シリーズ
- 思想編(前回): 答えを出さないAI「Mirror」を作った話
- 実装編(本記事): ...のつもりだったけど
- 応用編(次回): たぶん
実装編を書こうとした
前回、「答えを出さないAI」のコンセプトを書いた。
今回は実装編だ。OllamaでELYZA動かして、StreamlitでUI作って、プロンプト設計して...
と思ったけど、やめた。
だってそれ、ChatGPTに聞けば誰でも書けるじゃん。
2025年、コードはAIで書ける時代になった。じゃあエンジニアは何を書くのか。
設計思想だ。
なぜ作ろうと思ったか
最初、ChatGPTに自分のデータを全部食わせた。(自分の場合10万字ほど)
メモ、日記、考えたこと。これで最高の壁打ち相手ができると思った。
全然違った。
なんか会話の筋が違う。こっちが考えたいことと、あっちが出してくる答えがズレてる。
しばらくして気づいた。LLMは「次に来そうな言葉を予測する」機械だ。
つまり、予測が対話を捻じ曲げている。
欲しかったのは答えじゃない。問いだった。
2025年、AIは「予測」で溢れている
今年のAIトレンドを見てほしい:
- Predictive UX — ユーザーが求める前に提案する
- Proactive AI — 先回りして答えを出す
- Context-aware — 文脈を読んで最適解を出す
全部「予測」だ。
ChatGPTに悩みを相談する人は8億人中の約半数(Sentio, 2024)。みんな予測ベースのAIに本音を投げている。
でも、予測は対話を捻じ曲げる。
「次に来そうな言葉」を出すということは、ユーザーの思考を"ありがち"な方向に誘導するということだ。
AI時代のフロントエンドとは
従来のフロントエンド:ボタン、フォーム、画面遷移
AI時代のフロントエンド:問いの設計
ユーザーとAIの接点は、もはや画面じゃない。どんな問いを投げるかだ。
Mirrorは「答えを出さない」ことで、この問いの設計に振り切った。
従来のAI: ユーザーの入力 → 予測 → 回答
Mirror: ユーザーの入力 → 映し返し → 問い
予測を止めると、ユーザーの思考が"ありがち"に流れない。
技術的にどうやるか(ちょっとだけ)
「答えを出すな」をLLMに守らせるのは意外と難しい。
最初のプロンプトは失敗した:
あなたは共感的なカウンセラーです。優しく問いかけてください。
結果:普通に答えを出してくる。
解決策:NegativePrompt
IJCAI 2024の研究で、禁止事項を明示的に書く方が動作が安定することが示されている。
<constraints type="negative_prompt">
You will NEVER:
- 答えを出す
- 解決策を提示する
- 「でも」「きっと」「大丈夫」と言う
- 「いいですね」「素晴らしい」と評価する
- 3文を超える
- 複数の問いを投げる
</constraints>
<output_format>
[映し返し: 1-2文] + [問い: 1文]
</output_format>
「やるべきこと」より「やってはいけないこと」の方が境界が明確。8Bモデルでも守れる。
対話例
実際に動かすとこうなる:
User: また新しいサイドプロジェクト始めようとしてる
Mirror: 新しいプロジェクトを考えているんですね。
「また」ということは、前にもあった?
User: 3つくらい途中で止まってる...
Mirror: 3つ止まっているんですね。
止まったとき、何が起きていましたか?
User: だいたい8割くらいできたところで飽きる
Mirror: 8割で飽きるパターンがあるんですね。
その「残り2割」には何がありますか?
User: ...ドキュメントとかテストとか、地味なやつ
Mirror: 地味な作業が残っているんですね。
それを「飽きる」と呼んでいる?
答えを出さない。でも、ちゃんと壁打ち相手になっている。
問いから得られるデータ
Mirrorを運用すると、面白いデータが取れる。
| データ | 意味 |
|---|---|
| どの層で対話が止まるか | ユーザーの思考の深さ |
| 何に躊躇するか | 言語化できていない痛み |
| どんな問いで動きが変わるか | 効果的な問いのパターン |
予測ベースのAIでは取れないデータだ。
なぜなら、予測は会話を「ありがち」に流す。問いは会話を「その人固有」に深める。
まとめ
- 2025年、AIは予測で溢れている
- 予測は対話を捻じ曲げる
- AI時代のフロントエンドは「問いの設計」
- 問いからしか得られないデータがある
実装の詳細?Ollamaインストールして、プロンプト書いて、Streamlitで動かすだけ。ChatGPTに聞いてくれ。笑
設計思想の方が大事だ。
次回予告(たぶん)
- キャリアの壁打ちに使う
- 学習・成長の振り返りに使う
- チームの1on1に組み込む
まあ、来週気が変わるかもしれないけど。
参考文献
- ChatGPT Mental Health Usage - Sentio, 2024
- NegativePrompt - IJCAI 2024
- AI UX Trends 2025 - UX Magazine
- Narrative Therapy Chatbot - Taylor & Francis, 2025
Author: neko_stack