前回に引き続き、Qiita AI Summit 参加当日の感想を投稿させていただきます。
本記事では、Qiita AI Summit 当日にお話しした内容に加え、後日拝聴した広木 大地さんのご登壇を踏まえて考えたことを共有いたします。
1. スタンプラリーの結果より
前回の Google Cloud Next などのイベント以降、ビジネスの現場で Geminiを利用するユーザーが想像以上に増えているという印象を強く受けました。
私自身も NotebookLMは手放せないツールになると感じています。
まだGeminiに触れていない企業のご担当者は、まずはPoC(概念実証)から始めてみてはいかがでしょうか。
弊社でも、これから稟議を起こして推進していく予定です。
PoCとは?
特定の業務課題や利用シーンをあらかじめ設定し、
「このAIが本当に役に立つのか」を短期間・小規模で検証する取り組みです。
成功を証明する場というより、価値とリスクを早く見極めるための実験と考えると分かりやすいでしょう。
主な効果
・ 実現可能性の確認(AI が本当に業務で使えるか)
・ 技術的・運用上の課題の早期発見
・ ステークホルダーとの合意形成材料の取得
2. 各社の悩みは共通している
やはり、コードベースが大規模・老朽化している企業では、
「どのように投資対効果を説明するか」が共通の課題として挙がっていました。
今後も同様の悩みを持つ企業は増えると考えられるため、弊社の取り組みを共有いたします。
a. 手作業の工数の詳細記録を開始する
→ 現場では嫌がられがちですが、新規開発・保守作業だけでも記録しなければ可視化できません。
b. 同一業務を「人力」と「AI」で比較検証する
→ 推進担当ではなく、実際にそのコードを担当している現役エンジニアに、
手作業とAI作業の両方を試してもらうのが最も効果的です。
ただし、この方法は工数がかかるため、自社で横展開できるテーマをどこに設定するかは各社の状況に依存します。
弊社では、以下の領域が横展開しやすいと判断し、重点的に取り組んでいます。
- JUnitテストの新規生成
- 属人化しているテストノウハウをコードから仕様書として自動生成
3. 思ったより適性のあるメンバーは多い
実際に進めてみると、各チームに「AIを活用して成果を出せる人材」が一定数存在することが分かりました。
推進側はつい「自分が全部やらなければ」と思いがちですが、
実際には、
「こういうツールがあって、こう使える」
と伝えるだけで、自走し始めるメンバーも少なくありません。
そのため、推進担当者の役割は、
できる人を見つけ、サンプルとツールを渡すこと
にシフトしていくべきだと考えています。
4. 人事考課にAI活用力を入れるか
「AI活用はコモディティ化する」という意見はよく聞きますが、
現実には、VBAを使いこなして業務を自動化できる人ですら、決して多数派ではありません。
同様に、AI活用力も「評価されないスキル」のままでは広がりにくいでしょう。
特にAIはVBAを大きく上回る可能性を持つため、
各社で徐々に以下のような制度設計が進むとよいと考えています。
- 管理職(MGR):AI活用者を増やす・育成する責任を持つ
- メンバー:AI活用力を伸ばすことが評価に反映される
こうした仕組みがあれば、挑戦する人材も増えていくはずです。
5. AI活用力は「自走力」
これは広木さんの別の登壇を拝聴して、私自身の考えがアップデートされたポイントです。
Claude Code や Cursor を使っていても、
AIが書き終わるのを待っているだけでは「2人力」にはならない。
理想は、
- AIが自走している間に自分は別の仕事を進める
- 最終的に(コストを度外視すれば)AIが160時間/月 相当の作業を代替し、
- その品質が自分に近づいた時点で、ようやく「200%生産性」と言える
今は、タイピングの代替としてAIに依存し「待ち時間」が生まれてしまう場面もあります。
そのため、今後は
- AIの自走力を高め、160h/月を早期に達成する
- さらに理想としては 320h/月 相当の支援 を目指す
ことが重要だと考えています。
もちろん、雑に丸投げして品質が下がってしまっては本末転倒ですが…笑
AIの自走力
AIが逐次人間に確認するのではなく、自身で判断し、アウトプットを生成する能力
これは、IDEを利用するだけでは厳しいと思いますので、
ノウハウを、AIエージェントに委譲しつつどれだけ自走時間を長くできるか
それでいて、品質を担保するかという世界になっていくのかなと思っています。
まとめ 今回のAI Summitで得た最重要インサイト 3つ
①「AIは“使える人”ではなく“使い倒す人”が勝つ」時代に入ったこと
ツールの有無や企業規模ではなく、
• 自分で試し
• 失敗し
• 再設計し
• 共有できる人
この“自走力”が、これからの個人価値と組織価値を決める――その転換点を、Summit全体が示していました。
② Gemini/NotebookLMは“実務の脇役”から“思考の主役”へ昇格したこと
単なる要約AIではなく、
• 議論の土台を作る装置
• 思考の外部脳
• アイデア生成の触媒
として、現場に自然に入り始めている。この変化は、今後のナレッジワークの設計を根本から変えます。
③ どの企業も“同じ悩み”にぶつかっているという安心と危機
悩みは共通:
• レガシーコード
• 投資対効果
• 推進者不足
• 現場抵抗
つまり、勝敗は悩みの有無ではなく、動いた量で決まる。ここが分水嶺でした。
⸻
これから取り組むべき3つのアクション
① NotebookLMを正式PoC化し、社内の“第二の脳”に育てる
• 稟議→試験運用→成功事例化
• 「機密を入れないルール」を前提に、仕様整理・会議準備・学習支援に展開
• 成果をQiitaに還元(=マスターの個人ブランド強化)
② 自走型AI人材を増やす仕組みづくり
単なる研修ではなく:
• 小さな成功体験
• 失敗の共有
• 良い事例の表彰
この三点セットで、「使う人」ではなく「創る人」を増やします。
③ AIダッシュボードを“組織の羅針盤”に格上げする
• Copilot利用率
• テスト品質
• デリバリー速度
を可視化し、
“感覚の議論”から“データの議論”へ移行させる。


