はじめに
ソフトウェアは「動けばよい」だけでは不十分です。
ソフトウェアが持つ 2つの価値 ― 行動価値と構造価値 ― について整理します。
ソフトウェアの2つの価値
1. 行動価値(Behavior Value)
- ソフトウェアが「正しく動作する」ことから生まれる価値
- 例:銀行システムでの送金処理、ECサイトでの購入処理
2. 構造価値(Structure Value)
- ソフトウェアが「変更しやすい/保守しやすい」ことから生まれる価値
- 例:新機能をすぐに追加できる、障害を迅速に修正できる
短期的価値と長期的価値
- 行動価値はリリース直後からユーザーに実感されやすい
- 構造価値はすぐには見えにくいが、長期的な成長や改善に不可欠
短期(リリース直後): 行動価値 >>> 構造価値
長期(数年後) : 行動価値 <<< 構造価値
イメージ図(価値の推移)
- 行動価値:リリース時に急上昇 → 徐々に頭打ち
- 構造価値:リリース時は低い → 長期的に効いてくる
- 横軸:時間(リリース直後 → 数年後)
- 縦軸:価値レベル
- 行動価値は最初に高いが時間と共に低下
- 構造価値は最初は低いが、時間が経つにつれて重要性が増す
技術的負債とジレンマ
- 行動価値だけを追求すると、コードは複雑化し 技術的負債(Technical Debt) が溜まる
- 結果として、変更コストが上がり、新しい価値提供のスピードが落ちる
つまり、短期的な「動けばよい」アプローチは、長期的には行動価値すら損なってしまうのです。
アーキテクトの役割
ソフトウェアアーキテクトの使命は、2つの価値のバランスを取ることです。
- 行動価値を早く届けるために、無駄に設計を重くしすぎない
- 構造価値を守るために、設計を軽視して短期的利益に走りすぎない
つまり、「短期的な成果」と「長期的な維持可能性」の両立が求められます。
まとめ
- ソフトウェアは 行動価値(動作すること)と 構造価値(変更可能性)の2つを持つ
- 短期的には行動価値が重視されるが、長期的には構造価値がなければ行動価値も維持できない
- アーキテクトはこの2つの価値をバランスさせる役割を担う