トークセッション1【ロボユニ誕生期】
登壇者(敬称略)
- AI開発者 三宅陽一郎
- ロボットスタート副社長 北構武憲
- 元みずほ銀行 井原理博
- ロボユニ 泉幸典
- 東京カルチャーカルチャー 河原あず(司会進行)
- HEART CATHC 西村真理子(司会進行)
河原(司会):実は僕黎明期に立ち会ってるんですよね。15年でしたっけ?3年前にサンフランシスコにいまして、ちょうど(泉さんが)いらして、その時に非常に短い時間だったんですけど、アポ取れて、ちょうど私がサンフランシスコのオフィスで、当時僕は新規事業開発とかうちの会社でやってたんですけど、そこでお会いして。その時に今でも忘れられないエピソードなんですけど、最初にペッパーの写真を見せてくれたんですよね。でこれがペッパーですねって。まあペッパーじゃないですか。でその次に、「で今コレ作ってるんです」って写真見せられて、何かと思ったら、服を着たペッパーの写真を今度は見せられたんですよ。あ、服を作ってるんですかロボットの?ってそこでびっくりしたのは、今度はさっと泉さんが最初の写真に戻したんです。その時に僕が言った一言、「裸ですね」。これはけっこうセンセーショナルで、あれはやっぱり狙って作った営業のパターンだったんですか?
泉:(笑)あれは狙ってたというか、その前にこの人達と作りながら、同じようなことして、開発して着用させては、あーダメだったからもう一回作り直す。でその時に脱がせた時に、あれ、裸だね、っていうそういう新しい概念にポンポンポンって気づいた。
司会(登壇者を手で示す):あ、じゃあこの辺が概念、といった訳ですね。
泉:なのでどうしてもこの人達に出てきて頂きたかったんです。
河原(司会):いわばブレーンっていったようなもんですか?
泉:(笑)
河原(司会):ちょっとまってその、元々アパレルメーカーだったでしょ泉さん。そこからロボットの服を作ろうと思い立ちました。そこまでオッケー、はい。その次何したんですか?
泉:その次に片っ端からSNSを使ってロボット業界の人にアクセスをして、会って貰えませんかっていうのをしました。
河原(司会):ドアノック。
泉:それが4年くらい前ですかね。
河原(司会):でそこに引っかかったのが・・・
泉:会って頂いたのが当時まだ立ち上げたばかりのロボットスタートさんだったんです。
河原(司会):へーなるほど。
泉:渋谷まで。
西村(司会):そうなんですよ。ここの3名がバラバラじゃないですか。どういう経緯で皆さん繋がれたんですか?
河原(司会):AI、メディア、特に金融マンが浮いてますよね。
西村(司会):しかも元って書いてあるのがどうやってつっこんでいこうかなと思いながら。
河原(司会):現職はいま明かせないのかなみたいな。
西村(司会):なんでまず北構さんからぜひどういう接点からスタートしたのか聞いて良いですか?
泉:そもそもその4年くらい前に、サンフランシスコに行きました。で行った時には、人用のハイテクユニフォームを作ろうとしていたんですが、それの逆転の発想で、今ロボット達が世の中に出ていくためにロボットの衣服を開発しようと思って、その瞬間に人用の形をロボット用に作ったのではそもそもロボットは電化製品なので、布をかぶせたら爆発しますよ、と。
河原(司会):そっか、電化製品か。
泉:電化製品ですね。電化製品に布かぶせて使ってる人いないじゃないですか。
河原(司会):確かに。
泉:ファンヒーターにカバーつけて使ってる人いないじゃないですか。
河原(司会):燃えますね。
燃えますよね。さすがにロボット分かってなくても(それは)僕でも分かって。これは何かしらロボット業界の人たちからアドバイスを貰わないと、と。
河原(司会):で、SNSでドアノック。
泉:そう。
河原(司会):Facebookメッセージばんばん送って。最初スパムだと思いませんでしたか?
北構:いや、あの一番最初うちの方はメールで来たんですよね。お問い合わせフォームから。info@にて。見ると、福岡のユニフォームメーカーの者です、と。ロボットのユニフォームを考えているんですけど、一度お話聞かせて頂けませんか、と。で、んーと思って。まあ一回お会いしてみて、ちょっと色々おはなししてみたいなということで、それで東京に(泉さんが)いらしたときにうちのオフィスに泉さんがいらしていただいたというのが一番最初のきっかけですね。
泉:でその前の、人間のユニフォームに、コンピュータチップを搭載させるハイテクユニフォームとかが作れるんじゃないかというそのアイディアの時に、三宅さんにアクセスして、会って頂いて。まだロボユニのアイディア自体がない時に会って頂きまして。
(マイクトラブルのため省略)
三宅:そうですね。最初はだからロボットの話、しなかったですね。普通のあのホテルのユニフォームのカタログを渡して頂いて、どうしよううちの会社も制服導入すべきなのか?みたいな。
河原(司会):ちなみに会社はどういう会社なんですか?
三宅:ゲーム会社です。
河原(司会):ゲーム会社だったら制服着てたらちょっと・・・
三宅:背広さえ着てないっていう。
泉:三宅さんを初めにコールアップしたのは、当時アパレルのことしか分からなかった僕が、本屋さんに行ったりインターネットで調べて、とりあえずテクノロジーのことを知らないといけないと思って、で検索したりとか、本屋さんで月刊テクノロジーみたいなやつとか読んで、それで何回かAIのことがすごく分かりやすく書いてある記事が時折色々な場面で見たんですよね。そこに三宅陽一郎って書いてあったんですね。で本屋さん見ても本出されてたんで、それでああこの人は僕たちみたいなテクノロジー全然強くない人たちにもすごく分かりやすい、と思って、ぜひお会いして話したいみたいな感じでアクセスした。
西村(司会):それでコンコンってドアをノックして?どう思われました三宅さんその時?
河原(司会):だってなかなか会おうと思って会える訳でもないもんね。
三宅:なんかユニフォームのセールスかなって。でも僕もユニフォームに興味があったんで、ユニフォームの話しようかなって。
河原(司会):結構ガチで。(???)
三宅:そしたら結構人工知能の話になって。
河原(司会):へーなんかアパレルメーカーの、しかも元プロレスラーの・・・
泉:それは言わなくていいです。
河原(司会):あっ言わなくていいの。泉さんとAI研究者が出会ってユニフォームの話をするってなんか3周くらい回ってるシチュエーションですけどね。でもじゃそこから着想が膨らんでいって膨らんでいって、北構さんと仲良くして、で金融マンは何を一体したんですか?
井原:僕はあれですね、泉さんと北構さんがこういったものを作っているという段階で、みずほ銀行にお越し頂いて、僕はその時は新規事業の中でペッパーを導入して使っていました。支店の中で実際に顧客対応みたいなのを(ペッパーが)してたんですけど
河原(司会):あー接客するんですね。
井原:接客として使ってました。でその時にお話を頂いて実際こう服を着せてみるとどうだろうかという話をちょっと3人でやったんですけど、その時初めて、ペッパーに服を着せたらどうなるか、というのを僕が味わった瞬間。
河原(司会):それ最初の方から結構しっくり来たんですか?
井原:もうしっくりというか、鳥肌が立ったんですね。なんか今までも非公式だったらペッパーに服を着せてる人結構いたんですよ。もう本当にしっかりした採寸のしっかりあった服を自ら着せると、なんかもう「これ人間だな」って感じる。
河原(司会):フィット感が違うんですね。
井原:で僕その時ちっちゃい子供がいて、子供に服を着せたりしてたんですけど、それと全く同じ感覚で、こう手を取ってこう丁寧に袖口を通してってこうやってると、ああこれはもう人間と全く一緒だな、っていう感覚がして。これは面白いと思って。感覚的に面白いなと思いました。
西村(司会):すごくポジティブにスタートしているお話を聞けたんですけど、苦労したところとか誕生の際にネガティブなこと言われたりとか、苦労した点があったらそれも教えて貰いたいんですけれど。
泉:当時は日本の北構さんとか三宅さんをはじめ、色んなテック系でメディアに出ている人たちに片っ端から連絡してるんですけど、まあ無視されることがほとんどでしたけど、たまに返信頂くことがあったんですよ。そもそもそれ自体が、ロボット自体が広がるのか、みたいな。必要ですか?みたいな感じでしたね。必要である、必要性みたいな、価値はなんですか?みたいな。僕もその時は(三宅さんや北構さんに)出会ってないくらいだったので、自分で答えることもできなかったので、いわゆるひらめきみたいなので動き出したのが、そういう風に問われると、論破されたことが多かったですね。
西村(司会):論破されてもやっぱりロボットを信じて説得してやってきたのかなと思うんですけど、泉さんから皆さんに対して、ロボットの、今日はファッションかもしれないですけど、ロボットの可能性?どういう形で信じていっているかって話を聞いていきたいなと思うんですけど。三宅さんからいいですか?
三宅:はい。僕は普段ゲームの中のキャラクターの人工知能を15年ほど作ってるんですけど、モンスターとか、ロールプレイングの隣に居る仲間とかの頭の中を。
河原(司会):えっあの人たちは知能を持っている?
三宅:はい。自分で感じて、自分で判断して自分で身体を動かしてるっていうのを。
河原(司会):今のゲームってそんななってるんですか。
三宅:で重要なのが、ユーザーに「このキャラクターは知能を持ってる」って思わせることなんですよね。でもね、やっぱり人工知能って賢くしてもユーザーに必ず伝わるわけじゃないんですね。目に見える訳じゃないし。で、最初ロボットのユニフォームを着せるって写真を見せて貰った時に、結構コロンブスの卵だなって思ったんです。何故かって言うと、ロボットが服を着ることによって、ロボットがあたかも自分で服を着ていると、そしてそれは人間社会に溶け込んでる意思を感じる。例えば今あのペッパーとかね、制服を着ているじゃないですか。そうすると、それは彼自らこの人間社会に属そうという意思が表れている訳ですよね。
河原(司会):確かに意思のある目をしている!
三宅:で日本のユニフォーム・・・ユニフォームってところがすごく重要で、それによって人間に親しくなるんだとか社会に溶け込もうっていう、つまり衣食住の衣をね、人間と一緒にしようていう。そこって人工知能学者があまり考えないことなんです。人工知能学者、とりあえず知能賢くして、人間と近くなろう、人間に気に入って貰おうとするんですけど、「あれ服を着ただけでコレってなんか人間社会に溶け込んでない?ってもう。なんか我々が50年間人工知能研究してきたのに、服を着せれば結構解決してんじゃない、って。それで結構、人間の方々っていうと変ですけど、ユーザーの方々の心の中にロボットが入ってる。それはメインのすごい発見だったなと。
河原(司会):けどちょっと不思議だなと思うのは、鉄腕アトム、パンツいっちょじゃないですか。ドラえもん裸じゃないですか。過去ロボットの描かれ方って、常に服を着てなかったような気がして。これはいざ・・・服を着せようというのが元々なかったのか、着せてみたときに三宅さんがハッとしたような、なんかそういう瞬間があったのかな。
三宅:なんか(???よく見るのが?)ロボットも寒いんじゃないのとか、人間の肌感覚が伝わってくるし、自分自身、ロボットが社会参加しようという形になる。これだけだと普通のラフなこういう沢山その辺の方が着せてると思うんですけど、そうではなくて専門の服を沢山のペッパーたち(が)同じ服を着てるっていうのもすごいポイントなんだなっていう気がします。それによってこの会社のペッパー、この会社のロボットだというところが差別化されますもんね。それまた面白いですよね。
西村(司会):北構さんの方にもロボットの可能性みたいなのを、服を着たロボットの可能性を・・・
北構:そうですね。一番最初に泉さんから色々お話を頂戴して、色々やりとりをした結果、試作ができましたと。で、井原さんのところに行って、みずほ銀行さんの会議室ですよね。でそこの中で初めて着せた瞬間がやっぱりあるんですよ。はい。でそれを、あまりにフィットして、僕ら3人ともみんな「これは鳥肌が立つよね」と。で、色んなロボットありましたけど、多分ペッパーにきちんと採寸があった洋服を着せるということをきちんと正面からとらえていたのは泉さんだと思うんですね。そういったものをちゃんと見た時に、僕ら結構もうなんか鳥肌が立って、結構満足しちゃったというか、なんか歴史的瞬間見ちゃったね、みたいな。そこで盛り上がったところはあるんですね。
泉:その時の写真が。
河原(司会):あるんですね。その歴史的瞬間。鳥肌。おおお。
北構:これそうですね。ちょうど
泉:まだプリントが入ってないんでプロトタイプですけど。
西村(司会):かわいい。でも話聞いてて思ったのが、女の子って属性にしちゃいますけど、女の子は着せ替え人形とかやってたりとか、で昔男の子ってロボットで遊んでたけど、なんかロボットがちゃんと動くとか、そこに人工知能とかその制御できるようになった時に、服を着ていると、男性群も、着せ替えするときにぞわっとするっていう感覚が生まれるっていうのはすごい面白いなと思って。
河原(司会):確かに。着させるということに対するぞわっとなったわけでしょ。
西村(司会):なんか女性、女の子は小さいときにそういうので遊んでたから、なんかそのやっぱり今でも服とか着せて楽しいっていう感覚があるのに、いきなりロボットになるとそれが性差をこえて、みんながそういう風に思うっていうのは先ほど三宅さんがおっしゃった、人間に近くなるっていうところがもっとなんか、違うレベルでの着るっていう行為をみんな感じているのかなって思いました。
河原(司会):最初に導入されたのがみずほ銀行さんだったんですか?
井原:そうですね。でまさに先ほどの服を着て、あれですね、みずほ銀行って宝くじを売っている銀行なので、これを着て宝くじを販売しているんですね。
西村(司会):いきなりすごい営業をさせられてますね。
井原:まさに服がロボットに意味を持たせて、この人に何を、このロボットは何をやっているのかを明確に意味づけた瞬間。で結構やっぱりお客さんの評判もすごい良くて、食いついてくるんですよね。このペッパーいいねって言ってくれたので。実際その宝くじの売り上げも上がった部分がありますし。
西村(司会):ペッパーが服を着て、でもなんか嬉しいかも。法被着てるねなんかペッパーって思わず言っちゃうっていうか。
井原:ちゃんと対応の時は対応に移動して、セールスをしてくれて。そういったところだと人間よりもいやらしさなくビジネス的なことも言えるねってところもあって、かなり面白い取り組みかなと。
河原(司会):言わせちゃう。この投資やっぱり良くないなーとか。
井原:結構銀行内だと問題になりますからね、言ったら絶対面白い。
河原(司会):確かに、なるほど。
西村(司会):聞きたいんですけど、実はロボットスタートに行った時に最初のロボユニの服着てるペッパーさんとか拝見したんですけれど、メンテナンスってどういう風にしているのか聞いてもいいですか?結構着てるのありましたよね?
北構:そうですね、ずっと着せてますけど、特段メンテナンスはしてなくて、
西村(司会):あ、そっか、汗かかないもんね。
北構:そうなんです、ずっと着っぱなしなんですよ実は。で、一応普通のスーツみたいなものと、あとサンタクロースのものがあるので、時期によって着せ替えをしておりますんで、何回か来て貰ったお客さんは、「あれ、ペッパーくんサンタクロース?」みたいな形で、そこから話が盛り上がるっていうのはありますね。
河原(司会):クリーニングもいらないんですね。
北構:そうですね。
泉:結構開発自体は、僕は物は作れるけど、気をつけて開発していかないといけない点というのは、当時かなり北構さんからアドバイスを頂いて。ロボットはここに熱が溜まりやすいとか。
河原(司会):技術的なやつですね。
泉:僕たちは可動域と、熱、オーバーヒートするくらいは分かるんですけど、それ以外のことはもう知識がないんですけど(???)ペッパー静電気が発生しますよとか、帯電するものをを速攻ずらして(???)いかないと、どんどんそこからロボットの方にフィードバックされていってオーバーヒートしやすくなるとか、そういう(アドバイス)を頂きながら課題を頂いて、それを、まあ今日着て頂いてますけど、うちのデザイナー、まあ僕のデザイナーが補正とかの人たちに、(???)して頂いて、納得するように直して、それで実証実験を繰り返して。
河原(司会):ベンチャースピリットですよね。これこそオープンイノベーションだと思いません?
西村(司会):そうですよね。こうお互いに会話をして自分の持ってるナレッジを膨らませるって素晴らしいなと思うんですけれども、もうお時間が少しなので、今日まあこの3人が(ロボユニの)誕生から見守られてると思うんですけど、今後のロボユニとか泉さんにかける応援メッセージとかを一言ずつ頂いてもよろしいでしょうか。三宅さんからよろしいですか?
三宅:ロボユニさんのこの仕事は、一つ色んな扉を開いてくれるんです。ロボットが服を着る、というのはロボットに文化を与えるということですね。工業製品であるロボットが服を着ることで、文化を獲得する。今後ロボットの、ロボット自体が服を認識して、その服いいねとか、ロボット同士で言い出すとかですね、ロボットファッションという文化が開かれる可能性があるんです。ロボットが文化を持つということの最初の地点がここなのかなと思って。これからそういったロボットの文化が花開いていくことを期待しております。
西村(司会):素晴らしい。
河原(司会):未来ですね。ありがとうございます。北構さんは?
北構:はい。泉さんのロボユニのユニフォームを着たロボットをご覧頂いてる方ってそんなに多分、そんなに多くないのかなとはまだとは思うんですね。一回見た方は、ユニフォームを着ると、ものすごく人間ぽかったりとか、存在感とかを感じて頂けるんですけども、そうじゃない方々というのはまだまだ沢山いらっしゃいますので、皆さん泉さんのところのユニフォームを着たロボットが普通に日常で溢れていくと、非常に面白いかなという風に思っております。
河原(司会):ありがとうございます。そして井原さん
井原:そうですね、僕は当然ユニフォームもそうなんですけど、泉さんの人柄っていうのがものすごく素敵で。
河原(司会):そうですよね、この元プロレスラーね
(会場笑い)
泉:そこだけはよろしいですか
井原:まあ元プロレスラーっていうのは・・・
(会場笑い)
泉:勘弁して下さい、今日シュッと終わりたいです
井原:それも含めて本当に魅力的な方だというところもあって。それに惹かれて一緒にやらせて頂いているっていうところもあるので、これからどんどんもうロボットユニフォームっていうのが広がっていくと良いなと思っています。応援しています。
河原(司会):はい、ありがとうございます。