソフトウェアを考えることを目指しています。例えば、スマートフォンでエアコンを遠隔操作できる「エオリア アプリ」のストアでの評価は、他のエアコンアプリの平均を大きく上回る高評価を得ています。
こうした「ユーザーから選ばれる」ソフトウェアや技術を開発できる秘密はどこにあるのでしょうか。今回はエオリア アプリのプロジェクトマネージャーと、業務用空調の省エネアリゴリズム開発者のお二人に、そのお仕事内容を聞きました。
目次
プロフィール
2011年にパナソニックへ新卒入社。R&Dセンターにてインターネットを活用したサービス開発を担当し、業務用カメラのクラウドサービスなどを商用化。その後、白物家電のIoT戦略立案部署を経て、2019年より現職である空質空調関連のスマートフォンアプリ開発・運用の業務に従事。
2018年に博士後期課程を修了しパナソニックへ新卒入社。2022年より空質空調社ソリューション事業開発センターに配属となり現職。店舗・オフィスを主とした業務用空調向けの省エネアルゴリズムの開発業務に従事。
パナソニックを選んだのは「役に立って喜ばれている姿」が見えるから
空調をソフトウェアから改善する
——はじめに、お二人の自己紹介をお願いします。
山田美季氏(以下、山田) : 2011年に新卒でパナソニックに入社し、R&D部門でネットワークに関する研究開発や、業務用カメラのクラウドサービスを手がけました。その後、白物家電のIoT戦略立案部署を経て、2019年から空質空調関連のスマートフォンアプリ開発や運用に携わっています。
現在は、家庭用エアコン「エオリア(Eolia)」や給湯設備「エコキュート」などスマートフォンアプリで家の外から遠隔操作ができるアプリ開発チームにてプロジェクトマネージャーを担当しています。
尾上紗野氏(以下、尾上) : 2018年に博士後期課程終えて、新卒でパナソニックに入社しました。以来、ずっと空調関連のアルゴリズム開発に携わってきました。
現在は、飲食店や衣料品店など中小規模の店舗やオフィス向けの空調省エネアルゴリズムを開発するチームで、快適性を維持しながら省エネを実現するための空調制御アルゴリズム開発を担当しています。
——お二人がパナソニックへ入社したきっかけを教えてください。
尾上 : 大学院時代はソフトウェア工学を学んでいました。研究を通してデータ分析やビッグデータ解析から新たな知見を得られることに楽しみを見出すようになり、就職したらデータの分析業務に携わりたいと思っていました。とにかくデータを扱うのが好きなので、「データを触らせてください」という話をしながら就職活動をしていましたね。
博士人材を求めている企業に就職したかったので、博士の積極採用を行っている企業を中心に就職活動をしていました。博士限定の就職セミナーにパナソニックが来ていて、そこで話をうかがったのが興味を持ったきっかけです。当時からAIやロボティクスなどの成長領域の人材を採用したいと考えていたようです。
パナソニックはIoT家電を多数企画・開発しているので、使用履歴などのデータを大量に保有しているだろうと思っていました。入社してみると予想通り大量のデータに触れられる環境でした。
——大学院ではどのような研究をしていたのですか。
尾上 : GitHubに記録されているオープンソースソフトウェアの開発履歴を分析していました。
衰退してしまうプロジェクトや開発が止まってしまうプロジェクトの特徴をデータから明らかにするという研究をしていました。博士まで進んだので、進路としては大学教授という選択肢もありましたし、「大学ではないの?」と周りからもよく言われました。大学院での研究を通して、自身の研究成果がなかなか世の中に反映されにくいことに悩んでいました。私の成果が誰かの役に立っている姿が見たい。そう考えたとき、顧客がいる民間企業の方がよりその希望が実現できそうだと考えました。
——山田さんはいかがですか。
山田 : 大学時代はネットワークや無線通信の研究をしていました。
私は、例えば父親が自分の子どもに「この商品は俺が作ったんだぞ」と話せるような仕事に憧れがあり、生活に深く関係するモノづくりに携われるメーカーを第一志望に探していました。そんな折に縁があったのがパナソニックでした。
子どもの頃から製品が身近にあって、名前も知っている会社で働けることに喜びを感じました。業務用か家庭用かを問わず、使ってくださっている姿を目にするとうれしくなりますよ。
「丸ごと携われる」のが楽しい空調のアルゴリズム開発
コーディングから機器の取り付けまで
——現在の仕事内容について詳しく教えてください。尾上さんの空調アルゴリズム開発というのはどのようなものなのですか。
尾上 : 一般的にオフィスや店舗の空調は、そこで働いておられる方の裁量で自由に設定を変更されることが多いので、例えば夏場温度下げて必要以上に涼しくなってしまったりたまに消し忘れたり、ということも多いですよね。そうした利用の傾向や無駄をデータから明らかにすることで、快適性を維持しながら空調を自動で制御するアルゴリズムを開発しています。
このアルゴリズムをベースにした空調機制御のアルゴリズムを実店舗で実証させてもらい、商用化につなげる仕事をしています。ずっとパソコンに向かっているわけでなく、店舗に出向いて話を聞いたりしますし、自分で電動ドライバーを使って計測機器の組み立てを行ったりします。仕事の範囲は広いですね。
クラウドに集められた室温や空調の操作履歴など店舗で取得したデータを分析してアルゴリズムを開発します。アルゴリズムで導き出された設定値になるよう、クラウドにつながっている店舗の空調機を遠隔で操作します。
——今の仕事では、何が重要だと感じていますか。
尾上 : 前提として大量のデータを処理できるプログラムをスクリプト言語でバリバリと書けることがとても重要です。私自身はPythonでプログラムを書いています。
また、データを分析するだけでなく、快適性を維持しながらの省エネができていることをロジカルに伝えなければならないので、相手に分かりやすく伝えられるプレゼン能力や論理的思考も必要だと感じています。
アルゴリズム開発の難しさは技術面だけではない
——直接的なお客さまは店舗の関係者ですが、じかに接する仕事ならではの難しさがありそうですね。
尾上 : ひとつひとつの店舗にとって最適な省エネを実現できるように、店舗に寄り添うつもりで仕事にあたっています。例えば、立地や日当たりなどの環境条件、空調の使われ方など店舗によって異なる特徴を捉えることもアルゴリズム開発の重要なインプットです。そのために店舗に出向いて施設の立地状況を確認したり意見を直接ヒアリングしたりするのも、まさに「お客さまに寄り添う」ということを強く意識する場面です。
ところが、まだ商用化前の実証段階ということもあり、たまに過度な省エネ設定になってしまうこともあります。そんなときは実証にご協力いただいている店舗の方にご迷惑をおかけしてしまうこともあります。一方で、省エネは店舗の運用コストを下げることに繋がりますし、店舗の本部からのご要望でもあります。店舗の方の意見を反映させつつ、快適性と省エネをどう両立していくかが難しいところです。
——そんななか、どのような場面でやりがいを感じますか。
尾上 : どんなデータを取るか考えるところから、機器の設置、そして分析と、すべて自分でやらなければならないのは大変です。一方で、表面だけでなくすべてを理解しているからこそ、「私が一番知っています」と胸を張って言えることにやりがいを感じます。
それから、空調はパナソニックが長く手がけてきた分野であり、これからも伸びしろのある分野だと思うので、そこの全ての領域に携われるのは魅力の1つですね。
——店舗の来店客に対しても、空調を通して「くらしに寄り添う」ことになりますね。
「エオリア アプリ」の高評価を支えた、利用者に寄り添う地道な取り組み
アプリにフィードバック機能をつけて「育てていく」
——山田さんはエオリア アプリのプロジェクトマネージャーですが、具体的にどのような仕事をなさっているのでしょうか。
山田 : エアコンを遠隔操作できるスマートフォンアプリの開発プロジェクトにて、機能や仕様の検討、開発、検証までの全てのフェーズにわたってプロジェクトマネージャーとして携わっています。スマートフォンのアプリ開発だけでなく、クラウド側のシステム開発も行っているので、多岐にわたるスキルセットが求められます。
また、今担当させていただいているエオリア アプリに関しましては利用ユーザー数も多く、対応するエアコンの品番数が多岐わたることもあり、関係者が多く、大規模な開発になることが多いため、様々な関係者とディスカッションし、調整しながら1つのモノを作り上げていきます。私自身も技術者としてたまにはコードを書くこともありますが、QCD(品質、コスト、納期)の優れたアプリになるよう管理するのがメインの業務です。
新製品の発売にあわせて開発するだけでなく、発売後も新機能を追加したりお客さまの声を反映したりしながら、アプリ独自の更新で進化するところがエアコン本体の開発とは大きく異なる点であり、やりがいがあるポイントです。
——お客さまの声を捉えて反映させるのは難しそうですね。
山田 : 我々で深掘りしていく部分と、お客さまの声から深掘りしていく部分、両方のアプローチでアプリケーションの進化に取り組んでいます。
気温や湿度は目に見えるものではありませんし、「心地よい」は人によって千差万別ですので、どのように個々にとって最適な状態を実現すればいいのか、かなり前から悩んでいました。しかし、スマートフォンのおかげで、新たなアプローチができるようになったのです。
エオリアでは、センシング結果に基づいて制御内容を調整するAI自動運転機能があるのですが、エオリア アプリでは、このAI自動運転に対する評価(今の体感温度が暑かった、寒かった等)をフィードバックしていただいて、自動運転の内容をお客様毎に最適化する「AIフィードバック」機能を追加するなど、お客さまとともにプロジェクトを育てているところです。
——エアコンというハードウェアとともにあるソフトウェア開発には、独特の難しさがあるのではないでしょうか。
山田 : そうですね、ハードウェアの開発と連動して動かなければならないところに難しさがあります。エアコンは毎年高級機種から普及機種までのおおよそ5~10シリーズ、容量別の品番違いなども考慮すると約300機種ほど追加になり、シリーズ毎の機能有無による違いや、前年機種からの性能改善により発生する細やかな機能差分を全て吸収し、エオリア アプリ一つですべて機器操作に対応できるよう設計する必要があります。また、開発途中でエアコン本体の仕様変更や日程変更などが発生し、アプリの開発内容や日程を臨機応変に対応させるなどのトラブルも想定する必要があります。このような開発をどのようにすれば早く安くいいものが作れるか工夫が試されます。
「エオリア アプリ」もはじめは低評価だった
——IoT対応の家電製品が出回るようになりましたが、せっかくハードウェアが画期的でも、アプリなどソフトウェアの満足度が低いために総合的な評価を落としているプロジェクトを見かけます。エオリア アプリがアプリストア高評価を得ているのには何か秘訣があるのでしょうか。
山田 : 実ははじめから今のように評価が高かったわけではなく、当初は2点台だったのです。それが今では4.5の評価を得ているのは、お客さまのコメントひとつひとつに対応してきたのが大きな要因だと考えています。
お客さまに寄り添うような機能を提供しよう、良いものを作ろう、と努力し続けてきた結果、このような高い評価をいただけるようになったのだと思います。ただ、まだ改善の余地は残っていますので、さらに進化させていこうと高いモチベーションで開発を続けているところです。
エオリア アプリの特徴は、自動運転に対してAIをかなり早い時期から導入したことです。AIが言葉として流行していたからではなく、お客さまの生活実態などを深掘りしながら、何ができるのか考え抜いた結果として、AIという出口にたどり着きました。
「経営は人なり」というパナソニックの事業哲学にある通り、AI人材に限らず、継続的に先端技術を扱う人材とのネットワーク構築に取り組んでいます。またパナソニックは社会の公器として、技術分野への貢献や投資を惜しまない風土があります。
だからこそ、パナソニックには幅広い人材が在籍し続け、事業においても他社よりも一歩先んじてAIを搭載できたのだと思います。人を育て、衆知を集め、お客様により良いものを早く提供できるのがパナソニックという会社です。
——レビューコメントを見てみると、デザインの洗練さや使いやすさを評価する声がありました。エンジニアはどうしても機能に注目しがちなので、お客さまの視点に立ったUI/UXの設計は難しかったのではないでしょうか。
山田 : エンジニアは機能に注目しがちなのは、そのとおりだと思います。しかしパナソニックでは、それではリリースすることができません。企画やデザインの担当者は開発陣に対して、UI/UXの観点で本気で意見してきてくれます。お客さまのために本当に熱意を持っていて、良い意味で粘り強く「引いてくれない」ので、最終的にUI/UXもよくなっていくのです。
双方をまとめる立場としてバランスをとるのは難しいですが、そこがプロジェクトマネージャーの腕の見せどころであり、やりがいでもあります。
大企業の良さを活かしたチャレンジできる土壌がある
——パナソニックは大企業として認知されていると思います。その中でもチャレンジできる土壌は用意されているのでしょうか。
山田 : 大企業だと、あまり個人の意見は届かないイメージを持たれるかもしれませんが、パナソニックは主張したことを大抵やらせてもらえる会社だと感じています。大企業でありながら、熱意を持って声を上げればチャンスをもらえます。
また、様々な価値観や経験を持っている人が集まった会社なので、専門家とつながって協力を得ることもできます。新しいことを始めたいと思ったとき、動かせるリソースが身近にあるのです。
——たしかに、それは大企業だからこその魅力かもしれませんね。
山田 : 実は私も、クラウドを知っていてサービスの立ち上げができる人材はいないか、ということで空質空調事業に呼ばれて現在に至ります。その際は新規サービスを立ち上げるプロジェクトでしたが、バックエンドのシステムをオンプレミスにするかクラウドにするかというレベルの初期の検討から商用リリースまで携わっていくことができました。
——何か核になる得意なことがあれば、様々な舞台で活躍できるチャンスがあるわけですね。実際にこれまで、転職者の方が声を上げて変化が起きたエピソードはありますか。
山田 : 入社3ヵ月の人が開発体制の変更を提案し、実際に変わったことがあります。しがらみを気にしていたらできないことですし、パナソニックでは新鮮な視点での提案は大歓迎です。他にも、ずっと使い続けてきた開発ツールがあったのですが、新規に参画したメンバーの提案で新しいものが採用されました。
「こうすればできそうだ」という提案を誰も止めはしません。特に開発チーム内部での取り組みについては、どんどん提案でき、すぐ反映されます。技術やアーキテクチャ、開発環境、ツールなどに関して「やりたいこと」があれば、どう実現するかを自分で考えて進められるのはやりがいの1つです。変えることには大変さもありますが、ソフトウェア開発者としての楽しさも多いプロジェクトだと思いますし、大企業であるからこそ大きな社会貢献に繋がる改善を行えていると感じます。
入社後、未経験の機械学習にもチャレンジ
——尾上さんにとって、入社後の印象に残っているチャレンジはなんですか。
尾上 : 私も山田さんの言うように、個人の意見が届きづらいといったイメージは全然ないですね。指示に従って処理するだけの仕事は今まで本当になくて、上司に相談しながらも全部自分で考えながら仕事を進めてきました。
入社以来、ずっと同じ上司なのですが、いつも冗談で「何かあったら私が腹を切ります」と言ってくれる方なので、安心してチャレンジングな提言ができています。
印象深いのは、入社後すぐに機械学習を使った予測モデルを作成する機会を与えられたことです。それまで機械学習に触れたことがなかったので、ほとんど分からないレベルから始めたのですが、今では適切に活用できるようになりました。上司が機械学習をよく理解している方で、わかりやすく理論立った道筋を示してくれたおかげだと感謝しています。
パナソニックでソフトウェア開発に携わって得られたもの
新しい価値観と出会う面白さ
——お二人は、領域は違いますが、パナソニックでソフトウェア開発に携わっている点で共通しています。これまでを振り返ってどのようなことを得られましたか。
山田 : 当然、技術的スキルは向上しました。私の場合ソフトウェア開発は組み込み機器に始まりスマートフォンアプリやサーバ上で動作するWebアプリ開発。技術分野としては無線通信、NW、画像処理、ディープラーニングやデータ分析など幅広くトレンド技術に携わらせていただいているなと感じます。ただ、それ以上にコミュニケーションスキルの面で大きく成長できたと思います。専門性や経験、立場などによって価値観は人それぞれで、同じパナソニック社内なのに大きく価値観が異なる人もいます。
その人に仲間として加わって力を発揮してもらうにはどうすればいいのかを考えながらプロジェクトをまとめる経験は、ただプログラムを書いているだけだと得られないもので、日々新しい価値観に触れることを楽しんでいます。
尾上 : 学生時代から活用してきたデータ分析手法についても、常に進化しています。例えば同じ部署には先輩後輩関係なく私よりもプログラムが得意な人がいるので、どのようなツールや手法を使っているのか聞いて取り入れ、効率化を図るなどアップデートを繰り返してきました。
またプレゼン力や資料作成能力が向上したこともを実感しています。学生時代も発表する機会はありましたが、聴講者はみんな私の研究に興味を持って聞いてくれていました。しかし企業に入るとそうはいきません。相手の興味や立場にあわせて、どれぐらいの粒度で説明するべきか、どこに手間をかけて準備するかが変わってきます。会社でのプレゼン報告経験を通して、相手が求めている情報を適切かつ簡潔に伝えるというスキルが身につきました。
——先ほど、機械学習は入社してから学んだというお話でしたね。
尾上 : 仕事を通して覚える以外にも学びの機会はあります。社内では勉強会やセミナーが活発に開催されていて、興味のある人が集まり、切磋琢磨しながら互いに技術や知識を高めあっています。機械学習は注目されているテーマの1つですが、他にも新しい技術や知識を身につけようと、様々なテーマの勉強会やセミナーが立ち上がっています。
このような機会を通して、幅広い領域で新しい技術の研鑽をした人材から新しい学びを吸収していけるのもパナソニックならではの良さだと感じます。
——空質空調事業に携わるなかで、どんな事にやりがいを感じていますか?
尾上 : 一般的なソフトウェア開発では、そのソフトウェアが動作している現場に行くことが少ないのではないでしょうか。
私の場合は現場に行くことが多く、ソフトウェアが動作している空間で実際に過ごされている店員さんやオフィスの方に話を聞くことで、自分が開発したアルゴリズムがどのような影響を与えているのかを直接確認できるため、大きなやりがいを感じられます。
「自分の仕事とそれを実際に利用しているお客様とのつながりが見えづらく、やりがいを感じられないな」と思っている方が、転職の選択肢としてパナソニックの空質空調事業に興味を持ってもらえたらうれしいですね。
いま本当に新しいことを幅広くできる人が要望されているところかと思うので、逆にそれに合うなという人にはガンガン手をあげていただければと思います。
山田 : 当社の空質空調事業は今、成長フェーズの会社であることも魅力ではないでしょうか。従来の製品増版によるモノ売りの収益成長だけではなく、今私が担当しているようなアプリや、それらを発展させたサービスによるコト売りでの成長を画策している状態にあります。コト売りによる高成長実現のためにはまだまだ戦力が足りていない状態ではありますが、言い換えれば新天地で新たな収益の柱を構築しようという「挑戦するフェーズ」であり、そのために一緒にチャレンジしたい人を必要としています。
こういった状態でありますので、本当に新しいことをやりたい、能動的に手を動かしたいという人にはかなり向いている会社だと思います。
——最後に、パナソニックでこれから挑戦していきたいことを教えてください。
尾上 : 私は担当している中小規模の店舗空調省エネの実証を引き続き推進し、早く商用化させたいですね。大部分の業務用の空調設備は、まだクラウドにつながっていません。将来はクラウドにつながっていることが当たり前になり、ユーザが空調の存在を意識しなくても快適な空間を提供できる世の中にしていきたいと思っています。
それを実現させるためには、データ分析やモデル開発の自動化が課題となってきます。今は実証段階で対象店舗数が数店舗と少ないため、それらの作業は人の手で行っていますが、今後1000店舗、2000店舗と対象が広がれば、現状の手法ではとても手が回りません。そこで、どのように自動化を図り、多店舗展開を実現していくかが、業務用空調の目指すべき姿を実現する重要なポイントになると考えています。
山田 : 今の部署は設計書にしろ、開発体制にしろ、かなり自由に変えたり改善したりできているのですが、それでもまだまだ改善していきたい、刷新してしまいたいと思う部分は沢山あります。例えば開発しているソースコード一つとってみても、冗長な記述や仕様変更などで不要となった処理を削除しようとした際に、開発会社からは「過去に実施したテストがやり直しになるからそのままにしておけませんか?」といった提案を頂くこともあります。基本的にソフトウェアの改善活動は外部から見た時の挙動は変えずに、プログラムの内部構造を整理する「リファクタリング」を正義とする文化が確かに存在しますが、思い切って書き変えることで劇的に改善することも往々にしてあります。難しい意思決定もやるべき改善は現場手動でこれからもドンドンしていきたいと思います。
また、これまでアプリ開発の手法は基本的に全てのプロジェクトをウォーターフォールで開発していました。ウォーターフォール型の開発だと必要な機能を確実に提供できますが、不確実性が高くなっている現代では、かえって顧客が求めている価値とずれていってしまうケースもあります。そこで、最近は要件に応じてアジャイル開発を取り入れることで真に「くらしに寄り添う」ための新しい取り組みを始めております。必ずしもアジャイル開発がよいということではありませんが、やはり私たちがよりタイムリーに、お客様に機能提供していくためにはこういったアプローチも必要であると考えています。
特にエアコンは季節に密接に関連する機器なので、必要な時期に機能提供できなければ使われるのが1年後といったことも起こりえます。お客さまに新しい価値を提供するためにも、開発手法なども進化させていきたいと考えています。
編集後記
今回取材したお二人は、業務用の空調と家庭用エアコンのアプリという、一見すると大きく異なる領域で業務をされていますが、最終的には利用する人がおり、どちらも生活に寄り添うものという点では共通しています。また、いままで空調機もエアコンも、ハードとしての機能が重視されるというイメージがありましたが、IoTの技術によってソフトウェアやフロントエンドのUI/UXがより重要になってきているのだと感じました。暮らしの豊かさをソフトウェア技術で貢献するだけでなく、チャレンジングで能動的な人材を求めているというパナソニックにおける空質空調事業の取り組みは今後も目が離せません。
AI・クラウド人材募集中!
「空気から、未来を変える。」をスローガンに掲げる、
パナソニック空質空調社で、これからの空気に、イノベーションを起こしてみませんか?
採用サイトはこちらから
取材/文:ノーバジェット