はじめに
手を動かしてモノを作るのが好きな人は、一度はネジの保管方法について悩んだことがあると思います。世界中のDIYヤー達も様々な保管方法を考えてきました。いずれの方法も価格が高かったり、広い保管場所が必要だったりと不満が残るものが多かったので、自分で作ってみることにしました。
今回ご紹介するのは、レーザーカッターを使える環境の方に向けたネジの保管棚の制作方法です。レーザーカッターはFabCafeなどのファブリケーション施設でも利用することができます。使えると工作の幅が大きく広がりますので、使ったことがない方はこの機会にチャレンジしてみましょう。
完成品
 切れ込みを利用したネジの保管方法 pic.twitter.com/Moikcd2g6A
— ダイヤモンド電電 (@diamond_denden) July 18, 2020
必要なもの
材料
材料 | 詳細 | 価格 (ホームセンターでの購入時) |
---|---|---|
塩ビパイプ | 呼び径40mm (外径48mm)*2m |
1000円程度 |
MDFボード | 450mm*900mm (厚さ4mm) |
500円程度 |
連結樹脂スペーサー | M3*30mm | 300円程度 |
タッピングビス | M3*10mm*4本 (鍋頭) |
300円程度 |
チャック付きポリ袋 | 85mm*120mm (厚さ0.8mm)*100枚 |
300円程度 |
A4用紙 | -- | -- |
工具類
- レーザーカッター
- 加工可能範囲が300mm*600mm以上あると好ましいです
- レーザー出力が60W以上あるとMDF4mmを一発でカットできます
- のこぎり
- 塩ビパイプをカットするために必要です
- MDFボードをレーザーカッターの加工可能範囲内の大きさにカットするのに必要です
- ホームセンターによっては有料で切断してくれるところもありますので相談してみてください
- キリ
- タッピングビスの下穴あけ用に必要です
- プラスドライバー
- タッピングビスを埋め込むために必要です
- メジャー
- タッピングビスを埋め込む穴の場所を決めるために必要です
- はさみ
- ラベルを印刷したA4の紙をカットするのに必要です
製作工程
設計
ホームセンターで手に入る材料から逆算して棚の大きさを設計します。
立体のものを考えるときは3D CADを使うと何度も画面内で作り直せるので便利です。今回はAutodesk社のFusion 360を利用しました。
まず棚の脚を考えます。
棚を安定させるには4本の脚が必要です。今回は規格品で加工がしやすい塩ビパイプを利用することにしました。のこぎりで簡単に切れ、強度や耐久性も申し分なくDIYヤーの頼もしい味方です。2mの塩ビパイプを4つにカットすると一つの長さは50cmになります。予算に余裕がある方は、1mの塩ビパイプを2本買うと持ち帰るのが楽になると思います。
次に棚板を考えます。
個人利用を前提とした出力のレーザーカッターで、比較的厚い板をストレスなく切れる素材としてMDFボードがあります。MDFはベニヤ板などの木材と比べ、カットした後の加工(バリ取りやニス塗り)が不要という夢のような素材です。今回はホームセンターでよく売られている厚さ4mmのMDFボードを利用することにしました。棚板の横幅は、レーザーカットしやすいようにMDFボードの横幅450mmよりも少し小さめの400mmにしました。使用するレーザーカッターの加工範囲が広ければ広いほど大きな棚板を作ることが出来ます。斜めに切れ込みを入れているのは内容物を見やすくする意図があります。
このままでは強度が足りなくグラついてしまうため、揺れ防止機構を考えます。
今回は樹脂製の連結スペーサーを利用しました。連結スペーサーは2次元のものを立体に拡張でき、なおかつ長さ調節も細かくできる隠れたDIYヤーの味方です。もっと脚光を浴びてもいいパーツだと思っています。今回はaitendoで樹脂連結スペーサーを購入しました。
そしてネジを小分けにするチャック付きポリ袋を選定します。
ポリ袋は透明で中のものが見えて値段も安い反面、尖っているものなどを入れると穴が空きやすいのが難点です。なるべく厚みが厚いものを選びましょう。今回はホームセンターで買うより安かったのでモノタロウで購入しました。
最後にポリ袋の中に入れるラベルを設計します。
ポリ袋の大きさとA4の印刷可能範囲を考慮して、ネジの種類が分かるようなラベルを設計します。ネジの太さごとに色を分けるとひと目で太さが分かるのでおすすめです。両面から確認できるように、カットしたあと折りたためるような印刷の設計にしました。
加工・組み立て
まず塩ビパイプをのこぎりでカットします。
のこぎりで簡単にカットできるので、塩ビパイプに可能性を感じた方は一つ持っておくのが良いと思います。
次にMDFボードを棚板の大きさにのこぎりでカットします。
MDFボードは加工性が高く、2.5mmくらいの薄いものであればカッターで数回切れ込みを入れると切ることが出来ます。今回は厚さ4mmだったのでのこぎりでカットしました。
カットしたMDFボードをレーザーカットします。
本カットするまえにテストカット用のデータを作成しておくことをおすすめします。塩ビパイプが穴にピッタリはまるか、ポリ袋は切れ込みにスムーズに入るか、などをテストできるデータを別に作成しておきましょう。今回作成した棚は背板がない設計なので、ピッタリはまらないとグラグラしてしまいます。ピッタリはまることが確認でき次第、本カットをすることで無駄な時間と材料費を抑えることが出来ます。ハードウェアは急がば回れです。今回作成したカットデータを置いておきますのでご活用ください。
レーザーカットデータ(.ai)
レーザーカットしたMDFボードを連結スペーサーで固定します。
組み立てたMDFボードを塩ビパイプに通し、タッピングビスを塩ビパイプに埋め込むことで棚ダボのような役割を果たす突起を作ります。
曲面にタッピングビスをねじ込むのは難易度が高いので、先にキリなどで下穴を開けることをおすすめします。
最後にポリ袋の中に入れるラベルを印刷し、カットして折りたたみポリ袋に入れます。
ポリ袋をMDFボードの切れ込みに差し込んで完成です。
おわりに
モノは持っているだけでは価値はなく、使える状態にあって初めて価値が出ます。ある統計によると、生涯のうち半年は探しものに費やしているそうです。一度時間をかけてでも充実した保管棚を作ってみるのはいかがでしょうか。