[Swift] Character型リテラルを定義する

Last updated at 2025-11-25Posted at 2025-11-24

目的

↑ この記事の続きとなります。

Swiftには、Character型を直接意味するリテラルは存在しません。

つまり、C/C++言語のように、char型は 'A'（シングルクォーテーションで囲む）、string(char*)型は "A"（ダブルクォーテーションで囲む）といった書き方ができません。

標準で書ける（単純型の）リテラルは、
数値風な 10 や 3.14 か、文字列風な "abcdefg" のタイプしか存在しません。

敢えて ‘風な’と付け加えた理由は、実際の型は ExpressibleByXXXXLiteralプロトコルによって定義され、見た目と実態は必ずしも一致しないからです。例えば、数値を書いて文字列型にすることもできます。

例；数値を文字列型にする

let a: MyStringLiteral = 123
print(type(of: a), a.debugDescription)
//String "123"

今回のテーマは、「Character型リテラルを定義する」です。
しかし、ExpressibleByXXXXLiteralプロトコルを定義してCharacter型にすることではありません。型アンテーションはすでにあります。

例；Character型とする

let a: Character = "a"
print(type(of: a), a.debugDescription)
//Character "a"

理想は、（シングルクォーテーションで囲む）'a'と書きたいところですが、これは現在のSwift言語仕様上無理な話なので、PythonやC++などのRaw文字列風な書き方で実現したいと思います。

目指す書き方
```
let a = r"a"
```

実装の検討

関数的な書き方なら、今でも普通に書けます。

let a = Character("a")	// Character.init

Characterが長いならTypealiasや関数定義で 1文字にできます。

typealias C = Character
let a = C("a")	// Character.init

あくまで文字列リテラルで表現したいので、次の書式で書ける方法を考えます。

```
let a = c"a"
```
しかし、現在のSwift言語仕様上、このままは無理ですね。

Cの代わりに何らかの演算子を使った表現なら、

let a = ^"a"

この書式であれば、文字列に対する^前置演算子を定義することで実現できます。

prefix operator ^
func ^(arg: String) -> Character {
    if arg.isEmpty { Character(UnicodeScalar(0)) }
    else { Character(String(arg.first!)) }
}

let a = ^"a"
print(type(of: a), a.debugDescription)
//Character "a"

見た目はOKですが、次の点を変更します。

^を含む既存の演算子の利用は、他の演算子拡張との兼ね合いで避けたい
func定義をインライン化して、少しでも変換ロスをなくしたい

最終的な定義

・ Character Literal

一部のUnicode文字を演算子として定義できる言語仕様を活かして、以下のように定義しました。

prefix operator © // keystroke option+G
@inlinable @inline(__always)
prefix func ©(arg: String) -> Character {
    if arg.isEmpty { Character(UnicodeScalar(0)) }
    else { Character(String(arg.first!)) }
}
@inlinable @inline(__always)
prefix func ©(arg: Int) -> Character {
    if let scalar = UnicodeScalar(arg) { Character(scalar) }
    else { Character(UnicodeScalar(0)) }
}

インライン展開を指示（実効性は不明）

使い方

let a = ©"A"
print(type(of: a), a.debugDescription)
//Character "A"

let constellation = 0x2648 ... 0x2653
for c in constellation {
    print("U+\(String(format: "%X", c)) \(©c)")
}
//U+2648 ♈
//U+2649 ♉
//U+264A ♊
//U+264B ♋
//U+264C ♌
//U+264D ♍
//U+264E ♎
//U+264F ♏
//U+2650 ♐
//U+2651 ♑
//U+2652 ♒
//U+2653 ♓

・ Character型をStrideableに準拠させる②

前回の記事で書いたコードは、ASCIIコード限定でした。今回は、これを Unicode 全体に拡張します。

extension Character: @retroactive Strideable {
    public func advanced(by n: Int) -> Self {
        var nextValue = self.value + n
        while 0 < nextValue && nextValue <= 0x10FFFF {
            if let scalar = UnicodeScalar(nextValue) {
                return Character(scalar)
            }
            nextValue &+= 1
        }
        return Character(UnicodeScalar(0))
    }
    public func distance(to x: Self) -> Int {
        return x.value - self.value
    }
    var value: Int { Int(self.unicodeScalars.first!.value) }
}

使い方

let constellation = ©0x2648 ... ©0x2653
for c in constellation {
    print("U+\(String(format: "%X", c.value)) \(c)")
}
//U+2648 ♈
//U+2649 ♉
//U+264A ♊
//U+264B ♋
//U+264C ♌
//U+264D ♍
//U+264E ♎
//U+264F ♏
//U+2650 ♐
//U+2651 ♑
//U+2652 ♒
//U+2653 ♓

結果

Character型リテラルを定義することが目的でしたが、厳密には達成できていません。しかし、「コードを書く上での見た目が同じ」という点にて 達成できたと評価します（自己マンです）。

let a = c"a"	//目指す書き方
let a = ©"A"	//今回実現した書き方

以上

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