はじめに
仕事でIBM関連の製品を多く扱っていて、自社内でもそれらの活用を進めようという動きをしています。
その中で、IBMのAI開発プラットフォームである、watsonx.aiとOpenAIのChatGPT等の違いを聞かれることや説明する機会が何度かあり、簡単にまとめておこうとおもい作成した記事です。
ざっくりとした違い
-
watsonx.ai
- IBM CloudやAWS、Azure上で提供される企業向けAI開発プラットフォーム。
- セキュリティやガバナンスを重視し、オンプレミス導入やプライベートクラウド展開も可能です。
-
OpenAI (ChatGPTなど)
- 主にクラウド経由で利用。
- 個人~企業まで幅広く利用可能だが、データ保護やオンプレ展開には制約があります。
比較表
ざっくりとした違いで説明した内容の補足になりますが、watsonx.aiには企業で生成AIやAIを活用する上での必要となる機能が企業の利用するアカウント中に全てまとまるのがポイントです。
観点 | IBM watsonx.ai | OpenAI (ChatGPTなど) |
---|---|---|
提供形態 | IBM Cloud上、AWS、Azure、オンプレ/プライベートクラウド導入可能 | 主にクラウド提供(ChatGPT、API) |
対象ユーザー | 企業(金融・製造・公共など情報の外部公開に気を遣う産業に強い) | 個人~企業まで幅広い |
利用可能モデル | IBM Granite、Llama、Mistral、GPT-OSSなど複数選択可能、またオープンウェイトとして公開されているモデルを利用する事も可能 | GPT-4/4o/4.1/GPT-5 などOpenAI独自モデル |
カスタマイズ | RAG、ファインチューニング、ガバナンス機能統合 | API経由でFine-tuning、外部ツール連携 |
データガバナンス | watsonx.governanceで規制対応、データ追跡性を提供 | API利用データは学習に使われないが統合ガバナンス機能は限定的 |
セキュリティ | セキュリティ・コンプライアンスを重視、企業要件に対応 | ChatGPT Enterpriseで強化、ただしクラウド中心 |
ユースケース | 社内データ活用、業務アシスタント、業界特化ソリューション | 汎用的な自然言語対話、アプリやサービスの機能拡張 |
強み | 企業向け統合基盤、安全性・拡張性 | 最先端性能、導入の手軽さ、豊富なエコシステム |
概要図
watsonx.aiではAI開発に必要になる機能が全てひとまとめになるのが特徴です。
もちろんAPIを介してLLMやwatsonx.ai上のリソースを利用する事も出来ます。
データソースへの接続管理や簡易的なRAG、AIエージェントの開発環境もあります。
※2025年8月時点の概要です。今後変更になる可能性はあります。
※watsonx.aiもサービスで提供されるLLMのライフサイクルは設定されています。
OpenAIではAPIを利用して、利用者が用意した環境や他のサービスからAPIを介してモデルを利用します。
競合となるサービス
watsonx.aiの競合となる、サービスとしては以下のようなものがあります。
- Microsoft Azure AI / Azure OpenAI Service
- OpenAIモデルをAzure経由で提供。セキュリティやガバナンスも含めて企業向けです。
- Google Cloud Vertex AI
- PaLM2やGeminiなどGoogle独自モデル+OSSモデル対応。MLOps機能に強みがあります。
- Amazon Bedrock (AWS)
- Anthropic Claude、Meta Llama、Cohere、Stability AI など複数モデルをAPIで提供。サーバーレスで統合可能です。
まとめ
watsonx.aiは下記のような強みがあります。
- 企業向けに最適化
- セキュリティ、ガバナンス、規制対応を重視して設計。金融・公共など厳格な業界で導入可能です。
- モデル選択の柔軟性
- IBM独自のGraniteモデルに加え、Llama・MistralさらにGPT-OSSなどOSSモデルも利用可能。自社要件に応じて最適なモデルを選べます。
- 高度なカスタマイズ機能
- 独自データを組み合わせたFine-tuning、簡易RAG、watsonx.dataのベクトルDBやWatson Discoveryを組み合わせたRAG、プロンプトラボで検証したプロンプトを組み合わせて業務データに特化したAIを構築可能です。
- オンプレ/クラウド両対応
- IBM CloudやAWS、Azure上だけでなく、オンプレミスやプライベートクラウドでも利用でき、データを社外に出せないケースでも安心。