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AWS Control Towerで実現するマルチアカウント管理の完全ガイド - Organizations Familyとの連携も解説

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概要

AWS Control Towerは、マルチアカウント環境の設定とガバナンスを自動化するサービスです。本記事では、Control Towerの主要機能から、AWS Organizations、Config、CloudTrail、IAM Identity Centerなどの関連サービス(Organizations Family)との連携まで、実践的な活用方法を網羅的に解説します。

目次

  1. はじめに
  2. AWS Control Towerとは
  3. Control Towerの主要機能
  4. Organizations Familyとの連携
  5. 実践的な活用例
  6. 料金とベストプラクティス
  7. 終わりに

はじめに

企業がAWSを活用する規模が拡大するにつれ、複数のAWSアカウントを効率的に管理することが重要な課題となります。部門ごと、プロジェクトごと、環境ごとにアカウントを分離することで、セキュリティとコスト管理の向上が期待できる一方で、以下のような課題も発生します。

  • 各アカウントのセキュリティ設定の統一化
  • コンプライアンス要件の一元管理
  • アカウント作成・運用プロセスの標準化
  • 組織全体での可視性の確保

AWS Control Towerは、これらの課題を解決し、マルチアカウント環境の設定とガバナンスを自動化するサービスです。

AWS Control Towerとは

基本概念と主要機能

AWS Control Towerは、AWS Organizations、AWS Service Catalog、およびAWS IAM Identity Centerなどの複数のAWSサービスの機能を統合し、1時間以内にランディングゾーンを構築します。

AWS公式ドキュメント ( https://docs.aws.amazon.com/controltower/latest/userguide/what-is-control-tower.html ) によると、Control Towerは以下の特徴を持ちます:

  • 自動化されたセットアップ: ベストプラクティスに基づいたマルチアカウント環境の自動構築
  • 継続的なガバナンス: ガードレールによる予防的・検出的コントロール
  • 一元化された可視性: ダッシュボードによる統合管理

image.png

Organizations Familyとの関係性

Control Towerは単独で動作するのではなく、「Organizations Family」と呼ばれる関連サービス群と連携して動作します。これらのサービスが協働することで、包括的なマルチアカウント管理が実現されています。

Control Towerの主要機能

Landing Zone(着陸帯)

Landing Zoneは、Control Towerが自動的に構築するマルチアカウント環境の基盤です。セットアップ時に、Control Towerは管理アカウント内で以下の処理を実行します:SecurityとSandbox(オプション)の組織単位(OU)を作成し、Security OU内にLog ArchiveアカウントとAuditアカウントの2つの共有アカウントを作成します。

コンポーネント 機能 目的
Security OU セキュリティ管理用アカウント群 ログ集約、監査機能の提供
Sandbox OU 開発・検証用アカウント群 実験環境の提供
Log Archive アカウント ログの一元管理 CloudTrail、Config情報の集約
Audit アカウント 監査機能 クロスアカウント監査の実行

Account Factory

Account Factoryは、新しいAWSアカウントの作成を自動化し、標準化された設定を適用する機能です。管理者は事前定義されたテンプレートを使用して、一貫した設定のアカウントを短時間で作成できます。

2024年8月のアップデートにより、組織単位(OU)あたり最大1,000個のアカウントを含めることが可能になりました。これにより、大規模な組織でもControl Towerを活用できる環境が整いました。

Guardrails(ガードレール)

ガードレールは、組織のポリシーを自動的に実装し、監視する仕組みです。

予防的ガードレール

  • 不適切な設定や操作を事前に防止
  • AWS Configルールによる実装
  • 例:特定のAWSリージョンでのリソース作成制限

検出的ガードレール

  • ポリシー違反を検出し、アラートを生成
  • CloudTrailログの監視による実装
  • 例:ルートユーザーでのアクセス検出

Dashboard機能

Control Towerダッシュボードでは、組織全体のコンプライアンス状況を一目で把握できます。アカウントの健全性、ガードレールの準拠状況、ドリフト(設定変更)の検出などの情報が視覚的に表示されます。

image.png

Organizations Familyとの連携

AWS Organizations

AWS Control TowerにおいてOrganizationsは、請求の一元管理、アクセス・コンプライアンス・セキュリティの制御、メンバーAWSアカウント間でのリソース共有を支援します。

AWS公式ドキュメント ( https://docs.aws.amazon.com/controltower/latest/userguide/organizations.html ) によると、主な機能は以下の通りです:

  • 統合請求: 全アカウントの請求を管理アカウントで一元化
  • 組織単位(OU): アカウントの論理的なグループ化
  • サービスコントロールポリシー(SCP): アカウント権限の制限

AWS Config

AWS Configは、ガードレールの実装において中核的な役割を果たします。各アカウントのリソース設定を継続的に監視し、組織のポリシーへの準拠状況をチェックします。

AWS CloudTrail

CloudTrailは、組織全体のAPI呼び出しを記録し、セキュリティ監査と操作の透明性を提供します。Control Towerは自動的に組織レベルのCloudTrailを設定し、すべてのアカウントの活動をLog Archiveアカウントに集約します。

AWS IAM Identity Center

AWS Control Towerは、さまざまなアカウントで特定のタスクを実行するユーザーを整理するための事前設定済みグループを提供し、管理者がIAM Identity Centerで直接ユーザーを追加し、これらのグループに割り当てることを可能にします。

AWS公式ドキュメント ( https://docs.aws.amazon.com/controltower/latest/userguide/sso-groups.html ) によると、以下の事前定義グループが利用可能です:

  • AWSControlTowerAdmins: 管理アカウントへの管理者アクセス
  • AWSSecurityAuditors: 監査用の読み取り専用アクセス
  • AWSSecurityAuditPowerUsers: セキュリティ関連の管理権限

AWS Service Catalog

Service Catalogは、Account Factoryの基盤技術として機能し、標準化されたアカウント作成プロセスを提供します。管理者が承認した製品ポートフォリオを通じて、エンドユーザーが一貫した設定のアカウントを作成できます。

image.png

実践的な活用例

セットアップの基本手順

  1. 前提条件の確認

    • 管理アカウントでの適切な権限
    • 利用予定リージョンでのControl Tower対応確認
  2. Landing Zoneの作成

    • AWS Console からControl Towerサービスにアクセス
    • リージョン選択とアカウント情報の設定
    • 自動セットアップの実行(約30分)
  3. 初期設定の確認

    • ガードレールの適用状況確認
    • IAM Identity Centerでのユーザー設定
    • ダッシュボードでの健全性チェック

カスタムガードレールの作成

標準ガードレール以外にも、組織固有の要件に基づいてカスタムガードレールを作成できます。

{
  "Version": "1.0",
  "RuleName": "custom-s3-encryption-check",
  "Description": "S3バケットの暗号化設定を確認",
  "ComplianceType": "COMPLIANCE_BY_CONFIG_RULE",
  "Severity": "HIGH"
}

運用における注意点

  • ドリフト検出: 手動での設定変更によるドリフトを定期的に確認
  • ガードレール違反への対応: 検出された違反事項の迅速な修正
  • アカウント作成プロセス: Account Factoryを通じた標準化された作成手順の遵守

料金とベストプラクティス

コスト構造

Control Tower自体は無料ですが、関連サービスの利用料金が発生します:

  • AWS Config: 設定項目の記録および評価に対する課金
  • CloudTrail: ログの保存とデータイベントに対する課金
  • AWS Organizations: 基本機能は無料、SCPの利用も無料

運用時の推奨事項

  1. 段階的な導入: 小規模なOUから始めて徐々に拡張
  2. 定期的な監査: ダッシュボードとレポートの定期確認
  3. 教育と訓練: チームメンバーへのControl Tower操作研修
  4. 自動化の活用: APIを使用した組織単位の登録自動化

終わりに

AWS Control Towerは、マルチアカウント環境の複雑性を大幅に軽減し、組織のガバナンス要件を満たすための強力なソリューションです。Organizations Familyの各サービスとの連携により、セキュリティ、コンプライアンス、運用効率の向上を同時に実現できます。

2024年の機能拡張により、より大規模な組織での活用も可能になりました。次のステップとして、実際の環境でのPoC(概念実証)の実施や、既存環境からの段階的な移行計画の策定を検討することをお勧めします。

Control Towerの導入により、組織は技術的な管理作業から解放され、ビジネス価値の創出により多くのリソースを割り当てることができるでしょう。

参考文献・参考サイト

AWS公式ドキュメント

Web記事

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