はじめに
2025/04/03現在、全国で44の自治体(市町村)がオープンデータとして地番図をGISデータ(Shapeファイル)で公開しています。
44自治体で1,050万ポリゴンとなります。
私が44自治体のデータ変換を行ったところ、様々な課題・問題がありましたので、それらをまとめるとともに、自分が望むデータ仕様を記録したいと思います。
【課題】
<課題1>
地番図オープンデータの情報は、自分が探さないといつ・どこの市町村が出しているか分からない
<課題2>
自治体のオープンデータの公開先がバラバラで、ポータルサイトがない。
<課題3>
地番図、地番参考図、参考地番図、地籍図など単語のバラツキがある。
<課題4>
地番図データフォーマット(保存形式)
<課題5>
地番図データの座標定義(平面直角座標系・緯度経度系)
<課題6>
地番図データについて属性のバラツキがある。
【課題に関する考察及び解決案】
<課題1>
地番図オープンデータの情報は、自分が探さないといつ・どこの市町村が出しているか分からない
<考察1>
現在、地番図を自治体がオープンデータとして公開しているかは、「各自の調査」が基本必要となります。
ネットで「地番図 ○○市 オープンデータ」と入れて検索したり、SNS(Facebook・X)で調べたりします。
また、今ここ何番地?や地番Zoo、open-hinata3などで地番図をオープンデータとして公開している自治体をまとめているものもありますが、現行民間依存となっています。
【今ここ何番地?:地番図リスト】
https://office-shirado.com/imakoko/data_list_chibanzu/
【地番Zoo】
https://chosashi-data.org/shirado/chibanzoo/
【open-hinata3:全国地番図公開マップ】
https://kenzkenz.xsrv.jp/open-hinata3/?s=6L2yQjj
<解決案1>
G空間情報センターなどに一本化して検索できるようにしたり、地番図公開アラート・メール配信機能もあると嬉しい。
不動産情報ライブラリーにも少し期待したい。(地番図配信)
<課題2>
自治体のオープンデータの公開先がバラバラで、ポータルサイトがない。
<考察2>
自治体のHPにオープンデータとして公開されているものや、都道府県のオープンデータカタログ、G空間情報センターなど様々な箇所にデータがあるため、一カ所で検索することができない状況である。
また、自治体によっては、独自のWebGIS(Web地図)からダウンロードするなどのものがあり、取得のスクリプト処理ができない状態となっている。
<解決案2>
解決案1と同じように、G空間情報センターなどに一本化して検索できるようにしたり、地番図公開アラート・メール配信機能もあると嬉しい。
不動産情報ライブラリーにも少し期待したい。(地番図配信)
<課題3>
地番図、地番参考図、参考地番図、地籍図など単語のバラツキがある。
<考察3>
現状、検索サイト(Google等)で各自「地番図」の情報を検索しなければならない状況であるが、「地番図」以外にも「地番参考図」、「参考地番図」、「地籍図」などの用語を用いられており、検索しにくくなっている。
特に、「地籍図」は地籍調査(国土調査)の成果図として、「地籍図」という用語を使用するため、地番図と同異議なのかが判断しにくい。
<解決案3>
地番図の用語定義が必要(法律、ガイドライン、仕様書)
個人的には、「地番図」を推したい。
<課題4>
地番図データフォーマット(保存形式)
<考察4>
地番図のデータフォーマットについては、ほぼ100%Shapeファイルとなっている。
Shapeファイル自体の抱える問題もあることから、他のフォーマット(GeoJSON・FlatGeobuf・PMTilesなど)も検討すべきであると思う。
また、ファイル名もファイル名から、自治体コード・自治体名・地番図・データ年度が推測できるようにした方が良いと思う。
<解決案4>
GeoJSONをZip圧縮した形式が望ましいと考える。
※GeoJSONのままだと、容量が大きい(なのでZipに圧縮)
※GeoJSONは、属性項目名の文字数制限等がないため、現行抱える問題をクリアできる。
ファイル名としては、
07204_Iwaki_20240101_20240701.geojson(.zip)
(市区町村コード:5桁、市区町村名、データ更新日、公開日)
が候補かと思われる。
<課題5>
地番図データの座標定義(平面直角座標系・緯度経度系)
<考察5>
多くの自治体では、Shapeファイルで提供され、データは平面直角座標系(X・Y座標)となっている。
GIS観点で考えると、緯度経度系の方がデータとして処理しやすい。
平面直角座標系:m単位で小数点以下第3位(mm単位)が基本
緯度経度系:小数点以下10桁ほどまでないと平面直角座標系のmm単位の復元が難しい
平面直角座標系:CAD用のイメージ
緯度経度系:GIS用のイメージ
<解決案5>
緯度経度系でのデータ提供を基本とするのが望ましい
<課題6>
地番図データについて属性のバラツキがある。
<考察6>
現行では、各自治体ごとに各々独自の属性を持たせており、自治体ごとの処理が別々に必要であるため、スクリプト処理(プログラム処理)ができない状況である。
今後、オープンデータとして地番図が公開されるとより複雑になってくる。
※情報公開法に基づく開示請求による取得も同様
地番図で必要なのは、最低「所在」・「地番」のみ
※地番検索リスト等のために、「所在コード」も欲しくなる。
自治体によっては、「AzaCD」はあるが「Aza」(字名)がないデータも散見される。
地番も、「本番」・「枝番」・「枝々番」などに分解されているものもあり、演算処理が必要になるケースもある。
また、字コード・字名は別ファイル(PDF・CSVなど)提供とされている自治体もあり、処理する難点の1つとなっている。
その他、項目名がバラバラであり、各自治体のデータごとに項目名も確認しなければならないのがネックとなっている。
<解決案6>
項目名・形式(文字型・整数型)などの共通仕様書が必要と考える。
案としては、以下のとおりである。
・所在コード【自治体独自】(文字型)
・所在コード【法務省】(文字型)
・所在コード【アドレス・ベース・レジストリ】(文字型)
・所在(文字型)
・地番(文字型)
を基本とし、その他の項目を追加しても良い
「所在コード+地番」をユニークキーにする。
※どの所在コードを使うかは悩むところ
同じ所在・地番が存在するときは、1つのFeatureに2つの形状を入れてもOK
別のFeatureにする場合は、識別子を入れる(W1、W2など)
その他の項目としては、
・地目(登記)【文字列】
・地目(現況)【文字列】
・地積(登記地積)【文字列】
・地積(課税地積)【文字列】
・不動産番号【文字列】
・不動産ID(不動産番号と同一?)【文字列】
・その他【文字列】
が考えられる。
<まとめ>
2025年4月時点では、地番図に関する共通仕様書はないものであるが、上記のような課題もあることから、共通仕様書(ルール・ガイドライン)を策定する必要が数年内に出てくるものと思われる。
この投稿は、作業実績に基づき気づいたところをピックアップし、解決案を勝手に考えたものである。
もし、国等の期間で、共通仕様書やガイドラインを策定するにあたっては、「GISに強い土地家屋調査士」をアドバイザーとして関与させることが必要と思われる。
※土地家屋調査士は、公図・登記に精通した法務省管轄の民間資格者
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