TL;DR
- 完璧より透明性。 迷ったら小さく出して、早く相談。
- レビューは人格審査じゃない。 仕様・品質・安全性の会話だと捉える。
- 人はみんな不器用。 きつく見える言い方も“伝達コスト最適化”の副作用なことが多い。流してOK。
- 記録は味方。 決定・前提・試行錯誤を短く残すと、未来の自分とチームの負債が減る。
- AIは補助輪。 使ってよいが、検証・根拠・社内ルール順守は必須。
この記事の対象
- 実務に入り 2〜6か月くらい のジュニアエンジニア
- 「自分だけ進みが遅い?」と感じ始めた人
- レビューの温度差や伝え方のギャップに戸惑う人
1. メンタルモデルを整える
- スキルは階段状に伸びる。 しばらく停滞→ある日いきなり分かる、が普通。
- “分からない”は欠点ではなく、観測点。 どこが分からないか言語化できた時点で強い。
- レビューは共同生産。 「攻撃」ではなく「プロダクトを守るための防波堤」。
2. コードレビューとどう向き合うか
- 先に背景を書く。 PR冒頭に「なぜ」「どうやって」「どこまで」を明示。
-
反論より補足。
Thanks!
+ 「設計Aを選んだ理由」を短く。 -
温度差の受け止め方(例)
- きつい言い方 → 内容抽出だけして感情は横に置く。
- 過度に優しい → 論点が流れることもあるので決定事項を必ず書面に。
- 無言・遅い → リマインドは事実ベースで日付つきに。
PR 冒頭テンプレ
## 背景
{課題/依頼/バグの起点}
## 目的
{何が満たされれば完了か(受け入れ条件)}
## 方針
{主要な設計判断/代替案/非採用理由を1-3行}
## 影響範囲
{機能/DB/運用/ドキュメント}
## 動作確認
{スクショ/コマンド/手順}
## 残課題(任意)
{後続PR/技術的負債}
3. 質問は“検索可能な資産”にする
Slack/Chatの質問テンプレ(貼って使える)
【現象】〜を実装中、Xの時にYが起きる
【期待】〜になるはず
【試したこと】手順/ログ/ソース箇所(リンク)
【切り分け】環境/ブランチ/再現手順
【ブロッカー度】今日中/今週まで/学習
【求める回答の粒度】方向性/コード断片/設計レビュー
- 「試したこと」が入ると、一次回答が具体化し、返答が早くなる。
4. 仕事の進め方:小さく切って早く見せる
- タスクは “1日で出せるドラフトPR” に分割する。
- 仕様不確実 → プロトタイプPRでキャプチャを先出し。
- 進捗は 事実の列挙(何を着手/完了/保留)で伝える。感想は二の次。
日次スタンドアップの型
【やった】#1234 PR作成、レビュー指摘A対応
【やる】#1235 API項目追加、ユニットテスト雛形
【詰まり】ステータス遷移の承認者ルール不明(誰に聞けば良いか?)
5. 仕様・期待値のすり合わせチェック
- 誰の課題か(ユーザー/運用/法務)
- 完了の定義(画面/API/テスト/ログ/監視)
- 境界条件(タイムアウト/エラー/権限/並行実行)
- 観測方法(スクショ/メトリクス/ログキー)
6. 記録は短く、でも残す
ライトADR(Architecture Decision Record)
# ADR-yyyymmdd-短いタイトル
- 決定: {Aにする}
- 根拠: {制約/評価軸(性能/保守/実装工数)}
- 代替: {B/Cを見送った理由を一行ずつ}
- 影響: {コード/運用/コスト}
1ファイル1分でOK。決定理由が残るだけで未来の議論が速くなる。
7. “人のタイプ”との付き合い方(現場あるある)
-
直球型(言い方きつめ)
- 内容要約で聞き返す:「要するにXをYにすると良い、で合ってますか?」
- DMsではなく公開スレッドで透明性を上げる。
-
菩薩型(超ソフト)
- 決定と次アクションをあなたが文章で確定させる。
-
寡黙・反応遅い型
- 期限・意図・影響範囲を添えて再通知。忙しさの波を前提に。
8. 自己防衛と健全な境界
- スコープ管理:依頼が増えたら「今のタスクが遅れる」ことを先に共有。
- 見積りは幅で出す:理想1d / 現実2–3d / リスクあり4d。
- ヘルスチェック:睡眠と食事はパフォーマンスの基盤。削らない。
9. 学びの積み上げ運用(軽量で続くやつ)
- TIL(Today I Learned):1日1行。検索しやすい場所に。
-
週次ふりかえり(10分)
- 維持:うまくいったこと
- 追加:次週試すこと
- 破棄:やめること
- 月次棚卸し:PR本数、学んだ論点、次の“1つの弱点”だけに絞る。
TIL/週次テンプレ
### TIL
- 2025-08-18: EF CoreのInclude後のWhereはSQLに落ちる/落ちない条件の理解
### 週次
- 維持: PRドラフトを午前中に出す習慣
- 追加: 仕様の曖昧さは図で確認
- 破棄: ノートにだけ残すやり方(Confluenceへ)
10. AI補助の賢い使い方
- 使う→検証→根拠提示がセット。生成物は必ずローカルで再現。
- 社内ルール遵守(機微情報の取り扱い、外部貼り付け禁止など)。
- 学びに変換:良かったプロンプトと落とし穴をTILに残す。
11. 小さなUX視点を常に入れる
- “自分がユーザーならどこで詰まる?”を1つだけ改善する。
例:エラーメッセージに次の一手(再試行/サポート連絡)を添える。
12. 付録:貼って使えるテンプレ集
12-1. PRテンプレ(再掲・短縮版)
目的:
設計判断:
影響範囲:
確認手順:
残課題:
12-2. Slack質問テンプレ(再掲)
現象/期待/試したこと/切り分け/ブロッカー度/欲しい回答の粒度
12-3. 日報テンプレ
# 日報 2025-08-18
- 進捗: #1234 マージ、#1235 実装70%
- 学び: {TIL}
- リスク/相談: {あれば一行}
- 明日: {具体的な作業名}
12-4. ライトADRテンプレ(再掲)
決定/根拠/代替/影響
13. よくあるシーンと“次の一手”
- レビューで詰んだ → 指摘を論点ごとに箇条書き→優先順に再PR。
- 仕様が曖昧 → 2〜3枚のモック or シーケンス図を投げて合意形成。
- 期限が危ない → いまの進捗%、残タスク、依頼したい支援を同時に共有。
- チームの空気が重い → 事実ベースのGood/Keep/Tryをショートで発火。
14. 最後に
みんな元は初心者。言い方が強い人、優しすぎて逆に伝わりにくい人、寡黙な人等いろいろいる。気にしすぎず、プロダクトとチームの前進にフォーカスしよう。
小さく早く出す・背景を書く・記録を残す・質問を資産化する。これだけで、毎週少しずつ確実に強くなる。報連相は正義。徐々に自分の最適解を見つけていけばいいから、焦らず日々を積み重ねていけば、必ずあなたは強くなる。がんばれ。
ただし、がんばりすぎるな。合わないこともある。限界が来たら逃げろ。逃げは負けじゃない。次の勝利のための回り道だ。
明日のあなたは、今日の記録に助けられる。焦らず、でも手は止めない。
実務数ヵ月目、ここからが一番伸びる時期だ。