この記事は Qiita Tech Festa 2026 の投稿記事かつ いち受託開発現場での生成AI活用の現在地: 2025年版 の続編になります。
はじめに:あれから半年、生成AI活用はどうなったのか?
本編は別に書きたいのですがそれとは別に 「一大 Agent Skillsブーム」 でした。
誰もが手軽にプロンプトやツール拡張を記述し、日常のタスクを自動化・効率化できるのはよかったのですが、かつて、社内業務を自動化するために導入された「RPA」でもたどった構成管理の課題と、Agent Skills になって追加で発生した課題について共有したいと考えています。
構成管理の課題
Agent Skills が社内に乱立し始めると、当然のように「ホスティング」「配布」「一覧化」「オーナー管理」「ライフサイクル管理」といった構成管理の問題が浮上しました。
LLMベンダー各社は、これらを解決するための「ソフトウェア的な管理(Git連携、CI/CD、バージョン管理など)」の仕組みを提供しています。しかし、それを「組織全員でやれるか?」と問われると、私の組織では全員の対応は難しく、かつてのRPA時代と全く同じ「オフィススイートでの管理」が発生しています。
ソフトウェア的管理 vs オフィススィートでの管理
以下の表は、LLMベンダーが推奨するソフトウェア的管理と、オフィススィートでの管理の比較です
| 管理項目 | ソフトウェア的管理 | オフィススィートでの管理 |
|---|---|---|
| ホスティング・配布 | Git リポジトリや専用の Skill Registry によるバージョン管理と配布 | オフィススイートに zip ファイルをアップロードして共有 |
| インストール | gh skill, vercel-labs/skills など | オフィススイートから zip ファイルをダウンロードして展開1 |
| 一覧化と検索 | ポータル画面やCLIからのカタログ検索機能 | 「社内Agent Skills一覧.xlsx」による手動台帳管理 |
| オーナー・権限 | RBAC、CODEOWNERSによる明確化 | スプレッドシートの「管理者」列に名前を手打ち(異動・退職でメンテ断絶しがちなので定期棚卸必要に) |
| ライフサイクル管理 | バージョニングや、廃止対応 | 「同じスキル名だけど使ってるバージョン違いました」が判明するまでのステップが多め |
オフィススィートのファイル共有システム(例:M365 Sharepoint, Google Workspace Driveなど)で使う場合、一般的なファイル管理と同じく、以下のようなことは発生します。
- 申請で管理者のみが配置できる仕組み or フォーム + 自動化の仕組みでないとファイル名やファイル更新のルールがスキルによってブレる
- 管理対象が Zip ファイルなので、展開して前のバージョンを確認しないと同一のスキルのものなのかの保証がない
その結果、想像は出来ると思いますが、野良 Agent Skill が大量にある状態です。
Agent Skills になって出てきた課題
これに加えて Agent Skills になって出てきた課題もあります。
ランタイム・ライブラリの課題
RPAツールはある程度のRPAツール提供側で動作環境の担保(例:RPA作成物実行用のソフトをインストールしないとそもそも動かないなど)があるケースも多かったように思います。しかし、 Agent Skills の実体は Markdown + コードなので、動作させる環境のランタイム・ライブラリの保証がありません。
例えば以下のような事態がありました。
-
OS 標準インストールのバージョンを想定して作られていない
- スクリプト実行のところで失敗してインストールを頑張ろうとして「LLMがインストール必要と言ってますがどうしたらいいですか?」というお問い合わせが出る
- Windows は厳しいことが結構ある ( そのためか microsoft/coreutils のようなツールも出ました)
-
ライブラリ管理の lock ファイルがない
- スキルの初回実行時に最新版のインストールが実行される
- タイミングによってサプライチェーン攻撃を受けるリスクになる
- 特定のLLMしか対応していない独自挙動やファイルレイアウトで作られていて互換性がない2
RPA ではないけどソフトウェアとしても扱われてなさそう課題
これは組織での Agent Skills に対する認知の課題です。RPA が技術的負債になるさいは以下のような認識がありました。
- ツールの提供が止まったら終わり
- 専用ツールのメンテができなくなる
これらの感覚はある程度、期間と共に共有できていました。しかし、現在のところ Agent Skills で発生している諸問題に対してはそうではなさそう、というのが私の所感です。
その原因は Agent Skills はソフトウェアなのだという認識がイマイチなく、ファイルの集合3 くらいの認識になっている印象です。
必然的に プロンプトで文書を生成しているのと変わらない感覚で都度大胆な Vibe Coding による作り直しが行われています 。ソフトウェア構成管理的な観点があまりないので、そうなるのは仕方ないのかもしれませんが、野良forkが無限に作られていて同じようなワークフローを踏むことができなくなっています。
例えば anthropics/skills skills/skill-creatorなどでスキルを作成すると、一定範囲までの入力値テストとフィードバックができるWebアプリも同時に作成されるので、そこでテストをするといった方法もありますが、そもそもそういった工程を踏むものなのかというところの合意や認識ができていない状態だと感じています。
おわりに
Agent Skills の効果的な利用は業務効率の向上に貢献すると思います。しかし、それが 個人利用の範疇を超え、組織として継続性を持たせる必要があるもの(チームで共有するプロセスや重要な自動化など)になった途端、ソフトウェアエンジニアリング的な対応が必要になると考えています。
どのレベルでの統制を行うかはそれぞれの組織次第という結論になってしまうのですが、私の組織だと現状ある程度の管理をしたいという機運はあるもののまだそれぞれが野良スキルを Zip ファイルでやり取りしている状態で、まだまだこれからやることが多そうだな、という印象です。