こんにちは。
ALJの江口と申します。
Proxmoxは使っているでしょうか。我が家には常時稼働でProxmoxを運用している Intel N100 ベースのサーバーがあり、ファイルサーバーやimmichサーバーとして利用しており、リビングのテレビの後ろに置いてあります。
テレビの近くにPCがあるので、ProxmoxにデスクトップGUIを追加し、リビングPCという役割を加えてみたいと思います。
デスクトップの選択
Linuxには様々なデスクトップの選択肢があり、逆にどれを使えばいいか迷います。
いろいろな分類方法があると思いますが、よく語られる切り口は、GUIツールキットでの分類だと思います。
ざっくり、表を作ってみました。
| 時代 | 系統 | 主な代表 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 古典期(1980〜90年代) | Xt / Motif / Athena | CDE, Xaw | UNIXワークステーション時代の主流 |
| 成熟期(1990〜2000年代) | GTK / Qt | GNOME, KDE | 現代デスクトップの基礎を形成 |
| 多様化期(2000年代〜) | EFL / FLTK / wxWidgets など | Enlightenment, EDE | 軽量・組込み志向/代替系 |
| 現代(2010〜) | GTK3/4, Qt5/6 | GNOME, KDE, LXQt, MATEなど | Wayland対応、HiDPI、国際化など進む |
昔はなじみがあった Motif や EFL はLinuxではあまり使われておらず、GTK系、Qt系 が最近の選択肢となると思います。GTK系、Qt系だとどういう選択になるかというと、以下のようになると思います。
| 系統 | 主なGUIライブラリ | 主なデスクトップ環境 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| GTK系 | GTK (GIMP Toolkit) |
GNOME Xfce MATE Cinnamon |
GNOME由来。 シンプルでLinux伝統の流れ。 |
| Qt系 | Qt Framework | KDE Plasma LXQt Trinity |
Qt Company主導。 クロスプラットフォームでモダン。 |
昔は、GUIツールキットの選択を間違えると、設定が困難だったりして困ったこともありましたが、GTK系、Qt系 であればよほどの拘りがない限り、それほどドツボにはまることもないと思います。
普段は GNOME や Cinnamon を使うことが多いのですが、今回はメモリの節約を重視し、軽量かつDebianの標準リポジトリにもあるLXQtにしてみようと思います。
Proxmoxにデスクトップがインストールできるか
Proxmoxは標準状態ではCUIで起動し、ブラウザ経由での利用が想定されています。モニタを接続すると、以下のようなCUIの画面が表示されます。Proxmoxをインストールしたことがあれば、おなじみの画面だと思います。
---------------------------------------------------------------------------
Welcome to the Proxmox Virtual Environment. Please use your web browser to
configure this server - connect to:
https://192.168.xxx.xxx:8006/
---------------------------------------------------------------------------
pve login:
CUIのままで使うなら、このままログインすればいいですが、リビングPCとしてはグラフィカルなWebブラウザくらいは必要です。
ProxmoxはベースがDebianなので、Debianのリポジトリにあるソフトウェアであれば比較的簡単に導入することができます。LXQtもDebianの標準のリポジトリにあります。
Proxmoxにデスクトップをインストールするのは非推奨であり、自己責任の行為になります。
ユーザー作成、LXQtのインストール
rootのままデスクトップを使うのはさすがに気が引けるのでユーザーを作成しますが、Proxmoxはsudoが入ってないので、sudoもインストールします。
# apt update
# apt install sudo
ユーザーを作成します。
# adduser hoge
# usermod -aG sudo hoge
ユーザーが作成できたので、rootから抜け、ユーザーでログインしなおします。
LXQtをインストールします。
$ sudo apt install task-lxqt-desktop lightdm
インストール中にディスプレイマネージャの選択を求められるのでお好きな方を選択。自分はlightdm を選択しました。
インストールが完了したら、ディスプレイマネージャの状態を確認します。
# インストールされていればステータスが見れる
$ sudo systemctl status lightdm
# 自動起動が設定されているか確認
$ sudo systemctl is-enabled lightdm
ここで一旦、リブートすると、GUIのログイン画面が出てくると思います。
ユーザーでログインしてみます。
無事ログインできたら、左下のメニューからFirefoxを起動してみたり、コンソールを立ち上げてみたりして、動作確認してみます。自分のケースでは、日本語キーボードも認識されているなど目立った不具合はありませんでした。ただし、日本語変換は入っていませんでした。
日本語変換ができないので、日本語環境を整えます。
$ sudo apt install fcitx5 fcitx5-mozc fcitx5-config-qt fcitx5-frontend-gtk3 fcitx5-frontend-qt5
LXQtでは「Fcitx5を常に起動するようにする」必要があります。
セッション設定からGUIで
LXQtメニュー → 「設定」 → 「セッション設定」
「自動起動」タブを開く
「追加」→ コマンド欄に /usr/bin/fcitx5 と入力 → OK
(Commandの横のSearchボタンで検索できます)
Fcitx5 の Mozc エンジンを有効化します。
$ fcitx5-configtool
Fcitx Configurationが起動したら、Mozcが左になければ追加します。
Applyを押して、一旦ログアウトし、ログインしなおすとCtrl + Space または 半角/全角 キーで日本語入力が可能になると思います。
スクリーンセーバー停止
スクリーンセーバーが自動起動になっていたので、自分は不要なので停止しました。
以上でおおむね利用環境が整ったと思います。
もうちょっとカスタマイズしたい方
忘れてはいけないのは、ベースがProxmoxであり、Debianではないということで、安定稼働を考えたらあまり手を加えない方がいいと思います。しかし、LXQtの見た目がシンプルすぎる印象を受けるので、テーマやアイコンを少し変更してみます。
テーマの変更
LXQt Appearance ConfigurationのLXQt Themeで、下のチェックボックスに壁紙変更にもチェックを入れると、色調や壁紙が選べます。
アイコンの変更
LXQt Appearance ConfigurationのIcons Themeで、チェックを入れるとアイコンを変更できます。
ロケール設定(日本語メニュー)
表記を日本語にしたい場合、localeを日本語に変更すると変わります。
sudo dpkg-reconfigure locales
上記を設定し、ログインしなおすと日本語になると思います。
※Proxmoxに問題が起きたらもとのUSに戻してください。
$ locale
LANG=ja_JP.UTF-8
LANGUAGE=
LC_CTYPE="ja_JP.UTF-8"
LC_NUMERIC="ja_JP.UTF-8"
LC_TIME="ja_JP.UTF-8"
LC_COLLATE="ja_JP.UTF-8"
LC_MONETARY="ja_JP.UTF-8"
LC_MESSAGES="ja_JP.UTF-8"
LC_PAPER="ja_JP.UTF-8"
LC_NAME="ja_JP.UTF-8"
LC_ADDRESS="ja_JP.UTF-8"
LC_TELEPHONE="ja_JP.UTF-8"
LC_MEASUREMENT="ja_JP.UTF-8"
LC_IDENTIFICATION="ja_JP.UTF-8"
LC_ALL=
ブラウザもQtにこだわりたい場合
FirefoxやGoogle ChromeはGTKアプリなので、これらを利用すると折角LXQtなのにGTKライブラリ使ってる、と気になる方は、Falkonを利用しましょう。Falkon は Chromium 系の QtWebEngine を利用しているブラウザです。
$ sudo apt install falkon
厳密に比較していませんが、FalkonはFirefox/Chromiumより軽量らしいです。
とはいえ、ブラウザの使い勝手は重要なのでお好みで選択してみてください。
Proxmox + LXQt + Falkon で、快適なリビングPCライフが送れるかもしれません。
最後に
Proxmoxにデスクトップ環境をインストールするのは非推奨です。Proxmoxの管理に必要なことのほとんどはWebの管理画面からできるため、デスクトップのニーズは低いと思います。しかし、デスクトップがあれば、他のPCを起動しなくてもブラウザ操作ができるようになるので、Proxmoxの操作のために他のPCを起動するという手間が省けるというメリットもあると感じました。
自宅にサーバーがあるとさまざまな活用方法があるので、その選択肢にProxmoxを加えてみてはいかがでしょうか。
以上です。













