この記事は「【リアルタイム電力予測】需要・価格・電源最適化ダッシュボード構築記」シリーズの八日目です
Day1はこちら | 全体構成を見る
前回は電力価格とは何か?から始まり、データのダウンロードと整形について記載しました。
今回は、取得したデータのEDA(探索的データ解析)を行い、特徴量やモデルについて考えていきたいと思います。
今回使用するデータ
電力価格データ
- JEPXの東京エリアのスポット価格
- 気象データ(気温、風速、日照時間、全天日射)
- 燃料データ(石炭・石油・ガス価格)
- 為替データ(USDJPY)
可視化の目的
電力価格は単なる時系列ではなく、以下の3つの階層的な構造で動いています。
- 長期トレンド
- 燃料・為替といった外生ショックが価格の基調を作る
- 短期トレンド
- 気温・需要・太陽光・風力が日々の価格を動かす
- 時間的な周期性
- 季節性(日周・週間・年間)が電力価格のパターンを形づくる
それぞれどのような動きをしているかを見ていきます!
1. 長期トレンド
電力価格の基調は、火力発電の燃料費(石炭・石油・ガス)と、それらの輸入価格に影響する為替(USDJPY)によって決まります。
そのため、中長期の価格トレンドがどう変化してきたかを確認していきます。
- 扱う変数
- 電力価格(JEPX)
- 燃料価格(Brent / HenryHub / Coal)
- USDJPY(円安・円高)
【折れ線】価格 vs 燃料価格
石炭(Coal AUS)
日本は主にオーストラリアまたはインドネシアから輸入しております。ここでは、オーストラリア炭の価格を扱います。

- 長期的に下降傾向にあった価格が2021年冬ごろから徐々に上昇し、最高価格は最低価格の約9倍です(!)
- 2022年8月の JEPX 価格スパイクと重なっており、燃料要因が電力価格高騰を招いたことが分かります
石油(Brent)
- 2020年の春ごろ、つまり新型コロナ感染症が流行し始めた頃に一度下がりますが、それ以降は徐々に上がり続け2022年の夏ごろにピークを迎えます
- それ以降は大体80円前後に落ち着いています。それでもコロナ前よりは高い水準です
- 石油と電力価格は完全に連動しておりませんが、燃料高騰期に価格の底上げが起きています
ガス(Henry Hub)
- いくつか山が見られますが、特徴的なのは2021年冬、2022年夏、2024年冬、2025年冬です
- 価格のピークからは遅れて変動がやってきています
【折れ線】価格 vs USDJPY
- 2021年春ごろから上昇傾向にあり、そのトレンドが今も高止まりしています
- 単体では電力価格との見た目の相関は弱いですが、「燃料価格 × 円安」による複合効果として効いている可能性が高いです
長期トレンドのまとめ
- 燃料価格の急騰 → 電力価格の基調が上昇する
- 円安 → 輸入燃料が割高になり、基礎的な電力価格が押し上げられる
- この構造は、短期変動では説明できない 価格の土台 を形成している
2. 短期トレンド
日々の電力価格は、主に 需要(負荷) と 気象(太陽光・風力・気温) で決まります。特に、気温と需要は電力価格の最重要要因です。
- 扱う変数
- 需要
- 気温
- 太陽光(Solar_rad / Solar_obs)
- 風力(wind_speed)
【散布図】価格 vs 気温
- 暑すぎる日・寒すぎる日は空調需要が増え、電力価格が上昇につながりそうです
- U字型の関係が見えます
【散布図】価格 vs 需要
- 高需要日には価格が跳ね上がる傾向が見られます
- ただし、夏は太陽光発電が供給を押し上げるため、
需要が高くても価格が低いケースが存在しています - つまり、需要単独ではなく 太陽光との組み合わせが価格を決めていそうです
【折れ線】価格 × 太陽光の強さ/時間・風速
全天日射(Solar Radiation)
- 日中にかけて急上昇し、昼過ぎにピークを迎えています
- 同時間帯の電力価格は低下しており、太陽光が市場価格を押し下げる効果が見られます
日照時間
- 全天日射と類似の挙動で、太陽光 実際の稼働度 を示す指標です
- 雲量による変動を反映し、太陽光発電の供給力を補完的に説明します
風速
- 深夜〜早朝に強まり、昼〜夕方にかけて弱まります
- 風力発電は一定ではありませんが、夜間価格の低さを部分的に説明しているのではないでしょうか
短期トレンドまとめ
- 気温 → 空調需要 → 価格上昇(U字構造)
- 需要 → 電力供給逼迫 → 価格上昇
- 太陽光 → 供給増 → 価格低下
- 風力 → 深夜の価格安定に寄与
⇒ 短期的には、「需要(気温)× 再エネ(太陽光・風力)」の組み合わせで価格が決まりそうです
3. 時間的な周期性
電力価格には季節性と日周パターンが存在しています。
- 扱う変数
- 月
- 時間
- 曜日
【ヒートマップ】月 × 時間
- 冬と夏の日中に価格が高くなっています
- 冬以外の深夜~朝にかけての価格は年間を通じて安定しています
- 高騰日の影響を除いても季節性は見られました
【折れ線】月 × 時間
- 冬:朝〜夕方にかけて価格が高い
- 夏:午後に向けて上昇するが、太陽光の影響で日中はそれほど高くならない
- 春・秋:全体的に低く安定
【ヒートマップ】年 × 月
2021年の1月の高騰が目立ちます。
- 2022年以降は年間の「基線」がずれていることが分かります
【ヒートマップ】曜日 × 時間
- 平日(月〜金)は需要が高いため、価格が高めに推移しています
- 土日は活動量が低く、全体的に価格が低いです
時間的な周期性まとめ
- 季節・時間帯・曜日パターンが見られた
→ 年間を通じて繰り返される安定した構造がある
明日
電力価格のモデルとして、分位点回帰の理論編に入ります![]()















