平均と標準偏差が与えられた正規分布から,標準正規分布へ変換(標準化)して解く方法に焦点を当てる.
初学者向けに実際に手を動かして解く流れを中心に説明する.
正規分布と標準正規分布
統計検定2級では以下の2つの分布を扱うことが多い.
- 
一般の正規分布:
$$X \sim N(\mu, \sigma^2)$$
平均 $\mu$,標準偏差 $\sigma$ - 
標準正規分布:
$$Z \sim N(0, 1)$$
平均0,標準偏差1 
一般の正規分布のままでは確率表が利用できないため,標準化して標準正規分布に変換する.
標準化とは何か
正規分布 $X \sim N(\mu, \sigma^2)$ の値 $x$ を標準正規分布に変換する操作である.
$$
Z = \frac{X - \mu}{\sigma}
$$
- $X - \mu$:平均を0にずらす
 - $\div \sigma$:尺度を標準偏差1に合わせる
 
この変換は単調増加であるため,
$$
X \ge x \quad \Leftrightarrow \quad Z \ge \frac{x - \mu}{\sigma}
$$
となる.したがって確率もそのまま対応する.
例題
問題
あるデータが平均70,標準偏差8の正規分布に従うとする.
このとき,値が 85以上 となる確率を求めよ.
解き方の流れ
(1) 標準化する
$$
Z = \frac{X - \mu}{\sigma}
= \frac{85 - 70}{8}
= \frac{15}{8}
= 1.875
$$
よって
$$
P(X \ge 85) = P(Z \ge 1.875)
$$
(2) 標準正規分布表(Z表)を使う
Z表は通常,左側確率
$$
P(Z \le z)
$$
を与える.
表より
$$
P(Z \le 1.88) \approx 0.9699
$$
(1.875に近い値として1.88を使用)
(3) 上側確率を求める
上側確率は
$$
P(Z \ge z) = 1 - P(Z \le z)
$$
したがって
$$
P(Z \ge 1.875) \approx 1 - 0.9699 = 0.0301
$$
結論
$$
P(X \ge 85) \approx 0.030
$$
よって,値が85以上となる確率は約3%程度である.
重要ポイントまとめ
| ポイント | 内容 | 
|---|---|
| 標準化 | $Z = \frac{X-\mu}{\sigma}$ | 
| 上側確率 | $P(Z \ge z) = 1 - P(Z \le z)$ | 
| 不等号の向き | 標準化は単調変換なので不変 | 
| 目的 | 標準正規分布表を利用できるようにする | 
典型的な間違い
| 誤り | 正しい理解 | 
|---|---|
| 標準化後に不等号の向きが変わると思う | 標準化は単調変換なので向きは変わらない | 
| 上側確率を直接表で探す | 表は通常「左側確率」なので 1 から引く | 
| σ が1以外だと困る | 標準化すれば常に $N(0,1)$ になる |