はじめに
こんにちは、大学3年生の自称ハッカソンプレイヤーです。
普段はハッカソンでゲームを作っています。今年(2025年)は15回以上のハッカソンに参加し、1週間、長くても2ヶ月というスパンで数多くのゲームを作ってきました。また、ほとんどのハッカソンで企画を主導し、並行してゲームクライアントサイドの実装も担当してきました。JPHACKS 2025 Award Dayで審査員特別賞をいただいた経験もあります。
こうしたハッカソンや展示イベントに参加した際、他の参加者の方から 「どうすればそんなアイデアを思いつけるんですか?」 と驚かれることがよくあります。
クリエイターとして、自分のアイデアが「新しい体験」として認められ、その発想の根源に興味を持ってもらえることは、本当に嬉しく、最大の励みになっています。
そこで今回は、この質問への回答として、私がハッカソンという 「限られた時間・リソース」 の中で、いかにして 「記憶に残るゲーム」 を企画・実装しているか、私なりの考え方や戦略を共有したいと思います。
「個人や少人数チームで、どう戦えばいいか分からない」
「技術力はあるけれど、面白い企画が思いつかない」
そんなエンジニアや学生クリエイターの方へのヒントになれば幸いです。
1. 戦略:潔く「諦める」ことから始める
まず、ハッカソンにおける私の置かれている状況はいつも以下の通りです。
- 開発期間: 数日〜1週間(ハッカソン中心)
- チーム: 初対面のメンバーとの即席チーム、あるいは普段組み慣れていないメンバー
- リソース: アーティストやシナリオライターは不在(ハッカソンあるあるですが、全員エンジニアという構成がほとんど)
この状況で、プロのインディーゲームや専門学生の卒業制作のような 「重厚なストーリー」「緻密なアニメーション」「やり込み要素満載のボリューム」 を目指すとどうなるか?
間違いなく、中途半端なものができて負けます。
だから私は、それらを 潔く「諦める」 という選択をしました。
「長時間遊べるゲーム」ではなく「一発ネタ、インパクト重視のゲーム」を作る
私は自分のゲーム作りをこう例えています。
- 企業のゲーム: 誰もがいつでも遊べて、安全で、長く愛される場所。
- 私のゲーム: 5分、10分で飽きられるかもしれない。でも、その瞬間、誰もが熱中して記憶に残る斬新なゲーム。
ハッカソンという場において必要なのは、長期的なLTV(Life Time Value)ではなく、審査員や観客の心を一瞬で掴む「最大風速」 です。ここに全リソースを集中させるのが私の生存戦略です。
2. 思考の核:『Streamerio』に見る「場のハック」
この思考が最も具現化されたのが、技育展などで発表した 『Streamerio(ストリーマーリオ)』 という作品です。
Streamerio 作品紹介
出発点:ハッカソン参加者全員が楽しめるゲームを作りたい
ハッカソンの最終発表や展示会を思い出してください。
ステージに立つプレゼンター(1人)に対し、客席には多数の聴衆がいます。規模は30〜60人、多い時は200人を超えることもあります。多くのチームは、その聴衆の前で「自分たち(数人)が遊んでいる様子」を見せます。
私はこれを見て 「もったいない」 と感じました。
「せっかく会場にたくさんの人がいるのに、なぜ登壇者以外はただ見ているだけなのか?」
「参加者全員が一つのゲームを同時に遊ぶことで一体感が生まれるようなゲームを作りたい!」
この 「1対多」というプレゼンの構図 を、そのまま 「1対多」のゲーム に変換できないか? そう考えたのが企画のスタートでした。
実装:「見るだけ」の観客をプレイヤーに変える
そこで考えたシステムが、「配信者&視聴者 vs 視聴者 のライブゲーム」 です。
- 配信者(Unity): 会場のスクリーンでプレイ。ただし、移動とジャンプしかできない最弱の存在。
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視聴者(Web): スクリーン上のQRコードをスマホで読み取るだけで参加。
- バディ(味方): ボタン連打で配信者の画面に魔法を繰り出し、配信者を守る。
- ビラン(敵): ボタン連打で配信者の画面に敵を召喚し、配信者を倒す。
アプリのインストールは不要。その場にいる全員がスマホを取り出した瞬間、「聴衆」が「プレイヤー」に変わります。
配信者はあまりに弱く設定しているため、 「会場のみんな(視聴者)の助けがないと絶対にクリアできない」 というバランスにしました。これにより、ゲーム画面の中だけでなく、会場全体の一体感そのものをハックする体験 を作り出しました。
3. アイデアの源泉:「企業がやらないこと」をやる
『Streamerio』に限らず、私は常に 「企業が絶対に商品化しない(できない)こと」 を企画の種にしています。企業はビジネスとして「万人受け」や「安全性」を考えますが、ハッカソン、ましてや学生による開発にその制約はありません。
過去の「尖った」企画例
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叫ぶオセロ
- テーマ:「K.A.N.S.A.I.」
- 内容:マイクに向かって 「なんでやねん!」と叫ぶ 関西vs関東オセロゲーム。声量やイントネーションの精度によって、関東陣営のコマをひっくり返して状況を有利に進める。
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0ボタンコントローラー
- 問い:「ゲームにボタンは必要か?」
- 内容:ボタンもスティックもないコントローラーで、どう遊ばせるかを追求。
- URL:Notion Link
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YubiSoccer(指サッカー)
- 問い:「手で脚を操作できたら、それは真のUXなのではないか?」
- 内容:ピースサインを逆さにして指をバタバタさせる動きを「走る足」に見立て、モーションカメラでトラッキングして操作するサッカーゲーム。
- URL:Notion Link
「操作性が悪い?」「すぐ飽きる?」
それでいいんです。
「一見よく分からないけど、やってみると馬鹿馬鹿しくて面白い」という体験こそが、ハッカソンにおけるブルーオーシャンだからです。
4. 結論:プログラミングを「体験」に変える力
どれだけ突飛なアイデアも、口だけで終われば「妄想」ですが、動くものとして提示できれば「イノベーション」になります。
私の強みは、こういった「一発ネタ」を、UnityやWeb技術(時にはハードウェア連携)を駆使して、ハッカソンの期間内に実装し切るエンジニアリング力 にあると考えています。
- 制約を武器に変える(長期戦を捨てる)
- 場の構造を利用する(1対多の活用)
- 技術で「バカバカしいアイデア」を「動く体験」に昇華させる
- プランナーとしてコア機能を理解し、リーダーとしてチームの進捗を管理することで品質を保証する
これが、私が15回以上のハッカソンを経て辿り着いた、制約が厳しい中で成果を最大化する企画術 です。
もし、次のハッカソンで「正攻法では勝てないな」と思ったら、一度 「他のチームが考えないような新しい体験」 を作るつもりで、極端に尖った企画を考えてみてはいかがでしょうか?