「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準に基づく開示: この記事は記載の日付時点で株式会社ソラコムに所属する社員が執筆しました。ただし、個人としての投稿であり、株式会社ソラコムとしての正式な発言や見解ではありません。
書いたきっかけ
私事ですが、2025 年 1 月からアメリカに駐在しています。アメリカの住所も手に入れました!!せっかくなのでアメリカでしか使えないサービスを触ってみたいと思いました。
IoT デバイス、特に通信モジュールは利用したい国での承認を受けていないと使えません。たとえば日本で使うにはいわゆる技適を取得していたり、特例制度を利用したりする必要があります。
私がいち早く使いたいなと思っているのは、planNT1 (衛星基地局を使った通信サービス) を使った通信です。携帯の電波が届かない場所に行くことはあまりありませんが、衛星通信というワードにワクワクします。
ただ、planNT1 の通信に用いる Skylo のカバレッジでは 2025 年 12 月 15 日現在、日本は Coming Soon という扱いになっているので、今はまだ日本で使えません。
カバレッジをもう一度見ると、アメリカや欧州では使えるようです!!ということで一足先に繋げてみようかと思いました。
使ってみた
ドキュメント
アメリカや欧州ではすでに使えるようで、以下のドキュメントを参考にしながら進めました。
planNT1 対応のデバイスを入手する
今回は Murata Type 1SC-NTN Evaluation Kit (US Connect SIM) を使うことにしました。
購入するには SORACOM アカウントを作成する時に US の住所で登録する必要があるので、厳密には「アメリカに住む」「アメリカの住所を取得する」というステップも踏みました。当たり前ですが、日本とは商品が違ってヤマト運輸ではない配送業者から届いたのが新鮮でした。
届いたデバイスを開封すると、Murata Type 1SC-NTN Evaluation Kit (US Connect SIM) は手のひらサイズでした。SIM サイズはマイクロでした。
接続する
基本的にソラコムとドキュメント に沿って、また Skylo のドキュメントを参照してすすめました。
まずは plan01s の SIM を取り付けて ping や UDP 通信ができることを確認しました。
AT%PINGCMD=0,"100.127.100.127",1,50,30
%PINGCMD:1,"100.127.100.127",310,64
OK
100.127.100.127 は SORACOM の ping のエンドポイント、50 は ping のパケットサイズ、30 はタイムアウト時間です。レスポンス値の 310 は ラウンドトリップタイム (RTT) (ms) のようです。
では次に衛星へ接続するために planNT1 を追加します。ソラコムへ申請して planNT1 の利用を有効化してもらうと、サブスクリプション追加の選択肢に planNT1 がでてくるようになりました。追加した様子がこちら:
衛星通信のデータ通信料金は非常に高額なことから、他のサブスクリプションコンテナと異なり、planNT1 を有効化するには特別なコマンドを実行する必要がある のがポイントでした。
ドキュメントに書いてあるように APN の設定、NTN の有効化、バンドの設定、自分の位置の設定をした後に衛星ネットワークへの接続を試みたものの、一筋縄ではいきません。以下のように位置登録は 0 (位置登録されていない) と 2 (位置登録を試みている) を繰り返しています。
AT+CEREG=2
OK
+CEREG: 0
+CEREG: 2
+CEREG: 0
+CEREG: 2
+CEREG: 0
+CEREG: 2
+CEREG: 0
...
これはおそらく自宅の中で試したことから衛星に接続できなかったからだと思われます。GPS デバイスでも屋内では測位できないことが多いので同じですね。セットアップが完了したので車に積んで屋外で試してみることにしました。
外に出たらすぐに繋がりました。AT%NOTIFYEV="SIB31",1 コマンドで SIB31 という衛星からのブロードキャストメッセージを受け取ったタイミングでシリアルへ通知が表示される (%NOTIFYEV: "SIB31" と出る) ようになるのですが、私のターミナルでは 1 分前後くらいの間隔で表示されていました。
そして、これが衛星通信をしたときのセッション履歴!Satellite と出てました。IMEI は Murata のモジュールのもの、Area code と Cell ID は私の自宅近くの基地局なのでマスクしました。
MCC-MNC の 901-98 は Skylo のものですね。
データを送る
そして、UDP で SORACOM Harvest Data へデータを送信しました。が、アプリケーションのレベルで見るとセルラーで送った "Hello, world!" も衛星から送った "Hello, Satellite" も違いがありません。
低遅延を実感できるかと SORACOM Peek も使ってみたのですが、低遅延なのはデバイスと SORACOM までの間なので、SORACOM Peek でとったパケット上では特に遅延が見られませんでした。ただ、AT%PINGCMD=0,"100.127.100.127",1,50,30 という ping 送信コマンドを送った際のレスポンスで %PINGCMD:1,"100.127.100.127",12271,64 と返ってきたのですが、この 12271 が rtt の ms (ターミナルでも 10 秒くらいレスポンスに時間がかかって感じました) を示していて、12 秒の遅延があったことに宇宙を感じました。
おわりに
このブログではアメリカで SORACOM の衛星通信を使ってみました。衛星通信にはとても注目しているので、色々なユースケースがでてくることを楽しみにしていますし、次は何か実践的なことに使ってみたいと思います。





