2026年10月25日〜28日、米国ラスベガスでOracle AI World 2026が開催されました。
さまざまな技術発表がありましたが、中でもAIに関する発表の多さが個人的には印象に残りました。
この記事では、忙しくて発表内容を細かく見ている時間がない!という人のために何が発表され、どんな作業がしやすくなるのかを軸に、各節の太字を拾うだけでも概要がつかめるように整理しています。
主にアプリを作る、会社のデータを調べる、複数の業務システムをまたいで仕事を進めるといったAIの使い方と、それを支えるデータ・セキュリティ・通信基盤の発表を取り上げます。
本記事では、「オラクルエンジニア通信」の日本語記事を中心に、Oracleや協業各社の公式発表も参照し、AI・データ・基盤まわりの主な発表を整理しています。イベント全体の発表を網羅するものではありません。気になる方はぜひ調べてみてください。
本記事は、公開情報に基づく筆者個人の整理であり、所属組織の公式見解ではありません。わかりやすさを優先して説明を簡略化しているため、正確な仕様・提供状況・利用条件は各節のリンク先をご確認ください。今後の提供計画は変更される可能性があります。
※提供状況などは2026年10月30日時点の公開情報に基づきます。
Oracle AI Workspace|AIに頼んだ仕事を複数のシステムにつなぐ
OracleとOpenAIの協業拡大の一環として、ChatGPTから企業の情報を調べ、権限や承認に沿って業務を進めるOracle AI Workspaceが発表されました。
例えば、納品が遅れそうな注文に対応するには、在庫を調べ、代替品を探し、配送や費用を確認する必要があります。情報が複数のシステムに分かれていると、その間を人が行き来して作業をつなぐことになります。
Oracle AI Workspaceは、OpenAIのモデルとOracleのアプリケーション、企業データ、接続を許可したツールを組み合わせ、目標に必要な情報や処理をつなぎます。AIが作業を調整し、Oracleの業務アプリケーションがルールや承認を確認して、正式な変更を処理する設計です。
人による承認が必要な場面では、責任者が判断します。発表時点では近日提供開始予定です。
詳しく読む:Oracle AI Workspaceのご紹介: 企業全体でAIを活用
協業の全体像:OracleとOpenAIの協業に関する公式発表(英語)
Oracle AI Data Platform|会社の知識をAIが共通して使える形にする
会社の用語やデータの関係、業務ルールを整理し、AIエージェントの開発・管理につなげる新機能が発表されました。
AIが業務を理解するにはデータに加えて、用語の意味や情報同士の関係も必要です。AI Discoveryエージェントは、DBの構造や業務文書などを分析し、こうした知識をまとめる「ビジネス・オントロジー」の作成を支援します。業務に詳しい担当者が確認・修正・承認し、複数のAIが使う共通の土台にします。
Semantic Reasoning Engineは、この業務知識を使って、必要な情報や関係を整理してモデルへ渡します。これを使ったDeep Insight Agentsによる調査・予測に加え、エージェントの所有者や権限の把握、動作・品質・コストの監視も含む拡張です。
新機能は、2026年10月27日の発表から12か月以内に提供予定です。
詳しく読む:Oracle AI Data Platformの新機能に関する公式発表(英語)
Snowflake on OCI|OCI上でSnowflakeの分析・AIを使う選択肢を広げる
Snowflake AI Data CloudをOCI上で提供し、Oracle経由で購入・利用できるようにする計画が発表されました。
Snowflakeは、企業のデータを分析やAIに活用するためのプラットフォームです。今回の計画では、OCI(Oracle Cloud Infrastructure、Oracleのクラウド基盤)上で動くSnowflakeをOracleから購入し、利用開始の手続きを進められるようにします。料金の請求もOracle側にまとまり、Oracle Universal Creditsを利用できる予定です。
Oracle Fusion Cloud Applications、NetSuite、Autonomous AI Databaseなどとのデータ連携も計画されています。対応する連携を使ってSnowflakeへデータを取り込み、分析やAIに活用するための処理を自作する負担を減らす狙いがあります。OCI上でデータを扱うことでクラウドをまたぐデータ移動や、それに伴う転送費用の削減も目指します。
発表時点では今後の提供計画であり、具体的な提供開始日は示されていません。
詳しく読む:Oracleによる発表(英語) / Snowflakeによる解説(英語)
Oracle AI Security Mesh|AIで弱点を調べ、修正の確認まで支援する
AIを使い、アプリやインフラの脆弱性の調査、対応の優先順位付け、修正案の検証を支援する仕組みが発表されました。
OpenAIのサイバーセキュリティ向けモデルとOracleのテストツール、顧客のシステムに関する情報を組み合わせ、弱点がどのように攻撃に使われ得るかを調べます。再現手順やテスト結果を示し、セキュリティ担当者が対応の優先順位を判断できるようにします。
対象はOCIに加え、他社クラウドやオンプレミスのアプリ・インフラです。顧客が承認した範囲で、修正案が脆弱性に対処できるか、アプリ本来の動作にどう影響するかも検証します。修正を適用する前には、顧客による承認が必要です。
今回参照した公式発表では、具体的な提供開始時期は示されていません。
詳しく読む:Oracle AI Security Meshなど、AI時代のセキュリティ強化に関する公式発表(英語)
Google TPU on OCI|AIの学習・実行に使う計算基盤の選択肢を広げる
Googleが開発するAI向け半導体「TPU」を、OCIから利用できるようにする計画が発表されました。
TPU(Tensor Processing Unit)は、AIモデルの学習や、学習済みモデルを使って回答などを生成する「推論」の計算を支援する専用の半導体です。今回の計画では、OCI内にGoogle TPUを展開し、電源・冷却・データセンターのネットワークなどをOCIが提供します。
AIモデルの規模や処理内容によって、必要な性能や費用は変わります。Google TPUの追加は、こうした要件に応じて、OCI上で使う計算基盤を選ぶ幅を広げるものです。
提供開始は2027年中を予定し、複数年かけて展開を拡大する計画です。
詳しく読む:Google TPUのOCI提供計画に関する公式発表(英語)
Oracle App Composer|AIで作ったアプリを社内で共有・運用する
AIによるアプリ作成から、社内での公開・共有・運用までを支援するサービスが発表されました。
個人用に作ったアプリをチームで使うには、公開先、利用できる人、アクセスできるデータ、運用担当などを決める必要があります。
App Composerでは、AIアシスタント内のOracleのプラグインを使ってアプリを作成したり、既存のアプリを持ち込んだりできます。Oracleが顧客のOCI(Oracle Cloud Infrastructure)環境への配備・運用を担い、IT部門がアクセス権限、接続する業務システム、ポリシー、コストを管理します。
開発部門がアプリを引き継ぐ場合は、ソースや設定、履歴も移せます。発表時点ではLimited Availability(限定提供)です。
詳しく読む:Oracle App Composerの発表:アイデアからガバナンスを備えたアプリケーションへ
Oracle AI Database Agent Engine|AIの作業手順をデータの近くで実行する
AIエージェントの作業手順をデータベース内で実行し、進行状態を管理する仕組みの提供開始が発表されました。
AIエージェントの仕事には、データを調べる、計算する、条件を確認する、結果に応じて次の処理を選ぶ、といった複数のステップがあります。Agent Engineは、その一連の手順をデータのあるDB内で進めるための実行基盤です。
計算やルールの確認などはDBが担当し、手順で定めた箇所で言語モデルを呼び出します。モデルには、各ステップに必要な範囲の情報を渡します。また、Agent Engineには、人の承認を待つ処理や、実行内容を記録する仕組みも組み込めます。
データを外部の処理基盤と何度もやり取りする負担を抑えながら、機密データを扱う作業を管理する狙いがあります。対象はOracle AI Database 26aiです。
詳しく読む:Oracle AI Database Agent Engineの紹介
Oracle Autonomous AI Lakehouse|散らばったデータを業務の意味も含めて使う
データを探す・分析する・条件を変えて試算するための新機能と拡張機能が発表されました。
AIに「売上を調べて」と頼む場合も、どのデータを使い、どう集計するかという共通の定義が必要です。AI Data Catalogでデータの所在や関連情報を管理し、Business Semantic Layerで指標や計算などの業務定義を共有することで、AIや分析ツールが一貫した定義でデータを扱えるようにします。
Oracle製品で管理するデータに加え、他社のデータベースやApache Iceberg形式のテーブルも対象です。対応するデータを元の場所で参照・分析し、不要なコピーを減らす設計で、IcebergテーブルへのSQL操作の拡張も含まれます。
さらに、Essbaseを統合したBusiness Simulation Engineにより、価格や需要などの前提を変えた場合の影響を試算するWhat-if分析も支援します。データを探して分析するところから、次の判断に向けたシミュレーションまでを扱う拡張です。
詳しく読む:Oracle Autonomous AI Lakehouseのイノベーションにより、企業全体のデータ資産でAIエージェントを活用
Oracle GoldenGate Data Fabric|業務で確定した変更を分析やAIへ届ける
業務システムのデータ変更を継続的に取り込み、管理・追跡できる形に整えて、分析やAIへ届ける基盤が発表されました。
例えば、注文が入って在庫が減っていても、AIが参照する別のシステムにその変更が届いていなければ、古い在庫情報で判断してしまいます。AIが業務上の判断や処理を担う場面では、変更が利用先へ届くまでの時間も重要になります。
GoldenGate Data Fabricは、業務で確定したデータの変更を取り込み、分析基盤やAIなどの利用先へつなぎます。一度取り込んだ変更を複数の用途へ届けるとともに、データの由来や利用先を追跡できるように管理します。
狙いは、業務で変更が確定してから、その情報を分析やAIで使えるようになるまでの時間を短くすることです。AIが実際の業務状況に近いデータを基に判断するための土台を支えます。
詳しく読む:新登場のGoldenGate Data Fabric:信頼できるAIは、ビジネスを支えるデータから始まる
Oracle Deep Trust AI Architecture|守るべきルールをデータや実行基盤にも組み込む
AIを業務で使うためのセキュリティや業務ルールを、4つの層に組み込む設計指針が発表されました。
例えば、経費に限度額があるなら、そのルールをDBにも定義し、超過する登録を拒否させます。AIへの指示に加え、実際にデータを保存・変更する側でもルールを適用する、という考え方です。
| 対策する層 | 何を担う? |
|---|---|
| ソフトウェア基盤 | パッチ適用や暗号化などで基盤を保護 |
| データ | 誰がどのデータを使えるか、登録・更新時にどんなルールを守るかをDBで制御 |
| データアクセス | 読み書きの範囲を管理し、業務知識を使って自然言語の質問からSQLを作る処理を支援 |
| アプリ開発 | AIが生成したアプリの定義を、APEXの実行基盤で動かす |
Deep Data Security、SQL Assertions、Trusted Data API、Deep NL2SQL、APEXなどが関連します。既存技術も組み合わせ、AIがデータを使う場面やアプリを生成する場面のリスクに備える設計体系です。
詳しく読む:発表: Oracle Deep Trust AIアーキテクチャ
DBのセキュリティ強化|Data Safe・Deep Data Security・ezTLSなど
暗号設定の評価、テストデータの準備、アクセス制御、通信暗号化など、DB運用に関わる強化が発表されました。
主な変更は、次の3つです。
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Data Safe:弱点を見つけ、テストデータを準備する
弱い暗号設定を見つけて改善を案内する機能や、データ同士の関係を保ちながらテスト用データを絞るData Subsettingが追加されました。マスキングを組み合わせると、機密値を架空の値に置き換えることもできます。 -
Deep Data Security:利用者の権限をDBで適用する
分析、APEX、ORDS、AIエージェントからのアクセスに、利用者の識別情報や権限に基づく制御を広げます。アプリやエージェントを通じたアクセスでも、その利用者に許可されたデータをDB側で判断する仕組みです。 -
ezTLS:通信暗号化の管理負担を減らす
顧客側で証明書やウォレットを管理せずに、TLSによる通信暗号化を提供します。接続相手を証明書で確認する必要がある場合は、証明書認証付きTLSを使います。
このほか、Exadata Database ServiceとData Safeの連携、選択されたOCIリージョン間のバックアップ複製なども発表されています。提供済み機能と今後の更新が含まれるため、対応バージョンや構成条件を確認して利用します。
詳しく読む:AI時代におけるデータの保護
OCI Networking|AIの計算とコンテンツ配信を通信から支える
AI基盤の通信を強化し、コンテンツ配信やアプリ保護の仕組みも広げる発表がありました。
複数GPUで計算していても、通信が詰まるとデータ待ちが発生します。Acceleronの拡張では、ストレージへの接続やGPU間の通信などを改善します。OCCLは、正常な経路への振り分けや障害時の迂回によって、処理の待ちや中断を減らす役割を担います。
Global CDN Connectは、OCI Object StorageとCDN(利用者へコンテンツを届ける配信ネットワーク)を専用接続でつなぐ仕組みです。動画などを利用者へ届けるための経路を整えるもので、提供開始が案内されています。
アプリ・APIを保護するOCI App Defenseは、F5との法的拘束力のない覚書に基づく、計画中のサービスです。アプリ本体のコード修正が完了するまでの間、攻撃を遮断する対策を適用することなどを目指しています。
詳しく読む:OCI Networking Advances: AI、グローバル・コンテンツ配信、アプリケーション・セキュリティを支える
最後に
今回の発表では、AIを使う画面やアプリからデータの鮮度、権限管理、通信まで、企業がAIを業務に組み込むための仕組みが幅広く示されました。企業のAI活用を、開発から日々の運用まで基盤全体で支えていこうとする方向性が、個人的には印象に残りました。