はじめに
こんにちは、GxPの野本(@mnomoto)です!![]()
アドベントカレンダーのタイミングで、1年目・2年目は、
受けた研修の話やら、研修の運営に回る話を書いてきました。
気づけば3年目。任される領域や判断する場面が増える中で、最近よく思うのが、こんなことです。
「あれ、仕事ってこんなに"相手の反応"を気にし続けるものだったっけ?」
- お客様の表情が曇った気がして、心臓がきゅっとなる
- 言われた一言が刺さって、頭の中で何度も再生してしまう
「きっと経験が足りていないからで、もっと頑張らないとだよね・・・」
そう思っていた時に、考え方のヒントとして出会ったのが、アドラー心理学でした。
対象読者
- 若手エンジニア/若手コンサルなど、仕事で人との関わりが増えてきた人
- 評価や周囲の反応が気になりやすく、つい自分を責めてしまう人
- 技術以外のところで、仕事の難しさを感じ始めている人
スタンス
- アドラー心理学を "仕事にどう当てはめてみたか" という視点で書いています
- 「こうすべきだ!」という正解を示す記事ではありません
- 考え方のヒントを共有することが目的です
3年目になって増えた"考える"とモヤモヤ
1〜2年目と3年目の違い
1〜2年目の頃は、やるべきことは比較的はっきりしていて、
決められたタスクをこなしていけば前に進める感覚がありました。
判断に迷う場面も少なく、
「これで合っているか」を深く考え込むことは、今ほど多くなかった気がします。
3年目になって、少しずつ任される仕事の内容が変わっていきました。
- 相手は、今の話をどう受け取ったのか
- どこまで自分が踏み込むべきか / ここまで踏み込んでよかったのか
- この判断、本当に正解だったのか
こうしたことを考える場面が増え、
手を動かす時間 よりも、考える時間 のほうが多くなっていきました。
(そして、その “考える” の大半が "人" に関することでした)
そうした時間が増えるにつれて、気持ちの引っかかりも残るようになりました。
消えてくれないモヤモヤ
- お客様の一言を、必要以上に自分の中で引きずってしまう
- 表情や場の雰囲気を深読みして、「何かまずかったのでは」と不安になる
一つひとつは大きな出来事ではないのに、
ふとした時に思い出して、考え始めると止まらず、頭の中で1人反省会が始まります。
「あの言い方で良かったのかな」
「別の選択肢があったんじゃないかな」
終わったことなのに、気持ちだけがズ~ンと残る・・・
この状態をどう扱えばいいのか、分かりませんでした。
そこで出会ったアドラー心理学
最初は、「慣れれば落ち着くはず」「もっと経験を積めば平気になる」 と思っていました。
実際、経験させていただく機会は増えていきましたし、できることも少しずつ増えていきました。それでも、このモヤモヤはなかなか消えませんでした。
そんなときに、たまたま触れたのが、アドラー心理学です。
読んだ瞬間にすべてが分かった、というわけではありません。
ただ、仕事の場面を一つひとつ思い返しながら照らし合わせていく中で、
少しずつ「こういう考え方なのか」と理解できるようになっていきました。
その中で、自分のこのモヤモヤの原因として腑に落ちたのが、
「私は自分が持たなくていいものまで、抱えていた」 という感覚です。
- どこまでが自分の責任?
- どこから先は相手の領域?
この線引きが曖昧だと、相手の感情も評価も空気も、すべて自分が背負ってしまいます。
その結果、本来自分ではどうにもできないことを気にしてしまい、それがそのまま、心の負担になっていました。
やり方やスキルの問題ではなく、
"どう考えるか" という軸そのもの が私には足りていなかったのです。
本記事で扱う3つの概念
ここからが本題です。
"どう考えるか" という軸 をつくるヒントとして、
アドラー心理学の中から、特に仕事の場面で使いやすいと感じた、3つの概念を紹介します。
- 課題の分離:自分が責任を持つ範囲と、相手に委ねる範囲を整理する
- 他者信頼(共同体感覚を支える要素の1つ):敵・味方ではなく、協力し合う関係として相手を見る
- 目的論:「その感情が果たしている役割」から行動を考える
最後に、評価への向き合い方もまとめます。
3つの概念 × 具体シーン
1. 課題の分離 :「それ、私の課題じゃないかも」
これはとてもシンプルで、
「その課題の最終的な結果を引き受けるのは誰か?」 という問いで、
物事を 自分の課題 と 相手の課題 に分けて考える、というものです。
(=他者の課題に介入しない/自分の課題を他者に委ねない)
仕事の場面では、ついこう考えてしまいがちです。
- 相手が不機嫌そう → 自分の伝え方が悪かったのでは
- 納得していない様子 → もっと配慮すべきだったのでは
これって結局、"相手の心を自分が操作できる前提" で考えてしまっている状態なんですよね。でも、自分がコントロールできるのは "自分の行動" までです。
たとえば私は、
- どう説明するか
- どんな選択肢を提示するか
- いつ・どの粒度で共有するか
までは工夫できます。
一方で、相手が どう感じるか / どう受け取るか は、相手の状況や価値観、タイミングによって変わります。(同じ言葉でも、忙しい日と余裕のある日で受け取り方が変わる・・・みたいな)
課題の分離は、
- 自分が引き受けるべき責任(自分の課題)
- ここから先は相手の領域(相手の課題)
を切り分けるための“線引き”です。
具体シーン:お客様からの要望対応
Before
- 会話のあとに相手の表情や言葉を思い出して、「あれで大丈夫だったかな」と考え始める
- 「何かまずいことを言ったかも」「不安にさせたのは私かも」「信頼を損ねていたらどうしよう」と、気持ちがざわついてくる
ここでの思考の罠
「相手が不安そうに見えるのは、私の伝え方が悪かったからだ」
→ だから相手の感情まで背負う → 結果、ずっと消耗する
実践(課題を分ける)
-
自分の課題
- 事実を正しく伝える
- 選択肢(対応案)を整理して提示する
- リスクを説明する
-
相手の課題
- その情報をどう受け取るか
- どんな感情を持つか
- 最終判断をどうするか
After(効き方)
- 「私は必要な情報と選択肢を出した」
- 「相手がどう感じるかは相手の領域」
⇒ だから次のアクション(整理・提案・調整)に集中しよう!
※ “相手の課題だから放置”ではなく、
自分の課題を丁寧に果たした上で、相手の課題に介入しない、という順番がポイント
2. 共同体感覚(他者信頼) :「相手=敵」になる瞬間を止める
仕事で意見が割れたとき、こんな感覚になることはありませんか。
- なんとなく責められている気がする
- 自分が間違っているのか、相手が分かっていないのか分からなくなる
- 会話が前に進まず、空気が重くなる
こういうとき、無意識のうちに、頭の中が次のような構図に切り替わってしまいがちです。
- 相手 vs 自分
- 正しい vs 間違い
この構図に入ると、会話の「目的」が少しずつズレていきます。
- 本来の目的:良い成果を出す / 前に進める
- すり替わった目的:自分を守る(否定されないようにする)
アドラーの 共同体感覚 は、この「対立モード」から抜け出すための視点です。
共同体感覚とは、
「自分だけで完結している存在ではなく、他者との関係の中で支え合い、同じ目的に向かって貢献し合える存在だと捉える感覚」 のこと
ここで大事なのは、自己犠牲をすることでも、相手に合わせ続けることではなく、
自分の立場や考えを持ったまま、他者と協力できるという前提に立つこと
この考え方を支える要素の一つが 他者信頼 です。
ここでいう他者信頼は、「相手が必ず分かってくれるはず」という期待ではなく、
違いがあっても協力は可能だと信じて関わる姿勢 を指します。
具体シーン:チーム内の認識ズレ
Before
- 意見が合わず、話がかみ合わない
- 「私の説明が悪かったのかな」と自分を責め始める
- あるいは「なんで分かってくれないの?」でイライラ
- 結果、相手の言葉そのものよりも「否定された気がする」「分かってもらえない」という感情が前に出てしまい、冷静なすり合わせが難しくなる
この状態では、議論は“前提を揃える作業”ではなく、
いつの間にか“自分の正しさ/自分の安全”を守る反応になってしまいます。
実践(対立ではなく“すり合わせ”に戻す)
まず、相手を「倒す相手」ではなく、一緒に前提を揃える相手として扱い直します。
その上で、焦点を “人” ではなく “情報” に移します。
- どの前提が共有できてない?
- どの観点が抜けてる?(目的・制約・優先順位・定義など)
- どんな図や例、具体ケースがあれば揃う?
- ここまでの合意点/未合意点はどこ?
After
- 「分かってもらえない」「否定された」という感情が少し落ち着く
- どちらが正しいかではなく、「前提がどこでズレているか」に意識を向けられる
- 議論が勝ち負けではなく、同じ目的に向けた“すり合わせ”に戻り、建設的に前へ進める
3. 目的論 :「不安は敵じゃなく、サイン」
目的論とは、
出来事の「原因」を探すのではなく、
いまの感情や行動が、何のために働いているかを見る考え方です。
具体的には、次の流れに注目します。
- 何かが起きた(出来事)
- それをどう受け取ったか(意味づけ)
- その結果、感情や行動がどう働いているか
少し分かりやすい例で見てみます。
たとえば、「お客様との会議で発言しない」という場面。(2年目の私)
原因論では、
「まだ経験が浅いから」
「知識や自信が十分ではないから」
といったように、行動を過去の経験や能力不足から説明します。
一方、目的論では、
「『発言しない』という行動を通して、不確実な発言で信用を落とすリスクを避けているのかもしれない」
と見ます。
ここで大事なのは、どちらが正しいかを決めることではありません。
行動や感情を「原因の結果」として切り捨てるのではなく、
いま、その行動が何を得ようとしているかに目を向けることです。
この見方は、仕事の中で感じる不安や焦りにも、当てはまります。
具体シーン:タスクの多さと焦り
Before
- タスクが多いほど焦る
- 焦るほど「優先順位が決められない/着手が怖い」となり、手が止まる
- 手が止まる → 進んでない事実でさらに焦る(地獄の悪循環)
このとき頭の中では、
「ちゃんとやらなきゃ」「失敗できない」というプレッシャーが強まり、
不安そのものと戦おうとしてしまいがちです。
実践(問いを変える)
×「なんで私こんなに不安なんだ…」
〇「この不安は何を守ろうとしてる? / 何を避けようとしてる?」
たとえば:
- 失敗して評価が下がるのが怖い
- 完璧にやりたい
- 迷惑をかけたくない
“守りたいもの” が言語化できると、次の一手が出ます。
- 失敗が怖い → 先に相談してリスクを潰す
- 完璧を守りたい → まず「最低ライン」を決める
- 迷惑が怖い → 早めに共有して調整する
After
感情に飲まれるのではなく、感情を「情報」として扱えるようになり、行動に繋げることができる
おまけ:4. 評価や期待に振り回されにくくなった理由(課題の分離の応用)
他者評価が気になるときって、頭の中でこうなりがちです。
評価=自分の価値
でもアドラー的には、ここも線引きができます。
- 上司が評価する → 上司の課題
- 私ができること → 自分の課題(貢献・行動・改善)
評価をゼロに気にしないことは難しいですが、
「評価をコントロールしよう」とすると、かえって苦しくなります。
(なぜならコントロールできる範囲では無いからです)
だから、評価が気になったときは
"コントロール可能な方(行動)に戻る" を意識するのが良いと思います。
具体的には、頭の中でぐるぐるし始めたら一度メモを開いて、
- 今日できた貢献を1つ書く(小さくてOK)
- 次に改善できる行動を1つだけ決める
- 例:早めに相談する/共有の粒度を上げる/確認のタイミングを前倒しする
と "次の一手" に落とします。
評価そのものはコントロールできないけど、行動はコントロールできるので、気持ちが戻りやすくなります。
アドラー心理学で変わった「働き方の感覚」
- メンタルの揺れ幅が以前より小さくなった
- 「どこまでが自分の責任か」の線引きができるようになった
- 感情に飲まれず、行動に戻れるようになった
- 自分の行動に集中できる時間が増えた
今日から試せる「アドラー的働き方」ミニワーク
- 「これは誰の課題?」と一度立ち止まる
- 相手の“目的”を探るクセをつける
- 認識ズレは“敵”ではなく“役割の違い”と考える
- 評価より「自分がどう貢献したか」に目を向ける
- 感情は否定せず“目的”で理解する
おわりに
3年目になって「人との仕事」が増えたからこそ、アドラー心理学が刺さりました。
がむしゃらに頑張るだけでは、しんどくなることもあります。
でも、考え方の軸があると、
同じ仕事でも感じる負荷が変わることを、私自身実感しています。
まだまだ自責の思考に引き戻されることもありますが、
これからも試行錯誤しながら、
自分の考え方を少しずつアップデートしていきたいと思います。
参考書籍
今回、参考にさせてもらった書籍がこちらの3冊です。
読んだ順番は紹介の順になります。ほかにもお薦め書籍があればコメントいただけると大変うれしいです!![]()
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え
岸見 一郎,古賀 史健,ダイヤモンド社 2013/12/13
もしアドラーが上司だったら
小倉 広,プレジデント社 2017/3/11
幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えII
岸見 一郎,古賀 史健,ダイヤモンド社 2016/2/26