はじめに
KPT(Keep, Problem, Try)は、シンプルで効果的な振り返り手法として広く活用されています。しかし、実施方法を誤ると、振り返りの効果が半減し、チームの成長につながらないこともあります。本記事では、KPTの振り返りにおける代表的なアンチパターンとその解決策を紹介します。
そもそもKPTとは?
KPTは、振り返りをシンプルに整理し、改善につなげる手法です。
- Keep(良かったこと): 継続したい取り組み
- Problem(問題点): 課題や改善点
- Try(次に試すこと): 改善のための具体的なアクション
このサイクルを繰り返すことで、チームの成長を促進します。しかし、適切に運用しないと形骸化し、効果が薄れてしまいます。以下で、よくあるアンチパターンとその対策を詳しく解説します。
アンチパターン①: 形骸化した振り返り
問題点
定期的にKPTを実施しているものの、毎回同じような内容が出るだけで、実際の行動に結びついていない。
解決策
- Tryに設定した項目の進捗を次回のKPTで必ず確認する。
- KeepやProblemがマンネリ化していないか定期的に見直す。
- KPT以外の振り返り手法(YWT、Fun/Done/Learnなど)を試してみる。
- 形式を変えて「ポジティブKPT(成功要因に特化)」などのバリエーションを加える。
アンチパターン②: Problemの深掘り不足
問題点
表面的な問題の洗い出しに留まり、根本原因の分析が不十分。
解決策
- 5Whys(なぜを5回繰り返す)を活用し、問題の本質を探る。
- Problemの原因を明確にするために、Fishboneダイアグラム(特性要因図)を使う。
- 「なぜこれが問題なのか?」を問い直し、影響範囲を考える。
- チームでディスカッションを行い、さまざまな視点から課題を分析する。
アンチパターン③: Tryが曖昧すぎる
問題点
Tryに「頑張る」「気をつける」などの曖昧な表現が多く、実行に移しにくい。
解決策
- TryをSMART(具体的・測定可能・達成可能・関連性がある・期限がある)な形にする。
- 「誰が」「いつまでに」「どのように」実行するのかを明確にする。
- Tryの進捗を確認しやすい仕組みを作る(タスク管理ツールを活用する)。
- 小さなTryを積み重ね、成功体験を増やすことで、改善の継続性を確保する。
アンチパターン④: Keepが単なる成功体験の記録
問題点
Keepが単に「うまくいったこと」のリストになり、再現性のあるナレッジとして活用されていない。
解決策
- Keepを「なぜうまくいったのか?」の視点で深掘りする。
- 他のプロジェクトやチームでも活用できるようにドキュメント化する。
- Keepの内容をチームメンバーと共有し、習慣化する。
- Keepの具体例を示し、同じ成功を再現する方法をチームで話し合う。
アンチパターン⑤: 振り返りの雰囲気が悪い
問題点
振り返りの場がネガティブな雰囲気になり、発言しづらくなる。
解決策
- ファシリテーターを決めて、ポジティブな雰囲気を作る。
- Keepを最初に話し、良かった点を振り返ることで前向きな流れを作る。
- 全員が安心して発言できるように、心理的安全性を確保する。
- 「個人の責任ではなく、プロセスの改善」という視点を持ち、非難ではなく学びの場とする。
アンチパターン⑥: フィードバックが一方通行
問題点
KPTの場が、上司やリーダーからのフィードバックのみになってしまい、メンバーの意見が出にくい。
解決策
- 参加者全員が発言できる仕組み(付箋、Miro、オンラインホワイトボードなど)を活用する。
- ファシリテーターが積極的に発言を促し、意見を引き出す。
- 全員が主体的に参加できるように、「ファシリテーターを交代制にする」などの工夫をする。
アンチパターン⑦: Tryの実行がフォローされない
問題点
Tryを決めても、次回の振り返りまでに進捗確認がなく、結果的に実行されない。
解決策
- Tryの進捗を定期的にフォローする役割を決める。
- 1週間後、2週間後など、短いスパンで進捗確認を行う。
- Tryの進捗をKPTボードやタスク管理ツールで可視化し、忘れないようにする。
まとめ
KPTはシンプルで効果的な振り返り手法ですが、運用方法を間違えると本来の効果を発揮できません。今回紹介したアンチパターンを避け、適切な改善策を取り入れることで、より有意義な振り返りを実施できます。チームの成長につなげるためにも、KPTのやり方を定期的に見直してみましょう!
あなたのチームでは、どのアンチパターンが当てはまりましたか?ぜひコメントで共有してください!