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いますぐLatexを始めたいならOverleafを使おう

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Last updated at Posted at 2025-12-25

卒業論文の季節になりました!論文は目次と体裁を作れば8割完成と言われています(1割は「はじめに」、1割は残りの本文)。

前述の話は冗談ですが、論文の第一歩を年内に終わらせておくのは非常に重要です。年を明けてから文章を書き始めると、論文全体のクオリティが落ちます。それは時間的制約が大きい時期であっても、目次や体裁に関わる雑多な作業を省略できないからです。

そこで今回は、「じゃあ、論文を書くには何から始めたらいいの?」といった疑問を抱えた初学者向けにLatexによる論文制作手法を紹介します。

※ 今回は $\LaTeX$(ラテフ)と $\TeX$(テフ)の違いや歴史についてはほとんど扱いません。その辺を一緒くたにして"Latex"と表記します。

なぜLatexを使う必要があるの?

本音を言うと、Latexを使う意味はありません。

WordとLatexの比較は、素晴らしい論文を書くのに何も影響はありません。文書ファイルと設定ファイルがバラバラで、PDF出力するためのコンパイラ(Latexエンジン)が必要な文書作成ツールが受け入れられない人間が無理にLatexを使う必要はありません。アレコレ悩んで書き始められないなら、さっさとWordでもメモ帳でも書き始めた方が良いです。

Latexの利点は、「文章を書く以外の作業をいかに簡単にするか?」 にあります。代表的なのは文書構成の再現性や図表・引用の参照機能などが挙げられ、近年は生成AIによる文章補完・校正も可能になっています。

しかし、Latexの操作自体は複雑です。 $ や # が含まれた文は、人が読む文章というよりはソースコードに近いです(「え?同じ文章じゃね?」と思ったアナタは、情報化社会に適合した高次元人類です)。さらに現実は、「教授にLatexを使えと言われた」とか「みんなLatexで書いている」とかの消極的な理由で使い始めることが大半だと思います。つまり、Latexを使う前から習得のリターンと時間的なリソースを比較するのは困難です。

そこで、Overleafのようなクラウド型Latexエディタを使って、最小限のリソースでLatexを始める方法を紹介します。Latexを使い始めてから、その利点を実感してもらえれば幸いです。

以前はVSCode+GitHubで快適なLatex環境を構築するといった記事を書きましたが、よりこだわったLatex環境を構築したい場合はこちらを参考にしてください。

【2025/12/26 更新】
無料版のOverleafを使う場合、コンパイルがタイムアウトしてPDFが生成されない場合があります。その場合は、Cloud Latexか、Overleafの有料版の利用ををおすすめします。

【2026/01/29 更新】
Prismという新しいクラウド型Latexエディタが登場しました。現時点で、利用料は無料でコンパイル制限がないため、Overleafより快適に利用できる可能性があります。近日使用感をレビューします。

3分でわかるOverleaf

Overleafとは?

Overleafとは、ChromeやSafariなどのWebブラウザで起動するクラウド型Latexエディタです。基本無料で利用することができ、ローカルPCの環境構築は不要です。

クラウド型Latexには、他にもCloud Latexがあります。しかし、今回は比較的歴史があって利用者も多いOverleafを用いて説明します。

クラウド型Latexエディタの利点

環境構築が不要であることに加えて、豊富なテンプレート、自動保存・自動コンパイル、コメント機能、登録ユーザーとの共同編集などのクラウドサービスとしての利点があります。

他のLatexエディタとの比較

クラウド型以外のLatexエディタは、スタンドアロン型とIDE型があります。

スタンドアロン型にはTeXShopTeXstudioTexpadがあり、ウィンドウ内のGUIを操作して編集を行います。学習コストが低くオフラインでも起動する一方で、拡張性が低いために比較的に機能は不足しがちです。

IDE型は、VS Codeなどの軽量なテキストエディタを中心に、拡張機能のLatex Workshopを組み合わせて運用します。オフラインでも起動し、PDFへのコンパイラが最も速く、生成AIなどの新しい機能も次々とリリースされています。自由度と拡張性に優れる一方で、習得が大変です。

Latexエディタ.png

Overleafのアカウント登録

Overleafはアカウント登録するだけで使い始めることが可能です。Googleアカウントでも登録が可能です。

overleafホーム.png

テンプレートからプロジェクトを始める

筆者が作成した神戸大学市民工学専攻の修士論文フォーマットを用いて、Overleaf上にプロジェクトを作成してLatexを編集する手法を紹介します。

1. GitHubからzipファイルをダウンロード

https://github.com/nagampere/lualatex-kobe-template にアクセスし、緑色の「<> code」→「Download ZIP」をクリックしてください。

それによってローカルに「lualatex-kobe-template-main.zip」がダウンロードされます。

zipダウンロード.png

2. Overleafにzipファイルをアップロード

https://www.overleaf.com/project にアクセスし、緑色の「New Project」→「Upload Project」をクリックし、1.でダウンロードしたzipファイルを選択してください。

zipアップロード.png

3. PDFへのコンパイル

アップロードが完了すると、zipに格納されたファイルがOverleaf上に展開されます。

本プロジェクトはLuaLaTeXエンジンを用いてコンパイルする必要があるため、画面左上の「Settings」→「Compiler」から「LuaLaTeX」を選択してください。

overleaf設定.png

設定後、右上の「Recompile」ボタンをクリックすると、PDFへのコンパイルが始まります。

4. ファイルの編集

main.texが本文のメインファイルです。各章ごとに分割されたtexファイルを\inputコマンドで読み込んでいます。

論文執筆の際には、1_frontmatter, 2_mainmatter, 3_backmatterのtexファイルを編集してください。

0_preambleフォルダ内のpackages.tex, settings.tex, macros.texでは、使用するパッケージやドキュメント設定、カスタムコマンド・マクロ定義を行っています。必要に応じて編集してください。

lualatex-kobe-template-main
├── 0_preamble
│   ├── macros.tex             # カスタムコマンド・マクロ定義
│   ├── packages.tex           # 使用するパッケージ
│   └── settings.tex           # ドキュメント設定
├── 1_frontmatter
│   ├── abstractEN.tex         # 英文要旨
│   ├── abstractJP.tex         # 和文要旨
│   ├── contents.tex           # 目次・図表目次
│   └── title.tex              # タイトル
├── 2_mainmatter
│   ├── chapter1.tex           # 第1章の内容
│   ├── chapter2.tex           # 第2章の内容
│   ├── chapter3.tex           # 第3章の内容
│   ├── chapter4.tex           # 第4章の内容
│   └── chapter5.tex           # 第5章の内容
├── 3_backmatter
│   ├── acknowledgements.tex   # 謝辞
│   ├── appendix.tex           # 付録
│   ├── citations.tex          # 参考文献リスト
│   ├── kucivil.bbx            # 引用文献リストの設定ファイル(神戸大学市民工学標準)
│   ├── kucivil.cbx            # 引用番号スタイルの設定ファイル(神戸大学市民工学標準)
│   └── references.bib         # 参考文献リスト
├── digest
│   └── settings.tex           # 要旨のドキュメント設定
├── figure                     # 図専用
├── log                        # ログファイルや中間生成物
├── output                     # 出力ファイル
├── table                      # 表専用
├── template                   # テンプレート関連
├── README.md                  # はじめに読むファイル
├── digest.pdf                 # 要旨の最終出力物(ignore)
├── digest.tex                 # 要旨のメインファイル
├── main.pdf                   # 本文の最終出力物(ignore)
├── main.tex                   # 本文のメインファイル(全体をまとめる)
└── settings.json              # VSCodeのsettingsファイル

引用文献の追加方法

.bibファイルを用いると、本文中で\cite{}コマンドを使うだけで、本文中への引用番号の追加と参考文献リストへの追加が自動で実行されます。

latexのスクリプト
御園・山田(2014)\cite{misono2014}は,日本の社会資本が地域別生産性に与える効果を再検証し,…
自動出力される本文中の表示
$御園・山田(2014)^{2)}は,日本の社会資本が地域別生産性に与える効果を再検証し,…$
自動出力される参考文献の表示
$\text{2) 御園 一,山田 隆司: 日本の社会資本が地域別生産性に与える効果の再検証, 日本大学経済学部経済集志, Vol.83, No.2, pp. 107–132, 2014.}$

引用文献は、3_backmatter/references.bibにBibTeX形式で追加してください。追加方法は以下の3通りです。

  1. 手書きする
  2. Google ScholarからBibTeX形式でエクスポートする
  3. 文献管理ツール(Zotero, Mendeleyなど)を用いる

1. 手書きする

本プロジェクトのreferences.bibは、article(学術論文)・book(書籍)・incollection(書籍セクション)・misc(その他)の4種のBibTeXエントリに対応しています。これを参考にして、引用文献を手書きで追加してください。

また、日本語の文献を追加する場合は、必ずlangid = {japanese}を指定してください。これにより、日本語特有の表記ルール(著者名の順序、句読点など)が適用されます。

@article{misono2014, %論文のCitation Key(識別子)
  author  = {{御園, 一} and {山田, 隆司}}, % 著者名(姓と名は連結させるかカンマを打つ)
  title   = {日本の社会資本が地域別生産性に与える効果の再検証}, % 論文タイトル
  journal = {日本大学経済学部経済集志}, % 雑誌名
  volume  = {83}, % 【任意】巻数
  number  = {2}, % 【任意】号数
  pages   = {107--132}, % 【任意】ページ範囲
  year    = {2014}, % 発行年
  langid  = {japanese} % 言語設定(日本語の場合はjapanese/jpn/jp, 英語の場合は不要)
}

@book{mitsui2010, % 書籍のCitation Key(識別子)
  author  = {W.S. ロースター}, % 著者名
  translator  = {三井, 清}, % 【任意】翻訳者名
  title   = {社会資本整備の経済効率性からみた公共投資のあり方}, % 書籍タイトル
  publisher = {学文社}, % 出版社
  edition = {2}, % 【任意】版数
  volume  = {9}, % 【任意】巻数
  pages   = {302}, % 【任意】ページ範囲
  year    = {2010}, % 発行年
  langid  = {japanese} % 言語設定(日本語の場合はjapanese/jpn/jp, 英語の場合は不要)
}

@incollection{kim2013, % 書籍セクションのCitation Key(識別子)
  author  = {Kim, Minsoo}, % 著者名
  title   = {The effect of public capital on total factor productivity in East Asia}, % セクションタイトル
  booktitle = {Infrastructure and economic development}, % 書籍タイトル
  publisher = {Elsevier}, % 出版社
  edition = {2}, % 【任意】版数
  volume = {3}, % 【任意】巻数
  pages   = {137--156}, % 【任意】ページ範囲
  year    = {2013}, % 発行年
  langid  = {} % 言語設定(日本語の場合はjapanese/jpn/jp, 英語の場合は不要)
}

@misc{yamano2024, % その他のCitation Key(識別子)
  author  = {山野, 浩一}, % 著者名
  title   = {公共投資の経済効果に関する実証分析の動向}, % タイトル
  journal = {日本都市研究所}, % 【任意】誌名(webサイトのタイトル),
  year    = {2024}, % 【任意】発行年
  howpublished = {https://www.stat.go.jp/data/chiri/1-1.html}, % 【任意】URL
  urldate = {2025-01-21}, % 【任意】アクセス日
  langid  = {japanese} % 言語設定(日本語の場合はjapanese/jpn/jp, 英語の場合は不要)
}

2. Google ScholarからBibTeX形式でエクスポートする

Google Scholarでは、論文や書籍のBibTeX形式での引用情報を簡単に取得できます。以下の手順で行います。

  1. Google Scholarにアクセスします。
  2. 検索バーに引用したい文献のタイトルや著者名を入力して検索します。
  3. 検索結果から目的の文献を見つけ、引用マーク(")をクリックします。
  4. 表示される引用形式の中から「BibTeX」を選択します。
  5. 表示されたBibTeXコードをコピーし、3_backmatter/references.bibファイルに貼り付けます。

googlescholar.png

3. 文献管理ツール(Zotero, Mendeleyなど)を用いる

文献管理ツールとは、論文や書籍の情報を一元管理し、引用情報を簡単に取得できるソフトウェアです。代表的なツールにはZoteroやMendeleyがあります。ソフトウェア内で作成した文献リストをBibTeX形式でエクスポートし、3_backmatter/references.bibファイルとして保存できます。ソフトウェア内で更新された情報は、自動で.bibファイルに反映されるため、引用情報の管理が非常に楽になります。

ZoteroやMendeleyで日本語文献を管理する場合、デフォルトの設定では正しい「Citation Key」が生成されないことがあります。例えば、漢字を中国語として変換した謎の英語がデフォルトで出力されます。
例:「有村(2020)」→「youcun2020」

日本語対応のための設定を含め、詳しくはコチラの記事を参考

おわりに

今回はlatex初心者がOverleafを使って論文を書く手法を紹介しました。Overleafは環境構築が不要で、テンプレートも豊富に用意されているため、初学者にとって非常に便利なツールです。

しかし筆者の場合は、最終的にはVSCode+GitHubで運用しています。一番の理由としては、GitHub Copilotなどの生成AIによるコード補完ツールが便利だからです。Latexには様々なコンパイラ(platex, pdflatex, lualatexなど)やパッケージが存在する上に、それぞれに独自の文法や設定があります。それによって、謎のエラーが発生することが多く、コピペをせずに直接生成AIを使ってデバックできる環境を重宝しています。

さらに、学生は無料でGitHub Copilotを利用できます。興味がある方は、以下の記事も参考にしてください。

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