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Seq2Seq(Sequence-to-Sequence)モデルは、その名の通り、「あるシーケンス(系列)を入力として受け取り、別のシーケンスを出力する」ように設計されたニューラルネットワークのモデルです。

特に、入力の長さと出力の長さが異なるようなタスク(例えば、短文から長文へ、あるいはその逆)に非常に有効です。自然言語処理(NLP)の分野で大きな成功を収め、機械翻訳や文章要約などのタスクで広く使われています。

簡単に言うと、文章を別の文章に変換したり、質問に対する答えを生成したりする、**「文章の翻訳機」「文章の要約機」**のようなもの、ということです!📝


Seq2Seqモデルがなぜ必要なのか? 🤔

AIが言語を扱う場合、多くのタスクでは「入力の長さと出力の長さが固定されていない」という課題に直面します。

  • 機械翻訳: 「Hello」を「こんにちは」と翻訳する場合、入力は1単語、出力も1単語ですが、「How are you doing today?」を「今日はどのようなご気分ですか?」と翻訳する場合、入力と出力で単語数が異なります。
  • 文章要約: 長い記事を短い要約に変換する場合、入力シーケンスは長く、出力シーケンスは短くなります。
  • チャットボット: ユーザーの質問の長さは様々で、それに対するAIの返答の長さも様々です。

従来のニューラルネットワークモデルでは、このような可変長の入出力を柔軟に扱うことが困難でした。そこで、この問題に対処するために開発されたのがSeq2Seqモデルです。


Seq2Seqモデルの構造 🧱

Seq2Seqモデルの基本的な構造は、主に以下の2つの部分から構成されています。

  1. エンコーダ (Encoder) 🧠:

    • 入力シーケンス(例:翻訳元の言語の文章)を受け取り、それを固定長の**コンテキストベクトル(Context Vector)**と呼ばれる数値表現に変換します。
    • このコンテキストベクトルは、入力シーケンスの全ての情報(意味や文脈)を圧縮して凝縮したものと考えることができます。
    • 主にRNN(Recurrent Neural Network)の一種であるLSTM(Long Short-Term Memory)やGRU(Gated Recurrent Unit)が使われますが、最近ではTransformerもエンコーダとして使われます。
  2. デコーダ (Decoder) ✍️:

    • エンコーダから出力されたコンテキストベクトルを受け取ります。
    • このコンテキストベクトルを基にして、目標とする出力シーケンス(例:翻訳先の言語の文章)を単語(またはトークン)ごとに順番に生成していきます。
    • デコーダも通常、エンコーダと同様にLSTMやGRUのようなRNN構造を持ち、生成された前の単語を次の単語を予測するための入力として利用します。
    • デコーダが文の生成を始める際には、特別な「開始トークン」(<SOS>など)を入力として受け取り、文の終わりには「終了トークン」(<EOS>など)を出力します。

動作のイメージ 🚀

  1. エンコーダが入力文を読み込む: 「Ich liebe dich」というドイツ語の文が入力されると、エンコーダは「Ich」「liebe」「dich」の各単語を順番に処理し、最終的にこの文全体の意味を凝縮した一つのコンテキストベクトルを生成します。
  2. デコーダが出力文を生成する: デコーダはこのコンテキストベクトルを受け取り、まず「<SOS>」から翻訳を開始します。
    • コンテキストベクトルと「<SOS>」から最初の単語「I」を予測。
    • コンテキストベクトルと「I」から次の単語「love」を予測。
    • コンテキストベクトルと「love」から次の単語「you」を予測。
    • コンテキストベクトルと「you」から「<EOS>」を予測し、文の生成を終了。

結果として、「I love you」という英語の文が生成されます。


Seq2Seqモデルの課題とAttentionメカニズムによる改善 🌟

初期のSeq2Seqモデルには、エンコーダが全ての入力情報を固定長のコンテキストベクトルに押し込めるという課題がありました。特に長い入力シーケンスの場合、情報のボトルネックとなり、重要な情報が失われやすいという問題(「情報のボトルネック問題」)がありました。

この課題を解決したのが、以前解説した**「注意機構(Attention Mechanism)」**です。

アテンション(Attention)メカニズムは、デコーダが各単語を生成する際に、エンコーダがエンコードした入力シーケンスのどの部分に「注意を向けるべきか」を動的に判断する能力を与えます。

これにより、デコーダは固定長のコンテキストベクトルだけに頼るのではなく、入力シーケンス全体から必要な情報を適宜取り出しながら出力を生成できるようになり、長距離依存性の問題が大幅に改善され、Seq2Seqモデルの性能が飛躍的に向上しました。

アテンションメカニズムによって、デコーダはまるで「辞書をめくるように」入力の関連部分を参照できるようになるわけです。

Seq2Seqモデルの応用例 🌐

  • 機械翻訳: Google翻訳などの基礎技術。
  • 文章要約: 長いニュース記事から重要な情報を抽出し、短い要約を生成。
  • チャットボット・対話システム: ユーザーの質問や発言に対して、適切な返答を生成。
  • 画像キャプション生成: 画像の内容を説明する文章を生成。
  • 音声認識: 音声データ(音素のシーケンス)からテキスト(単語のシーケンス)へ変換。
  • コード生成: 自然言語の指示からプログラムコードを生成。

Seq2Seqモデルは、その柔軟な入出力処理能力とアテンションメカニズムとの組み合わせにより、AIが様々な「シーケンス変換」タスクをこなすための強力な基盤となりました。そして、このSeq2Seqとアテンションのアイデアが発展し、現在のTransformerモデルへとつながる道を開いたのです!🚀

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