TSの鬼 第6回：制御フロー解析と型の絞り込みを極める

はじめに

前回

TypeScriptの真骨頂は「静的型付け」だけではない。

文脈に応じて変化する“文脈依存の型推論”すなわち 制御フロー解析（Control Flow Analysis） こそが、TypeScriptの型システムを強力たらしめている。

本稿では以下の要素を中心に解説する：

• 制御フロー解析とは何か？
• 型の絞り込み（Type Narrowing）の具体例
• 型ガードの設計手法

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制御フロー解析とは

制御フロー解析とは、プログラムの“実行経路”を型システムが理解し、値の型を絞り込む機能である。

以下のようなコードがその典型である。

function printLength(value: string | null) {
  if (value !== null) {
    console.log(value.length); // ✅ TypeScriptは value が string と認識する
  }
}

このように if 文の条件をもとに TypeScript は value の型を string に絞り込んでいる。

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型の絞り込み（Type Narrowing）

TypeScript は以下のような構文で自動的に型の絞り込みを行う：

typeof

function log(x: string | number) {
  if (typeof x === "string") {
    console.log(x.toUpperCase());
  } else {
    console.log(x.toFixed(2));
  }
}

instanceof

class Dog {
  bark() {}
}
class Cat {
  meow() {}
}
function speak(pet: Dog | Cat) {
  if (pet instanceof Dog) {
    pet.bark();
  } else {
    pet.meow();
  }
}

in 演算子

function move(animal: { fly: () => void } | { swim: () => void }) {
  if ("fly" in animal) {
    animal.fly();
  } else {
    animal.swim();
  }
}

これらは全て、TypeScriptの「文脈を読む」力に基づいている。

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ユーザー定義型ガード（Type Predicate）

より高度な型絞り込みを実現するために、開発者が独自に型ガードを定義できる。

function isString(value: unknown): value is string {
  return typeof value === "string";
}

function handle(value: unknown) {
  if (isString(value)) {
    console.log(value.toUpperCase());
  }
}

この構文 value is string が 型述語（Type Predicate） であり、TypeScript に対して型情報を明示的に与えている。

実務では、複雑な型や外部データ（例：APIレスポンス）を扱う際に極めて有用である。

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never型と制御フローの網羅性

never は、型の絞り込みが“すべて消費された”ときに現れる特殊な型である。

type Shape = { kind: "circle"; radius: number } |
             { kind: "square"; side: number };

function area(shape: Shape) {
  switch (shape.kind) {
    case "circle":
      return Math.PI * shape.radius ** 2;
    case "square":
      return shape.side ** 2;
    default:
      const _exhaustiveCheck: never = shape; // ❌ 新しい型が追加されるとコンパイルエラー
      return _exhaustiveCheck;
  }
}

このようにして「すべてのパターンを網羅していること」をコンパイル時に保証できる。

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まとめ

技法	用途
typeof, instanceof, in	組み込み型ガードによる絞り込み
型述語関数	より厳密かつ再利用可能な型判定
never を使った網羅性保証	安全性と拡張性の担保

制御フロー解析は、TypeScriptの型システムの中核であり、型安全な設計を支える屋台骨である。

この仕組みを正しく理解し活用することで、実装の堅牢性と可読性を飛躍的に高めることができる。

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次回は「ジェネリクス完全攻略：柔軟かつ安全な型抽象化の設計術」をテーマに、TypeScriptの汎用性を支える設計手法に迫る。