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WordNet(ワードネット)とは? 📚

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WordNet(ワードネット)とは? 📚

WordNetは、プリンストン大学で開発された、英語の語彙データベース(lexical database)です。単なる辞書とは異なり、単語が持つ意味的な関係性に基づいて組織されています。

主な特徴は、単語を「Synset(シノセット)」と呼ばれる同義語のセットにグループ化し、それぞれのSynsetに定義(Gloss)を与え、さらに他のSynsetとの間にさまざまな意味的な関係をリンクとして持たせている点です。

簡単に言うと、単語をアルファベット順に並べるだけでなく、**「同じ意味の言葉はグループにまとめ、そのグループ同士がどんな関係にあるか(例:AはBの一種、CはDの部分、など)をネットワーク状につなげた、巨大な意味の地図」**🗺️のようなものです。


WordNetの歴史と背景 🕰️

WordNetは、1985年に心理言語学者であるジョージ・ミラー(George A. Miller)によってプリンストン大学で開発が始まりました。従来の辞書がアルファベット順に単語を並べるのに対し、WordNetは人間の語彙記憶の心理言語学的理論にインスパイアされ、「単語は概念に基づいて組織されている」という考え方に基づいています。

当初は心理言語学的な研究目的で開発されましたが、その構造が自然言語処理の研究に非常に有用であることが認識され、広く利用されるようになりました。


WordNetの構造 🧩

WordNetの核となるのは、以下の3つの主要な要素です。

  1. Synset (Synonym Set; 同義語セット) 🤝

    • 同じ意味を持つ単語の集合体です。たとえば、「car」「automobile」「auto」「motorcar」はすべて同じ「車」という概念を表すため、一つのSynsetにまとめられます。
    • 各Synsetには、その概念を説明する簡潔な定義(Gloss)が付属しています。
  2. 品詞による分類 🏷️

    • 単語は、名詞、動詞、形容詞、副詞の4つの主要な品詞に分けて管理されます。それぞれの品詞グループ内で、異なる意味的関係が構築されます。
  3. 意味的関係(Semantic Relations) 🔗

    • Synset同士は、さまざまな意味的な関係で結びつけられています。これがWordNetの最も強力な特徴です。
      • 上位語 (Hypernym) / 下位語 (Hyponym):
        • 「動物」は「犬」の上位語、「犬」は「動物」の下位語です。(is-a-kind-of 関係)
        • 例: {dog} のハイパーニムは {canine}、さらにそのハイパーニムは {carnivore}{mammal}... と階層を辿れます。
      • 全体-部分関係 (Holonym) / 部分-全体関係 (Meronym):
        • 「木」は「葉」の全体語、「葉」は「木」の部分語です。(has-a-part / is-a-part-of 関係)
        • 例: {tree} のメロニムは {leaf}
      • 類義語 (Synonym): 同じSynset内の単語。
      • 反意語 (Antonym): 意味が反対の単語。(例: {hot}{cold}
      • その他、動詞や形容詞には異なる関係性も定義されています。

これらの関係性により、WordNetは単語の意味的なネットワークを形成し、単語の意味の曖昧性解消や、類義語・関連語の検索に非常に役立ちます。

WordNetの応用例 🌟

WordNetは、自然言語処理の様々な分野で活用されてきました。

  • 意味の曖昧性解消 (Word Sense Disambiguation):
    • 例:「bank」(銀行 or 岸)のような多義語に対し、文脈から正しい意味を特定するのに役立ちます。
  • 類義語・関連語検索:
    • シソーラス(類義語辞典)として機能し、特定の単語の同義語や関連語を検索するのに使われます。
  • 情報検索:
    • 検索クエリに直接含まれないが、意味的に関連性の高いドキュメントを検索するのに利用されます。
  • 機械翻訳:
    • 異なる言語間での単語の意味的対応関係を見つけるのに役立つことがあります。
  • テキスト分類:
    • 単語の意味的関係を利用して、テキストのカテゴリをより正確に分類する特徴量として使われます。
  • セマンティック検索:
    • 単なるキーワードマッチングではなく、言葉の意味を理解した上で関連情報を探し出すシステムに利用されます。

日本語WordNetについて 🇯🇵

プリンストン大学のWordNetは英語がベースですが、これに影響を受け、情報通信研究機構(NICT)が中心となって日本語WordNetが開発されています。

  • 基本的にはPrinceton WordNetのSynsetに対応して日本語が付与されています。
  • 5万7千以上の概念(Synset)、9万3千語以上の単語が収録されています。
  • 英語のWordNetと同様に、上位語、下位語などの関係も定義されています。

日本語WordNetも、日本語の自然言語処理における重要なリソースとして利用されています。


WordNetの限界と進化 🚧

WordNetはNLPに多大な貢献をしてきましたが、いくつかの限界も指摘されています。

  • 手作業による構築: 膨大な労力と時間がかかり、更新が難しいです。
  • 網羅性の限界: 全ての単語や新しいスラング、専門用語を網羅することは困難です。
  • 意味の粒度: 文脈による微妙な意味の変化を捉えきれない場合があります。
  • 単語埋め込みの台頭: Word2VecやBERTのような、大規模なテキストデータから自動的に単語の意味を学習する「単語埋め込み(Word Embedding)」技術が登場し、WordNetのような手動構築された知識ベースの役割が変化してきました。

しかし、WordNetが提供する構造化された意味的知識は、単語埋め込みだけでは捉えきれない、より明示的な概念間の関係性を示す貴重なリソースであり続けています。両者を組み合わせることで、より高度な言語理解が可能になるでしょう。

WordNetは、コンピュータが人間の言語の意味を理解するための基礎を築いた、画期的なプロジェクトと言えるでしょう!✨

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