【Dart】Dart 型変性（Variance）

1. 型変性とは？

「型変性（variance）」とは、型パラメータの階層関係をどのように扱うかを示す性質です。

つまり、
Dog が Animal のサブタイプなら、
List<Dog> は List<Animal> のサブタイプになるのか？ という話。

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2. 基本の型階層（サンプル）

class Animal {}
class Dog extends Animal {}
class Cat extends Animal {}

（簡単に言えば Dog ⊂ Animal）

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3. 変性の3種類

変性タイプ	意味	Dartにおける扱い
共変 (Covariant)	サブタイプが許可される	戻り値・covariant修飾子
反変 (Contravariant)	スーパタイプが許可される	メソッド引数（デフォルト）
非変 (Invariant)	どちらも許されない	ジェネリクス全般 (List<T>)

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4. 共変（Covariant）とは？

「サブタイプを代入してもOK」

Animal animal = Dog(); // ✅ OK（共変）

メソッドの戻り値は共変

class Trainer {
  Animal train() => Animal();
}

class DogTrainer extends Trainer {
  @override
  Dog train() => Dog(); // ✅ OK（共変）
}

つまり、サブクラス型を返すのは安全です。

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5. 反変（Contravariant）とは？

「スーパタイプを受け取れる（より広い型を受け入れる）」

メソッドの引数は反変

class Trainer {
  void train(Animal a) {}
}

class DogTrainer extends Trainer {
  @override
  void train(Dog d) {} // ❌ NG！引数を狭めてはダメ
}

なぜ？

• 親クラスの変数で Trainer trainer = DogTrainer(); としたとき、
• trainer.train(Animal()) を呼べてしまう
• でも DogTrainer 側は Dog しか受け入れられない → 実行時エラー

→ Dart は安全のため、引数を狭めることを禁止しています。

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6. 非変（Invariant）とは？

「型が完全に一致しないと代入できない」

Dart の ジェネリクス（List, Map, Setなど） はすべて非変です。

List<Dog> dogs = [Dog()];

// List<Animal> animals = dogs; // ❌ NG！
List<Animal> animals = dogs.cast<Animal>(); // ✅ 明示キャスト

なぜ非変？

• 型安全のため
• もし animals.add(Cat()) できたら、dogs に Cat が混ざってしまう！

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7. covariant 修飾子がもたらす例外

covariant を使うと、引数を共変にできます（＝反変ルールを上書き）。

class Trainer {
  void train(covariant Animal a) {}
}

class DogTrainer extends Trainer {
  @override
  void train(Dog d) {} // ✅ OK（covariantによる共変化）
}

でも注意

Trainer trainer = DogTrainer();
trainer.train(Animal()); // ❗ 実行時エラー！

→ コンパイルは通るが、実行時に失敗。
covariant は型安全を弱める代償つきの柔軟性です。

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8. Dart の変性ルールまとめ（表）

要素	デフォルト変性	共変許可	反変許可	使用例
戻り値	共変	✅	❌	Dogを返すoverride
引数	反変	❌（通常）	✅	Animalを引数に取る
ジェネリクス	非変	❌	❌	List<T>
covariant引数	共変	✅	❌	FlutterのElement.update()

Dartの安全思想：

「ジェネリクスの変性は非変」
「関数の戻り値は共変」
「引数は反変」
「covariantを明示すると例外を作れる」

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9. Flutter内部での具体例：Element.update()

abstract class Element {
  void update(covariant Widget newWidget);
}
class StatelessElement extends Element {
  @override
  void update(StatelessWidget newWidget) {
    // 特定Widgetに限定できる！
  }
}

Flutterはこの仕組みで、
StatelessElement が StatelessWidget に限定できるようにしている。

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まとめ

項目	キーワード	Dartでの扱い	メモ
共変	covariant	戻り値／covariant修飾子	サブタイプ代入可
反変	contravariant	メソッド引数（デフォルト）	スーパタイプ代入可
非変	invariant	ジェネリクス	一致しないと不可
covariant修飾子	―	引数型を共変化	実行時エラーリスクあり

Dart の「型変性」は、安全性と柔軟性のバランス設計で
「共変＝返す方向」「反変＝受け取る方向」「非変＝固定」と覚えると直感的です。