はじめに
私は普段、Web系のシステムエンジニアとして、要件整理や実装、設計などを主に担当しています。そんな中、社内でHPのデザインを任されました。
慣れない領域ながらも、自分なりにFigmaで画面構成を作成し、上司にレビューを依頼しました。
しかしそこで私は、「伝えたつもりだったのに、まったく伝わっていなかった」という壁にぶつかります。
この記事では、そんな経験から得た気づきや改善の工夫、
デザインレビューで意見が散乱しないために整理した観点 などを整理したいと思います。
1. デザインレビューでのつまずき
先日、作成したトップページ案についてレビューを実施しました。
自分としては次のような意図を持って構成を考えて、相手に伝えていたつもりでした。
- シングルカラム構成:スマホ閲覧を想定し、縦スクロールで見やすくするため。
- シンプルな配色と構成:親しみやすさより"信頼感"を優先したかったため。
しかし、レビューでは「その理由が伝わってこない」と言われてしまいました。
私は確かに「理由はある」と思っていたけれど、それを "相手にとってわかる言葉" で説明できていなかったのです。
2. なぜ伝わらなかったのか?
今振り返ると、意図はあったけど、言葉にして相手に届く形で説明していなかったことが原因でした。
「自分では考えていたつもり」でも、レビューの場では "相手が判断できる材料"として提示できていなかった んだと気づきました。
要するに、「伝えたつもり」で止まっていたのです。
3. 納得感のある説明ってなんだろう?
上司は「デザインの良い・悪いを判断したいんじゃなくて、"理由"が知りたい」と言っていました。
つまり、レビューの場で大事なのは、見た目の良し悪しより、"なぜそうしたのか"を具体的に説明することが大切でした。
例えば以下のように
- 「この構成にしたのは、ターゲットユーザーがスマホ閲覧メインで、スクロール1回で全体像が見えるようにしたかったからです」
- 「xxカラーを選んだのは、柔らかくて安心感がある印象を与えたかったからです」
こうした "目的"と"意図"をセットで説明すること が、納得感を生むんだと強く実感しています。
4. レビューが"意見大会"にならないためにやったこと
今回、レビュー観点を事前に整理して上司と共有しました。
理由は、フィードバックがあちこちに飛ばないようにするためです。
以下は、実際に私が提示したレビュー観点の一例です:
観点 | 内容 | 想定されるフィードバック |
---|---|---|
トップ画面の構成 | 配置や余白、雰囲気に違和感がないか | 要素が詰まりすぎている/広すぎる |
テーマ・ターゲット像 | 想定している印象が伝わっているか | 信頼感より親しみを重視した方がいいかも |
ヒーローセクション | 写真やメッセージの見え方 | 文字が埋もれている/視線が分散する |
About Usの方針 | どの人物をどのように載せるか | メンバー紹介が偏って見える 等 |
優先度整理 | 今後どこから決めていくべきか | 活動紹介より採用情報を先に検討したい |
この"観点の明示"をするだけで、
- 話が脱線しづらい
- 指摘内容のズレが減る
- 相手に「何を見てほしいのか」が伝わる
という効果が見込まれます。
5. 曖昧な要望を言語化するために意識すること
デザインには明確な正解がなく、フィードバックも抽象的になりがちです。
例えば
- 「もう少し柔らかい感じにしてほしい」
- 「なんかちょっと寂しい気がする」
- 「ここ、もうちょい目立たせたいかも」
こうした曖昧な要望に対して、次のようなことを意識して取り組む必要があります。
1. 感覚的な言葉は具体化して確認する
「柔らかい感じって、色味ですか?レイアウトの余白?文言のトーン?」など、デザイン要素に分解して聞き返す
2. 「誰に」「何を」伝えたいのかを明確にする
「このセクションは、誰にどんな印象を与えたい想定ですか?」
3. ビジュアルで選ばせる
Figma上でバリエーションを2~3案見せて、「どれがイメージに近いですか?」と確認する
このようなやり取りを通じて、
「なんとなく言っていた要望」を言葉にして合意を取るプロセスがとても重要だと感じました。
6. 意思決定者からレビューをもらうときに意識すること
以下の3つは、今回の体験で特に大事だと感じたポイントです。
1. "好み"の話ではなく"目的"の話をする
- 「可愛いから」「格好いいから」ではなく、「どういう印象を与えたくて、どう設計したか」を伝える。
2. 相手が何を気にしているかを想像する
- 上司は「社外に出して大丈夫か」「信頼される見た目か」を重視していた。
その視点で補足できると、理解が早かった。
3. 「この方向でよいか」という聞き方をする
- 「これで大丈夫ですか?」より、「こういう目的でこの構成にしました。この方向性で進めてよいでしょうか?」の方が対話になる。
7. 非デザイナーがデザインをやってみて感じたこと
私は普段、要件定義や設計、開発をメインにしています。
デザイン業務の経験はなく、センスにもあまり自信はありません。
でも、今回の経験を通じてわかったのは、
- デザインにも"意図"や"構造がある
- そしてそれを"言語化"しないと伝わらない
- "伝わる工夫"がないと、せっかくの考えも評価されにくい
ということでした。
「考えてるのに伝わらない」は、デザインでも普段の業務でも起きうること。
だからこそ、伝えるための工夫をし続けたいと思いました。
おわりに
今回の経験を通して、私は次のような気づきを得ました。
- 「伝えたつもり」で止まらず、「伝わったかどうか」を意識する
- デザインレビューでは、"センス"よりも"意図と言語化"が求められる
- 事前に観点を整理することで、意見の発散が防げる
- 「この方向で進めてよいか?」と目的ベースで確認する方が対話になる
そして今回の経験は、「自分は普段の業務でも相手が納得できる説明をできているか?」を振り返るきっかけにもなりました。
要件説明や仕様調整の場面でも、同じことが言えると感じています。
また、デザインのように正解がない分野だからこそ、
「言葉にしづらい要望をどう言語化するか」というスキルの重要性も再認識しました。
…といろいろ書きましたが、正直に言うと、
今回のレビューでは「プレゼンの仕方が下手」と、まるで新卒のときに戻ったような指摘をもらい、結構落ち込みました。「やっぱり自分って話すのが下手なんだな…」と、しょんぼりしたのも事実です。
でも、それと同時に
「どうすれば伝わるか?」「どう工夫すれば伝えやすくなるか?」を改めて考えるきっかけにもなりました。
自分の"うまく話せないところ"を責めるのではなく、少しずつでも伝える力を育てていければいいと、今は前向きに受け止めています。
同じように「レビューでうまく伝えられなかった…」「相手に意図を伝えるのが苦手…」と感じている人のなにかヒントや励ましになればうれしいです。