Twilioの魅力について、日本初総販売店のKDDIウェブコミュニケーションズとTwilio Japanに話を聞いてみた
つい20年前まで、顧客とのコミュニケーションの手段といえば電話やFAX、紙のDM、もしくは対面による説明が一般的でした。現代社会では打って変わって、スマートフォンが普及し、SMSやチャット、ビデオ、SNSなど、タッチポイントとなるチャネルは実に幅広く、そしてデジタル化されてきています。
便利になる一方で顧客接点が多くなるということは、それだけ管理コストが高まり、オペレーションも煩雑になるということ。せっかく顧客とのやりとりの自由度が高まっていても、うまく活かせていない企業は少なくなく、それがすなわちDXの遅延にもつながっていることは、あながち間違いとは言えないでしょう。
そんな「顧客とのコミュニケーション」に課題を抱える企業が注目するのが「Twilio(トゥイリオ)」です。たった数行のコードからコミュニケーション基盤の構築が可能なクラウドコミュニケーションAPIであり、ここ数年で日本における導入数が飛躍的に高まっています。
プロダクトとしてどのような思想と目標を掲げているのか。また、導入各社ではどのように活用しているのか。今回は、日本で最初の総販売店となった株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ(以下、KWC)とTwilio Japanのおふたりにお話を伺いました。
目次
プロフィール
Twilio本部 本部長
Senior Manager, Enterprise Sales, Japan
「皆さんがTwilioを使って何を作るかとても楽しみです」
――まずは「Twilio」がどんなプロダクトなのか。その思想や特徴について教えてください。
青木 : プロダクトの歴史からお伝えしますと、Twilioは電話とSMSのAPIからスタートしました。米Twilio社CEO(最高経営責任者)のジェフ(Jeff Lawson氏)によると、当時彼が携わっていた製品でSMSを送ろうとしたときに、キャリアとの接続や高価な機器を導入する必要があり、かなりハードルがあったと言います。SMSの送信という、たったそれだけのことなのに簡単にできない。なぜこれがAPIとして提供されていないのか。そんな課題意識からTwilioは2008年にスタートしました。
岩上:つまり、「皆さんがTwilioを使って何を作るかとても楽しみです」ということです。我々としてはお客さまに対して良いものをご提供していくので、お客さまは我々のツールを使って面白いものはもちろん、利便性向上やお客さまとの接点を広げ、企業とお客さまの距離を縮めてもらいたいという、メッセージを常に発信していますね。
――開発者的な目線がすごく強いということですね。
青木 : Twilio自体、APIプラットフォームサービスとして様々な機能を提供しているのですが、本当にアイデア次第で様々なことが実現できるクリエイティブなプロダクトだと、私自身感じています。デベロッパーの力で世の中を変えていく思想が強いかなと感じます。
次々とリリースされる「コミュニケーションAPI」群
――もともとは電話とSMSのAPIとしてスタートしたいうことですが、現在はどのような機能を提供しているのですか?
青木 : 2016年あたりからビデオやチャットといった新しいコミュニケーションチャネルのAPIが登場し、そこからSNS連携にも力を入れはじめました。近年では「コミュニケーションAPI」というメッセージを強く発信しており、それに付随したAPIを提供するようになっています。
青木 : またそれに併せて課題となるのが「開発の手間」です。この課題は、機能が充実して自由度が高くなってきたからこその悩みだと言えます。これに対しても、いかにそこの部分を楽にするかということで、そのためのツールやソリューションに近い形のものもご提供しています。
――具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
青木 : たとえば「Twilio Studio」というビジュアルアプリケーションビルダーです。Twilio Studioを用いてブラウザ上にあるキャンパスにモジュールを配置して線でつなげていくことで、簡単にコミュニケーションワークフローを構築することができます。もちろんそれだけではなく、現在使っているサードパーティ製のシステムや基盤との連携などもできるので、自動応答などの仕組みもシームレスに作ることができるわけです。
――より直感的に構築を進めることができそうですね。
青木 : あとは「Twilio Flex」というソリューションがあります。トップクラスの柔軟性を誇るクラウドベースのコンタクトセンタープラットフォームで、ゼロからコンタクトセンターを作らずとも、独自のビジネスニーズにフィットするコンタクトセンターを作ることができます。もちろん、マルチチャネル対応です。
他にもTwilio本社では様々な機能提供を開始しており、日本でも順次展開に向けて動きはじめています。
岩上:日本市場への新機能の展開については、進め方含めてTwilio Japanでも戦略的に考えていくことを大事にしていますので、日々KWCさんと会話させていただきながら検討を進めていますね。
Twilio講座 入門編①:Twilioとは? APIの特徴・メリット・料金を紹介
2013年から蓄積されたナレッジやノウハウが武器
――Twilio JapanとKDDIウェブコミュニケーションズでは、提供するサービスはどう変わってくるのでしょうか?
青木 : 基本的に違いはありません。同じものをご提供しますし、同じようにサービスやソリューションをご提供しています。
――そうなんですね!正直なところ、両社はお互いのことをどうご覧になっているのでしょうか?
岩上:KWCさんは、日本市場の基盤を作っていただいた最重要なパートナーだといつも感じています。KWCさんのご尽力のおかげでTwilio Japanのオフィスを構えることができ、知名度の向上はもとより、ソリューションとしての価値もご理解いただけていると感じます。より長い歴史を作っていくための重要なパートナーとして、今後も引き続き深い関係を作っていきたいなと。
青木 : 結論としては岩上さんと一緒になるのですが、弊社としても末長くお付き合いいただきたいパートナーだと考えています。
岩上さんがおっしゃったように、弊社は2013年から日本におけるTwilioの総販売店としてサービスを提供してまいりました。当時は独占販売権をもって日本展開しており、弊社がある意味で、現在のTwilio Japanさんの立ち位置でサービスを回してきたという経緯があります。
ずっと1社でやってきたわけですが、2019年に正式にTwilio Japanが法人化したことで、今まで以上に認知を広げる活動をご一緒できていると感じています。現に今も、様々な顧客案件をご一緒しているところです。
――なるほど。もう少し突っ込んで伺いますが、KWC経由でTwilioを契約すると、どんなメリットがあるのでしょうか?
青木 : 弊社には2013年からのメンバーもいますので、一番大きなメリットとしては、これまで蓄積してきた導入や運用のナレッジがかなり多いことだと思います。おかげさまで本当に多くのお客さまにお声がけいただいておりまして、業種業態、そして企業規模を問わず、多くの事例が日々生まれています。
岩上:僕からお伝えするのもなんですが、弊社と同じサポートがありつつ、8年近く蓄積された様々なナレッジやノウハウがあるという点は、大きいんじゃないかなと思います。
これからのTwilioが目指す “Customer Engagement Platform”
――昨年もTwilioのグローバルカンファレンスである「SIGNAL 2021」が開催されましたが、ご覧になってみていかがでしたか?
青木 : 内容はもちろんのこと、参加人数の多さにプロダクトとしての成長を改めて感じました。SIGNALは他のカンファレンスと同様に、2019年まではリアルの会場で行われていました。年々参加者が増えていったわけですが、2020年ではCOVID-19の影響でオンラインへと移行し、その結果として参加者の桁が1つ増えることになりました。今年も数万人規模のデベロッパーが参加したと聞き、世界中の開発者が興味をもつプロダクトになったんだなと感じています。
――やはり地理的な制約が取り払われたのは大きいですね。
青木 : あと、SIGNAL冒頭でジェフが様々な数字を発表していたのですが、それも圧巻です。毎年、数字がどんどん大きくなっているので、もう最近では日々の数値が天文学的なものになってきていますね(笑)。
――岩上さんとして、印象に残っている発表は何でしたか?
岩上:今回の発表の中でジェフが特に強調していたのが「パーソナライズ」「リアルタイム」「テーラーメイド」の3つです。Segment社を買収したことで、変化する顧客ニーズにもシームレスに対応できるようになってきました。だからこそ、顧客と企業をしっかりとつなげるプラットフォームになると。
ジェフはこれを総じて“Twilio Customer Engagement Platform”と表現しており、そのために必要なこととして、顧客とコミュニケーションを取るための幅広いチャネルと、それらを制御するためのアプリケーション、そしてそれぞれの顧客に合わせたパーソナライゼーションだと言っていました。とにかく顧客目線がブレないなと、改めて感じましたね。
――顧客データの活用という文脈は、世界中で大きなトレンドになっているからこそ、日本市場でも反響がありそうですね。青木さんはいかがでしょうか?
青木 : やはり「Regional Twilio」は、待ってましたという感じですね。一番期待値が高いです。各国のレギュレーションに準拠する形でデータ保管等を実現するというものなのですが、こちらは2016年くらいから日本でもニーズがあったものになります。
特に大手企業さまになればなるほど、データの保管場所やセキュリティは非常に大事な話になってくるので、それぞれのリージョンの中にある状態というのはとても重要だと言えます。
まだ発表されたばかりなので欧米市場での展開が先だと思いますが、近く日本市場でも提供できるようにしたいですね。
Twilioをうまく活用した福岡市とANAの事例
――日本で最も長くTwilioのサポートをされてきたKWCさんから見て、Twilioをうまく活用できている事例を教えていただきたいです。
青木 : アイデア次第で様々なことができるため、解決策もアプローチもまちまちで、迷ってしまいますね。
分かりやすい事例でいくと、よくお話しさせていただくのが福岡市さまですね。行政機関として、ネット環境を持たない人でも PM2.5 の情報を簡単に得られる仕組みを構築したという活用ケースです。
――PM2.5というと、たしか10年前くらいに大きな話題になりましたね。
青木 : 2013年頃に話題になった際に、福岡市でも市内の大気汚染状況に関心をもつ市民が増えました。それに伴って市の担当者はホームページ上に日々のPM2.5値を公開していたわけですが、行政機関のホームページを見る方はそんなに多くなかったわけです。
特に高齢者の方はインターネット環境を持っていない方も多いので、結果として電話によるお問い合わせが増え、一時期は回線がパンク状態になったりもしました。
そこで着目いただいたのがTwilioです。PM2.5に関する情報の回答を自動化する「PM2.5 ダイヤル」を構築して、担当部署が稼働することなく、電話の音声通話を通して市民にリアルタイムで情報提供ができるようにしたのです。
青木 : これはほんの一例にすぎず、障害の自動監視で運用監視コストを90%以上削減できたり、コールセンターの生産性を劇的に向上できたなど、様々な成功事例があります。どれも印象的ですよ。
――シンプルだからこそ効果的ですね!岩上さんはいかがでしょうか?
岩上:私たちの方では、たとえば全日本空輸株式会社さまに「Twilio SendGrid」というプロダクトをお使いいただいています。これはエンタープライズ規模のメール送信をスピーディーに実現するもので、これが航空業界の高いメール配信要件に合致したのです。
飛行機に乗るとき、台風などの影響で遅延が発生したり、搭乗ゲートが変わるといったことはよくあると思います。その際、空港内アナウンスだけだと聞き逃してしまう方もいるので、必ずメールでのご案内をするのですが、そのメールは可能な限り早く、そして正確に乗客へと届く必要があります。
既存システムのままでは、多様化するチャネルのバリエーションに対応することが難しく、アーキテクチャから一新してTwilioをご導入いただきました。すでに2年近くお使いいただいていますね。
――本当に様々な使い方ができるんですね。冒頭に「開発の複雑化」というお話があったと思いますが、プロダクトでカバーできる範囲も限界があると思いまして、その辺りはどのようにサポートされているのですか?
青木 : まず、多くは英語にはなりますが非常に豊富なドキュメントを整備していますので、そこで細かい仕様やユースケースなどをチェックしていただけます。もちろん、弊社がローカライズした日本語マニュアルもあります。
また、無料の相談会を毎週開催しており、弊社のセールスメンバーが同席させていただきながら、「何をしたいのか」に対してシステム構成などのアドバイスをさせていただいています。
――相談会はサインアップした顧客が対象となるのでしょうか?
青木 : いえ、サインアップ前からご参加いただけますよ。そもそもやりたいことをTwilioを使って実現できるのか。そこからご確認いただくことができるようにしています。
両社で高め合っていきたいTwilio Magicの文化
――改めて、どんな悩みを持つ会社にTwilioを活用してほしいとお考えでしょうか?
青木 : 誰でも使えるからこそ、逆に「こんな会社」と限定するのは難しいですね。大きなキーワードとしては先ほどもお伝えしたとおり「コミュニケーション」なので、そのような観点で課題を抱えている企業さまにはお役に立てると思っています。料金設定も完全従量制なので、利用開始のハードルも非常に低いと思います。
――なるほど。これからプロダクトの導入を増やしていくにあたって、両社としては、具体的にどんな形でどんな内容の協業を予定/検討されていますか?
青木 : これは私見も入ってしまうのですが、まだTwilioを知らない方が多いかなと感じています。まずは知ってもらうというところが大事なので、今までアプローチできていなかった顧客層へと一緒に向き合っていけたらと思っています。もちろん従来通り、セミナーを共催したりお客さまと一緒にお打ち合わせするなどは続けてまいります。
岩上:僕たちから見ると、Twilioのユースケースはここ2年くらいで一気に増えたなと感じています。ネットで買い物をしたり、オンラインの動画を見たりと、消費者の生活様式が変わる中で各社もそこに力を入れており、そうは言ってもセキュリティも重んじる国柄なので、これからますますTwilioはスタンダードになってくると考えています。
だからこそ、今まで培ってきた豊富な実績を携えているKWCさんとは、要所要所でアドバイスをいただきながら、一緒にTwilioの啓発に取り組んでいきたいと思っています。
――いいですね。それでは最後に、読者の皆さまにメッセージを一言ずつお願いします!
岩上:まだTwilio Japanで2年半くらいしか働いていないのですが、Twilioには“Twilio Magic”と呼ばれる行動指針がありまして、僕はその中の“Wear the customer’s shoess:時間をかけてお客さまを深く理解し、お客さまの視点から問題を解決します。信頼を構築するために、お客さまとのあらゆるコミュニケーションを大切にします。”という考えに、特に共感しています
最後はここに落ち着くのかなと思っていまして、プロダクトとしてもその姿勢を体現した、素晴らしいものだと思っています。
青木 : 私自身は2015年からTwilioに携わっているのですが、このサービスに携わりたいなと思った理由は、「純粋に面白い」からです。電話をプログラムで制御するという発想が当時はなかったので、今までの常識を覆していると純粋に思ったわけです。
再三申し上げているとおり、解決できる課題は無限だと思っているので、まずはTwilioで何ができるのかを1回触ってみていただきたいです。面白さがお分かりになると思いますよ。
編集後記
私自身、QiitaやProtoPediaなどをチェックしていると、Twilioについて取り上げたものや、Twilioを活用したプロトタイプの投稿をよく目にします。まさにインタビューでもお話があったとおり、様々な用途で各種APIが活かされているので、組む側としてはクリエティビティの発揮しどころだなと感じる次第です。
ファンマーケティングやコミュニティマーケティングといった顧客アプローチがビジネスサイドで盛んになっているからこそ、顧客とのリレーション構築に課題のある会社は、Customer Engagement Platformを掲げるTwilioを活用してみると良いのではないでしょうか。
取材/文:長岡武司
撮影:平舘平
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