はじめに
これは何?
3DプリンターオタクもすなるMakerChipといふものを、作ってみむとて作るなりというお話です。
AIのぱわーと先人の知恵を借りてIllustratorなし、モデリングなしでおそらく一番簡単に作れると思います。
What is MakerChip ?
MakerChipは3Dプリンターのオタクが名刺代わりに使えるチップ的なものらしいです。
より詳しい情報や今流行っている理由などはyskさんのnoteに載ってるのでぜひ見てみてください。(私もこれを見て知りました)
MakerWorldのページ
作り方の解説動画
環境・機材等
今回使用したのは、BambuLabのA1 miniにAMS互換のMMU、BMCUを取り付けたもので、スライサーにはBambu Studioを使用しました。
基本的にはBambuLabのマルチカラー機を持っている方ならだいたい同じようにできる、はずです。
後ろが汚いのは見逃してください...
制作編
素材作成
MakerChipを作るためにはまず素材としてメインのデザインが欠かせません
K2 KevinさんのMakerChipコレクションだそうです。様々な個性的なデザインがありますね。
残念ながら私にはデザイン等のスキルが無かったのでChatGPTに作ってもらいました。
はじめは縺(もつれるの”もつ”の部分)という字を使ったデザインにしたかったのですが上手くいかなかったため、仕方なくひらがなの”も”を使う形にしてもらったらうまくいきました。
ここで、ChatGPTはjpgやpngしか生成できないのに対し、Bambu Studioでの設定時にはそれだと不便、ということがあり、生成したロゴをsvg形式に変換する必要があります。
「png to svg」などで検索すればサイトが沢山出てくると思います。ビットマップからベクターへの変換が画像とシステムの組み合わせによっては上手くいかない場合があるので、もしBambu Studioでの設定時に上手くいかなかったら複数のサイトを試してみるのも手です。
もう一つ、MakerChipにはQRコードが必要です。
今回はQRコードのススメを使って私のTwitter(通称X)のアカウントのページのQRコードを作成しました。これもsvgファイルで出力しておくと良いです。自分のサイトなど持ってる方はそのリンクを使うのもいいかもしれませんね。
ここまでで、ロゴのsvg画像とQRコードのsvg画像ができていると思います。
Chip基本設定(縁のパターンの選択)
ここからは実際にBambu Studioで印刷のための設定兼デザインをしていきます。
MakerWorldのMakerChipのページにアクセスし、本体や装飾のデータを得ます。
ここで「Bambu Studioで開く」ではなく「STL/CADファイルのダウンロード」から「すべてダウンロード」を選んでおくと個人的にはやりやすかったです。ダウンロードするとZIPファイルになっているので適当に解凍します。
Bambu Studioを開き、「準備」画面で先ほど解凍した中から「+ K2_MakerChip_Back.stl」をドラッグアンドドロップします。色は後々調整することになるのでこの段階ではそこまで気にしなくて大丈夫です。
次に、解凍した中の「K2_MakerChip_v1.stl」から「K2_MakerChip_v17_PokerDotsDash.stl」までのどれかを同じように追加します。(以下の例ではv1を使用)
位置がズレてしまっている場合は、「移動」からそれぞれの座標を確認して、同じ位置に合わせます。
「プロセス」の横にあるトグルを「OBJ]にすると、オブジェクト毎に設定をすることができます。
ここでオブジェクト横のボタンを押してフィラメントを選択できます。
縁の部分の色が変わりました。
このままだとオブジェクトが重なってしまい、印刷が上手くいきません。(おそらく同じ場所に2回印刷しようとしてモジャる?)なので一つのオブジェクトにまとめてあげる必要があります。
Shiftを押しながらオブジェクトを同時に選択し、「Marge」を押すとアセンブリとして一つにまとまります
準備画面では重なった部分の表示がおかしく、完成状態が確認しにくいですが、一旦スライスし、「Slicing Result」の「配色スキーム」を「Summary」にしてあげると色のついたイメージが見れます。
もし縁のパターンを替えたい場合は、準備画面でアセンブリを選択し右クリック後、「分割」⇛「オブジェクトに」とすると元のオブジェクト毎に戻すことができます。
いらないオブジェクトを削除し、別のパターンを同様に追加、マージすれば可能です。
ロゴ・QRコードの追加
ロゴとQRコードの追加をしていきます。
まずQRコードのsvgファイルをドラッグアンドドロップして追加します。サイズ等は生成したときの設定によって変わると思いますが、svgファイルの中身が丸ごとアセンブリされて一つのオブジェクトになっています。
このままだとサイズが大きすぎるので、移動し、「スケール」から大きさを変更します。
縁のデザイン等によっても変わりますが20mm~25mmくらいになると思います。また、このとき「スケール」というチェックボックスの選択を外しておきます。(比率を変えられるようになる)
Z軸の高さは0.8mmが推奨されているようです。
また、読み込み時点ではZ軸上側が正面となっているので、コインの表面(Z軸下側)から見て正しい向きになるよう、X軸またはY軸で反転します。
(実際のところQRコードは表裏逆でも読めるそうですが、どうせロゴは逆だと意味がないので両面やっておくと吉です)
位置とサイズ、向きを調整したら、2つのアセンブリを選択してマージします。
このときの色の変更ルールがいまいちわからないのですが、基本的には上にあるアセンブリの色に変わるようです。
OBJリストでオブジェクトを選択してあげると強調されてどれだかわかるので、適宜色を変えたり削除したりして設定します。
例えば下の例では背景のレイヤーを白に変更しましたが、これは削除しないと変な角が表示されます。
前と同様スライスしてSummaryを確認するとわかりやすいです。
これは背景を白にしただけ。
これは背景を削除。角がなくなってるのがわかります。(デザイン的にはあっても面白いかも知れませんね)
アセンブリ内での順番に関しては、基本的に上のものを下のもので上書きする形でスライスされます。
例えばこの画像では「+ K2_MakerChip_Back.stl」を一番下に配置したために、上の全てがかき消され、白いだけのコインになっています。
下の2つを入れ替えた例、QRコードは消えているが、縁のパターンは残っている。
一通りQRコードの設定が終わったら、同様にロゴの設定をします。
QRコードと同様に、ロゴのsvgもビルドプレートに接地して読み込まれるので、読み込み前に底面選択で上面を選び、ひっくり返してあげます。
一発でsvgファイルを出せるQRコードと違い、変換を噛ませると謎の断片が出てくる場合があるので適宜処理します。
マージして、色を調整します。
QRコード含め、最終的にはここで全部やるのが個人的にはわかりやすい気がします。
印刷
満足の行く形になったら印刷をします。
印刷設定に関しては特別なことはそんなにありませんが、QRコードが上面に来る方が読み取れる形で印刷されやすい、とのことなのでそれに従います。
スライスしてみてプレビューがよさげならOKです。
基本的にマルチカラー印刷は歩留まりが良くないので、沢山印刷するほうがお得なのですが、失敗したときのダメージも大きいです。
今回は一発目から沢山刷ってみました。
アセンブリごと選択し、右クリック⇛「ベッド一杯にコピー」を選択するといい感じに並べてくれます。
印刷設定を適当に選んで、スライスします。
今回はこんな感じ。
14枚のMakerChipを作るのに53gのモデルフィラメントに11gのゴミが出て4時間40分かかるようです。
あとは造形開始を選択してフィラメントを割り当て、送信を押すだけです。
積み重ねると楽しいです。
仕上げ処理
今回はスムースPEIプレートを使ったので下面はツルツルな仕上がりになりましたが、上面はどうしてもザラザラしてしまいます。
この場合、QRコード側をこすり合わせることで滑らかにできるようです。
写真ではわかりにくいですが手触りは結構違います。
スムースPEI面ほどツルツルにはなりませんが引っかかる感じがなくなります。
おわりに・宣伝
ということで今回はMakerChipを極力楽に作ってみたお話でした。
世の中にはNFCを搭載したものや、蓄光で光る、動く(!?)、変形する(!?!?)ものまで沢山あるらしいですが、基本的なものならモデリングやデザインのスキルが無くても作れるのでぜひ皆さんもオリジナリティあふれるMakerChipを作ってみてください!!
最後に少々宣伝を。
今回このMakerChipが日本で流行りだした原因(爆心地?)であるJapan RepRap Festival 2025に大学の仲間と一緒に出展します。
僕は今回作ったMakerChipはもちろん、ジェネリックAMSのBMCUなどを展示する予定です。
みなさんが作ったMakerChipと交換できることを心待ちにしています!
イベントについての詳しい情報はぜひJRRF2025の公式サイトや主催者であるPsych0h3adさんのnoteをチェックしてみてください!