Codex CLI は AI と対話しながらコーディングやタスクを実行できる強力なコマンドラインツールです。本記事では、Codex CLI の全オプションを体系的に解説します。
目次
共通設定
-c / --config key=value
すべての Codex コマンドで利用できる設定上書きオプションです。
機能:
-
~/.codex/config.tomlに保存された設定値を一時的に上書き - ドット区切り記法でネストした設定にアクセス可能
- TOML または JSON 形式をサポート
- 複数回指定して複数の設定を同時に上書き可能
使用例:
# モデルを一時的に変更
codex -c model=claude-opus-4-20250514
# ネストした設定を変更
codex -c api.timeout=60
# 複数設定を同時に変更
codex -c model=claude-sonnet-4.5 -c temperature=0.8
対話型モード(codex)
基本的な Codex の対話型インターフェース(TUI)を起動するコマンドです。
基本オプション
位置引数 PROMPT
セッション開始時に AI に送る最初のメッセージを指定します。
# 最初から具体的なタスクを指示
codex "Pythonでフィボナッチ数列を計算する関数を作成して"
-i / --image FILE[,…]
画像ファイルを初回メッセージに添付します。複数の画像をカンマ区切りで指定可能。
用途:
- UI のスクリーンショットから HTML/CSS を生成
- 図表やダイアグラムの説明を求める
- エラー画面の解析
# 画像からコードを生成
codex -i screenshot.png "この画面を再現するHTMLを作成して"
# 複数画像を添付
codex -i design1.png,design2.png "これらのデザインを比較して"
-m / --model ID
使用する AI モデルを指定します。
指定可能なモデル例:
-
claude-opus-4-20250514- 最高性能モデル -
claude-sonnet-4.5- バランス型(デフォルト) -
claude-haiku-4- 高速・軽量
codex -m claude-opus-4-20250514 "複雑なアルゴリズムを設計して"
--oss
ローカルの OSS(オープンソース)プロバイダを使用します。model_provider=oss と同等の設定です。
# ローカルモデルを使用
codex --oss "プライベートな環境でコード生成"
-p / --profile NAME
config.toml に定義されたプロファイルを読み込みます。
プロファイルの例:
[profiles.creative]
model = "claude-opus-4-20250514"
temperature = 1.0
[profiles.fast]
model = "claude-haiku-4"
temperature = 0.5
使用例:
# creative プロファイルを使用
codex -p creative "詩を書いて"
作業ディレクトリ
-C / --cd DIR
作業ルートディレクトリを指定します。Codex はこのディレクトリをベースにファイル操作を行います。
# プロジェクトディレクトリを指定して起動
codex -C ~/projects/myapp "package.jsonを確認して"
Web 検索機能
--search
Web 検索ツールを有効化します。AI が最新情報やドキュメントを検索できるようになります。
# 最新情報を調べながら作業
codex --search "Next.js 15の新機能を使ったサンプルを作成"
安全性とサンドボックス
Codex は AI が実行するコマンドを制御するための複数のセーフティ機能を提供します。
サンドボックスモード:-s / --sandbox
AI が実行できる操作の範囲を制限します。
read-only(読み取り専用)
特徴:
- ファイルの読み取りのみ許可
- ファイルの作成・変更・削除は不可
- システムへの影響ゼロ
適用シーン:
- コードレビュー
- ドキュメントの調査
- アーキテクチャの分析
codex -s read-only "このプロジェクトの構造を分析して"
workspace-write(ワークスペース書き込み)
特徴:
- ワークスペース内のファイル操作を許可
- システムコマンドは制限
- 比較的安全な開発環境
適用シーン:
- 通常の開発作業
- コード生成とリファクタリング
- テストの作成
codex -s workspace-write "新しい機能を実装して"
danger-full-access(完全アクセス)
特徴:
- すべての操作を許可
- システムコマンドも実行可能
- 危険性が高い
適用シーン:
- システム設定の変更
- パッケージのインストール
- 信頼できるタスクのみ
codex -s danger-full-access "依存関係をインストールして"
承認ポリシー:-a / --ask-for-approval
AI がコマンドを実行する前に承認を求めるタイミングを制御します。
untrusted(信頼できない場合)
動作:
- 安全でないと判断されたコマンドのみ承認を求める
- 読み取り専用の操作は自動実行
推奨度: ★★★★☆(バランス型)
codex -a untrusted "プロジェクトをセットアップして"
on-failure(失敗時)
動作:
- コマンドが失敗した場合のみ承認を求める
- 初回は自動実行、エラー発生時に介入
推奨度: ★★★☆☆(効率重視)
codex -a on-failure "テストを実行して修正して"
on-request(要求時)
動作:
- AI が明示的に承認を求めた場合のみ
推奨度: ★★☆☆☆(特殊用途)
never(承認なし)
動作:
- すべてのコマンドを自動実行
- 最も危険
推奨度: ★☆☆☆☆(危険)
# 完全自動実行(注意!)
codex -a never "すべて自動で処理して"
便利なショートカット
--full-auto
workspace-write + on-failure を同時に有効化する便利オプション。
効果:
- ワークスペース内の書き込みを許可
- 失敗時のみ承認を求める
- 効率的な開発フロー
codex --full-auto "この機能を実装して"
--dangerously-bypass-approvals-and-sandbox(別名 --yolo)
警告: 非常に危険なオプションです。
効果:
- すべてのサンドボックス制限を解除
- すべての承認プロセスをスキップ
- AI に完全な制御を委ねる
使用場面:
- 完全に信頼できるスクリプトのみ
- テスト環境での実験
- 自己責任で使用
# 危険!本番環境では絶対に使用しないこと
codex --yolo "システムをアップデートして"
セッション管理
codex resume
過去のセッションを再開します。
SESSION_ID(任意)
再開するセッションの UUID を指定します。
# 特定のセッションを再開
codex resume a1b2c3d4-e5f6-7890-abcd-ef1234567890
--last
最新のセッションを選択画面なしで即座に再開します。SESSION_ID との併用は不可。
# 最後のセッションをすぐに再開
codex resume --last
その他のオプション:
codex resume では、codex コマンドと同じすべてのオプション(-m, -s, -a など)が使用できます。
非対話実行(codex exec)
スクリプトや CI/CD パイプラインで使用するための非対話型実行モードです。
基本構文
codex exec [OPTIONS] [PROMPT]
主要オプション
PROMPT(任意)
実行する指示を指定します。- を指定すると標準入力から読み込みます。
# 直接指定
codex exec "README.mdを生成して"
# 標準入力から読み込み
echo "テストを実行して" | codex exec -
# ファイルから読み込み
codex exec - < task.txt
--skip-git-repo-check
Git リポジトリの外でも実行を許可します。通常、Codex は Git リポジトリ内での実行を推奨しますが、このフラグで回避できます。
codex exec --skip-git-repo-check "一時ファイルを処理"
--output-schema FILE
最終応答の構造を JSON Schema で指定します。構造化された出力を得たい場合に使用。
# 分析結果をJSON形式で取得
codex exec --output-schema schema.json "コードの問題点を分析"
--color {always|never|auto}
出力のカラー表示を制御します。
-
always- 常にカラー表示 -
never- カラー表示なし(ログファイル出力時に便利) -
auto- 端末の能力に応じて自動判定(デフォルト)
# ログファイルに出力する場合
codex exec --color never "処理を実行" > log.txt
--json(別名 --experimental-json)
すべてのイベントを JSONL(JSON Lines)形式で出力します。プログラムでパース可能な形式。
# JSONLで出力してjqで処理
codex exec --json "分析を実行" | jq '.type'
--include-plan-tool
プラン生成ツールを常に組み込みます。AI がタスクを計画してから実行します。
codex exec --include-plan-tool "複雑な機能を実装"
--output-last-message FILE
AI の最終メッセージをファイルに保存します。
codex exec --output-last-message result.txt "要約を作成"
codex exec resume
非対話モードでセッションを再開します。
# 最新セッションを再開して追加指示
codex exec resume --last "テストも追加して"
# 特定セッションを再開
codex exec resume <SESSION_ID> "さらに改善して"
その他のコマンド
codex completion
シェルの補完スクリプトを生成します。
--shell {bash|elvish|fish|powershell|zsh}
対象シェルを指定します(デフォルト: bash)。
# Bashの補完を設定
codex completion --shell bash > ~/.codex-completion.sh
echo "source ~/.codex-completion.sh" >> ~/.bashrc
# Zshの補完を設定
codex completion --shell zsh > ~/.codex-completion.zsh
echo "source ~/.codex-completion.zsh" >> ~/.zshrc
# Fishの補完を設定
codex completion --shell fish > ~/.config/fish/completions/codex.fish
codex login
Anthropic API への認証を行います。
--api-key KEY
API キーを直接指定してログインします。
# API キーでログイン
codex login --api-key sk-ant-xxxxx
--experimental_use-device-code
デバイスコードフローを使用します(実験的機能、非推奨)。
--experimental_issuer URL
OAuth issuer をカスタム指定します(実験的機能)。
--experimental_client-id CLIENT_ID
OAuth クライアント ID を上書きします(実験的機能)。
サブコマンド: status
現在の認証状態を表示します。
# ログイン状態を確認
codex login status
codex logout
現在の認証情報を削除します。
codex logout
codex apply <TASK_ID>
Hosted タスクの最新の差分を適用します。
# クラウドで作成されたタスクをローカルに適用
codex apply task_abc123xyz
codex debug seatbelt|landlock
サンドボックス機能のデバッグを行います。
# サンドボックス内でコマンドをテスト
codex debug seatbelt ls -la
# フルオートモードでテスト
codex debug seatbelt --full-auto bash -c "echo test"
MCP(Model Context Protocol)管理
注意: MCP 機能は実験的機能です。
codex mcp list
登録されている MCP サーバーを一覧表示します。
# 一覧表示
codex mcp list
# JSON形式で出力
codex mcp list --json
codex mcp get <n>
指定した MCP サーバーの詳細情報を表示します。
# サーバー0の詳細
codex mcp get 0
# JSON形式で出力
codex mcp get 0 --json
codex mcp add <n>
新しい MCP サーバーを追加します。
# 環境変数を設定してサーバーを追加
codex mcp add 0 --env API_KEY=secret --env HOST=localhost -- node server.js
# 複数の環境変数
codex mcp add 1 \
--env DB_HOST=localhost \
--env DB_PORT=5432 \
-- python mcp_server.py
codex mcp remove <n>
MCP サーバー設定を削除します。
codex mcp remove 0
サーバーモード
codex mcp-server
MCP サーバーとして起動します。他のツールから Codex の機能を利用可能にします。
codex mcp-server
codex app-server
アプリケーションサーバーとして起動します。
codex app-server
クラウド機能
codex cloud
クラウドタスクの TUI(テキストユーザーインターフェース)を起動します。
codex cloud
制御用環境変数:
-
CODEX_CLOUD_TASKS_*- 各種クラウド機能の動作を制御
内部・隠しサブコマンド
開発者向けの高度なコマンドです。通常の使用では必要ありません。
codex generate-ts
TypeScript 型定義バインディングを生成します。
codex generate-ts --out ./types --prettier ./node_modules/.bin/prettier
codex responses-api-proxy
Responses API のプロキシサーバーを起動します。
codex responses-api-proxy --port 8080 --server-info info.json --http-shutdown
設定値リファレンス
サンドボックスモード
| 値 | 説明 | 安全性 |
|---|---|---|
read-only |
読み取り専用 | ★★★★★ |
workspace-write |
ワークスペース書き込み可 | ★★★☆☆ |
danger-full-access |
完全アクセス | ★☆☆☆☆ |
承認ポリシー
| 値 | 説明 | 推奨度 |
|---|---|---|
untrusted |
信頼できない操作のみ承認 | ★★★★☆ |
on-failure |
失敗時のみ承認 | ★★★☆☆ |
on-request |
要求時のみ承認 | ★★☆☆☆ |
never |
承認なし(危険) | ★☆☆☆☆ |
カラー設定
| 値 | 説明 |
|---|---|
always |
常にカラー表示 |
never |
カラー表示なし |
auto |
自動判定(デフォルト) |
実践的な使用例
安全にコードレビュー
codex -s read-only "このプロジェクトのセキュリティ問題を指摘して"
効率的な開発フロー
codex --full-auto "ユーザー認証機能を実装して、テストも追加"
CI/CD パイプラインでの使用
# 非対話モードで実行し、結果をJSONで保存
codex exec --json --color never "コードの静的解析を実行" > analysis.jsonl
Web検索を活用した最新情報での開発
codex --search -p creative "最新のReact 19の機能を使ったサンプルアプリを作成"
過去の作業の継続
# 最後のセッションを再開
codex resume --last
# または特定のセッションを再開
codex resume a1b2c3d4-e5f6-7890-abcd-ef1234567890
まとめ
Codex CLI は柔軟で強力なオプション体系を持ち、開発者のさまざまなニーズに対応できます。
安全性のベストプラクティス:
- 本番環境では必ずサンドボックスを有効化
-
--yoloオプションは絶対に本番で使用しない - 重要な操作では
untrusted承認ポリシーを使用 - Git リポジトリ内で作業する習慣をつける
効率化のヒント:
- プロファイルで頻繁に使う設定を保存
-
--full-autoで開発速度を向上 - シェル補完を設定してコマンド入力を高速化
-
codex execでスクリプトに組み込む
Codex CLI を使いこなして、AI とのペアプログラミングを最大限に活用しましょう!