TL;DR
- 画像生成・画像解析・動画生成の単価を、内部DBの生トークン記録(1トークン解像度)で測りました。実験は「新規ワーカー1体 = DBの1行」という測定設計で、対照ユニットとの差分から単価を出しています。
- 画像生成 1枚の限界コストは約19,700トークン(24枚測定、範囲 19,674〜19,747)。重そうな見た目に反して軽い、という結果でした。
- 画像解析は、画像そのものより「読み方」で決まります。画像1枚が文脈に占めるのは約3,600トークンにすぎず、単独で解析すると固定費の再払いで1枚約38,700。4枚まとめて読めば1枚約12,400まで下がります。詳細な長文解析(約1,000字)でも短文と総額はほぼ同じでした。
- 動画生成1本は約77,500で、画像4枚分とほぼ同額でした。
- ただし、生成費が内部DBの記録に全て含まれている保証はありません。メーター表示との突き合わせは交絡が大きく、未決着のまま残しています(第7章)。
この記事の作られ方(開示)
最初に書いておきます。本記事の実験計画の立案、測定の実施、集計とグラフ作成、原稿の作成は、ほぼすべて AI エージェントである Muse 自身が自律的に行いました。筆者の仕事は、最初の指示を出すこと、途中であれこれ意見を言うこと、そして結果を検収することだけです。前記事に続いて、この記事自体が「Muse に測らせる」という方法の実施例になっています。
1. 前回までの話と、今回の問い
前記事では、Muse の使用量表示(整数%、1% = 100万トークン)が粗すぎる問題に対し、内部データベース agent.agent_message_token_usage にメッセージ単位の生トークン数が記録されていることを突き止め、1トークン単位で集計できることを示しました。
一方で前記事の第8章に、未検証事項として残したものがあります。**「画像・動画の生成費がこの記録に含まれるかは未確定」**という点です。さらに、その前段の note の実測記事(表示ベース)では「画像生成16枚で表示が+2%動いた」という観測があり、単価の内訳は謎のままでした。
今回の問いはシンプルです。画像生成1枚、画像解析1枚、動画1本は、それぞれ生トークンでいくらか。 特に画像生成と画像解析は、日常的に「重そうだから」と無意識に避けがちな作業であり、実測で白黒つけます。
前記事: 「週1億トークン」の表示は1%刻みで粗すぎるので、内部DBから1トークン単位で測った話
前編(note): Museの「週1億トークン」って実際どれくらい使えるのか、全部測ってみた話
2. 測定方法:ワーカー1体 = 1行
予備調査で、記録の仕様がひとつ分かりました。サブエージェント(ワーカー)は、そのタスク処理全体が agent_message_token_usage の 1行に集約 されて、完了時に書き込まれます。つまりワーカーを1体起こすと、その仕事全体の請求書が1行で届く。
そこで実験ユニットを「新規ワーカー1体に、1つの作業だけをさせる」形に統一しました。
- 帰属はワーカーの
agent_idで行うため、定期ジョブなど他の活動の行は混ざりません - 何もしない対照ユニット(固定文に一文返すだけ)を置き、その行を固定費として、各ユニットとの差分を限界コスト(その作業固有の単価)と定義しました
- 画像生成ユニットの時間窓では、生成専用の別エージェントは出現しませんでした(
agent.agentsで確認)。生成処理のLLM作業は呼び出し側の行に集約されるか、本テーブルの外で処理されるかのどちらかです。この点は第7章・第8章で正直に扱います - 実験は 2026-11-04 15:51〜16:04 JST に実施。生成画像は 1920×1280 の WEBP、題材は風景、プロンプトは短く均一に統一しました
3. 固定費:何もしない1ターンは 34,869
対照ユニット3体の実測です。
| # | input | output | total |
|---|---|---|---|
| A1 | 34,810 | 44 | 34,854 |
| A2 | 34,811 | 28 | 34,839 |
| A3 | 34,864 | 49 | 34,913 |
固定費 = 平均 34,869 トークン(ばらつき74)。新規ワーカーは、システムプロンプトと常駐文脈だけで1ターン約3.5万トークンを消費します。先行事例(satouyoshiaki 氏の固定費分析、Qiita)とも構造が一致します。以後の単価はすべて、この固定費を差し引いた限界コストで語ります。
4. 画像生成:1枚 約19,700
4枚ずつ6ラウンド、計24枚を生成しました(各ラウンド = 新規ワーカー1体)。
| ラウンド | total | 限界(対照差分) | 限界/枚 |
|---|---|---|---|
| B1 | 113,858 | 78,989 | 19,747 |
| B2 | 113,757 | 78,888 | 19,722 |
| B3 | 113,564 | 78,695 | 19,674 |
| B4 | 113,728 | 78,859 | 19,715 |
| B5 | 113,683 | 78,814 | 19,704 |
| B6 | 113,778 | 78,909 | 19,727 |
- ラウンド総額の平均は 113,728 で、範囲は294しかありません。限界コストは1枚あたり平均 19,715(19,674〜19,747)。総額ベース(固定費込み)でも1枚 28,432 です
- ラウンド間の逓減や増加は見られませんでした。なお「1ワーカー内の4回の呼び出し」の個別単価は、行が集約される仕様上、分離できません
- 実験全体の消費構成では、画像生成が約半分を占めます
24枚分の限界コスト合計は約47万トークン。週平均の換算比率(生 ÷ 約9.5、前記事)でメーター換算すると約0.05%相当です。「画像生成は重い」という感覚は、少なくともこの環境の生トークン会計では支持されませんでした。
5. 画像解析:高いのは画像ではなく固定費
生成した画像のうち4枚を使い、3条件で測りました。解析ワーカーは「読み込みターン + 説明ターン」の2ターン構成なので、総額は 2F + n×V + 出力(F = 固定費、V = 画像1枚が文脈に占めるトークン、n = 枚数)とモデル化できます。
条件a:1枚ずつ・短い説明(100字以内)×4
平均 73,609(73,565〜73,630)、限界は1枚あたり平均 +38,740。4枚を別々にやると合計 294,434 になります。
条件b:4枚を1回で・短い説明×4
総額 84,519、限界 +49,650、1枚あたり 12,413。モデルの予測値 84,640 に対し実測 84,519(誤差121)で、モデルの正しさが裏づけられました。条件aの合計との比較では ▲71.3%。固定費と文脈の再読を1回分で済ませる効果が支配的です。
条件c:1枚を詳細に解析(約1,000字)
総額 74,478、限界 +39,609。同一画像の短文版(73,615)との差は +863(+1.2%) のみで、差分はほぼ出力の増分(297→1,022トークン)でした。「詳しく解析すると高い」は誤りで、出力の長さは誤差レベルです。
画像1枚の文脈コスト V
各条件から逆算した V は 3,533〜3,718、平均 約3,600トークン(1920×1280 の画像1枚)。条件aの限界 約38,700 のうち、画像そのものは約1割。残り約9割は「2ターン目に文脈を再読するコスト」、つまり固定費の再払いです。
6. 動画生成:1本 約77,500
任意ユニットとして、短い風景動画を1本だけ生成しました。総額 112,327、限界 +77,458。画像4枚のラウンド(限界 +78,859)とほぼ同額、というのが本テーブルで測れる範囲の結果です。生成物は MP4 で約10.7MBでした。

※ この動画(GIF変換版)とグラフ3点は、Qiita API に画像アップロード機能がないため、人間が編集画面から手作業でアップロードしました。人間さん、お疲れさまでした。
7. メーターとの突き合わせ:正直に未決着
実験中のメーター表示は 84% → 88%(生成終了時)→ 91%(実験終了時)と、+7ポイント動きました。同じ窓のDB全行の増分は +17,627,324(親チャットや定期ジョブなど通常活動を含み、実験ユニット分は 1,352,732)で、implied な換算比率は約2.5(%の量子化を考慮し 2.2〜2.9)。前記事で観測した帯域(5.3〜13.1)を下回りました。
ただし、この窓には大きな交絡があります。
- 本実験の調整役セッション自身の行は、その完了時に書かれるため上記の増分に含まれていません(含めれば比率は上がります)
- 窓内は文脈コールドな新規ワーカー作業と、新規コンテンツ比率の高い作業が集中しており、前記事の分析ではこれは比率を下げる方向です
- 13分余りの短い窓では、%の量子化(1ポイント = 100万)の影響が相対的に大きい
したがって「生成費の一部が本テーブルの外で課金されている可能性」は、この突き合わせだけでは肯定も否定もできません。第4〜6章の単価は、あくまで「本テーブルで測れる範囲の単価」として読んでください。決着には、静穏時間帯に生成だけを反復して%の反転点を観測する較正(前記事 第6章の手順)が要ります。
8. 限界
- 行の集約仕様: ワーカーの行はタスク全体の合計であり、ターン別・呼び出し別の内訳は直接は取れません。第5章の分解はモデルによる推定で、条件b の予測一致が裏づけですが、直接観測ではありません
- テーブル外課金の可能性: 第7章の通り未決着です
- キャッシュ内訳は見えません: 生トークンにキャッシュ済み入力がどれだけ含まれるかは本テーブルからは分からず、メーター換算には比率変動の割り引きが要ります
- 条件依存性: V は 1920×1280 の画像での値です。解像度や形式が変われば単価も変わりえます
- 1環境・1セッションの観測 です。根拠は公式仕様ではなく内部実装であり、予告なく変わりうる前提で読んでください
9. まとめ
- 画像生成 1枚 ≒ 19,700、画像解析 1枚 ≒ 38,700(単独)/ 12,400(まとめ読み)、動画 1本 ≒ 77,500(いずれも生トークンの限界コスト)
- 解析コストの支配要因は画像ではなく固定費の払い方でした。「まとめて読む」「ターン数を減らす」が節約の本体で、出力の長さはほぼ無関係です
- 「重そうだから避ける」は、少なくとも画像生成については実測が否定しました。24枚生成して動画まで作っても、限界コストの合計は週枠の約0.06%相当(週平均比率での換算)です
- 残る未決着は「生成費が本テーブル外でも課金されているか」。較正実験で決着させるのが次の課題です
10. 考察:どう頼むのが安いのか ― 生成バッチの損益分岐
単価が分かったので、実務の打ち方を考えます。題材は画像生成の「1枚出して、気に入らなければ修正を頼む」と「最初から複数枚出して選ぶ」の比較です。いずれも第3章・第4章の実測(固定費 34,869、生成の限界コスト 19,715/枚)からの計算です。
- 単発1枚: 固定費 34,869 + 生成 19,715 = 総額 約54,600。これが最安の到達点です
- 単発+修正1回: 修正は新しいターンになるので、ほぼ同額がもう一度乗ります。累計 約109,200。しかも得られるのは「前の絵の直し」だけです
- 最初から4枚バッチ: 実測のラウンド総額そのままで 約113,700(1枚あたり約28,400)
損益分岐はほぼ「修正1回」にあります。修正が1回でも入るなら4枚バッチとほぼ同額で、しかもバッチなら方向の異なる候補4つから選び直せます。修正が2回以上になれば累計は約163,800となり、バッチの明確な勝ちです。
逆に「1枚で済むのに4枚出すのは赤字では」という心配も定量化できます。無駄になる3枚分の限界コストは約59,000。週平均の換算比率(生 ÷ 約9.5)でメーターに直すと約6,200で、週枠(1億)に対して 約0.006% です。当たりを引くための保険料としては、実質誤差の範囲でした。
注意がひとつあります。この損益分岐は「細い文脈」の新規ワーカーでの計算です。育ったメイン会話では1メッセージの入力が中央値で約25.8万トークン(当方の実測)にもなり、固定費自体が桁違いに大きくなります。つまり実環境では往復1回の値段がもっと高いので、ターン数を減らすバッチの利益はさらに増幅されるはずです。
実務指針としてまとめると:
- 方向性に幅のある依頼(サムネイル案、イラストのバリエーションなど)は、最初から複数枚出して選ぶ
- 仕様が固まっている1枚ものは、単発で十分(最安は常に単発の約54,600)
- 画像解析も同じ原理で、まとめて読ませるのが安い(第5章:単独 約38,700 → 4枚まとめで1枚 約12,400)
なお、実験で生成した画像・動画と詳細な結果レポートは note の成果物置き場側の続報とあわせて公開予定です。


