はじめに
2025年、国土地理院より、広範囲の1mメッシュ数値標高モデルが公開され、詳細な地形データを簡単に入手できるようになりました。今回は1mメッシュと従来から公開されていた5mメッシュの数値標高モデルで水文解析をしてみました。解析方法は過去記事をご覧ください。
水文解析対象は八丈島
解析対象としては、ほど良い面積で地形が独立している島がよいと思って、地理院地図を眺めて、伊豆諸島の八丈島を選びました。八丈島は、開析の進んでいない北西側の西山(八丈富士)と、開析の進んでいる南東側の東山(三原山)が対照的なひょうたん型の島となっています。
入力データと解析条件
入力データは1m、5mメッシュの数値標高モデルを国土地理院のサイトからそれぞれダウンロードしてtifに変換、マージ(結合)、投影変換(WGS84→JGD2011 UTM54)しました。源頭(河川の発生する点)の集水面積は実面積で25,000m2に揃えて、1mメッシュは25,000ピクセル、5mメッシュは1000ピクセルとしました。
解析方法は過去記事の通りですが、r.terraflowにる凹地の平滑化はしていません。これは1mメッシュでは処理に時間がかかりすぎたためです。
入力データ | 投影変換後メッシュサイズ | 源頭の集水面積 |
---|---|---|
1mメッシュ(0.04秒) | 1m | 25,000m2(25,000ピクセル) |
5mメッシュ(0.2秒) | 5m | 25,000m2(1,000ピクセル) |
水文解析結果
全体
1mメッシュの流路を赤、5mメッシュを青で示しており、ベースマップは1mメッシュの陰影起伏図です。
開析の進んでいない北西側の西山(八丈富士)は山頂を取り囲む1mメッシュ(赤)の流路が特徴的で1mメッシュと5mメッシュ(青)の違いが大きくなっています。一方、開析の進んでいる南東側の東山(三原山)は概ね同様となっています。
西山(八丈富士)
西山(八丈富士)の山頂付近を拡大してみると、1mメッシュ(赤)は道路に流路ができている一方5mメッシュ(青)は多少道路の影響を受けつつも、道路を横断して流路ができています。
山頂の北西側をさらに拡大すると、1mメッシュでは、道路の車線それぞれに流路ができていました。
東山(三原山)
東山(三原山)は、開析が進んでおり、谷地形に流路ができていますが、こちらでも、1mメッシュ(赤)は部分的に道路に流路ができています。
八丈島空港
西山と東山の間にある八丈島空港では、空港の盛土上の南側に直線的な1mメッシュの流路ができており、道路か水路と思われます。5mメッシュはこの溝を識別しておらず、流路はすぐに盛土から降りています。
おわりに
r.watershedなどの水文解析ツールは、基本的には開析された尾根谷地形に流路(河川)を作るツールだと思います。低解像度データの場合は、人工的な微地形が消えて谷に沿った流路ができますが、高解像度データでは、道路等の人工的な微地形に流路が絡めとられてしまいました。
通常、道路の谷埋め盛土には排水暗渠が造られるので、水の流れとしては必ずしも正しくないですが、路面による集水が災害要因になることもあるので、解像度の選択は見たいものによりけりと思います。
また、5mメッシュでも部分的に谷を直進しない道路に沿った流路がみられるので、原地形による流路を作るにはもう一段落として10mメッシュを使ったほうが良い場合もあるかもしれません。