パッチを当てるのは、俺の役目だったはずだ
オンプレ時代、パッチ適用はDBAの戦場だった。
事前に影響調査
動作確認用のテスト環境構築
本番適用の手順書(20ページ)
リカバリプランも用意
深夜の作業、成功しても拍手はされない
それでも、自分の手でDBを守ってきたという実感があった。
そんな俺に、OCIの通知が飛んできた。
「Autonomous Databaseのパッチ適用が完了しました」
え?
…やった記憶がないんだが。
勝手にパッチ!?そんなのアリかよ…
調べてみると、ADBは定期的に自動パッチが適用される設計だった。
運用停止の必要なし
ユーザー操作も不要
基本的には「気づいたら終わってる」
まさに「魔法のようなメンテナンス」。
でも、逆に不安になった。
「本当に落ちたりしないのか?」
「動作保証はどうなってる?」
「パッチの詳細は見られるのか?」
パッチの適用はコントロールできるのか?
ADBでは、 事前に定義されたメンテナンス・ウィンドウ の中でOracleは勝手にパッチを適用する
「次回のメンテナンスは ◯月◯日 XX:00 〜 XX:00」
それは、運営(Oracle)が決めた"世界の運行スケジュール"
DBAが日付を動かすことは出来ない。避けられぬ運命(スケジュール) なのだ。
Oracle Cloud Supportでサービス・リクエストを提出することで、割り当てられたメンテナンス・ウィンドウを、別の2時間のウィンドウに変更することは可能。
ユーザ自身でのスケジュール変更は出来ない。
しかし!選べる"2つの時の流れ"があった。
Oracleは我々に 「早期(Early)」と「定期(Regular)」 という2つのときの流れを用意してくれている。
| モード | 適用時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 早期(Early) | 定期パッチより1週間早い | 新しいパッチを即体験できる |
| 定期(Regular) | 早期パッチの1週間後 | より安定した運用向け |
もし本番環境を 定期(Regular) にしておき、
検証環境を 早期(Early) にしておけばーー
「1週間前に新パッチが検証環境に降ってくる」
-> 本番適用前に事前テストができる!
これはまさに 時空魔法。
本番の未来を、検証環境で先取りできるのだ。
「未来を知る者は、災いを避けられる」
それが、クラウドDBAの新しい戦いなのか。
バックアップも自動。でも、本当に使えるのか?
ADBは1日1回、自動でバックアップを取ってくれる。
しかも、以下のような恩恵付き:
最大60日間保持
ポイントインタイム・リカバリ(PITR)可能
OCIコンソールから“ポチッ”で復元できる
だけど最初は不安だった。
「ログアーカイブが壊れてたら?」
「RMANの検証は?チェックサムは?」
「“戻したつもりが戻ってない”とかないの?」
試してみた:PITR(ポイント・イン・タイム・リカバリ)
意を決して、開発環境でPITRを実行してみた。
結果:
任意の日時を指定して復元
数分〜十数分で別インスタンスが生成
そのまま検証・切り戻し可能
「……これは、めちゃくちゃラクだ」
オンプレでは丸一日かかっていた作業が、数クリックで終わる。
だがラクだからこそ、理解しておかないと事故る。
DBAの役割が変わる瞬間だった
「パッチもバックアップも、やらなくていい」
それは“仕事が減る”ではなく、“責任の持ち方が変わる”ということ。
手作業がなくなっても
監視すべき指標はあるし
復旧の手順も知っておく必要がある
自動化された世界でも、DBAは消えない。
ただ、信じて任せる力が試される。
次回予告
第6話|SQLの性能劣化、気づいたら治ってた件〜そしてまだ封印された力もあった〜
あの面倒なSQL性能劣化対応が"ゼロ運用に"ーー
オンプレDBA必見、監視・原因特定・計画修復まで全自動の仕組みを暴く!


