はじめまして。
私は現在CRE(Customer Reliability Engineer)として働いています。
CSや開発の間に立ちながら、問い合わせ対応からマニュアルの管理、改善要望の整理など、
プロダクトの価値をステークホルダーに届け切るために奔走しています。
はじめに
CRE / CSの仕事をしていると、
「これ、前にも調べた気がするな……」という仕様確認を
何度も繰り返していることに気づきます。
ヘルプはあるし、過去の対応履歴もある。
それなのに毎回、
「どこに書いてあったっけ」とか
「これって例外なかったっけ」と探し直してしまう。
今回は、そんな地味だけど確実に時間を奪ってくる作業を
少しでも楽にできないかと思い、NotebookLMで社内向けのチャットボットを試してみた話です。
社内チャットボット(NotebookLM)
そもそもの課題
CREやCSには、日常的に以下のような問い合わせが届きます。
- 顧客からの細かい仕様確認
- 社内からの「これってどうなってましたっけ?」という確認
1件あたりの確認時間はそれほど長くありません。
ただ、仕様をうろ覚えのまま返すわけにもいかず、
- 念のためヘルプページや過去対応を確認する
- 関連する注意点や例外仕様がないかを探す
といったプロセスが毎回発生します。
体感としては、1日あたり1〜2件、週にすると5〜10回程度
「探す → 読む → 要点をまとめる」という作業が積み重なり、
単発では小さく見えても、無視できない時間になっていました。
また、CS側でも
「自分でヘルプを見れば分かりそうだけど、確信が持てない」
という理由でCREに聞くケースがあり、本来減らせそうな問い合わせが減らしきれていない状態でもありました。
実現したこと
NotebookLMに以下をまとめて投入し、仕様を確認できる社内チャットボットを作りました
- ヘルプページ
- 過去の問い合わせ対応履歴
質問すると、該当箇所を参照しながら要点をまとめて返してくれます。
実現するための工夫・難しかったこと
検討・試行したこととしては、以下のようなものがあります。
- Difyで入力項目を固定して回答精度を上げる
- n8nでヘルプページを定期取得・更新する
- 「それっぽいことを言わない」ようにプロンプトで縛る
ただ実際に手を動かしてみると、
「思ったほど精度が上がらない」
「作り込みが増えて手が止まる」
「運用を考えると重たくなりすぎる」
といった状態が続き、「そもそも何を楽にしたかったんだっけ?」と、
作成の目的に立ち返ることになりました。
そこで半ば諦めつつ、
NotebookLMに資料をそのまま投入して試してみたところ
「参照を明示してくれる」
「要点を自然にまとめてくれる」
「過度な設計をしなくてもそこそこ使える」
という、想定以上に"ちょうどいい"回答が返ってきました。
汎用LLM+設計力が必要なツールと、資料理解に特化したツールでは、
向いている用途が違うということを強く感じました。
資料が明確にあり、「それを参照したい」ケースでは、
まずNotebookLMを試してみるのが良さそうです。
今後の展望
この社内チャットボットは、最初は「最終判断を担うツール」ではなく
「調べ物の入口」として使う想定で運用しています。
運用に載せていくために、関係者に対し“調べる最初の一手“として使ってもらい、
フィードバックを集めます。
「参照が足りない」「それっぽく答えてしまう」
といったケースを共有してもらいながら、
- プロンプトの修正
- ヘルプの補完
- 資料構造の整理
を少しずつ進めていく想定です。
終わりに
精度を上げようとして設計を詰めすぎると、
作るのが大変になるだけでなく、
「時間かけて作ったのに意外と使われない」
という状態になりがちです。
そうなると、次に何か作ろうとするハードルも一気に上がってしまいます。
要件を小さくし、
「まずは叶えたいことだけを叶えてみる(SPFを目指す)」
使われそうなら広げる。
このプロダクト開発の考え方は、
業務効率化ツールを考える上でもとても大事だと感じました。
今回の場合は、
- 参照したい資料が明確にある
- まずは調べ物を楽にしたい
という状況において、NotebookLMが最初の一手としてちょうど良かったという話です。
AIツールが乱立する今、「どんな情報を使って、どんな処理をしたいのか」によって
ツールを使い分ける必要があることも身をもって感じました。
(正直、これまではGPTにかなり頼りきりでした)
同じように「仕様確認、地味に時間かかる……」と思ったことがある人の、
何かのヒントになれば嬉しいです。
