はじめに
ここ最近のSnowflakeのAI機能のアップデートは,本当に目まぐるしい.
最初は「Cortexで何ができるんだ?」と手探りだったところから,気づけば Snowflake Intelligence という一つの大きな形が見えてきた.
これまで私がQiitaで発信してきた数々の「やってみた」の軌跡を振り返ると,それは単なるデータプラットフォームが「AIと融合したインテリジェンスな存在」へと変貌を遂げる歴史そのものであったと感じる.記憶を辿りながら,その変遷をまとめてみたい.
1.Cortexによる「草の根」データカタログ作成
約1年半前だろうか.すべては Snowflake Cortex の登場から始まった.当時はまだ気の利いたUIはなく,Cortex関数をスクラッチで回していた.テーブルに転がっている生データから,AIに「これって何についてのデータ?」とメタデータを抽出させ,それをコツコツまとめてデータカタログを自作していた時期だ.
この頃はまだ「AIを便利に使う」というより,「AIを使ってデータ管理を自動化する」という,裏方の作業がメインだったように思う.
参考
2.待望のUI,Streamlit in Snowflakeの登場
次に登場した Streamlit in Snowflake (SiS) は,Cortexで生成したデータカタログを「見せ,修正する」ための強力な武器となった.Cortexが「脳」なら,SiSは「手足」となるインターフェースだ.カタログを単なるメタデータの塊から,人間が介在してブラッシュアップできる生きたツールへと変貌させた.
PythonでサクッとUIが作れるようになったことで,ようやく「データカタログ」に血が通い始めた感覚があった.
参考
- Streamlit in Snowflake (GA: 2024/08)
- "Streamlit in Snowflake(SiS)" でsemantic-model-generator とcortex-analyst と動作させる方法
3.セマンティック層を変革したCortex Analystの登場とSiSとの融合
分析の本質を突く Cortex Analyst の登場により,世界は「カタログを見る」から「データと話す」へとシフトした.当初は,SiS上で必死にYAML(セマンティックモデル)を定義して,「どうすればAIが正しくSQLを投げてくれるか」を試行錯誤していた.
それがいつの間にか,SnowsightのUI上でポチポチとテーブルを選ぶだけで,セマンティックモデルやビューが作れる機能が追加された.このあたりから,「ユーザーはカタログなんて見なくても,自然言語で直接データを叩けばいい」という世界観が現実味を帯びてきた.
参考
- Cortex Analyst (GA: 2024/11)
- Snowflake Cortex Analyst をプライベート環境(AWS PrivateLink等)で動作させる方法
- Snowflakeでお手製データカタログを作成する方法3(semantic-model-generatorのYAMLファイルを活用したデータカタログ自動生成)
4.完成形へ - Snowflake IntelligenceとCortex Agents
そして今,Cortex Agents や Snowflake Intelligence が出てきたことで,フェーズが一段変わった.
これまでSiSなどで一生懸命実装していた「UIの作り込み」や「精度のためのロジック」を,Snowflakeのネイティブなサービス側に丸投げできるようになった.開発者の手間が省けるのはもちろんだが,何より「データを準備してからAIとして使えるようになるまでのリードタイム」が恐ろしく早くなった.もはや,ユーザー側でこれらを自作することさえも現実的な選択肢になっている.
参考
- Snowflake Intelligence (GA: 2025/11)
- クロスリージョン設定なしでCortex AgentとSnowflake Intelligenceを動かす方法
- Snowflake Cortex Agentsを外部環境から呼び出す方法
5.Agentsの真価は「Tool」による拡張性とマーケットプレイスへの期待
ここでさらに面白いのが,Cortex AgentsのTool機能だ.
Snowflake Intelligenceは,Cortex AnalystやCortex Searchといった標準機能だけでも強力だが,真の強みはその「拡張性」にある.独自のロジックや外部連携をPythonでラップして「Tool」としてAgentに持たせることで,可能性は無限に広がる.特定の業務ドメインに特化した複雑な計算や外部連携を組み込めば,標準機能だけでは届かない領域までAIがカバーできるようになる.
こうした独自ロジックを持つCortex Agentsは非常に再利用性が高い.個人的には,これら独自のToolを組み込んだAgentsをマーケットプレイスで共有・再利用できる仕組みを切望している.世界中のエンジニアが作った「最強のAgent」を再利用し,自社のデータに繋ぐだけで即戦力になる未来が来るはずだ.
私はまさにこここそが、「数理最適化の民主化」の大きな糸口 になると考えており,今年こそ大進撃を遂げるつもりでいる.
6.さらなる未来へ - クエリ履歴からの自動生成
さらに直近では,クエリ履歴からセマンティックビューを自動作成する機能まで発表された.人間が「どう結合するか」を定義する手間さえもAIが肩代わりする.AI-readyな環境は,もはや作るものではなく,勝手に出来上がるものになりつつある.
Snowflake機能リリースの歴史と筆者の軌跡
これらの軌跡をまとめると以下のようになる.
| 登場したサービス | 立ち位置(主観) | リリース時期 (公式) | 筆者のアウトプット |
|---|---|---|---|
| Cortex AI Functions(※1) | カタログ作成の脳 | 2024/05 (GA) | データカタログ自動生成 |
| Streamlit in Snowflake(※2) | カタログを見せる顔 | 2024/08 (GA) | - |
| Cortex Analyst | 構造化データとの対話 | 2024/11 (GA) | Analyst構築 |
| Snowsight でのセマンティックビュー作成 | モデル作成のGUI化 | 2025/10頃 | Analyst活用 |
| Cortex Agents(※3) | Toolで拡張可能なAI | 2025/11 (GA) | Agents活用 |
| Snowflake Intelligence(※4) | 統合プラットフォーム | 2025/11 (GA) | Intelligence活用 |
| クエリ履歴からセマンティックビュー自動生成 | 自動化の極み | 2026/2 発表 | - |
※1: Snowflake Cortex AI Functions
※2: Streamlit in Snowflake GA
※3: Cortex Analyst GA
※4: Snowflake Intelligence & Agents
おわりに
結局のところ,Snowflakeが目指しているのは「データがある場所で,誰でもAIの恩恵を即座に受けられること」なんだろうと思う.一昔前のような「泥臭いカタログ整備」の日々が懐かしく思えるほど,この1〜2年の進化は凄まじかった.
次はマーケットプレイスで,誰かが作った「最強のエージェント」をポチれる日が来るのを,また,逆に私の考える「最強のエージェント」を皆さんに簡単に届けられるようになる日が来ることを,首を長くして待っている.